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前日の

戯れ、或いは

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「アハハ!アナタってそういうところデリカシーがないわね」
「言わないでくれよ。こう見えて、僕はかなりショックだったんだぞ」
クラリエは会議の時間には戻ってきたけれど、なんだか切り出すタイミングがなくて、結局今日のうちに彼女に謝罪することはできなかった。まあ、普段から口数の少ない彼女のことだから、僕と彼女の間に何かがあったことをシモーヌら他のメンバーに悟られることはなかっただろうだけど、やっぱり禍根を残すというのは良くない。明日時間をみつけて、絶対に謝ろう。
「誰も彼もがそういうスキンシップに慣れているわけではないの。少しはその後輩ちゃんの性格を考えてみなさいよ」
夕食を終えて部屋に戻った僕は鏡の前に座り、長い後ろ髪を体の前にまわして櫛で丹念に梳かしていた。鏡の端には、ベッドに座って僕をせせら笑うハナの姿が、ぼんやりとしたランプの光に照らし出されていた。途中、プチっ、プチっと、絡んだ枝毛が千切れる感触が手に伝わってきた。髪は女の命とはよく言うものだが、その象徴を丹念に手入れする姿と毎晩鏡の前で向き合っていると、自分が何者なのかよく分からなくなる。少なくとももう、髪が短かった頃の自分の姿を思い出すことはできない。
「よく話もするし、僕の頼み事も聞いてくれるから、それくらいは大丈夫だと思ったんだ」
「アンタの頼みごとを聞いてくれたのは、アナタが副会長で、彼女より上の立場にあるからでしょう?公と私の関係をごっちゃにしてどうするのよ。それにね」彼女は壁に寄り掛かり、鏡越しに僕のことを見た。「いくら仲が良かろうとね、そういうことをされて嫌な人は嫌なのよ。親しき中にも礼儀ありってやつ」
「ハナは嫌なの?」
僕は鏡の中の彼女と会話する。
「嫌。絶対に嫌だわ。どんなに仲が良い友人だろうと、いきなりキスとかハグなんてされた日には、突き飛ばすわね」
「君に友達がいたのか。そんな慈悲深いお嬢さんがいるならぜひ紹介してほしいね、その子はきっといずれ聖人になるだろうから」
「……張り倒すわよ」
天敵すら散らしてしまうような恐ろしい権幕で睨みつけてきたので、僕は慌てて髪を梳かす方へ意識を戻した。前髪を顔の前に下ろすと、毛先がチクチクと頬のあたりを突っついてなんだかむずかゆい。僕はすぐに髪を脇に流して、普段通りの分け目を作った。
「そういえば明日、シュティーフェン・アカデミーの生徒会の面々が来るだろう?」
「知ってるわよ。前々から話してたじゃない」
「相手がどんな人なのか興味ない?」
「興味ないわね」
ハナはベッドに寝転がり、天井を見上げていた。
「まったく君って奴は……。君のお父さんが無理してまでハナをこの学院に送り込んだのは、そういう上層の貴族たちに君の顔を売る為だろう?当の本人がそうやる気がないんじゃ、お父さんが浮かばれないじゃないか」
「興味ないったら興味ない。大貴族様にこびへつらうなんてまっぴら御免よ。アカデミーの生徒会なんて、ろくでもないボンボンのお坊ちゃま揃いに決まってるわ」
ハナの大貴族嫌悪は一体どこから生まれてくるのか。僕は悪態をつく彼女の方に振り返った。僕の怪訝な視線に気が付いた彼女は、売られた喧嘩は買うぞと言わんばかりに挑発的な視線をこちらに返してきた。
「なによ」
僕は櫛を化粧台の引出しに仕舞い、彼女のベッドの方に歩いていった。
「鍵」
「ああ、そうね。忘れてた」
彼女は寝転がったままベッド下にあるトランクをまさぐり、鍵を取り出すと身を起こした。僕がいつものように彼女の手から鍵をもらおうとすると、彼女はひょいと拳を握って引き上げたので、僕の手は空を切った。
「ハナ?」
「シュミーズを上げて。今夜は私が外してあげるから」
「ええっ!?いや、別にいいよ……」
「ほら早く」
内心気の進まないことでも、彼女の灰色の瞳に見つめられると僕は決して逆らうことが出来なかった。僕は彼女の言葉に従って、スルスルとシュミーズを引き上げていくと凶暴な黒鉄くろがねが姿を現した。彼女は慣れた手つきで錠を開き、紐と鉄板を取り外した。牢獄から解放された僕の分身が、彼女の目の前に現れた。それはあまりにも貧弱で、ぷらりと力なく揺れた。彼女はその様子をしげしげと眺めていた。
「……もういいかな?」
もはや慣れ切ってしまっていて、彼女に姿を見られることに抵抗は無かったとはいえ、ペニスをじっくり観察されるというのはやっぱり恥ずかしい。ハナは無言のままだ――何をいまさらそんなに見つめる必要があるのか、これまでも何度も見てきたくせに。僕は辛抱たまらず、シュミーズを下ろそうとした。すると突然、目の前に垂れ下がる排尿器官に向かって、彼女はフッと息を吹きかけた。
「ひゃっ!?」
しわしわに縮こまっていたソレは生暖かい微風に揺られて、ピクリと反応を見せた。
「は、ハナ?」
幼虫はピク、ピクと、体をよじらせる。以前ハナはその様子をまじまじと見ている。僕はなんだか惜しくなって、そのまま裾を下ろすのを躊躇った。すると彼女は、今度はその側面を、柔らかい唇でついばんだ。
「ひゃうぅ!?や、やめ、何するの!?」
心地よい口づけと暖かな吐息にあてられて、僕の股間の幼体はじわじわと身を伸ばしていった。僕は何をしているのだろう?腰を反らせて、シュミーズをめくって、女の子に陰部を見せびらかして――しかし、それが膨れていく様を鑑賞して楽しんでいるのだろうか、ハナはそれをじっと見つめたまま視線を離さなかった。彼女の視線を浴びてにわかに勃起したそれが、重力に逆らって水平のアーチを架けた。そして彼女は、時宜を得たといわんばかりに、小さな口でパクリと生きた軟体を呑み込んだ。
「やっああぁっ!?あ、あぅ……」
ハナが僕を食べた。暖かな唾液に包まれて、僕はこれまでに感じたことのない幸福を体験していた。まるで劇毒を注入されたかのように、僕の体は急にこわばり、半軟体だった僕は、一気に堅い棒状に形を変えた。勢い余った僕は、彼女の口の中に収まりきらず、チュパんと音を立てて中から飛び出し、唾液の糸を引いて屹立した。どろどろにされたペニス。彼女はその姿をうっとりと鑑賞すると、もう一度、今度は大事に上の方からそれを咥え込んだ。
「あっ、あんぅ♡ハナっ、汚いよ……!」
僕の抗議が耳に届いていないのだろうか、彼女は一心不乱に僕を味わっている。頭の周りをニュルニュルと舌が自在に動き回る。舐めれば舐めるほど旨味がにじみ出てくる棒にしゃぶりつくかのように、舌は執拗の首の周囲を責め立てていた。
「ダメだよっ、ハナぁ……」
腰を引いて彼女の口撃から逃れようとした瞬間、彼女は僕の股間にぶら下がる二つの玉を、馬を手綱で制するかのようにキュッと引いた。
「ひんっ!?」
思わず変な声を上げてしまった。見下ろすと、ハナは僕の肉棒を口に咥え込んだまま、依然として僕の急所をか細い手で握っていた。その気になればそれを引きちぎることも、握りつぶすことも可能だと、彼女の灰色の瞳は訴えかけているかのようだった。どうやら僕は、この状態から逃れることは許されていないらしい――僕は一つ息を呑んで、視線を薄暗い床の方へ逸らした。それを合図にして、彼女は再び僕の咀嚼を再開した。
ぬちゃぬちゃといやらしい音が狭い寮室に響く。あまりにもよく聞こえるから、薄い壁を通り抜けて、隣の部屋や、廊下まで筒抜けになっているんじゃないかと不安になるくらいに。ハナは無言のまま涼しい顔で、僕を舐り続けていた。その異様なまでの素っ気なさが、かえって僕の淫らな気持ちを駆り立てた。彼女は小さな口が僕を根元まで呑み込んだ。んぅ……と、彼女は苦しげな声を漏らす。それでも表情一つ変えない。僕は身じろぎをしてみせた。腔内がうねうねと蠢き、僕の全身が肉の刺激にさらされてだけだった。たまらず僕は、あぅっ、と熱っぽい吐息を漏らしてしまう。彼女はじゅるじゅると淫靡な音を立てて唾液を吸ってみせた。
「ハナっ、あっ、や、やばぃ♡」
その振動はあまりに刺激が強く、身体全体が揺さぶられて、気持ちいい。長いまつげをはためかせて、上目遣いで僕の反応を確かめた彼女は、ゆったり顔を引き上げていく。舌の表面が僕の背面を舐め上げ、ぞわぞわとした快感によって射精感が一気に高められる。
「それ、あっ、うぅん♡」
彼女は僕を咥えたまま前後運動を始めた。睾丸を握る右手を支えにして、滑らかに僕を呑み込み、吐き出す。僕はたまらずよだれを垂らしてしまう。温かい腔内に呑み込まれるとチュパっと唾液がはじける音が聞こえ、貪欲に射精を促す粘膜のうねりが僕をとろけさせる。そして、ちゅるちゅると音を立てながらペニスは外に放出され、頭の先に唇がくっついたときには、すぐにでもまた彼女の口の中に戻りたい衝動に駆られる。危うく僕は、彼女に腰を打ち付けて身勝手な快感に耽りたくなるが、彼女の固く握られた右手がそれを許さない。僕はただ息を荒げて、彼女が与える刺激を享受し、悦ぶことしかできない。
「ハナ♡きもちっ、あっ!ハナっ」
ハナは速度を次第に速めていく。ジュッ、チっ、ジュッ、チっ、と、一定のリズムを刻んで彼女は僕を吸い続ける。ニュルン、ニュルンと表面に絡む舌は、容赦なく射精へと僕を追い立てていく。
「はんっ♡や、やばっ!」
声を上げることにもはや抵抗感を感じなかった。短いブロンドの髪を揺らしながら僕に吸い付く彼女を見下ろして感じるのは、優越感ではなく、一歩も動けぬまま彼女のいいようにされてしまっている敗北感だ。僕は彼女から逃れることはできないし、彼女に何かを返すこともできない。受け身になって射精へと導かれていることがなんだか情けない。
「もう、やばいっ、そろ、そ、ろ♡でるぅ!」
心の中で抵抗したところで、身体は待ってくれない。精をむしゃぶり尽くそうとする悪魔的な彼女の口に、僕は限界を迎えようとしていた。
「いっ、んんぃ!?」
ああ、もうダメ……と思ったその瞬間、ハナは僕の二つの玉を下へと引き延ばした。まるで単調な射精は許さないといわんばかりに。びっくりしたけれど、痛みはなかった。むしろ、ジン、とした快楽が、弦が震えるかのように玉から走った。それは別の回路の快感で、気持ちが良いのに、射精を速めるわけではなかった。僕の頭は飛び交う快楽に混乱していた。
「あ、だめぇ、だめっ、あっ、あぅ!!」
ハナの小さな手に握られた二つの玉の中では、発射のときを待つ子種たちがぐるぐると渦巻いている。それらは、本能的に外を目指す卵の中の稚魚同様、壁への体当たりを続け、いじらしい快感を僕に与え続けている。僕の体が彼女の口の中でピク、ピクと、二度、三度脈打った。ともすればその切っ先から多量の精子を噴き出してもおかしくない痙攣が体を駆け抜ける。でも、出ない。ハナの手によって、僕の射精は阻害されている。でも、僕の身体だってただ「拷問」を受けるだけでは済ませようとしない。障害すら乗り越えるような、もっと大きな快感を走らせようと、大波がどこか遠くから押し寄せてきているのを僕は予感した。
「ハナッ、だ、ぁ、ぁめ!変なの♡でりゅ、ださして!おかしくなりぅ♡」
彼女は容赦なく、パンパンに膨れ上がった僕に追い込みをかける。舌と、唾液と、口腔の内壁が、じゅるじゅるとソレをいたぶり、破滅的快楽を誘因する。足のつま先から、頭の先端へ向かって、ゾゾゾゾォォ、と大波が打ち寄せてくる。脚が震える。このとき、ハナが玉から手を離した。
「ひゃぁぁぁぁ、っっああん♡ぃんぅぅぅあんっっっ♡♡♡」
限界まで引き延ばされたバネがパチンとはじけた。溜められていた精子が一気に身体を駆けのぼり、大波が壊れたときの飛沫のように、精液が大量に放出された。
「ひぐぅぅっ!!ああっ♡あんぅぅっ!!あっ♡あぁぁぁ♡」
僕は射精の反動で、彼女の中から飛び出しそうになる。するとハナが僕の腰にぎゅっと抱き着き、僕をとらえた。拘束された僕の体は、勢いよく彼女の口の中に精子を吐き出し続ける。う、グンッ、と彼女は頬を膨らませて、やや息苦しそうに精液を受け止めている。彼女は僕の下半身を捉えて離さない。僕はなされるがままに、彼女の舌の上で身体を震わせて、たまりにたまった精液を吐き出し続ける。彼女の口に精子を受け止めてもらえるということが、たまらない多幸感をもたらしていた。それは、起きてしまったことの後ろめたさを塗りつぶしていく。僕の体は徐々に力を失っていったが、最後の一滴までなめとろうと、彼女の舌は頭の周りをちろちろと舐め続けていた。
「うっぷっ……」
チュパンと音を鳴らして、僕は彼女の口から解放された。ハナの口角からは、抑えきれなかった精子が筋となって垂れていた。彼女は細い指で、その筋を拭うと、それを小さな口へと差し込んだ。
「はぁ、はっ……ハナっ、なんで突然、こんな……」
荒い息で僕は彼女に尋ねた。うすぼんやりした部屋に輝く彼女の灰色の瞳が、僕の目を仰いだ。
「ちょっ!?」
彼女はシュミーズを掴み、ベッドの方へ僕を引き寄せた。予想しない動きに、僕は軽々とハナのベッドに仰向けに倒される。ハナは素早く身を返すと、僕の上に馬乗りになった。
「えっ!?……ハ、ハナ?」
僕の腹の上に、太ももをぺたりとつけて、軽い彼女の体が乗っかっていた。机の上のランプの灯を受けた彼女の顔は妖しくきらめき、僕のことを、今度はじっと見下ろしていた。そして彼女は僕の頭を両手で固めて、身体をゆっくりとかがめていき――
「むんっぅぅぅ、ちゅうぅぅぅぅぅんんんん!!!???」
僕らの唇が合わさった。彼女の口から、むわっとした熱気を帯びた独特の匂いの液体が流れ込んでくる。僕の精子――彼女の唾液と混じり合ったそれは、僕の口の中へ注ぎ込まれている。なんとか拒否しようと、歯を閉じ合わせてみたが、彼女がそれをこじ開けようと、執拗に上下の歯茎を舐めまわしてきたので、たまらず、彼女の口移しをまっとうに受け入れてしまう。決して美味しいとはいえない舌に絡みつく粘液が、僕を溺れされる。とはいえ彼女は、口づけを離すどころか、僕の舌を引き抜こうとしているかのように、器用に僕の舌を吸い上げている。じゅぱ、じゅぱ、と、粘り気のある音が部屋に響き続ける。あまりに長い口づけに僕の気が遠くなりかけたそのとき、部屋のドアのノックが鳴った。
「ミーシェ!ミーシェ!います!?」
扉越しにくぐもって聞こえてきたその声の主は、この世の天使のような娘、シモーヌであった。
(まずい!!)
熱に浮かされていた頭が一瞬で冷え切った。こんな事態になるとは想像もしていなかったので、鍵を閉めていなかったのだ。もし今、彼女がドアノブを握って扉を開いたら、僕はあらゆる意味で終わる。僕がシーツを握ってじたばたしていると、ハナはようやく唇を離してくれた。ネバっとした頑強な糸が僕と彼女の間を繋ぎ、それは途切れることがないまま、僕のシュミーズの上へと重力に従って落ちていった。舌なめずりをした彼女の顔は、あろうことか、紅色に染まり、うっとりと僕を見下ろしていた。
「シモーヌ、ちょっと待って!今行くから!」
馬乗りになっていたハナは、口元の汚れを袖で拭ったあとすんなりとどいてくれた。僕は鏡の前に飛んでいき、乱れた髪型をさっと整える。口の中が精子臭いけれど、口を濯げる洗面所はシモーヌが待つ廊下の先だ。仕方ないので、僕は椅子に掛けていたショールを肩に巻いて、さも何事もなかったかのように扉の方へと向かった。
「ミーシェ!!」
扉を開くとともに、穢れを知らないシモーヌは、僕の胸に身体を預けてきた。
「シモーヌ!?一体どうしたの!?」
この学院の誰よりも柔らかな体が僕の胸にすっぽりと預けられる。もし通常時であったら、僕は禁断の興奮を取り繕う術を持たなかったであろうが、幸か不幸か、口に残る精子のえぐみが僕の正気を保たせてくれていた。
「部屋に!むむ、む、ムシが出ましたの!!」
「虫?」
「ええ!わ、私、怖くて……!」
三つ編みにまとめられた彼女の栗色の豊かな髪からは、石鹸のような優しい香りが漂ってきた。その香りは僕をこの上なく心地よい気持ちにしたが、同時に、僕が異臭を発していないかという不安を呼び起こした。彼女が頭を置いた僕の肩口には、精子も唾液もおそらく付着していないとは思うが、薄っぺらい布一枚の下にある、ハナの唾液と僕の精子でどろどろになっている肉茎から異臭が立ち上っているかもしれない。そもそも僕が至近で口を開けば、精液混じりの吐息をシモーヌに吹きかけてしまうことになる。そんな醜行は絶対にしたくない。それゆえ、あらゆる危機を回避するためにとりあえず彼女から距離を取ろうと、僕は怯える彼女の肩を持って体から引き剥がした。
「そんなに怯えることないわ、シモーヌ。たかが虫よ、なんなら私が追い出してあげましょうか?」
「ありがとうミーシェ!お願い!」
僕は努めてにこやかに微笑む。シモーヌは尊敬の眼差しで僕の目を見つめている。曇り一点もないヘーゼル色の瞳はあまりに無垢で、罪で汚れた僕は途端に目を逸らしてしまう。
「ミーシェ?」
「ん、何でもないわ」
振り返ると、ハナは壁に寄り掛かり、腕を組んで僕ら二人のやり取りを眺めていた。
「ハナ、今の話聞いてた?」
「聞こえてたわよ。行ってらっしゃい」
僕のような動揺をまったく抱えていないのだろうか?恐ろしく冷静な顔で彼女は言い切った。
「……じゃあ、ちょっとシモーヌの部屋に行ってくるね」
「ああそうだ。私、先に寝てるから鍵は持って行ってよね」
「うん、分かったわ」
ほんのついさっきまで僕のペニスにむしゃぶりついていたときの彼女の熱っぽさは、もはや欠片も残っていなかった。その身の代わり様を少し怖く感じると同時に、僕は安堵もしていた。
「じゃあシモーヌ、ちょっと先に行って部屋の前で待っていてくれるかしら?」僕はシモーヌへ振り返った。「ちょっと用を済ませてから向かうから」
「わかりましたわ。その……早くいらしてくださいまし?」
彼女は名残惜しそうに何度かこちらを見返しながら、暗い夜の廊下に消えていった。
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