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掌編小説

心の嘆き

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 神よ、なぜボクにこんな運命をさだめたのですか?
 ボクが一体、何を……。
 なぜ、ボクなのですか?
 なぜ、他の人ではなく、ボクだけがこんなめに―――…。

 ボクはこの世界に生まれた。
 生まれると同時に、運命を背負った。
 それは、他の人も同じことだ。
 でも、ボクは背負った運命が他の人と違ったんだ。
 運命……いや、“身体”といった方が正しいのかもしれない……。

 ボクの身体から血が流れ出る。
 あっという間の出来事だった。
 ただ、ボールをぶつけられただけなのに。
 まだその箇所が治らないまま、ボクの身体には傷が一つまた一つと増え、残っていく。
 それと同時に、心の傷も増えていく。
 傷痕が増えて残っていくにつれ、怪我をするようになってからボクは失うものが多くなった。
 一つ一つ失った。
 たくさんの友だち、大好きな人、ただ一つの家族さえも変わってしまった。

 ボクは一人に、独りぼっちになっていく。
 いつしか人と話すことさえ、拒絶し恐れる。
 ボクは一人で自分の“カラ”に閉じこもる。
 少しずつ、ボクの心が固まっていく。
 この心が全て固まってしまったら、その時にボクは本当に心を失うだろう。

 ボクは今、その時を待っている。
 そう思うにつれて、心がどんどん固くなる。
 これが自分の“運命”だというのなら、ボクはそれでいいと思う。

 だって、ボクにはもう居場所なんて何処にもなかったから……。
 家の中にも、“自分の中”にさえ……。
 ただ一人、集団の輪の中で浮くボク……。
 周りの目にボクの姿は少しも映らない。
 ボクは本当に、独りぼっちになった。

 ボクの心、もう後戻りなんて出来なかった。

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