かがみゆえのショートショート集【エッセイ・ノンフィクション】

かがみゆえ

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【完結】テーブルテニス・ガール

後編

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 気が付けば、わたしは卓球が大好きになっていた。
 卓球の大会の試合で負けることもあったけど、 勝ち続けた。
 優勝も何度かして、賞状や盾ももらった。

 強かったわけじゃない。
 ただ、運が良かっただけ。
 わたしと同じ年の子は大会にあまりいなくて、少ない人数で試合をしていて、1位2位の順位を争っていただけ。

 弱かったわけでもない。
 男女、年齢は関係なく5人1チームずつ組んで出る大会も年上の人とあたって戦っても勝ったし、3年生の時に3・4年の女子の合同大会も強い子いっぱいいたけど、4位に入賞した。
 その時は準決勝で同じ少年団の子とあたって負けちゃった。
 3位決定戦の時は前に数回戦ったことのある強い子で、初めて戦った時にわたしは1セット取って、あと数本取れば勝つという時に何故かその子に泣かれた。
 わたしはビックリして、どうしていいのか分からずに周りから悪者扱いされてる気がして、そのまま怖じ気づいて負けてしまった。
 そして、3位決定戦でもまた泣かれるのが嫌で、ハラハラしていた。
 わたしは他人に泣かれるのが苦手だった。
 その子は何度か泣きそうになったけど結局泣かなかった。
 わたしは集中出来なくて、情けないがそのまま負けた。
 でも、その4位入賞は私にとって人数が多い大会のベスト記録になった。




 卓球が好きで、毎日が楽しくて楽しくてたまらなかった。
 ずっと小学校を卒業するまで出来る。
 そして、たくさん大会に出て、優勝して賞状や盾をもらって、先生や親に褒めてもらう。

(わたしはもっと強くなるんだ!)

 そう思ってた。
 そう決めてたんだ。

 だけど、小学3年の終わり、4年生になろうとした時期、わたしは卓球を辞めなければいけなくなった。
 卓球が自分の全てになっていたわたしは、深いどん底に突き落とされた気分だった。
 ショックで頭がおかしくなりそうだった。
 今まで3年間卓球を教えてくれた少年団の顧問で、わたしのクラス担任の先生が別の小学校へ転勤になったのだ。

 大好きだった先生。
 一番大好きになった大切な卓球。
 仕方ないことだけど、一瞬でわたしは大切なものを失ったのだ。

 わたしが大泣きしたのは、その時だけだった。

 返してください。
 わたしの3年間を返してください。
 卓球に使ったわたしの時間を返してください。

 ずるい、ずるいよ。
 わたしは卓球をこんなにやりたくても出来ないのに、普通に卓球をやってる人が憎い。
 卓球なんて知らなきゃ良かった。
 真面目にやらなきゃ良かった。

 そうだ、そうだよ。
 卓球というものを好きになったわたしのこの想いをわたしの中から消してください。




 - END -
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