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190話 ラスカリア 20
しおりを挟む行きと同じように"位相転移"を使い無駄な戦闘をせず一直線でダンジョンを脱出、ラスカリアのギルドまで戻ってきた。
ギルドの中は何時もと同じように…いや、何か何時もと違う真剣さの含まれた騒がしさだ。
「…おかえり、リルトくん。
大丈夫だとは思ってたけど、無事で良かったわ」
レシアナさんが入り口近くのカウンターで出迎えてくれた。
オレとポラリスはギルドカードを置く。
「ただいま、無事達成して来ました…何かありました?」
レシアナさんはオレ達のギルドカードを横にいた受付嬢に渡し、処理をさせながら騒ぎの方を見る。
「ええ、新人パーティーが一組 探索予定を1日過ぎても戻っていなくて。
捜索隊を出すかちょっと揉めてるのよ…」
「あらら、でも1日ですか…」
冒険には良い事も悪い事もトラブルは付きものだ。
探索予定が1~2日ズレる事も別に珍しくない。
たぶん揉めてるのは捜索隊が出されてしまうと、スケジュール管理力が甘い、自分の実力を正しく把握出来ていない、等の理由でギルドの評価が下がるからだ。
だから通常は長く潜る場合、2~3日余裕を持たせて申告するのが通例になってるんだけど。
「だけど、そのパーティーはまだ見習い卒業したばかりの12歳の子達でね…」
「は?それはすぐ捜索隊出すべきでしょ?」
それは話が全く変わる。
授職したばかりなんて職業スキルだって基礎的なものしか使えないし、技術も経験も素人同然だ。
トラブルだったとしたら一刻を争う状況で躊躇せず捜索一択なんじゃないか?
「そうなんだけど…」
「あいつらの事は俺達が一番分かってるんだ!
どうせ捜索出させて俺達の評価下げるのが狙いなんだろ!」
…騒ぎの中心で周りの冒険者に噛みついてるのは、オレにケンカ売って来たニルってヤツだ。
「…あれですか?」
「そう。戻って来ないパーティーは彼らの"サポート対象"なのよ。
そのパーティーがけっこう優秀なのと、彼らがトラブルを否定してるのとでギルドも強く言えなくて捜索を出すか揉めてるの」
冒険者ギルドには新人のサポート制度がある。
"見習い"を卒業して1年はギルド的にはまだ半・見習いと見なされ、その新人をサポートする事を申告する事でギルドから評価が貰えるシステムだ。
しっかりサポートしてその新人が活躍すれば何もしなくてもギルドの評価が上がるので意外と人気があるシステムなんだけど、こんな弊害があるのか…
オレが横に並ぶポラリスを見ると、ポラリスは黙って頷く。
「レシアナさん。
捜索対象のパーティー構成と名前、今回出された探索予定を」
「リルトくん」
「あんなバカに付き合っていたら間に合わなくなります、ほっといてボク達ですぐに行きます」
ーーーーーーーーーー
夕闇が迫る中、ゴーレム馬車を走らせ"コボルド街"に戻って来た。
今回の"攻略認定"達成で二人ともEランク上位に上がった。上がるのは分かっていたから今日は攻略達成&ランクアップのお祝いでもしようと思っていたのに…
オレ達は姿を消してダンジョンを疾走している。
捜索対象は「白の聖杖」というパーティー。
剣士2、魔術師1、神官1の4人構成だ。
希少な神官が入っているのでアンデッドの出るコボルド街なら活躍出来る将来有望なパーティーだ。
どうやらその優位性を活かしてアンデッドの階層でメキメキレベルを上げていたらしく、調子づいて今回は7~8階層へ初めての遠征に出たらしい。
(初めての"泊まり"でトラブルか…夜営でミスったか?)
眠くて判断力の落ちる夜営はミスが起きやすい、普通は馴れている者と夜営訓練するらしいけど、あのニルってヤツは教えてたんだろうか?
コボルド街の前半階層は、
1F…平原&森 2F…洞窟(坑道) 3F…洞窟(拠点)
コボルドのみ出現。
4F…湿地&森 5F…洞窟(坑道) 6F…洞窟(拠点)
アンデッドコボルドのみ出現。
7F…湿地&平原 8F9F…洞窟(拠点)
アンデッドとノーマル両方が出現する。
"コボルド街"全体を通してアンデッドとノーマルは共闘しないので、おそらく8、9階層のアンデッド側拠点を狙って進んだ、というのがポラリスとオレの推測だ。
だが道中でトラブルが起きた可能性も否定出来ない。
オレ達は各階層で蛇行するように"空間察知"で全域を見ながらジリジリと進む。
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