朝チュン転生 ~地味に異世界を楽しみたいのに女神サマが邪魔をします~

なる

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137話 幕間 希望の行方 1

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「いゃあ、最初に申請してから半年なんだって?
 待たせちまって悪かったなナザリオ殿。
 あの時はこっちもバタバタしててなぁ」

「いえいえ陛下、私共の方でもその時はごたごたしておりましたので。
 半年経ったのは私共の都合ですのでご心配なく」


 オルガスティア城、その最奥に近い場所にある応接室。
 通常の応接室とは違い王族が肩肘張らずに語らう為のみに使用される部屋で、権威などを気にする事なく華美ではないが質の良い調度品で落ち着いた雰囲気にまとめられている。


 部屋にはナザリオ、その背後には執事が控え、向かいの席には国王ランドルフ、宰相マリウス、そして王妃リーナフェルエルート、通称リナ王妃が座っている。


「王妃様もお久しぶりでございます」

 強い風属性に光る若草色の長い髪を煌めかせながらエルフの王妃が笑顔で応える。
「久しぶりねナザリオ殿、私、パリエルス商会が謁見許可を取ってまで自ら商品を紹介しに来ると聞いてずっと気になっていたのよ」

「そうでしたか、それはお待たせして申し訳ございませんでした」
 ナザリオは軽く頭を下げる。

「確かに今までそんな事なかったからな」

「ある素晴らしい職人と、その作品に出会いまして、是非とも王家の方に見て頂かなくてはと。

 といっても、実は最初にその職人を見つけたのは私共ではありません。
 ある商会が偶然出会い、その素晴らしい作品を見出だしたのです。
 それだけであれば大変けっこうな話なのですが、その職人には問題があったのです」

「問題ですか?」
 マリウスが問い返す。

「はい。
 その職人は名を売る事に一切の興味が無く、それどころか名が売れて呼びつけられたり催促されるようになるならこの国を出ていく、とまで言うのです」

「それは、かなりの変わり者…いや、職人ならではと言うべきなのでしょうか?」
 マリウスは納得したようなしないような微妙な顔だ。

「ですがその商会は即座に魔法契約紙まで使い契約しました。
 名前を公表しない、顔繋ぎをしない、催促しない、という文面で。
 そしてその商会はこれを売るなら王都だと職人を連れて私共の所に参りました、そして作品を見た私も即座に全く同じ条件で契約を行いました」


 三人は少し驚いた顔で固まっている。

「そ、そこまでのモノなの?」
 リナ王妃は少し怯えたように問う。

「はい。
 必ず貴族様の間で噂になり、呼びつける事も叶わないとなれば騒動になると。
 なのでまずは陛下に見て頂こうと」


 ランドルフも少し引いている。
「なんかそこまで言われると逆に怖ぇな」


「ふふふ、そうですな。
 少し引っ張りすぎのようですから、早速見て頂きましょう」

 ナザリオが背後を振り返ると、既に執事が1つのトランクをナザリオに差し出していた。
 それを受け取り懐から出したカギで解錠すると、開かないまま三人の前に向きを変えて置き、ゆっくりと開いた。


「「おお!」」

 トランクの中にはイヤリング、ペンダント、指輪でセットになった金属と宝石の溶け合うデザインの見たことが無いアクセサリーが。

 ナザリオは三人にそっと薄手の手袋を差し出す。

「手に取ってよくご覧になって下さい」

 三人は無言で素早く手袋を着けると、そっと手に取りアクセサリーを眺める。


「これは…すげぇな。
 アクセサリーなんて良し悪しは分かんねぇけど、これがものすげぇモノだって事はさすがに俺でも分かるぜ」
 ランドルフは生まれて初めてアクセサリーに見入っている。

「宝石で模様を描いている…削ったりしてこんな緻密な事が出来るものなのですか?」
 マリウスも初めて見るものに興味津々だ。



「?? 王妃様?どうかされましたか?」



 ナザリオが気づくと、リナ王妃はアクセサリーを手に置いたまま、肩を震わせ深く俯いていた。

ポタ、パタ…

 そして王妃の膝の上に涙が落ち始める。


 突然の事にランドルフもマリウスも血相を変え、素早くアクセサリーを戻すとリナ王妃に向き直る。

「リナ!どうしたんだ?」
 ランドルフは優しく肩を掴み自分の方へ向かせる。

 リナ王妃の瞳は涙に濡れ、頬を伝う涙は未だに止まる様子が無い。

「ランドルフ…つけた」

「え?」

「見つけたの、私の希望…やっと見つけた」

 ランドルフは最初何が?という顔をして眉をしかめていたが、電流でも走ったかのように身体を震わせ目を見開いた。

「これが?!この職人が"そう"なのか?!」

「ええ、間違いないわ」

 二人は感極まった様子で抱きしめ合う。


 マリウスもやっと合点がいった様子で、
「なるほど、そういう事ですか。
 それならこの見た事が無い技法にも納得です」
 
「あの…」
 一人状況の掴めないナザリオは三人を見回す。


 リナ王妃が涙を拭きながらナザリオへ向き直る。
「ああ!ナザリオ殿ごめんなさい。
 私達だけで盛り上がって放っておいてしまって」

「いえ、突然涙されたので驚きましたが、なにやら嬉し涙だったようで安心しました」



「ええ、ですが…」
 リナ王妃が気まずそうにランドルフを見る。

 ランドルフはいつになく真面目な表情でナザリオに訴える。
「ナザリオ殿…頼む!この職人を紹介してくれ!」
 ランドルフはナザリオに大きく頭を下げる。



 ナザリオは三人を見回し、その真剣な様子から只事ではない事を感じ取った。




「お話を、聞かせて頂けますかな?」



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