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198話 幕間 近くて遠い星 2
しおりを挟む「ギュー…」
「ふふふ♪」
キュベレーさんがラテルちゃんを抱き優しく撫でている。
ラテルちゃんはちょっと不満そうだけど大人しくしてて、リルトきゅんの肩に乗った瑠璃ちゃんがそれを心配そうに見ている。
キュベレーさんの方が精霊として格上だから逆らえない、とかなのかな?
「しかし…"創造錬金"に"ストレージ"まで使える精霊とは、規格外にもほどがあるな」
ワーディル老は感心しきりだ。
たしかに、使役されている精霊は術士の魔法の補助の他に術士を守る為に自らで魔法を使うとは聞くけど、スキルを使うっていうのは聞いた事が無い。
「まぁ、さっきも言った通り基本的には引き籠ってるから、みんなの役に立つ事はあんまり無いんじゃないかな?」
リルトきゅんはキュベレーさんの手の中からラテルちゃんを掬い上げる。
「キュキュ♪」
「あっ!おとうさま何を」
「何を、じゃないの。嫌がってるでしょ?
無理矢理な事してると嫌われるよ?」
「失礼な。仲良くなろうとしただけなのに…」
少しむくれるキュベレーさんの頭を軽く撫でながらリルトきゅんが皆を見回す。
「それよりも、重要な話をしなきゃいけないんだ。
今のところこのメンバーにしか話せないようなね」
真剣な表情だ。みんなの空気もピリッとする。
「キュベレーは偶然の中で産まれたとはいえ、ちゃんとボクの最初の目的通りの力を持ってる。
さっきポラリスが目潰し食らったように、今この時も世界中から微精霊がキュベレーの元に集まり、情報のやり取りをしてまた世界中へ飛び広がっている。
そして、微精霊の集めた使役者の情報はキュベレーという"精霊と人"という両方の視点を持つ存在を通して、精霊に、人に、世界にとって必要か審判を受ける」
「審判…」
「だから、悪意によって、邪な欲望によって精霊を使役している者は…」
リルトきゅんがキュベレーさんを見る。
「わたしがその事実を上位精霊に伝え、その力で精霊との使役契約を強制破棄させています」
「き、強制破棄…そんな事が出来るのか」
ワーディル老は恐ろしいものを見る目だ。
「ファル爺…」
「ん?」
「悪意ある者は、精霊魔法が、使えなくなるんだよ?」
リルトきゅんはワーディル老を見つめながら、噛み砕くように繰り返す。
「何を?……!? ま、まさか?」
リルトきゅんはまたキュベレーさんを見る。
「はい。 "統率派"と呼ばれる思想派閥に属するハイエルフの約8割が既に"使役強制破棄"の判定を受け精霊魔法を失っています。
残りの2割は既に闘争に疲れ活動から遠ざかっている者です。
他の"統率派"エルフ達も、他種族を蔑む者、"自然派"に対する悪意に満ちている者達が順次精霊魔法を失っている最中です」
もともと外の喧騒の聞こえないストレージ内に、痛いほどの静寂が広がる。
「か、神々がこの地より天に帰られてから二万年。
長きに渡り続いて来た不毛な争いが…終わる?」
ワーディル老は震えている。
私だって身体中に鳥肌が立ってる。 今、この時、これからの歴史書に代々記されていくべき出来事が起きている…
「焦らないでね。
彼らはどうせ精霊魔法が使えなくなった事をひた隠しにする、特にハイエルフ達は絶対に公表しないでしょ?
今は緩やかに争いが無くなっていく事を静観する段階だよ」
「そ、そうだな…ヤツらが力を失っていくのは確定なのだ、焦る必要は無いのだな」
「そう、だからファル爺も祖国に報告したいかも知れないけど今は黙っていてくれる?
今、急激に変化が起きれば逆に争いが広がっちゃう可能性もあるし」
「分かった。リルトの言う通りにしよう」
ワーディル老はリルトきゅんに真摯に頷く。
…やっぱりリルトきゅんはスゴいなぁ…
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