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第3章 最強騎士オルランド
9 ロジェロvsオルランド
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最強騎士オルランドからの一騎打ちの申し出。
ロジェロ――黒崎八式はあっさりと受諾した。
「さすがは音に聞こえしサラセン騎士、ロジェロ殿」オルランドは笑みを浮かべ言った。
「このオルランド、貴殿に敬意を表し全力で行かせて貰おう。
ただ残念ながら、今の俺には馬がない。戦いは最初から両刃剣を用いた地上戦とさせていただこうか?」
「……ああ、それで構わねえぜ」ロジェロは答えた。
ロジェロとて自棄になった訳ではない。自分が一騎打ちに応じた方が勝算があると思ったからだ。
オルランド相手にブラダマンテ――司藤アイを危険に晒す訳にはいかない。さりとて最弱騎士アストルフォでは結果は火を見るより明らかだ。
聖剣デュランダルを携えたオルランドの恐ろしさを、黒崎は原典を読み嫌と言うほど知っている。
オルランドはここに来る以前、火縄銃を配備したフリジア(註:オランダ北部の地名)王の軍勢にたった一人で立ち向かい、殲滅している。
またこの後、マイエンス家に連なるアンセルモ伯爵の郎党百人余りをも撫で斬りにする。「あの悪名高きマイエンス家の連中だ、悪い事をしているに違いない!」と頭から決めつけてかかり、ロクに話も聞かずに、である。
上記事例のツッコミ所に呆れ返る読者も多かろうが。
要するにハリウッド映画のタフガイ主人公の如く、多対一の戦いにおいて無双というか虐殺するのがオルランドの得意技である。
ロジェロをはじめ、ブラダマンテやアストルフォもれっきとした騎士。複数人で挑むのは卑怯な行いであるし、ルール無用の乱戦ではオルランドを調子づかせ逆に危険なのだ。
故に騎士道の作法に則り、一騎打ちの申し出を受けるのはロジェロ的にはオルランドの動きを制限でき、かえって勝機が見えてくるのである。
「騎士どうしで合意の上という事なら、ボクも異存はない!
よってこのアストルフォが、オルランド君とロジェロ君の一騎打ちの立ち合いを務めさせていただくよ!
ルールも決めておこう。どちらかの身体に傷がつくか、武器を落とした方の負けとする!」
アストルフォは立場上はフランク王国側の騎士だ。
故に彼から一騎打ちのルール提案、しかもロジェロ側に有利なものが出てきたのは渡りに船だった。
オルランドは全身が異常に硬く、刃物で傷つける事はできない。それはロジェロの持つ魔剣ベリサルダを以てしても同じ事だろう。
相手の武器を落とした時点で勝敗が決するなら、致命傷を負わせる事に腐心せずとも勝ち目があるという事なのだ。
(ありがとよ、アストルフォ……ただのお調子者のアフォじゃあなかったんだな!
公平な立会人のフリをしつつ、戦いを有利に運んでくれるとは……いいサポートをしてくれるじゃねえか)
黒崎は内心、アストルフォの機転を有難く思ったが……ひょっとしたら彼は天然で言っているだけかもしれない。
「……ロジェロ。大丈夫なんでしょうね?」
ブラダマンテ――司藤アイはこっそり近寄り、ロジェロに心配そうに耳打ちしてくる。
「心配すんな。確かにロジェロは毎回攫われるイメージがあるが、戦績自体は優秀だし、結構強いんだぜ。
それに今回の目的はアンジェリカを逃がす為の時間稼ぎだし、決着をつけたい時はあいつのデュランダルを叩き落とせばいい」
黒崎は務めて楽観的に振舞い、アイを安心させようとした。
内心は不安である。アイには話していないが、騎士ロジェロは聖剣デュランダルと実は相性が悪い。
大分先の話だが原典では、デュランダルを持った騎士と戦って瀕死の重傷を負う場面があるのだ。
(幸い原典のロジェロと違い、オレ自身がデュランダルの恐ろしさを知っている。
とにかく当たったら鎧なんかじゃ斬撃を防げねえ。そこは用心しないとな――)
双方の準備が整った。二人の周囲には一騎打ちの立会人を務めるアストルフォ。ブラダマンテ、メリッサ、ロジェスティラ、その他大勢の騎士たちが固唾を飲んで見守っている。
ロジェロとオルランドは一騎打ちに臨む構えを取り――それぞれ両刃剣を同時に抜いた。
先に仕掛けたのはオルランドだった。無造作かつ自然な踏み込みだったが、デュランダルに込められた殺気が一気に膨れ上がるのをロジェロは感じた。
ぎんっ、と鋭い金属音と火花が散る。オルランドの聖剣とロジェロの魔剣が斜めに交差し、鍔迫り合いの格好となった。
「ほう……! この俺のデュランダルを受け止めるとは!
やるねえロジェロ殿! 並の剣であれば兜ごと叩き折れていただろうに!」
「ケッ……ほざいてろ。オレの剣ベリサルダだって、そんじょそこらのナマクラじゃねえ」
受け止める事には成功したが、ロジェロは冷や汗を浮かべていた。単純な力ではオルランドの方が段違いに上で、押し負けないよう踏ん張るのがやっとだった。
「ベリサルダだと……どこか見覚えのある剣だと思ったが、貴殿の手に渡っていたとはな。
こいつは面白くなってきた! 久々に楽しめる戦いになりそうだ」
ロジェロの持つ魔剣ベリサルダ。元々はファレリーナなる魔女の手によって鍛え上げられた、対魔法用の武器である。この剣で斬れば、いかに強力な魔法的防護であろうと無視して損傷を与えられるのだ。
先日の魔女アルシナとの戦いで、彼女の肉体を容易く斬り裂けたのもベリサルダの魔力あってこそ。
ベリサルダはファレリーナを退治したオルランドの手に渡り、その後サラセン人の大泥棒ブルネロによって盗まれる。
そのブルネロの身に危機が迫った時、たまたま居合わせて救ったのがロジェロであった。その礼としてベリサルダを譲り受けたのだ。
(単純な力じゃ勝てねえし、いくらベリサルダでもオルランドの身体に傷をつけるのは無理だ。
何とかしてデュランダルをやり過ごし続けるか、叩き落とすための隙を伺わねえとな……)
ロジェロは一瞬腕を引き、オルランドの剣を滑らせるように横に逃れ、再び距離を取った。
オルランドは再び打ちかかって来た。振るわれる斬撃はいずれも、身体に触れたが最後、鎧兜など用を成さない必殺の一撃だ。
確かにオルランドの怪力から振るわれる剣は、受け流しながらでも凄まじい重圧が刃越しに伝わり、徐々にロジェロの体力を奪っていく。
だが幸いにしてロジェロの真骨頂は、防御を主軸にした遅滞戦術にある。
デュランダルの刃は危険だ。しかし魔女の力を宿したベリサルダで防ぐ事は可能だと分かった。
長時間耐え忍ぶには到底保たないが、アンジェリカが逃亡完了するまでの間なら――
(……大丈夫。何とかなる――はずだ。してみせるッ!)
ところが黒崎の思惑を見透かしたのか、オルランドの野性的な顔から突然表情が消えた。
「貴殿……俺に勝とうと思ってないな?」
「……どうだかな」
ロジェロはとぼけて見せたが、最強の騎士は憮然としていた。
「腰抜けが。時間稼ぎのつもりなら――無駄だという事を分からせてやる」
オルランドの持つ聖剣デュランダルが、奇妙な輝きを帯び始めた。
ロジェロ――黒崎八式はあっさりと受諾した。
「さすがは音に聞こえしサラセン騎士、ロジェロ殿」オルランドは笑みを浮かべ言った。
「このオルランド、貴殿に敬意を表し全力で行かせて貰おう。
ただ残念ながら、今の俺には馬がない。戦いは最初から両刃剣を用いた地上戦とさせていただこうか?」
「……ああ、それで構わねえぜ」ロジェロは答えた。
ロジェロとて自棄になった訳ではない。自分が一騎打ちに応じた方が勝算があると思ったからだ。
オルランド相手にブラダマンテ――司藤アイを危険に晒す訳にはいかない。さりとて最弱騎士アストルフォでは結果は火を見るより明らかだ。
聖剣デュランダルを携えたオルランドの恐ろしさを、黒崎は原典を読み嫌と言うほど知っている。
オルランドはここに来る以前、火縄銃を配備したフリジア(註:オランダ北部の地名)王の軍勢にたった一人で立ち向かい、殲滅している。
またこの後、マイエンス家に連なるアンセルモ伯爵の郎党百人余りをも撫で斬りにする。「あの悪名高きマイエンス家の連中だ、悪い事をしているに違いない!」と頭から決めつけてかかり、ロクに話も聞かずに、である。
上記事例のツッコミ所に呆れ返る読者も多かろうが。
要するにハリウッド映画のタフガイ主人公の如く、多対一の戦いにおいて無双というか虐殺するのがオルランドの得意技である。
ロジェロをはじめ、ブラダマンテやアストルフォもれっきとした騎士。複数人で挑むのは卑怯な行いであるし、ルール無用の乱戦ではオルランドを調子づかせ逆に危険なのだ。
故に騎士道の作法に則り、一騎打ちの申し出を受けるのはロジェロ的にはオルランドの動きを制限でき、かえって勝機が見えてくるのである。
「騎士どうしで合意の上という事なら、ボクも異存はない!
よってこのアストルフォが、オルランド君とロジェロ君の一騎打ちの立ち合いを務めさせていただくよ!
ルールも決めておこう。どちらかの身体に傷がつくか、武器を落とした方の負けとする!」
アストルフォは立場上はフランク王国側の騎士だ。
故に彼から一騎打ちのルール提案、しかもロジェロ側に有利なものが出てきたのは渡りに船だった。
オルランドは全身が異常に硬く、刃物で傷つける事はできない。それはロジェロの持つ魔剣ベリサルダを以てしても同じ事だろう。
相手の武器を落とした時点で勝敗が決するなら、致命傷を負わせる事に腐心せずとも勝ち目があるという事なのだ。
(ありがとよ、アストルフォ……ただのお調子者のアフォじゃあなかったんだな!
公平な立会人のフリをしつつ、戦いを有利に運んでくれるとは……いいサポートをしてくれるじゃねえか)
黒崎は内心、アストルフォの機転を有難く思ったが……ひょっとしたら彼は天然で言っているだけかもしれない。
「……ロジェロ。大丈夫なんでしょうね?」
ブラダマンテ――司藤アイはこっそり近寄り、ロジェロに心配そうに耳打ちしてくる。
「心配すんな。確かにロジェロは毎回攫われるイメージがあるが、戦績自体は優秀だし、結構強いんだぜ。
それに今回の目的はアンジェリカを逃がす為の時間稼ぎだし、決着をつけたい時はあいつのデュランダルを叩き落とせばいい」
黒崎は務めて楽観的に振舞い、アイを安心させようとした。
内心は不安である。アイには話していないが、騎士ロジェロは聖剣デュランダルと実は相性が悪い。
大分先の話だが原典では、デュランダルを持った騎士と戦って瀕死の重傷を負う場面があるのだ。
(幸い原典のロジェロと違い、オレ自身がデュランダルの恐ろしさを知っている。
とにかく当たったら鎧なんかじゃ斬撃を防げねえ。そこは用心しないとな――)
双方の準備が整った。二人の周囲には一騎打ちの立会人を務めるアストルフォ。ブラダマンテ、メリッサ、ロジェスティラ、その他大勢の騎士たちが固唾を飲んで見守っている。
ロジェロとオルランドは一騎打ちに臨む構えを取り――それぞれ両刃剣を同時に抜いた。
先に仕掛けたのはオルランドだった。無造作かつ自然な踏み込みだったが、デュランダルに込められた殺気が一気に膨れ上がるのをロジェロは感じた。
ぎんっ、と鋭い金属音と火花が散る。オルランドの聖剣とロジェロの魔剣が斜めに交差し、鍔迫り合いの格好となった。
「ほう……! この俺のデュランダルを受け止めるとは!
やるねえロジェロ殿! 並の剣であれば兜ごと叩き折れていただろうに!」
「ケッ……ほざいてろ。オレの剣ベリサルダだって、そんじょそこらのナマクラじゃねえ」
受け止める事には成功したが、ロジェロは冷や汗を浮かべていた。単純な力ではオルランドの方が段違いに上で、押し負けないよう踏ん張るのがやっとだった。
「ベリサルダだと……どこか見覚えのある剣だと思ったが、貴殿の手に渡っていたとはな。
こいつは面白くなってきた! 久々に楽しめる戦いになりそうだ」
ロジェロの持つ魔剣ベリサルダ。元々はファレリーナなる魔女の手によって鍛え上げられた、対魔法用の武器である。この剣で斬れば、いかに強力な魔法的防護であろうと無視して損傷を与えられるのだ。
先日の魔女アルシナとの戦いで、彼女の肉体を容易く斬り裂けたのもベリサルダの魔力あってこそ。
ベリサルダはファレリーナを退治したオルランドの手に渡り、その後サラセン人の大泥棒ブルネロによって盗まれる。
そのブルネロの身に危機が迫った時、たまたま居合わせて救ったのがロジェロであった。その礼としてベリサルダを譲り受けたのだ。
(単純な力じゃ勝てねえし、いくらベリサルダでもオルランドの身体に傷をつけるのは無理だ。
何とかしてデュランダルをやり過ごし続けるか、叩き落とすための隙を伺わねえとな……)
ロジェロは一瞬腕を引き、オルランドの剣を滑らせるように横に逃れ、再び距離を取った。
オルランドは再び打ちかかって来た。振るわれる斬撃はいずれも、身体に触れたが最後、鎧兜など用を成さない必殺の一撃だ。
確かにオルランドの怪力から振るわれる剣は、受け流しながらでも凄まじい重圧が刃越しに伝わり、徐々にロジェロの体力を奪っていく。
だが幸いにしてロジェロの真骨頂は、防御を主軸にした遅滞戦術にある。
デュランダルの刃は危険だ。しかし魔女の力を宿したベリサルダで防ぐ事は可能だと分かった。
長時間耐え忍ぶには到底保たないが、アンジェリカが逃亡完了するまでの間なら――
(……大丈夫。何とかなる――はずだ。してみせるッ!)
ところが黒崎の思惑を見透かしたのか、オルランドの野性的な顔から突然表情が消えた。
「貴殿……俺に勝とうと思ってないな?」
「……どうだかな」
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