五つの星々、転生管理ー星巡りの護りビトー

神谷凪紗

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第二章 【世界を護る役割】

第一節 部隊招集

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―星巡り部隊。
国に勝利をもたらす軍隊とも、民を護る騎士団とも違う、世界の均衡を護るための存在。魔力を有する世界と、魔力を持たざる世界の中心に位置するルベライド世界にのみ、星巡り部隊は存在している。

部隊内での上下関係は、部隊を束ねる纏を最上に置き、導、剣、護、調の順になってはいるが、部隊の纏の采配によって対等な立場に置かれる場合が多々あり、その規律は暗黙の了解として捉えられており、強制力が発揮されずにいた。

第十三をもある星巡り部隊を統括する存在、総司令官と呼ばれる人物はどの星巡り部隊よりも上の立場であり絶対の発言権を持っている。星巡り部隊に渡される指令は、全てがこの存在により通達されていた。

星巡り統括本部 総司令官 セルジュ・コンセーレ

俺たち星巡り部隊を招集したのは、その絶対的な存在からだった。

「突然の招集指令にも関わらず、迅速な招集、および乱れぬ整列待機。真に素晴らしいものだ。―面を上げてよい」

纏めである以上、部隊の最前列に位置する俺はゆっくりと顔を上げる。
俺の右隣にいるのは第二星巡り部隊の纏。その向こう側に一部隊分の空白を開けて、他の部隊員たちが並んでいた。左隣にはだれもおらず、純白の壁面が目に痛い。顔はまっすぐ前にして動かさず、視線だけを見渡していれば大きく咳払いを溢す声に、はっとして視線を戻した。

「その体制も辛いだろう。楽にしてよい―と言いたいところだが、私が貴様らを集めたのには理由があるからだ。では問う。何故貴様らは集められた?」
「第六星巡り部隊の一件ではないでしょうか!」

総司令の問いに、どこかの部隊員が声を張り答えを返す。
その答えを聞いた総司令は先ほどよりも固い表情になり眉間にしわを寄せていた。強面の顔をしかめたその表情は、般若ともとれるほど怒気を露わにしており、その威圧感に小さく咽喉が鳴る。

「―今声を上げた貴様、名を名乗れ」

身が竦むほど低い声音に、部隊員であろう人物の声は怯えたように震えていた。

「…だ、第四星巡りの護、クレノ・アンバー!」
「そうか。クレノ・アンバー、貴様は星巡り部隊に配属されて日が浅かったか。貴様の答え自体は間違ったものではない、私の問いに即座に答えたところは隊員としては好ましい」
「ッは!恐悦至極に存じま――」
「黙れ。今この場において貴様は己の部隊の、他の部隊の纏よりも発言できる立場にいると思っているのか?」

空気を凍らせるほど低く力強い一声に件の隊員―クレノは喉を鳴らして黙り込む。
第四星巡りの護と言ったクレノの立ち位置は、俺の場所から右隣の向こう側。しかも後方に位置しているためクレノの表情は何も分からなかったが、俺でも身が竦んでしまう司令官の声を名指しで聞かされてしまえば、どのような状態かは容易に想像できる。

(それに、問いの答えもマズかったな…この件に関しては、誰が言っても同じだとは思うが―部隊の責任を負う立場の纏が答えるのと、その庇護下に置かれている護が答えるのでは事の次第が変わってくる)

黙り込んでしまったクレノの失態を詫びるように、凛とした声が響く。

「セルジュ・コンセーレ司令官。私は第四星巡りの纏、トレイシー・カルイズ、第四星巡りの護、クレノ・アンバーの無礼を謝罪いたします。並びに、クレノ・アンバーが発言した関し、部隊の纏である私がいかなる責任も負うことをお約束いたします」
「よかろう、謝罪を受け取る。責任に関しては、クレノ・アンバーに対し星巡り部隊の規律を叩き込ませよ。二度とこのような失態を侵さぬように」

ごほんと一つ咳払いを溢した司令官は俺たちの顔を順に見据えた。

「先の問いに答えたクレノ・アンバーの指摘は間違ったものではない。今回貴様らを集めたのには第六星巡り部隊に関する一件によるものだ。フレンダル、カーマイン、ゼクシオにて長期遠征任務についている部隊には後ほど通達することになる」

今この場に集まっている部隊は、その三つの部隊を除く全部隊のようだ。
フレンダルには、第三星巡り部隊。カーマインには第九星巡り部隊。ゼクシオには第五星巡り部隊。遠征任務中の三部隊を待つことが出来ないほどに、緊急の要件だったのだろう。

「―第六星巡り部隊の纏である、ウンライ・シエル・レプリカント。今この時点をもってして纏の階級を剥奪、並びに第六星巡り部隊は無期限の部隊凍結状態とする」

(部隊、凍結……)

部隊凍結。
星巡り部隊としての任務を受けることが出来なくなることはおろか、星巡り部隊に所属していながら、己の所属や階級を言葉に出すことを、それらを示すものをその身につけることも禁じられてしまう。

通常、纏がいなくなったとしても、その部隊の部隊員は他の補助要員として任務に同行することが出来る。
長期遠征任務など、纏の存在が必要不可欠な任務を受けることは出来なくなるが、一隊員としての行動は狭められることはない。新しい纏が配属されたその日に、ようやく部隊として活動することが出来るのだ。

しかし、凍結状態となれば話は別だった。

「最重要機密事項漏洩の嫌疑、星巡り部隊規定違反、他世界への私的関与の疑いによって、ウンライ・シエル・レプリカントは特別指名手配とする。見つけ次第拘束、命を奪う以外でならばいかなる手段をも問わない。―私の前へ連れてこい」
「―セルジュ・コンセーレ司令官、質問をよろしいでしょうか」
「良かろう。配属、階級、名を示せ」
「第一星巡りの纏、レナトゥス・リィン・リーディルク。―今回の一件、なぜ第六星巡り部隊が凍結するに至ったのでしょうか。ウンライ・シエル・レプリカントへの特別指名手配は理解できますが、怪我を負わされた側である部隊員までも、彼と同じような処遇に至るのが私には理解が及びません」

信頼の足らない部隊として、あるいは何かしらの嫌疑がかかっている部隊とされ、本部の監視下に置かれた状態。
そのために、星巡り部隊を示す全ての物が本部にて回収され、部隊員もまた本部での生活を余儀なくされる。凍結解除されるためには、それ相応の態度を示さなければならない。

だからこそ、分からない。

怪我を負わされた側―ウンライに裏切られ、信頼していた纏がいなくなってしまった第六星巡り部隊に追い打ちをかけるような決定が、どうしても理解できなかった。
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