神官長は勇者に囚われて

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 私は長い夜を経て、シンの前に立った。
 彼の黒い瞳は、相変わらず私だけを映している。
 その視線の強さに心が揺さぶられながらも、私は唇を震わせて告げた。

 「……シン。私には……誰にも知られたくない過去があります」

 彼は眉を寄せたが、黙って続きを待った。
 その沈黙が、かえって恐ろしくなる。

 「孤児院を守るために、私は……金を得るために……」
 声が喉に詰まり、言葉が千切れそうになる。
 それでも絞り出した。

 「……身体を差し出していました。何度も、何人もの大人に……」

 震える声が、夜の静寂に吸い込まれた。
 「だから私は穢れています。神官長として祈りを捧げる資格など、本当は――」

 そこまで言った瞬間、強く抱き寄せられた。

 「……っ、シン……!」

 彼の腕は熱く、息苦しいほどに強い。
 「そんなこと……どうでもいい」
 低い声が耳元で震えた。

 「イリアス……それが君の過去だって? なら、それは君が誰かを守るためにしたことだろう」
 「でも……私は……汚れて……」
 「違う。誇りだ」

 黒い瞳が近くで光る。
 「君が子供たちを守るために泣いて選んだことを、どうして汚いなんて言えるんだ。俺は……そんな君を愛してる」

 胸が締めつけられ、涙が溢れた。
 軽蔑されると恐れていたのに。突き放されると思っていたのに。
 彼はすべてを抱きしめてくれると言う。

 「……シン……」
 「俺は君の涙も、罪も、過去も……全部欲しい。全部俺のものにする」

 その言葉に抗う力が抜け落ちた。
 震える身体を彼に預けながら、私は初めて「安堵」という名の温もりに包まれていた。
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