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第二十四話
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※龍一郎視点
龍一郎は独りだった。
父の愛人であった母と暮らしていたのは小学校まで。その後母は病気で亡くなり、父に引き取られた。父は所謂ヤクザでしかも組長であった。
それは周知の事実。おかげで学校では誰も龍一郎に近付きたがらなかった。アイツが現れるまでは。
「はよ」
高校のクラス替え一日目、前の席に座った男がなんとはなしに挨拶する。
短く整えられた短髪。端正な顔立ちをした爽やかな青年。
龍一郎は目を丸くする。
学校で誰かに話しかけられたのは初めてだった。
「勇気、おはよー」
「はよー」
「俺たちまた一緒のクラスだな」
「おう、そうだな。今年もよろしくー」
自分に話しかけた男は勇気という名前らしい。勇気と話す男の隣には多分彼の友人だろう大人しそうな奴が突っ立っていた。勇気が笑みを浮かべてその男に話しかける。
「俺は勇気。これからよろしくな」
「あっ、うん。よ、よろしく」
「うんよろしく。そうだ連絡先交換しようぜ」
「え? あ、うん!」
二人が携帯を取り出して微笑ましくやり取りする。龍一郎には遠い風景だった。
しかし勇気が突如龍一郎の方へ振り返る。
「なぁ、お前も連絡先交換しようぜ」
「……俺のことか?」
まさか自分に話しかけたわけじゃないだろうと聞き返す。
「そうに決まってるだろ」
「……俺のこと知らないのか?」
だから話しかけに来たのだろうと思った。しかし勇気ははっきりと言う。
「知ってるが?」
それがなんだと言いたいばかりの態度だ。周りにいた友人たちが小声になって慌てて勇気を止めに入る。
「おいやめとけって」
「そ、そうだよ。だって彼は……」
だが勇気はそのまま話しかける。
「携帯持ってるか?」
「あ、ああ」
「じゃあほら。早く携帯出せよ」
「…………」
勇気に押されるまま、龍一郎は携帯を取り出し、番号を登録し合う。
「俺は勇気」
「俺は──」
「知ってる。鐵龍一郎だろ? 有名人だからな」
何者か知っている上で、勇気は他の人と同じように龍一郎と話す。
それが龍一郎にとっては心から嬉しかった。
「てか龍一郎ってやけにかっこいい名前だな?」
「そうか。俺、初めて言われたぞ」
自然と笑みが溢れてくる。母が亡くなってからずっと色の薄いままだった世界が再び色づく瞬間を龍一郎は感じた。
龍一郎と勇気が親友になるのはそう遅くはなかった。お互い気が合っていたし、二人には共通点があった。
勇気は孤児で、龍一郎も母を亡くし父は放任でほぼ家族がいないに等しかった。
だから二人の馬が合うのも当然の話だった。
「龍一郎、俺さ……好きな人が出来たんだ」
帰り道に勇気が頬をほんのり染めて伝えてくる。
「三組の舞さんだろ?」
「はっ!? な、なんで知ってんだよ!?」
「そりゃそうだろ。舞さんを見てる時のお前っていかにもって感じだからな」
「マ、マジかよ~。……なぁ舞さんに気付かれてないかな?」
「さぁな」
焦ってる勇気が面白くてしらを切る。すると勇気が「ク、クソ野郎~」と漏らす。
「ハハッそう苛立つなよ。俺はな、お前のことを手伝おうと思ってるんだぞ」
「手伝う?」
「お前が女の子の気持ちを理解しているとは思えないし、きっとお前だけじゃあ失敗に終わるからな。だから二人がくっつくように俺が手伝ってやるって言ってんだよ」
龍一郎は自信をもって言う。なにせ勇気を手伝おうと決めた時、女の子の気持ちを学ぼうと少女漫画を読みこんだり、ファッション雑誌を買ってモテる身なりの勉強をしたのだ。
勇気が神を崇めるようなキラキラとした瞳になる。
「お、俺を手伝ってくれるのか?」
「ああ。二人で頑張ろう!」
彼女には一度嫌われてしまったが、その三ヶ月後勇気は無事手を繋ぐことが出来た。
舞と龍一郎は良き友人であった。龍一郎は二人に水を差したくないと遠慮していたが、勇気と舞が彼を連れ出して三人で遊ぶことも多かった。
龍一郎は二人を微笑ましく見守った。しかし彼女の家族は二人の交際を喜ばなかった。
彼女の家は名家と呼ばれるものだった。だからキャリアも何もない孤児の勇気が大事な一人娘と付き合うことを許さなかった。
高校を卒業後、二人は駆け落ちを選んだ。そして二人を囲ったのは龍一郎だった。龍一郎は私生児とはいえ組長の息子だ。息子の立場で組の力を使い、龍一郎は二人を助けた。
「色々と面倒をかけてすまないな」
「二人がくっつくように手伝い出したのは俺の方だからな。だから最後まで面倒見るさ」
勇気がふっと笑う。
「龍一郎、あのさ……」
勇気が話したそれは結婚式への招待。龍一郎は心から喜んで招待状を受け取った。
二人は龍一郎のみが見守る小さな結婚式を挙げた。その一年後二人の間に第一子が生まれた。
龍一郎は独りだった。
父の愛人であった母と暮らしていたのは小学校まで。その後母は病気で亡くなり、父に引き取られた。父は所謂ヤクザでしかも組長であった。
それは周知の事実。おかげで学校では誰も龍一郎に近付きたがらなかった。アイツが現れるまでは。
「はよ」
高校のクラス替え一日目、前の席に座った男がなんとはなしに挨拶する。
短く整えられた短髪。端正な顔立ちをした爽やかな青年。
龍一郎は目を丸くする。
学校で誰かに話しかけられたのは初めてだった。
「勇気、おはよー」
「はよー」
「俺たちまた一緒のクラスだな」
「おう、そうだな。今年もよろしくー」
自分に話しかけた男は勇気という名前らしい。勇気と話す男の隣には多分彼の友人だろう大人しそうな奴が突っ立っていた。勇気が笑みを浮かべてその男に話しかける。
「俺は勇気。これからよろしくな」
「あっ、うん。よ、よろしく」
「うんよろしく。そうだ連絡先交換しようぜ」
「え? あ、うん!」
二人が携帯を取り出して微笑ましくやり取りする。龍一郎には遠い風景だった。
しかし勇気が突如龍一郎の方へ振り返る。
「なぁ、お前も連絡先交換しようぜ」
「……俺のことか?」
まさか自分に話しかけたわけじゃないだろうと聞き返す。
「そうに決まってるだろ」
「……俺のこと知らないのか?」
だから話しかけに来たのだろうと思った。しかし勇気ははっきりと言う。
「知ってるが?」
それがなんだと言いたいばかりの態度だ。周りにいた友人たちが小声になって慌てて勇気を止めに入る。
「おいやめとけって」
「そ、そうだよ。だって彼は……」
だが勇気はそのまま話しかける。
「携帯持ってるか?」
「あ、ああ」
「じゃあほら。早く携帯出せよ」
「…………」
勇気に押されるまま、龍一郎は携帯を取り出し、番号を登録し合う。
「俺は勇気」
「俺は──」
「知ってる。鐵龍一郎だろ? 有名人だからな」
何者か知っている上で、勇気は他の人と同じように龍一郎と話す。
それが龍一郎にとっては心から嬉しかった。
「てか龍一郎ってやけにかっこいい名前だな?」
「そうか。俺、初めて言われたぞ」
自然と笑みが溢れてくる。母が亡くなってからずっと色の薄いままだった世界が再び色づく瞬間を龍一郎は感じた。
龍一郎と勇気が親友になるのはそう遅くはなかった。お互い気が合っていたし、二人には共通点があった。
勇気は孤児で、龍一郎も母を亡くし父は放任でほぼ家族がいないに等しかった。
だから二人の馬が合うのも当然の話だった。
「龍一郎、俺さ……好きな人が出来たんだ」
帰り道に勇気が頬をほんのり染めて伝えてくる。
「三組の舞さんだろ?」
「はっ!? な、なんで知ってんだよ!?」
「そりゃそうだろ。舞さんを見てる時のお前っていかにもって感じだからな」
「マ、マジかよ~。……なぁ舞さんに気付かれてないかな?」
「さぁな」
焦ってる勇気が面白くてしらを切る。すると勇気が「ク、クソ野郎~」と漏らす。
「ハハッそう苛立つなよ。俺はな、お前のことを手伝おうと思ってるんだぞ」
「手伝う?」
「お前が女の子の気持ちを理解しているとは思えないし、きっとお前だけじゃあ失敗に終わるからな。だから二人がくっつくように俺が手伝ってやるって言ってんだよ」
龍一郎は自信をもって言う。なにせ勇気を手伝おうと決めた時、女の子の気持ちを学ぼうと少女漫画を読みこんだり、ファッション雑誌を買ってモテる身なりの勉強をしたのだ。
勇気が神を崇めるようなキラキラとした瞳になる。
「お、俺を手伝ってくれるのか?」
「ああ。二人で頑張ろう!」
彼女には一度嫌われてしまったが、その三ヶ月後勇気は無事手を繋ぐことが出来た。
舞と龍一郎は良き友人であった。龍一郎は二人に水を差したくないと遠慮していたが、勇気と舞が彼を連れ出して三人で遊ぶことも多かった。
龍一郎は二人を微笑ましく見守った。しかし彼女の家族は二人の交際を喜ばなかった。
彼女の家は名家と呼ばれるものだった。だからキャリアも何もない孤児の勇気が大事な一人娘と付き合うことを許さなかった。
高校を卒業後、二人は駆け落ちを選んだ。そして二人を囲ったのは龍一郎だった。龍一郎は私生児とはいえ組長の息子だ。息子の立場で組の力を使い、龍一郎は二人を助けた。
「色々と面倒をかけてすまないな」
「二人がくっつくように手伝い出したのは俺の方だからな。だから最後まで面倒見るさ」
勇気がふっと笑う。
「龍一郎、あのさ……」
勇気が話したそれは結婚式への招待。龍一郎は心から喜んで招待状を受け取った。
二人は龍一郎のみが見守る小さな結婚式を挙げた。その一年後二人の間に第一子が生まれた。
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