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掌編小説

君想自心

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 君と初めて出逢ったあの日、僕は自分を失った。
 死んだのではない。
 心がガラリと変わった。

 闇を描く心が、君への想いで少しずつ染まっていく。
 心は少しずつ君で染まっていくのに、君に話し掛けることが出来ない。

 初めはただ、見ていることしか出来なかった。
 でも、勇気を出して君に私事で話し掛ける。
 君は僕の言葉に驚く。

 話をする度に、君とどんどん仲良くなれた。
 それが、どんなに嬉しかったか……。

 それと同時に僕の心は、君への想いでいっぱいになる。
 君は僕の中で一番になる。

 でも、君は?
 君は僕のことをどう思っている?
 君の気持ちが知りたい。

 さりげなく気持ちを聞くことは出来るけど、僕はストレートに君へ想いをぶつける。
 僕の想いに君は、『冗談はよせよ』と笑うだけ。

 君にとって僕はただの“友だち”とさえ見られていなかった。
 それが、どんなに悲しかったか……。

 僕は君に友達にさえ見られない。
 それがフラれるより辛いことを君は分かるだろうか……?

 僕の心に、ヒビが入る。
 君への想いが少しずつ崩れ落ちてまた、闇を描いていく。

 それでもまだ、君を想う“僕”がいる。
 君への想いが全て崩れ落ちたのに、まだ僕の心は君を想っている。

『好きだっ!!』

 心が君を叫ぶ。
 だから僕は、まだ君を想う。

 君が僕のことを何とも思ってなくても、僕の気持ちは変わらない。
 君にストレートに何度も想いをぶつける。

 いつか、君が僕のことを好きになってはくれなくても。
 僕を君が友達と見てくれるまで――……。




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【 君 ヲ 想 ウ 自《オノレ》 ノ 心 】

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