Say!Yo!カマタケ物語

伊藤龍太郎

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第2話

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夏休みが始まろうとしているある日。華奈子が学校で修平のことを待っていた。
今日は三者面談の日だからである。
「ホントに遅い!あの人どれだけ時間にルーズなのよ!」と華奈子が時計を見ながら呟いている外から聞こえてくる蝉の鳴き声がより一層華奈子の気持ちを急かしていた。と後ろから足音が聞こえたので振り返ると舞斗がこっちに向かって歩いてきていた。
華奈子は目を丸くして舞斗に聞いた。
「なんでお兄ちゃんがいるの?お父さんは?」
すると舞斗はめんどくさそうに頭を掻きながら「父さんは今日行けなくなったらしいから代わりに僕がきた。
まあ詳しい事情は後で話す。」と話を切り上げると華奈子のホームルームに向かって歩き出した。華奈子も慌てて舞斗について行った。

30分ほど経ち2人が教室から出ていきた。舞斗は無表情で華奈子はこの世の終わりのような顔をしながら並んで歩いていた。
三者面談で華奈子は担任の松嶋先生から
「今のまま行けば大学進学は厳しいと」とキッパリと告げられたのだ。
すると見かねた舞斗が「華奈子は大学に行きたいのか?」と尋ねた。
「もちろん行きたいけど・・・。大学は無理って言われちゃったからな~。」
と答えると華奈子はより一層落ち込んだ。

家に帰って珠美も含めて3人で議論をした。学費を払うのはもちろん働いている慶太なのだが本人はまだ帰ってきていないのでとにかく行くのか行かないのかと言うことだけ決めようと思ったのだ。
「確かにこのままじゃ大学は危ないわね。」と珠美は華奈子の通知票を見ながら言った。
すると「さっきお前は大学は無理って言ったよな?」と舞斗が聞くと「だって先生にそう言われたんだもん」と返すと
「誰も絶対に無理とは言ってなかっただろ?先生は『今のままでは無理』って言っただけだ。現状を打破すれば問題ないだろ?どうやって打破するかと言うとそれは勉強だ。」と舞斗が言い切った。
続けて珠美も「舞斗も高校時代に大学は厳しいって言われて死に物狂いで勉強してたもんね~。華奈子ならできるよ。だって舞斗にもできたんだもん」と自信満々に言ったがすぐさま「姉ちゃんそれどう言うことだ!」とツッコまれ,しばしば笑いが起こった。
すると思い出したように華奈子は「そういえばなんで今日お父さんは来れなくなったの?まさか,忘れてたとか?」と舞斗に聞いた。
「父さんは,忘れてなんかなかった。
でも,急遽大事な接待が入っていかなければいけない。って昼にメールをもらって僕が代わりに行ったんだ。」
それを聞いた珠美と華奈子は一瞬脳裏に
『遥子』と言う名前がよぎったがすぐに
「怒られて一ヶ月でまた会いに行くなんて。あの人もそんな馬鹿ではないだろう」と思って消した。

次の日鎌田家は家族4人で緊急会議を行った。議論の的となったのはもちろん華奈子の進路のことだった。
「華奈子は大学に行きたいと思っている。しかし,学力が足りない。
さぁどうする?と思って僕は昨日一晩考えた。塾に行かせた方がいいと思う。」
と舞斗は慶太に向かって話した。
「確かにこのまま放っておいたらまずいな。しかし,塾に行かせるにはお金もかかるしすぐには結論は出せない。」と修平は考えながら返答した。
どうしようかと舞斗・慶太・華奈子が悩んでいる時ずっと黙って考えていた珠美が口を開いた。「ねぇ。私たちでできる範囲を教えるってことがいいんじゃないかな?」「いや,教えるって言っても
僕は華奈子に教える時間なんてあんまり取れないし。」とすかさず舞斗が反論した。
しかし,少し考えて反論を取り消した。
「分かった。極力華奈子に教える時間を作るよ。」
その言葉に珠美と華奈子は「ありがとう」と礼を言った。

それから家族一丸となって華奈子を大学へ行かせるための一大プロジェットが始まった。

とはいえ舞斗は大学,珠美は大学と家事をしなければならない。
そのため華奈子の勉強のために捻出できる時間というものはかなり限られてくる。
何より一番重要なことは華奈子の勉強に対する意欲・態度を改めることだ。
今まで通り授業中に爆睡しているようでは大学に進学することが厳しいということは目に見えている。

そこで舞斗は自分の経験に基づいてどのようにすれば華奈子の勉強に対する意欲・態度を改めることができるのか考えた。
その答えは『勉強は楽しいことであることを知る』という単純なものだったが
勉強をするにあたってとても重要なことである。
早速舞斗は華奈子にこのことを話したが「えぇ~。勉強を楽しめなんて絶対にわたしには無理だよ!だって勉強は嫌いだし全く面白くないし。」とブツブツ言っている。そんな華奈子を見て
「だから,お前はそんな考えをしているから勉強がいつまで経ってもできないんだ。いいか,僕も華奈子ぐらいの時高校生だった時『勉強ってなんで面白くないんだ!やる意味ないじゃないか!』って思ってたよ。でもある時ふと思ったんだ。このままじゃダメだ。絶対に後で後悔するって。それで一回本気で勉強をした。やっぱり最初は上手くいかなくて
できない自分にイライラしていた。
でも諦めないで試行錯誤をしていて,いろんな勉強法を試してそうやっていくうちに『あ,勉強って楽しいんだ。』って思えるようになった。
だから,お前もきっと変われる。』
華奈子は舞斗の言葉を聞いてから少し考えて、やってみると決心をした。

舞斗はすぐに始めたい気持ちはあるのだが、舞斗は大学の期末試験を控えているため今は自分のことで精一杯だった。
「よし,今年の夏休みはお前の勉強脳を徹底的に鍛えてやる。ついてこいよ。」
と舞斗は大きく意気込んだ。
「姉ちゃんも一緒にやってくれるよね?」
「え,あ,うん。」と珠美は少し曖昧気味に答えた。
舞斗は今珠美が抱えている悩みに全く気づいていなかった。



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