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197話 幕間 近くて遠い星 1
しおりを挟む顔を洗って少し目覚め、いつものように鏡の前に座り髪を梳かす。
鏡の前に座る自分の長い金髪を見てふと思い出す。
ちょっと自慢だったクセの無い金髪も、"光属性"を強く持つコの金髪の輝きを見るとくすんで見えて、急に劣等感に苛まれて短くしようとしたらお母さんに止められたっけ。
身支度を整えて愛用の眼鏡をかける。
…冒険者に憧れていたのに本好きな私はどんどん目が悪くなって、眼鏡をかけ始めたら近所のガキ大将のコに、
"目が悪いヤツは冒険者になれないんだぞ"
と言われて泣いて家に帰った。
…何だか今朝は昔の事を嫌に思い出すなぁ。
ーーーーーーーーーー
昨日夕食の時リルトきゅんに、
"明日の朝ちょっと時間を貰いたい"
と言われて、私達は朝食を終えリルトきゅんのストレージ内でお茶をしている。
「で、朝から我らを集めてなんの話じゃ?」
ワーディル老がリルトきゅんに聞く。
「あー、え~っと…その」
…? 珍しくリルトきゅんの歯切れが悪い。
「実は"ある魔道具"を作っててね?」
「…とうとうお披露目ですか」
大司教は知ってたみたい?
「それで…」
…ビクッ!
突然リルトきゅんの頭上の何もない空中からヌッと白い手が現れて、頭を撫でて消える。
何か模様のようなものが描かれてたけど、キレイな女性の手だった…
「なっ!?」
「えっ?」
「なっ!何ですか今の?」
全員後退りするようにソファーの背もたれに身体を引いている。
リルトきゅんは一切慌てる素振りも無くため息をつく。
「…はあ、えっとなんだっけ? あぁ、魔道具を作って…」
「いやいや、今のは何者だか答えんか! それに強力な精霊の力も感じたぞ?」
「うん。ものスゴかった」
ワーディル老とポラリスはエルフだけあって何か感じたらしいけど…精霊?
「今のを説明するのにも話の続きが必要なの。
でね…」
リルトきゅんは話し始める。
微精霊にあのゴーレム馬のように人の身体を与えようと考えた事。
"魔物引き連れ事件"で犯罪の共犯にされた樹精霊の事。
そして…
「で、精霊を悪い使役者から守る為に、人間の情報を集め、それを微精霊に発信する魔道具を作ろうとしたんだ」
リルトきゅんは本当にスゴい。
もちろん才能に恵まれてるっていうのもあるんだけど、それを自然に自分の為だけじゃなくスラムの人々や精霊の為に使おうとする…
何処かの顔だけのボンボンギルド長に爪の垢を煎じて飲ませるべきかも知れない。
「そう思って作ろうとしたんだけど、何故か…」
「"あれ"になった、と?」
「精霊…なんだよね?」
ワーディル老もポラリスも混乱しながら無理やり納得しようとしてる感じ?
あ、そういえば子供の頃読んだ本で、大好きなぬいぐるみに精霊が入って話したり動いたりし始める、ってお話があった。あれみたいな事なのかな?
「そう。頑なに"自分は魔道具だ"って言うけど、鑑定結果ではしっかり"精霊"って出たから。
あっファル爺とポラリスは絶対"精霊視"使わないようにね? 微精霊が物凄い数見えて気分が悪くなるから」
「わたしは魔道具です」
リルトきゅんの横にストレージが扉状に開き…
(うわぁ…)
簡素なデザインで白い裾の長いフワッとしたシルエットのドレスを着た美女がゆっくりと現れる。
髪と瞳はリルトきゅんと同じ藍色、足元近くまで伸びた髪が歩く揺れに合わせて煌めいてる。
顔にも身体にもうっすらと継ぎ目があって、子供の頃裕福なお友達の家で見た関節が動くお人形みたい…
女性はリルトきゅんの横に進みソファーにすわ…らずにリルトきゅんの足元の床に座る。
「皆さま、はじめまして。
リーフゼルファルートが作りし魔道具、名をキュベレーと申します」
柔らかく透き通った声で話すキュベレーさん。
「…おい、なんで床に座るんだよ?」
「おとうさま、魔道具は椅子に座りませんよ?」
(あっ、何かリルトきゅんがぶっきらぼうな口調で新鮮…)
「おとうさま?」
「…作ったのがボクだからボクがお父さんなんだって」
リルトきゅんはキュベレーさんの頭を撫でながらため息をつく。
「はあ… ね?こんな風にやけに頑なな性格してるから。
まぁ基本的には本人の希望でオレのストレージ内奥にある自室に閉じ籠ってるから、みんなの前にあんまり出てくる事も無いとは思うけど、よろしくね」
「うわあぁ!」
突然ポラリスが声をあげて両手で目を覆っている。
「…好奇心に負けて"精霊視"使ったね?」
「うん…視界が微精霊で埋まってキラキラで頭がくらくら…」
「そ、そんなにか?」
ワーディル老はポラリスを見て息を飲んでいる。
「まったく、だから言ったでしょ?…大丈夫?」
「うん…」
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