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82話 出会いの旅路 10
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【地の精霊獣】
レベル:???
種族:精霊獣(土)
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(レベルが見えない…ヤバい相手か? 精霊獣?……どこかで聞いた気が…)
ガルフは林の前で、剣を握ろうとした手を宙にさ迷わせて硬直している。
オレも姿を消したまま硬直している。
そしてアリクイ?も、ガルフを見て硬直している。
(…なんだこの状況)
よくよく見てもアリクイに似ている。
が、近くの動物園にいて、よく見ていたので分かるが、"似ている"だけで色々違う。
体格は【ミナミコアリクイ】という種類に似て4~50cm。
だが尻尾は【オオアリクイ】という種類のように、フサフサとしている。
そして顔はどちらとも違い、あまり細長くない。
体毛は白ベースに、薄い茶色のラインが顔の中央から尻尾の先まで、両肩から腰まで3本のラインが流れている。
…よくよくアリクイ?を観察すると、少し体勢を傾けて、ガルフの後ろを…オレを見てないか?
(さすがに見えては…いないよな?)
「リルト、隠密を解いていいぞ、思い出した。
こいつは確か【精霊獣】ってヤツだ、魔物じゃない」
あ~、やっと思い出した。
そういえばオレも神界の百科辞典で、ちょろっとだけ読んだ記憶がある。
確か、精霊の特殊な形態の一つで、精霊界にいる時は精神体で、人間界に来ると物質の身体になる、魔物とは違う不思議生物だった気が。
オレは"位相転移"を解く。
すると、精霊獣はガルフに向かって歩き…
目を逸らせてガルフを迂回した。
「キューー、…キューン」
オレの足元まで歩いて来ると、脚に身体をそっと擦り寄せ鳴き出したので、しゃがんで顔を会わせようとするが、まだ目を臥せている。
怖がらせないよう、ゆっくりと顔の前に手の甲を差し出すと、小さな短い舌でペロペロと舐め始める。
(アリクイはスゴい長い舌だし、やっぱり違う生き物だな)
手に顔を擦り付け始めたので、もう片方の手で背中を撫でてみると、前足でその腕にガッシリと抱きついて、目を合わせてきた。
「キューン」
こちらをジッと見ている顔は、つぶらな瞳にその後方にある葉っぱのような形の小さい耳。
(細長くはないけど、顔の作りはアリクイっぽいんだよな)
どうやら慣れたっぽいので、脇の下に手を入れ、抱き上げてみる。
「キュ、キュキュキュー♪」
なんかしゃべってる気がするけど、当然何言ってるか分からない。
まぁ、胸の辺りに顔を擦り付けて、前足でギュッと抱きついているので、「離せ」とは言ってないと思う。
「とりあえず…危険は無かったので戻りましょうか?」
「…そうだな。
なんかソイツに避けられてる雰囲気が納得いかないが戻るか」
ガルフと二人(プラス1匹?)で焚き火の所へ戻ると、"灰狼"の3人の目は精霊獣に釘付けだ。
「な、何その可愛いの?」
「む、見た事の無い生き物ですね」
「はぁあ、可愛いいです!」
精霊獣は3人をキョロキョロと見回した後、キュンキュンとオレに何か言って、目をつぶり抱きついてる。
「ガルフさんが言うには"精霊獣"らしいです」
「精霊獣?」
「精霊獣ですか、半精霊、半獣の魔法生物ですね」
マーガレットさんが手をさ迷わせながら、ゆっくり近づいてくる。
「り、リルトくん…、私にも抱かせて下さい」
すると、精霊獣はマーガレットさんの方へ振り向き、左腕を掲げる。
…シュイン!
左手の指先から、手より少し長い黄色くうっすらと光る爪のようなモノが4本現れた。
「お!?」
「爪?」
「マーガレット、近づくな。
威嚇してるぞ」
「えぇえ? そんなぁ…」
オレは抱き上げたまま、もう片方の手で爪を触ってみる。
「ちゃんと実体はありますけど…地属性の魔力で出来てる感じ、ですかね?」
(…魔力の実体化、オレの"空間壁"に近いか)
マーガレットさんは手をワキワキさせながら悲しそうに精霊獣を見ている。
「そんなぁ…」
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