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191話 ラスカリア 21
しおりを挟む現在"コボルド街9階層"。
坑道のある階層でけっこう時間を取られたが何とかここまで進んで来た。
8階層もここ9階層も中央に大きい洞窟、それを挟んでノーマルとアンデッドの拠点が立っている。
どちらも大きな拠点の奥には通路があってアリの巣のように小さな拠点と繋がっていて奥に入ると非常に入り組んでいる。
2つの勢力が対立しあっているので中央に拠点が無い為比較的安全で、そこを陣地にしやすく意外と効率がいい。
途中の階層で一度夜営中のパーティーにも遭遇したが、帰り途中の中堅組だった。
新人は見かけてないらしい。
…オレの"空間察知"に死体は表示されない…
ここを見てダメだったらしらみ潰しに探索するべきだろうか…
「! アンデッド側奥に4人発見! 周りをかなりの数に囲まれてる!」
オレはアンデッド側拠点へ走りながら"空間察知"の結果を伝える。
ポラリスは無言で追走している。
入り組んでいてもオレの"空間察知"と把握能力があれば迷わない。
最奥と思われる広い空間には20体前後のアンデッドがいて、廃材で組まれたバリケードのような物を攻撃している。
オレは立ち止まり一息つく。
「はぁ…あそこに立てこもってるのか、何とか間に合ったね」
「うん、でもけっこうギリギリだった」
バリケードを壊そうとしているのを隙間から石を投げて応戦しているようだがアンデッドにはあまり効かない、神官に何かあったのか?
「ポラリスは防御重視で。 まずはボク達で魔法を撃ち込んで数を減らす」
「了解」
ポラリスは中型の盾を構え右手は空けている。
「ラテル、瑠璃、こちらに向かってくるヤツから順番に倒していくよ」
「キュ!」
「ピッ!」
「いくよ? 3、2、1、今!」
…ズガッ! シュバッ! ズシュ!
それぞれの魔法が3体のアンデッドの後頭部に当たり地面に打ち倒す。
ポラリスはメイスを取り出すとオレ達の前へ踊り出て盾をガンガンと叩き注意を引く。
奥から魔力が放たれ集団を包む。
「!?何だ?補助魔法か?」
次弾を撃ち込むが倒れた敵が起き上がる、やっぱりさっきのは魔法耐性の補助魔法だったようだ。
しかしこの補助範囲…最下層にいてもおかしくない高レベルなんじゃないか?
判断力の低いアンデッドだけに背後から攻撃されても3~4体しか振り返っていないのが救いだ。
とにかく向かって来るヤツを最優先に少しずつ数を減らしていると、集団の奥にツタで編まれた骨などをくくりつけた装飾品をジャラジャラ着けたコボルドを一体発見する。
("鑑定")
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【アジテイター・グギャルグ】
(アンデッド・コボルドシャーマン)
レベル:36
種族:死族(獣魔)
スキル:生命察知・短剣術・呪術・同族鼓舞
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(げっ!"名前付き"だ、アジテイター…扇動者か)
「ラテル、瑠璃!あそこのアクセサリー付き!あいつを撃って!」
2匹がネームドを狙うが仲間の影に隠れてなかなか当たらない、だんだんとこちらに向く数が増えて来たので、ラテルと離れてヒールをバラ撒きながらオレもポラリスに並んで応戦する。
ーーーーーーーーーー
…ズシャ!
結局最後まで粘ったネームドが倒れ動かなくなり、戦闘が終わった。
「はぁ、はぁ…なんか、"攻略認定"よりキツかった」
ポラリスは肩で息をしている。
オレも辺りがアンデッドの腐った血肉だらけじゃなかったら座り込みたい…
「はぁ…あのネームドの補助呪術、スゴい倍率だったよ。 たぶん"同族鼓舞"ってスキルの効果だと思う」
戦闘が激しくて再度鑑定するヒマは無かったけど、仲間への補助効果を上げる"鼓舞"ってスキルがある。
たぶんそれの魔物専用版だろう。
「リルト、臭いから早く閉まって」
「はいはい…」
"創造錬金"なら何が使えるか分からないし、ストレージの経験値稼ぎにもなるのでアンデッドの死体も回収している。
急かされたオレは疲れた身体でダラダラとそこらに散らばった死体や装備を見もせずにストレージにブチ込んでいく。
…ガシャ! ガラガラ…
と、崩れる音と共に少年が一人剣を構えてバリケードの奥から現れる。
「た、助かったの…?」
オレは回収作業をしながら少年に近づく。
「"白の聖杖"のコ、だよね?」
「はい、そうです」
「もう安全だよ」
…ズサ!
「よ、良かった…」
少年は崩れるように座り込み、目尻には光るものが。
「とりあえず、安全な所で事情を聞こうか?」
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