kyun

伊藤龍太郎

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ショウテン

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その日の放課後,菜乃花は1人で帰ろうとしていたが、いつもの場所に大樹がいたので声をかけた。「誰か待ってるの?」「別に」といつもの会話をした後
「あのさ,帰る人がいないなら私と帰らない?」と思い切って誘ってみた。
大樹は驚いた。「もしかして心を読まれているのか?それともこいつは俺のことが好きなのか?」といろいろ考えたが今はそれどころじゃないと頭を切り替えて「しょ,しょがねぇから一緒に帰ってやるよ。」と照れ隠しをしながら応えた。

それから2人は毎日のように一緒に帰るようになった。
いつしか大樹は自分から「おはよう」というようになり徐々に菜乃花に打ち解けていった。

 ある日,菜乃花が帰ろうとすると沙耶香に話があると呼び止められた。
菜乃花は沙耶香の話を聞くために校舎へ引き返した。
「沙耶香、話って何?」と聞くと沙耶香は険しい顔でこう言った。「菜乃花~最近大樹くんと一緒に帰ってるらしいじゃない。」「え、そうだよ。それがどうしたの?」と聞くと沙耶香は「どうしたの?じゃないよ!私の大樹くんを奪わないでくれる!?」と声を荒げた。
すぐに沙耶香は冷静なトーンで「とにかくもう二度と大樹くんに近づかないで。」と吐き捨てると足早に去っていった。
菜乃花は沙耶香に言われたことを反芻しながら校舎を出ると大樹からLINEが入った。「まだか~」菜乃花は「ごめん。今日は用事があって遅くなりそうだから先に帰っといていいよ。」と返信した。
するとOkスタンプが送られてきてことなきを得た。
それからしばらく菜乃花は大樹のことを敬遠していた。
そのことを疑問に思った大樹は思い切って「最近どうした?全然俺と目を合わせないじゃないか!何かあったのか?」
と聞くと「なんでもないよ。」とその場を取り繕おうとしたが「なんでもないわけないだろ!」と大樹が少し声を大きくして言うと「だから、なんでもないって言ってんじゃん!」と声を荒げた。
すぐに「ごめん。しばらく1人にしてほしい。」と言ってその場を後にした。
その場に残された大樹は何も考えずにただ立ち尽くしていた。
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