上 下
15 / 47
8.リハビリ

リハビリ④

しおりを挟む
 .




「さくらちゃん、お待たせ。握力計持って来たよ」
「あ、はい」

 理学療法士さんにあの男の子のことを聞こうと思ったけど、わたしは今日、初めてリハビリセンターに来たのに聞くのは、何か変だと思ったから聞かなかった。

(よし。あと4~5回リハビリセンターでリハビリを受けたら、あの男の子のことを聞いてみよう)

 そう決めたわたしはまず、理学療法士さんの話に集中することにした。

「さくらちゃん。じゃあまず、右手から。握力計のここの部分を持って、ギュウ~と力を入れて強く握ってね」
「はい。ん~っ、んんぅっ~」

 わたしは理学療法士さんの言う通りに、まず右手で握力計を強く握った。

「はい、離して良いよ。次は左手で同じようにここの部分を持って、力を入れて強く握ってね」
「はぃ。んぐぅ~っ」
「はい、離して良いよ」
「ぜーはー、ぜーはー、ぜーはー……」

 ただ、手に力を入れただけで息が上がってしまった……。

「大丈夫?」
「だっ、大丈夫です……。次は一体何をすれば……」 
「ちょっと待ってね。その前に握力計の結果を言うよ」
「あ、はい」
「……えーとねぇ、さくらちゃんは右手左手共に、一般の小学4年生に比べて握力がすごく弱い」
「はい」
「だから、リハビリは主に“バランス”を保つものになると思う」
「………? はぁ……」

 握力が弱いのとバランスに一体何の関係あるのかと思ったが、わたしはただ理学療法士さんの話す意味を分からなくても頷いて聞いた。

 わたしのリハビリの内容。
 両手を横に広げて数十秒の間、片足立ち。
 平均台の上をバランスを取りながら、一歩一歩ゆっくり歩く。
 ―――だったと思う。

 “思う”と言うのは他にも理学療法士さんに手伝って付き添ってもらいながら、言われた通りに淡々とリハビリのメニューをやってたから、あんまり覚えてない……。

.
しおりを挟む

処理中です...