強面黒騎士は犬を溺愛する

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第十話

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 脚の傷が完全に癒えたことでヴィンセントは行かないでと強請る俺を一緒に外へと連れて行くようになった。
「大人しくいい子でな」
 そう言われて少し離れたところからヴィンセントと訓練に励む騎士団のみんなを見つめる。
 団員の一人と目が合い、ニコリと笑みを浮かべながら彼がこちらに手を振る。それに気付いてみんなも俺にニコニコと笑顔を浮かべて手を振りだした。
 答えるように「キャン!」とひと吠えする。けれど肝心のヴィンセントといえばこちらを全く見向きもしない。
 彼の家に来てからしばらく経って人間の言葉というものを段々と理解できるようになってきた。
 言葉が分かるようになった分、騎士団の皆がどんなに俺を可愛がっているか伝わってきてハイだった頭に更に快感が走る。けれどヴィンセントに一つだけ訊きたいことがあった。
 ヴィンセントは家ではとても俺に甘い。しかし騎士団の皆の前となると途端に冷たくよそよそしくなる。その理由を知りたかった。けれど俺の口から出る声といえば『キャン』くらいだ。言葉は分かるのに話せない。焦ったいことこの上ない。
「ルイ~、こっち向いて~」
 甘ったるい男の声に振り向く。瞬間、湧き上がる歓声。
「かっわいい~!」
「装いが水兵ってのが少しムカつくが、それを差し置いてもどちゃくそかわいいな!」
 セーラーカラーの特徴的な襟に、純白と水色のコントラスト。頭に乗った小さな水兵の帽子。俺は今団員に囲まれてファッションショー紛いのことをさせられていた。
「おい、次はどうせなら騎士の服を作れよ。ルイは騎士団のアイドルなんだからよ」
「まぁそんなカッカッすんなって。バリエーションは沢山あった方が色んなルイを見れて楽しいじゃないか」
 そう言う彼は俺の服を作っているファンクラブの一員だ。沢山の服を作ってこうして着せ替え人形のように俺に着せる。
 ファンクラブ? ああそう、最高なことに俺は騎士団のアイドルになってちゃんとしたファンクラブも出来ているのだ。みんなのアイドル、幸せすぎて頭が馬鹿になりそうだ。
「ルイ、そろそろ帰るぞ」
 いつも通り威圧感マシマシでヴィンセントが俺を呼ぶ。すぐさま彼のもとに駆けつける。
「団長! これ差し上げますので必ずルイに着させてくださいね!」
 そう言って彼が作った服を差し出し、ヴィンセントもまんざらではないように受け取る。これもいつもの光景だった。俺はごわごわするからあまり服は好きじゃないけど、恐れられ、誰も近づきたがらないヴィンセントがこうして皆と繋がりを持てるなら服くらい我慢できた。
 家に帰ると、真っ先に俺を抱えてソファに腰掛ける。膝の上に俺を仰向けに寝かせるとヴィンセントがふわふわのお腹に顔を埋める。
 これもいつもの光景。
「ス~ハ~、ス~ハ~。……あ~いい匂い」
 普段は見せない苛烈な彼の行動。勤務中俺によそよそしくあまり近づかないからその分の欲求が爆発しているのだろう。ならそもそもそんな態度やめればいいのにと思うけど彼は決してやめない。
「ルイ、ルイ、ルイ、ルイ~」
 そう連呼しながら埋めた頭を左右に振ってふわふわのお腹を堪能する。手が撫でようと体に触れる。瞬間、痛みが走った。
「キャウ!」
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