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83話 出会いの旅路 11
しおりを挟むマーガレットさんは、まだ悲しそうに精霊獣を見ている。
「とりあえず交代にはまだ早いからまた寝てくれ。
途中で起こしちまったから、俺らが長めに見張りをやるからな」
ガルフがそう言うと、ナーグルさんは素早く、マーガレットさんはビアンカさんに引きずられてテントへ戻っていった。
ーーーーーーーーーー
焚き火の前、オレとガルフは折り畳み椅子に座り、精霊獣はオレの膝の上に座っている。
「キュキュ♪」
「…やっぱり"一緒に連れてけ"って事なんじゃねぇのか?」
「うーん…」
あの後、林の前へ戻り精霊獣を降ろして、焚き火へ戻ると歩いてついて来た。
もう一度林の前へ行くと、今度はしがみついて降りなかった…
「使役するって事ですよね?」
「あぁ、親父に昔聞いたのをさっき思い出した。
獣人国にはヒョウみたいな精霊獣を使役した、すげぇ強い冒険者がいたって話だ」
「ヒョウ…ですか」
「精霊界に戻ると匂いも気配も辿れ無いから、どうする事も出来ねぇのに、空中から突然現れて押し倒されて食い殺されるかと思った、って言ってたな」
オレは展開したままの空間察知を確認して、精霊獣を持ち上げてこちらを向かせて降ろす。
「精霊界に行って、ちょっとしたら戻ってこれる?」
「キュ!」
精霊獣が一声鳴いた瞬間、うっすら光ったと思った時には膝の上の重さは消え、空間察知にも存在しない。
(まぁ、"転移魔法"みたいなものだから、映る訳無いよな)
少しすると小さい光の予兆の後、膝の上に精霊獣が現れた。
「キュウン」
「おかえり」
「…なんか会話出来てねぇか?」
「雰囲気だけですよ」
オレはもう一度精霊獣を背中向きで持ち上げ、自分も立ち上がり首の後ろに座らせる。
いわゆる"肩車"の体勢だ、首元がモフモフで気持ちいい。
ストレージから盾と短剣を出して、少しゆっくりめの動きで"型"をなぞる。
「キュ!キュキュ、キューン♪」
だんだん早い動きにしてみるが、精霊獣はオレの側頭部に掴まり、頭頂部にあごを置いた状態で楽しそうにしている。
「…何してんだ?」
「だって、オレも冒険者ですから。
抱っこしたままじゃ何も出来ないでしょ?」
(ふむ…戦闘に支障は無い、いざとなれば自分で逃げる事も出来る、何となく意思の疎通も図れているし獣臭くもない、エサはまだ不明だな…)
…意外と理想的なペット(?)かも知れないな。
オレは盾と短剣をしまい、精霊獣をこちら向きで膝の上に乗せながら椅子に座りガルフを見る。
「"使役"ってどうやるんでしょうね?」
「…"テイマー"は確か、魔力を流しながら名前を与える、とか言ってたな。
精霊獣が同じかは分かんねぇけど、ちょっとやってみろよ」
(名前か…性別は…)
脇の下を掴み、持ち上げて精霊獣の身体を確認する。
パコッ!
「痛て!」
魔力の爪で軽く頭を叩かれた。
(性別は確認出来ないけど、この反応はメスっぽいな…)
「アリクイ…精霊…白茶…」
「そういえばさっきも言ってたけど"アリクイ"って何だ?」
オレは半分上の空でガルフに答える。
「あぁ、こんな形した"アリクイ"って動物が図鑑に載ってたんですよ」
「へぇ~」
少し考えた後、膝の上の精霊獣と目を合わせ、魔力をゆっくり流す。
「お前の名前は【ラテル】だ」
白茶色の"カフェラテ"っぽい見た目に"精霊"でもじった安直な命名だ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【地の精霊獣】との契約が結ばれました。
精霊獣「ラテル」との"魔力回路"の連結が施行されま……………干渉…発……
…認証……権…【大地】………精霊神と…
…では………相互…認証が……
………………
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
一瞬の意識の空白、何か膨大な情報の波に打たれ、立ちくらみのような感覚と、視界のホワイトアウト。
気づくと、ラテルは膝の上で丸まって気持ち良さそうに寝ている。
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