一生の約束。

別れ

あれから4年と半年が経ち、大学を卒業し、卓治の会社に入社した明日香は忙しい反面充実した日々を送っていた。
ある日、残業で残っていた明日香の携帯が鳴った。電話の相手は沙奈だった。「もしもし、お姉ちゃん？どうしたの？」と明るく話しかけましたが、しばらく声が聞こえませんでした。もう一度呼びかけようとした時「明日香、亮太の容体が急変して危険な状態なの。」
と声を震わせた沙奈の声が聞こえて明日香は残業を切り上げてすぐに病院に直行しました。


亮太の病院に着くと卓治と沙奈と主治医が、亮太に付き添っていた。
亮太の顔は青ざめ、生気を感じられなかった。
「お兄ちゃん。私だよ！明日香だよ！わかる？」と言いながら近づくと、亮太は明日香に気づいて微笑んだ。
「お父さん、お姉ちゃん、ごめん。僕はもうすぐ命が尽きる。だがら、もし明日香が挫けたら活を入れてやってくれ頼む。ほんとにありがとう！」

「そして明日香、お前に言いたいことがある。よく聞け！お前は僕が事故に遭った時、ごめんなさいって言った覚えてるか？でも、あの出来事があったおかげで僕に脳腫瘍があることがわかった。あのまま治療せずに放っておいたらぼくはこんなに長く生きられなかっただろう。
つまり、お前が僕を救ったということだ。ありがとう。
そして、お前は少しのことですぐに挫ける癖をやめろ！たとえ壁にあたっても、何回でも立ち上がれ！
そして、生きろ！僕の分まで。約束だ。」と言って力なく小指を出すと
明日香も小指を出し握ろうとした時
亮太の手が力尽きたように落ちたが、明日香の指が捕まえた。
そして、主治医の「ご臨終です」という声が聞こえた時にふと、亮太の言っていたことが蘇りました。
すかさず明日香は、「ありがとう」と亮太の耳元で囁きました。


亮太がこの世を去ってから、しばらくは
明日香は立ち上がれずにいた。

ある日亮太のことを思ってため息をした時に耳元で「明日香，僕は君になんて言った？「たとえ壁に当たっても何回でも立ち上がれ」って言ったよね。しっかりとその約束を守ってくれないと成仏できないよ。
大丈夫，僕はずっと明日香を見守ってるから」という亮太の声が聞こえた明日香は咄嗟に「お兄ちゃん」と言って振り向いたがそこに亮太の姿はなかった。
そのことに明日香は落胆しながらも頑張ろうと思いながら立ち上がり，出勤の準備をした。

　　　　　　　　　　完