ファミリーオブ・ドクター

第二話

　「出ていって！」遙香の怒号と共に
陽人が病室から出てきた。陽人が説得しようと口を開こうとした時、遙香はとどめを刺すように「もう2度と来ないで。」と言って病室のドアを閉めた。
一体2人の間に何が合ったのだろうか。
その理由は10分前の陽人の言動が原因だった。
　5分前・・・陽人はいつものように遙香の病室を訪れた。するとそこに知らない人がいた。「見た目から推測すると遙香と同じくらいの歳だろうか。友達？
いや今まで遙香のそばにいてあんなに友達と話して楽しそうな表情を浮かべているのを見たことがない。ましてや異性だぞ。」と短時間であらゆることを考えているとある１つのあってほしくない答えに辿り着いた。「もしかして、彼氏！？
ないないない。あんなに僕の後ろについて行ってた遙香に彼氏なんて。」と必死に否定をしていると向こうも陽人に気がついたらしく「あの、もしかして遙香さんの主治医の方ですか？」と話しかけてきた。「え，いや遙香の兄です。」と少し動揺しながら答えた。その答えに男は「あ，お兄さんでしたか。それは大変失礼いたしました。申し遅れましたが、私、松村政基（まつむら　まさき）と申します。お兄さんの前で大変恐縮なのですが、遙香さんとお付き合いをさせていただいております。」と松村の自己紹介が終わると「彼氏」というワードに反応した陽人は「とにかく、今日はお引き取りください。遙香と2人きりで話がしたいので。さぁどうぞ。ご退席ください。」と陽人は松村に出て行くように催促した。「わかりました。それでは私はこれにて失礼いたします。」と陽人の要求に従って松村は部屋を出た。
2人きりになった陽人は遙香に松村のことを聞いた。「いつから彼氏がいるんだ？僕たち家族がお前のことをどれだけ心配しているかわかっているのか？それなのにお前は彼氏なんかを作って、少しは僕たちのことも考えてくれ！」と少し
カッとなって感情に任せて言うと「私だって、お兄ちゃんたちに迷惑をかけてるってことはわかってる。大事に思ってもらってるんだなって思う。でも私、今19歳よ！恋をしたい年齢なのよ！お兄ちゃんみたいに勉強バカじゃないの！」と反論口調で遙香も応戦した。するとバツが悪くなった遙香は「出ていって！」と怒号を飛ばした。というようなことがあり現在に至る。
締め出された陽人は「やっちまったなぁ」と呟き、少ししょんぼりしながら
仕事に戻った。
その日の夜、陽人は仕事を終えて家に帰ろうとしたが、遙香の元をもう一度訪ねてみた。ドアの前に立つと急に入りづらくなってどうしようかと病室の前をウロウロしてから意を決してノックをした。
すると「お兄ちゃんでしょ？入っていいよ。」と声が聞こえた。陽人は「なんでわかったんだろ？」と思いながらも許してくれたのだろうと思いドアを開けた。
すると遙香と目が合い、「こっちにきて」と手招きされたので遙香の隣まで行き、椅子に座った。
陽人はどうやって話を切り出そうか考えていると「ごめんなさい。」と遙香が謝ってきた。陽人は「え，なんで遙香が謝るんだよ？悪いのは僕の方じゃないか。」と返すと「だって、私はお兄ちゃんの気持ちを理解してるつもりだったんだけど、全然理解できてなかったんだ。ってあのあと1人になって気がついた。
だからあの時の『2度と来ないで』って言う言葉は撤回する。」と仲直りをした。そしてしばらく談笑をしていると陽人の携帯電話が鳴った。画面を見ると裕子からだった。陽人は一旦退室をして裕子からの電話に応答をした。
「もしもし，母さん？今、遙香の病室にいるけどもうすぐ帰るよ。」
「あ，そう。それで本題に入っていいかな？」「え，要件はこれじゃないの？」
「うん。実はおじいちゃんが倒れたらしいの。」「え，じいちゃんが！？」