溺愛処方にご用心

皐月もも

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1巻

1-2

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「風邪……ですか」

 確かに体調が悪くてぼんやりしていれば、そういうことも増えるだろう。薬を飲むと眠くなる場合もある。

「最近は暖かくなって、皆調子も良さそうだし心配ないよ。じゃあ、アルベルト先生、ありがとうな」
「あ、はい。お大事に」

 綺麗に傷がふさがった腕を上げて礼を言い、イラーリオは診察室を出て行く。
 アルベルトは反射的に返事をし、次の患者さんのカルテを手にした。


   ***


 その日の夜。
 ちゃぷん、とお湯に身を沈めたエミリアは、思わず大きく息を吐き出した。

「ふぅ……」

 診察を終えた後、夕食と一通りの家事を済ませ、お風呂に入る。結婚してからのエミリアの日課だ。
 水気のある場所というのは、何とも落ち着く――お風呂は一日の疲れをいやす最高の時間だった。
 マーレ王国は海に愛された国である。王国、ひいては水魔法の起源が人魚にあるという伝説が存在するくらいだ。マーレ人は、ほぼ例外なく水に触れることを好む。
 クラドールの水魔法が傷ややまいいやすのと同様に、海や湖、それにお風呂でも、身体に染み込む水がマーレ人をいやすのだろう。共鳴とでも言うのかもしれない。
 だから、一日魔法を使った後のお風呂はとても気持ちがいい。このお風呂はアルベルトが調合した疲労回復の入浴剤が混ざっているため尚更だ。
 アルベルトの補佐が多いエミリアだが、患者さんが多いときは、彼女も一対一で患者さんをる。
 随分暖かくなってきたものの、まだ季節の変わり目である今、風邪を引く人は少なくない。そのため、今日の午後はちょっと忙しかった。
 魔法というのは、〝気〟と言われる精神力のようなものであやつる。特に医療魔法はかなり繊細せんさいなコントロールが求められ、集中力も普通の魔法より必要になるのだ。だから、一日中魔法を使うと相当の体力を使うことになってしまう。無事にクラドール免許を取得したとはいえ、ペース配分や持久力など、まだまだ課題はたくさんあった。
 エミリアはクラドールになったばかりで、一人で魔法治療が出来るようになって日が浅い。結婚や引っ越しという環境の変化もあった。そういった緊張もあって体力の消耗が早いのだと、自分でも感じている。
 その点、アルベルトはペース配分もうまい。

(アルはすごいなぁ……)

 エミリアは肩までお湯にかり、下ろしたまぶたの裏に夫の姿を思い浮かべる。
 養成学校時代から、アルベルトはとても優秀で、端整な顔立ちや優しい性格もあって人気者だった。エミリアも当然、彼のことは知っていたし、年頃の娘だった彼女は彼に憧れ、淡い恋心を抱いていた。
 そんな二人が接点を持ったきっかけは、学校の調合室でのこと――


 学年末の試験前のある日。
 エミリアは薬品調合の試験に備え、今まで習った薬の調合方法を復習していた。

(これだけ、うまくいかないなぁ……)

 教科書通りに調合しているはずなのに、薬の色がにごってしまう。火加減や魔法の使い方に注意して何度か試したが、一向に改善が見られない。

「はぁ……」

 思わずため息がれたとき、ふと手元に影が差す。誰かがエミリアの後ろを通ったのかと思ったが、影は動かないままだ。彼女は首をひねって後ろを見た。

「え……ア、アルベルト、さん……?」

 そこにいたのは、あごに手を当ててエミリアの薬品を見つめているアルベルトだった。眼鏡めがねの奥の瞳はとても真剣だ。

「興味深いね。こんな色になるんだな。君、この実はどこからってきたの?」
「え? あ、えっと、これは私の家で栽培していて……」

 エミリアの両親は診療所を経営していて、敷地に薬草畑も所有している。学校にも畑があり、生徒なら自由に材料を使えるが、試験前の今は生徒でごった返し、薬草を選ぶだけでも一苦労だ。
 その時間がもったいないと考えたエミリアは、両親から薬草を少し分けてもらっていた。

「へぇ……! すごいな。これ、とてもよく熟しているよ。君のご両親は素晴らしいクラドールなんだね」
「あ、ありがとう、ございます。でも……材料がよくても私がうまく調合出来なくて」

 エミリアがしゅんと肩を落とすと、アルベルトは彼女が参考にしている教科書のレシピを読み、うんうんと頷いた。

「学校の薬草類の成分はどれも標準に揃えてある。皆が使いやすいようにね。これは、実の質がとてもいいから、あんまり熱するとせっかくの成分が飛んでしまうんだよ。だから――」

 アルベルトは丁寧に説明しつつ、手を動かして調合を始めた。他の薬草は最初から火にかけ、問題の実は最後に入れてサッと混ぜる。
 すると、またたく間にお手本どおりの薬になって、エミリアは感嘆の声を上げた。

「すごい……! ありがとうございます!」
「どういたしまして。それより、もう遅い時間だ。早く片付けよう」

 エミリアが試行錯誤しこうさくごしている間に、かなり時間が経ってしまっていたらしい。いつのまにか調合室にはエミリアとアルベルトしか残っていない。
 アルベルトに手伝ってもらい、素早く片付けを終えたエミリアは、再び彼にお礼を言った。

「あ、あの……ありがとうございました。片付けまで手伝わせてしまって……」
「気にしないで。外が暗くなってしまったから、急いで帰ろう。家まで送るよ」
「え! そ、そんな、平気です! 家はすぐ近くなので……」

 エミリアが遠慮すると、アルベルトは即座に首を横に振る。

「ダメだよ。夜道を女の子一人で歩くのは危ないから。ほら」
「あ……!」

 突然手を取られ、エミリアの胸がドキンと高鳴る。憧れの人に触れる恥ずかしさと嬉しさで、頬が熱い。彼女の意識は彼と繋いだ左手に集中してしまい、それ以上断ることが出来なかった。
 その日から、アルベルトはエミリアを見つけると挨拶あいさつをしてくれたり、調合室で一緒になればいろいろなことを教えてくれたりするようになった。
 二人が恋人になったのはそれからすぐのこと。アルベルトの方から告白してくれた。本当は、調合室で見かけるたびに話しかけるタイミングをうかがっていたと聞いたときは驚いたものだ。
 アルベルトは薬品の調合が好きで、授業のき時間や放課後はいつも調合室や薬草畑で過ごしていた。二人が学生だったこともあって、自然と彼らのデート場所はそこになる。
 二人で試験勉強をしたり、たまにとても難しい薬のレシピに挑戦したり……そんなことをしながら、将来の夢を話したり。

「ねぇ、アル。アルは、研修が終わったら研究の道に進むの?」

 エミリアがそう尋ねたのは、彼女が養成学校を卒業して研修を始めた頃だ。
 養成学校を卒業すると、クラドール候補生として二年間の実地研修が課せられ、診療所で実際に働きながら学ぶことになる。

「うーん。そうだね。研究はしたいと思ってるよ。クラドールの治療は苦しむ人々を助けられるけれど、健康維持には薬も大事だし……よく効いて、副作用もなくて、美味しい薬があったらいいなってずっと考えていたから」
「そっか。私はね、研修を始めて改めて思うの。患者さんが笑顔で診療所を出て行ってくれるのが嬉しいなって。皆に信頼されるクラドールになりたい」

 エミリアの言葉を聞き、アルベルトはまぶしそうに目を細めた。

「エミリアらしいね、それじゃあ、診療所で働くんだ?」
「うん! アルは薬品開発部に志願するの?」
「そうだね……でも、一年だけかな」
「どうして一年なの?」

 研究・開発がしたいのなら、一年という期間は短すぎる。
 エミリアが首を傾げると、アルベルトは彼女の頭をポンと優しく叩き、片目をつぶった。

「エミリアの研修が終わるまで、だよ」
「私……?」

 きょとんとするエミリアに、アルベルトはクスクス笑う。

「エミリアが正式にクラドールの資格を取ったら、診療所を開くよ。出来れば、まだ診療所がないところ……田舎いなかがいいな。家を買って、一階を診療所にするんだ」
「え……そ、それって……」

 何だかまるでプロポーズみたいだ。
 エミリアの頬が、かぁっと熱くなる。

「……嫌?」
「い、嫌じゃないよ……でも……」 

 気が早い、と言いかけたところで、アルベルトの人差し指が唇に触れる。

「だーめ。正式な申し込みは、後でちゃんとするから待ってて」

 悪戯いたずらっ子のような笑顔に、エミリアはドキドキさせられっぱなしだ。

「優しいクラドールのお姉さんがいて、よく効く薬がある診療所なんて、人が殺到しそうだ」
「も、もう! アルってば、患者さんは少ない方がいいんだよ?」
「ごめん、ごめん。でも……皆が笑顔の町って素敵だよね。そのためにはやっぱり健康が一番でしょう? そのお手伝いが出来る仕事がクラドールなんだよ」

 エミリアは大きく頷いて同意する。アルベルトの言う通りだ。
 クラドールは、皆を笑顔に出来る仕事だと信じている――


(そのためにも、もっと頑張らないとダメだよね……!)

 学生時代のことを思い返していたエミリアは、グッとこぶしを握りしめ、気合を入れた。
 町の人々がアルベルトとエミリアを信頼して来てくれる。そんな彼らの期待にこたえたいのはもちろん、皆が健康で元気に笑っていられる手伝いが出来るのは、エミリアにとっても嬉しいことだ。
 それに、アルベルトは元々研究の方が得意である。多くの人が負担なく飲めて、よく効く薬を作るのが彼の目標だ。エミリアと結婚する前は、実際に薬品開発部に勤めていた。
 エミリアが一人で更に多くの患者さんをられるようになれば、アルベルトが研究にあてられる時間はおのずと増えるし、集中出来るはず。
 そうなれば、もっともっとたくさんの人を元気にすることが出来る。
 今日もシャワーを浴びて夕食を食べた後、研究室にもってしまったアルベルト。そんな彼のことを考えつつ、エミリアはゆっくりと一日の疲れをいやした。
 お風呂から上がると、エミリアは寝室へ向かう。
 アルベルトはまだ研究室のようで、寝室は暗くて静かだ。きっと研究に夢中になっているのだろう。
 普段は思いやりがあって温和な夫だが、研究のことになると少し危なっかしい。危険な薬を作ったり、禁止された薬草を使ったりすることこそないが、周りが見えなくなるというか……自分の納得が行くまで突き詰めてしまい、寝食を忘れることも少なくないのだ。
 しかし、もう夜も遅い。明日も診療所を開くのだから、そろそろ寝る準備をしなければ……そう思い、エミリアは一階へ下りた。
 研究室は診察室の隣にある。エミリアはその扉の前に立ち、人差し指でドアノブに触れた。多くの薬品が保管してあるため、アルベルトとエミリアの気でしか開かない施錠魔法をかけているのだ。

「アル?」

 呼びかけに返事はないけれど、室内からは人の話し声が聞こえてくる。

「――はありますが、順調ですよ」
『気になることって?』

 そっと扉を開くのと同時にアルベルトが振り返る。彼は手のひらに浮かべた泡に向かってしゃべっている途中だった。
 これは、ボーラという水魔法特有の伝達魔法だ。水泡を介して離れた場所にいる相手と会話することが出来る。

「あ、ごめんね……」

 話の途中で割り込んでしまったことを謝った。だが、アルベルトは気にした様子もなく「大丈夫だよ」と微笑んだ。

「おいで、エミリア。ロレンツォ先生が、新しい町での生活はどうかって」

 エミリアを手招きしつつ、アルベルトが言う。

「え! 本当? ロレンツォ先生?」

 ロレンツォは、アルベルトとエミリアがクラドール養成学校に通っていた頃に師事していた恩師である。知識が豊富で、クラドールとしての実績もあり、授業は丁寧でわかりやすかった。
 彼は現在、クラドール協会の監査部門に勤めているはずだ。

『やあ、エミリア。ラーゴはどうだい? 診療所は順調だってアルベルトに聞いてね。監査にもいい評判が届いているよ』

 エミリアが近づくと、泡からロレンツォの声が聞こえてくる。

「本当ですか? よかった。私は、まだアルベルトのお手伝いが多いですけど……」
『いいじゃないか。夫婦は助け合うものさ。エミリアはゆっくり自分のペースを掴めばいい』
「はい……!」

 ロレンツォの優しい言葉に、エミリアは頬をゆるめた。柔らかな表情になったエミリアを見て、アルベルトも笑う。

「それじゃあ、ロレンツォ先生。また連絡しますね」
『ああ、またね。二人ともおやすみ』
「「おやすみなさい」」

 パチンとボーラが割れて、アルベルトが立ち上がる。

「お風呂、ゆっくり出来た? 今日はちょっと疲れたでしょう」
「うん。でも、アルの入浴剤はよく効くから」
「それはよかった。だったら……」

 アルベルトがエミリアに近づき、彼女の頭をポンと優しく叩く。それから髪に指を通し、頭の天辺てっぺんにキスを落とした。

「まだ起きていられるかな?」

 アルベルトの声のトーンは低く、つやを帯びている。胸がトクンと高鳴ったエミリアは、恥ずかしさに彼の胸を押し返した。

「ア、アル」
「だーめ。寝かせない」
「きゃっ」

 アルベルトは逃げ腰のエミリアの手を引いて、器用に彼女の身体を横抱きにする。
 軽々とエミリアを抱えて部屋を出た彼は、階段を上がり、すぐに寝室へ辿り着いた。
 柔らかなダブルベッドに下ろされた直後、エミリアはアルベルトにおおいかぶさられる。

「またそんな顔をして……可愛いね、エミリアは」

 そう言いつつ、アルベルトは眼鏡めがねを外しベッド横の机に置く。
 それからエミリアの頬をそっとでたかと思うと、彼女の唇を優しくふさいだ。温かく柔らかい唇を何度か離してはくっつけ、舌でエミリアの唇をなぞる。

「ん……っ」
「……真っ赤」
「ん、だって……あっ」

 エミリアの赤く染まった頬をからかうアルベルト。彼女は恥ずかしくて思わず顔をそむける。すると、真っ白な首筋を差し出しているような体勢になってしまった。
 案の定、アルベルトはエミリアの首筋にちゅっと音を立てて吸い付く。彼の熱い吐息に肌をくすぐられ、ピクンと身体が跳ねた。

「あ……っ、んん」

 寝衣の肩紐をずらしつつ、アルベルトの唇が胸元へ下りていく。やがて乳房をあらわにされ、エミリアは手を胸の前で交差させた。
 だが、アルベルトはすぐにその手をけてしまう。

「エミリア、ちゃんと見せて……」
「ん、やぁ……」

 何度身体を重ねても、生まれたままの無防備な姿を見せる羞恥しゅうちには慣れない。エミリアは恥ずかしさで震えながら、アルベルトを見上げた。
 彼はエミリアの両手を器用に片手で押さえ、もう片方の手をふっくらと形のよい乳房にすべらせる。

「胸、柔らかいよね……お風呂上がりだと尚更、体温が高くてそう感じるのかな?」

 ふにふにと優しい手つきでまれると、くすぐったいような、じれったいような……波間をただよっているみたいな不思議な気持ちになってしまう。
 エミリアの体温が高いというが、アルベルトの手も温かくて、触れられると熱を感じる。
 彼はフッと笑い、妻の手を押さえていた方の手も膨らみにすべらせた。
 両方の胸を揺らされ、彼の親指でそのいただきをくるくるでられる。

「アル……見ちゃ、やだ……」

 情欲の色をともした瞳でじっと見つめられながら胸をまれるのは、観察されているみたいで恥ずかしい。
 エミリアは手で顔をおおい、彼の視線から逃れようとした。

「隠さないで、エミリア」
「やっ、恥ずかしいから……」

 エミリアはふるふると首を横に振って拒否する。一方で、身体は快感を素直にアルベルトに伝えてしまう。

「そう? でも、気持ちいいんだ? ここがそう言ってる」
「あっ!」


 アルベルトに胸のいただきを人差し指で弾かれた瞬間、エミリアの口から嬌声きょうせいこぼれた。彼女は自分の声にかぁっと頬を染め、唇をみ締める。

んだらダメだよ……エミリア。可愛い唇が傷つくでしょう?」

 アルベルトはそんな妻をとがめ、ぺろりと彼女の唇を舐める。胸への愛撫あいぶを受けながら唇を吸われると、次第に力が抜けた。
 その機を見逃さず、アルベルトはキスを深くし、ざらついた舌でエミリアのそれを捕らえた。り付けられ、時折強く吸われ、ぞくぞくと身体の奥から快感が湧き上がる。

「んん……っ、ふ……ア、ル……」

 だんだんと苦しくなってきて、エミリアはアルベルトにすがった。彼の手はエミリアの耳のふちをなぞっている。

「ふ、はっ……耳は……ダメ、って……んぅ」

 口付けの合間に抗議をするものの、アルベルトはふふっと笑って彼女の耳に唇を近づけた。

「ダメ? 気持ちいいでしょう?」
「ひゃっ」

 アルベルトの色っぽい声がダイレクトに脳に響いて、エミリアは首をすくめる。彼はそれを面白そうに見つつ、今度は舌で耳を愛撫あいぶし始めた。
 ふちを舌先がなぞったと思えば耳たぶをまれ、くちゅりと音を立てて更に官能的に攻められる。

「エミリア、ここも硬くなってきた……」
「は、あっ……あ、あぁ……」

 キュッと胸の飾りをつままれて、身体がった。耳元でいやらしい言葉をささやかれているから尚のこと、自分の反応を意識してしまうのだ。

「可愛い……」

 アルベルトは熱い吐息を吐き出して独り言のようにささやくと、指でいじっていた胸のいただきに唇をすべらせた。

「やぁ……あ……ああっ」

 とがって存在を主張するつぼみをぺろりと舐め、唾液を擦り付ける。それから口内に含んで舌で転がし、ちゅうっと強く吸った。

「あぁ……あ、や、アル……は、んっ」

 わざと音を立てられ、恥ずかしさが膨れ上がる。それと同時に増幅する快感を逃がしたくて、エミリアはアルベルトの肩を押し返そうとした。だが、彼はビクともしない。

「あ、あ……アル、や……は、あぁあっ」
「ん……じゃあ、これは? いい?」
「あ――」

 軽く歯を立てられて、エミリアの身体が一際大きく跳ねた。

「あっ……あ、ダメ……んっ」

 アルベルトは硬くなったつぼみ甘噛あまがみしたり舐めたりを繰り返す。その間、エミリアの寝衣の裾をまくり上げ、彼女の真っ白な足をあらわにした。
 彼の手が太腿ふともも彷徨さまよう――弱い刺激なのに、じわじわとお腹の奥へ溜まっていく熱がエミリアの足の付け根をうるおし始める。

「んっ」

 エミリアは身体をよじり、足を擦り合わせてくすぶる熱を誤魔化そうとした。しかし、アルベルトは何もかもお見通しのようで、彼女の下着の上から秘所を指でなぞる。

「あ、アル……そこ、は……」
「ふふ……気持ちよくなってくれて、嬉しい」

 アルベルトはちゅっとエミリアの唇をついばみ、また口付けを深くする。同時に下着越しに敏感な場所を指でひっき、弱かった刺激を強く、大きく変化させていく。

「んっ、ぁ……あっ、あ――」

 口付けの合間にれる声、じりじりと下腹部をがす快感。
 やがて、アルベルトの指先が下着の隙間から中へ入り込み、濡れた泉の入り口にほんの少し指先を沈ませた。
 くちゅ、くちゅ……と、合わさった唇と、指先でき混ぜられる泉から同じように水音が響き、エミリアはアルベルトにしがみついてもだえる。

「ふぅ、んっ……は、あぁ……」

 泉の浅い部分をいじっていた指はだんだん奥へ入り、蜜を絡め取ってエミリアの中でうごめいた。

「は……ッ、うぁ、あぁ……そんな、やぁ……アル……ん、ダメ……」

 アルベルトはいつも丁寧に優しくエミリアの中を探る。一本だった指が二本になっても、決して激しくはせず、エミリアをゆっくり高めるのだ。
 彼はエミリアが気持ちよくなる場所を知っている。そして、的確にそこを攻め、彼女を絶頂へ導く。

「エミリア、一回イこうか。ね?」
「ああ……やぁ、だめっ」

 次々と押し寄せてくる快感の波、その間隔が短くなって意識が流されそうになるのを、エミリアは首を振ってこばもうとした。
 けれど、アルベルトは器用に指の関節を曲げて、お腹の裏側を突いてくる。
 自分の身体の奥で蜜が溢れて止まらない。アルベルトの指を呑み込んでいる場所から響くいやらしい音が、エミリアの快感の度合いを表しているようだった。
 足が痙攣けいれんし、抑え切れない快楽に支配される――

「はぁっ、あ、ああぁ――っ」

 ピンと足を突っ張った後ぐったりと力を抜くと、心臓が大きな音を立ててはずんでいるのが身体全体で感じられた。
 放心状態のエミリアに何度もキスを落とし、アルベルトは彼女のお腹の辺りでぐしゃぐしゃになった寝衣を、下着と一緒に引き抜く。
 いよいよ一糸いっしまとわぬ姿になってしまったエミリアは、恥ずかしくて身体を丸めて縮こまった。

「エミリアは本当に恥ずかしがり屋だね」

 アルベルトは目を細めて、自分のシャツのボタンを外していく。だんだんあらわになる彼のたくましい胸板……研究室に引きもっているはずなのに、程よく筋肉がついていて、とても男性らしい身体つきだ。

「ほら、これで一緒……恥ずかしくないでしょう?」

 アルベルトはクスッと笑ってシャツを床へ落とし、ズボンにも手をかける。

「あ、アル……! み、見えちゃうっ」

 恥ずかしさなど微塵みじんも見せず、身にまとっているものを脱いでいくアルベルト。エミリアは反射的に顔を両手でおおった。

「エミリア。そんなに恥ずかしがることないよね? もう何度もこうして抱き合っているのに」

 そう言われても、恥ずかしいものは恥ずかしいのだ。
 恋人だった頃も、なかなか自分のすべてをゆだねることが出来なくて、アルベルトには我慢してもらった。結婚して、一緒に住むようになって……身体を重ねるのは、普通のことだとわかっている。
 愛しい夫を、これ以上ないほど近くに感じられる行為は嬉しいとも思っている。
 しかし、いざこうして肌を合わせるとどうしても羞恥しゅうちが先に立ってしまう。アルベルトに見られることも、彼を見ることも、恥ずかしい。
 普段とは違う彼の色っぽい表情や、エミリアにしか見せない彼のすべて……それにドキドキして、自分が自分でなくなってしまう感じがするのだ。
 恐怖とは違うのだが、変になりそうで落ち着かない。

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