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教会は布告を出した。
「神官長イリアスは穢れを身に宿し、勇者を惑わせた。ゆえに断罪する」
それは正義を装った言葉であり、民衆を扇動するには十分すぎる響きを持っていた。
だが、その裏で囁かれていた言葉は別のものだった。
「勇者が現れてからというもの、我らはあの美しい神官に近づくことすらできなくなった。忌々しい」
「そうだ。あれほど清らかな顔で、あれほど甘い涙を流すのだ。断罪を名目に捕らえれば、我らのものにできる」
「勇者の目を盗み、神殿の奥に閉じ込めて……心ゆくまで可愛がろうではないか」
密室で交わされる声に、
イリアスは背筋が凍るような悪寒が走る。
それは私が知らぬところで蠢いていた――
一刻も早く逃げなければと足を動かすと
唐突に背後から冷たい布が口を覆い、意識が闇に沈んだ。
意識を取り戻したとき、私は両手を鎖で吊られ、冷たい石壁に背を押しつけられていた。
祭服は無残に乱れ、肩が露わになり、足首まで縛られている。
蝋燭の炎が揺れ、陰影の中で複数の男の影が私を取り囲んでいた。
「……やっとだ」
「勇者が来てからというもの、近づくことすらできなかった」
「忌々しい黒髪の異邦人め……だがもう邪魔は入らぬ」
笑い声が低く重なる。
高位神官たちの瞳には、信仰の色は一片もなく、欲望の光だけが燃えていた。
「イリアス。お前は清らかな神官長ではない。昔から知っているぞ……」
ざらついた指が顎を掴み、顔を持ち上げる。
「孤児院を守るために身体を差し出した……あのときから、お前は我らのものだったのだ」
心臓が止まりそうになった。
「なぜ、それを……!」
「忘れたと思うな。泣きながら抱かれていた顔……あれは忘れられるものではない」
別の男が私の首筋に唇を寄せ、ざらりとした舌が肌を這った。
「ひっ……やめろ……!」
必死に身をよじっても、鎖が食い込み逃げられない。
「抵抗するほどに愛おしい……」
「勇者に汚される前に、我らが可愛がってやろう」
衣の裾を乱す手が、無遠慮に太腿を撫でる。
冷気に晒された肌が震え、羞恥で頬が熱くなる。
「いやだ……やめて……!」
涙が零れ落ち、嗚咽が喉を震わせた。
だが、男たちの笑みは深まるばかりだった。
「泣き顔も、声も……昔と同じだな。勇者ごときには渡さん」
「お前は最初から、我ら大人のものだ」
――また、あの夜が繰り返される。
孤児院を守るために差し出した身体。
泣いても、逃げても、決して離してもらえなかった夜。
「所有物」として執着され続けた。
泣いても逃げても、欲望のままに私を囲い込んだ大人たちは決して離さなかった。
「お前は特別だ」――その言葉に、私は何度も鎖をかけられてきた。
そして今もなお、教会は同じ目で私を見ている。
――過去と現在が重なり、胸が軋む。
私はまた、大人たちの欲望に絡め取られようとしている。
必死に抗う声も虚しく、神官の一人が顔を寄せる。
「泣き顔も、声も、昔と変わらぬな……美しい」
ざらついた指が顎を撫で、首筋に這う。
「いやっ……触れるな!」
身をよじっても鎖に引き戻され、衣がはだけていく。
冷たい空気に晒される肌が震える。羞恥と恐怖が胸を押し潰した。
その地獄が、再び私を呑み込もうとしていた。
「やめて……誰か……!」
必死の叫びは石壁に吸い込まれ、誰にも届かない。
そのとき――轟音と共に扉が破られた。
「――イリアス!!」
鋭い剣閃が闇を裂き、男たちの笑みが一瞬で恐怖に変わった。
黒い瞳を燃やす勇者シンが、そこに立っていた。
「神官長イリアスは穢れを身に宿し、勇者を惑わせた。ゆえに断罪する」
それは正義を装った言葉であり、民衆を扇動するには十分すぎる響きを持っていた。
だが、その裏で囁かれていた言葉は別のものだった。
「勇者が現れてからというもの、我らはあの美しい神官に近づくことすらできなくなった。忌々しい」
「そうだ。あれほど清らかな顔で、あれほど甘い涙を流すのだ。断罪を名目に捕らえれば、我らのものにできる」
「勇者の目を盗み、神殿の奥に閉じ込めて……心ゆくまで可愛がろうではないか」
密室で交わされる声に、
イリアスは背筋が凍るような悪寒が走る。
それは私が知らぬところで蠢いていた――
一刻も早く逃げなければと足を動かすと
唐突に背後から冷たい布が口を覆い、意識が闇に沈んだ。
意識を取り戻したとき、私は両手を鎖で吊られ、冷たい石壁に背を押しつけられていた。
祭服は無残に乱れ、肩が露わになり、足首まで縛られている。
蝋燭の炎が揺れ、陰影の中で複数の男の影が私を取り囲んでいた。
「……やっとだ」
「勇者が来てからというもの、近づくことすらできなかった」
「忌々しい黒髪の異邦人め……だがもう邪魔は入らぬ」
笑い声が低く重なる。
高位神官たちの瞳には、信仰の色は一片もなく、欲望の光だけが燃えていた。
「イリアス。お前は清らかな神官長ではない。昔から知っているぞ……」
ざらついた指が顎を掴み、顔を持ち上げる。
「孤児院を守るために身体を差し出した……あのときから、お前は我らのものだったのだ」
心臓が止まりそうになった。
「なぜ、それを……!」
「忘れたと思うな。泣きながら抱かれていた顔……あれは忘れられるものではない」
別の男が私の首筋に唇を寄せ、ざらりとした舌が肌を這った。
「ひっ……やめろ……!」
必死に身をよじっても、鎖が食い込み逃げられない。
「抵抗するほどに愛おしい……」
「勇者に汚される前に、我らが可愛がってやろう」
衣の裾を乱す手が、無遠慮に太腿を撫でる。
冷気に晒された肌が震え、羞恥で頬が熱くなる。
「いやだ……やめて……!」
涙が零れ落ち、嗚咽が喉を震わせた。
だが、男たちの笑みは深まるばかりだった。
「泣き顔も、声も……昔と同じだな。勇者ごときには渡さん」
「お前は最初から、我ら大人のものだ」
――また、あの夜が繰り返される。
孤児院を守るために差し出した身体。
泣いても、逃げても、決して離してもらえなかった夜。
「所有物」として執着され続けた。
泣いても逃げても、欲望のままに私を囲い込んだ大人たちは決して離さなかった。
「お前は特別だ」――その言葉に、私は何度も鎖をかけられてきた。
そして今もなお、教会は同じ目で私を見ている。
――過去と現在が重なり、胸が軋む。
私はまた、大人たちの欲望に絡め取られようとしている。
必死に抗う声も虚しく、神官の一人が顔を寄せる。
「泣き顔も、声も、昔と変わらぬな……美しい」
ざらついた指が顎を撫で、首筋に這う。
「いやっ……触れるな!」
身をよじっても鎖に引き戻され、衣がはだけていく。
冷たい空気に晒される肌が震える。羞恥と恐怖が胸を押し潰した。
その地獄が、再び私を呑み込もうとしていた。
「やめて……誰か……!」
必死の叫びは石壁に吸い込まれ、誰にも届かない。
そのとき――轟音と共に扉が破られた。
「――イリアス!!」
鋭い剣閃が闇を裂き、男たちの笑みが一瞬で恐怖に変わった。
黒い瞳を燃やす勇者シンが、そこに立っていた。
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