強面黒騎士は犬を溺愛する

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第八話

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 ど、どうしてそんな顔するんだ。お、俺が勝手に家を抜け出したから怒ってるのか。
 あわあわと焦ってると一人の男が恐る恐るヴィンセントに話しかける。
「あの騎士団長、その犬は……?」
「俺が飼っている犬だ」
「だ、団長が犬を!?」
 それを聞いてありえないとばかりに男が仰天し、周囲も驚きに騒めく。
 俺は必死だった。
「くぅ~ん」
 座って俯き、ごめんなさいと反省を態度で示す。けれどヴィンセントは黙ったままで。こんなの辛くて耐えられない。涙を堪え上目遣いで彼を窺うとヴィンセントが一瞬びくりと震えた。
 なぜか辺りからはなんだか息を漏らす声が聞こえてくる。
「お前たち何をぼうっとしている! さっさと訓練に戻らないか!」
 ヴィンセントが突っ立ってる男らの意識を呼び起こす。次に俺を抱き上げて皆から少し離れた切り株の上へと下ろす。
「終わるまでここで待っていなさい」
 それだけ言ってヴィンセントは男たちの方へと行ってしまった。
 未だヴィンセントは怒っているようだった。もしかして愛想を尽かされてしまったのかと思い怖くなる。
 けれど謝ること以外に俺が出来ることと言ったらこうしてここでじっとして彼の言いつけをきちんと守ることくらいだ。
「休憩だ! 十分後に再開する」
 ヴィンセントがそう言い放つと男たちがぞろぞろと霧散し始める。何人かが俺の方へ近付いてきてぐるっと俺を取り囲む。全員が哀れむような表情を浮かべていた。
「可哀想になぁ。あの騎士団長の飼い犬になるなんて」
「きっと躾も厳しいんだろうなぁ」
「ほら見ろよこの脚。きっとお仕置きで鞭打ちでもやられたんだぜ」
「こんなにかわいいのに……。団長は軍用犬にでもするつもりなんだろうか」
 一人が身を屈めてそっと俺の頭を撫でる。
「なぁ、俺たちだけでもコイツを可愛がってやろうぜ。じゃなきゃかわいそうで俺、見てられんねぇよ」
「そうだな。団長の代わりに俺たちがいっぱい愛を注いでやろう」
 皆顔を合わせて何かを決心したようだった。ある者は俺の顔を両手で包んで撫で回し、ある者はバックから食べ物を取り出す。いつか食べたそれに俺のテンションも尻尾もグンと上がった。
 むしゃむしゃと貪り食う。
「うお凄いなこのがっつきよう。そんなにソーセージが好きなのかお前」
「ははは、小さいのにえらい食いしん坊だな。いや、待てよ……まさかロクな餌をもらっていないんじゃ」
「そんな流石に団長がそこまでするとは……いやしかねないかもしれないな」
 うーんと顎に手を当て何か深刻そうに悩んでいるようだったが、そんなことはどうでも良かった。
「キャンキャン!」
 俺を見て! 俺を撫でて!
 ブンブンと尻尾を左右に振ってゴロンと仰向けになる。そんな俺を見て男たちが一斉に頬をダラリと緩めた。
 みんなの視界には俺だけしか映っていなかった。
 頭が痺れるような快感と震えるほどの興奮に呑まれる。
 っ最高!!!!!!
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