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242話 ルティスタ 5
しおりを挟む"異世界もの"といえば、と言っても差し支えない位には登場する"孤児やスラム"。
もちろん日本にだって育児放棄されてしまったり、事故等で親を無くした孤児はいる。
そして世界に目を向ければ、貧困や戦争によって孤児となる子供は沢山いる。
だけど異世界では、同じ孤児となる原因があるうえで、さらに他にも"魔物"という非常に大きな原因が追加で存在している。
街の側の森や山に、街と街を繋ぐ草原に、突如現れるダンジョンに、魔物は世界中に蔓延り人間の安全な生息域は狭い。
結果として孤児の数は多く、減らす事もなかなか出来る事ではない。
だからこそ冒険者ギルドや教会は世界中で支援を行っているし、このオルガスティアのように真っ当な国であればキチンと保護も行っている。
それでも手が足りないのが現状だが。
そして、全ての人がそういった博愛精神を持っている事も残念ながらあり得ない。
孤児のような弱者を食い物にする者、虐げる者は後を絶たない…
「暴力…ボクは気づかなかったけど、ポラリスは何で分かったの?」
「ううん、分かった訳じゃない、カンみたいなもの。
だけど…何となく似てたから」
「似てた?」
「…私があの子達くらい小さい頃、旅の途中少し長く住んでいた街があって、そこでスラムに住んでる女の子と仲良くなった…」
その街は街道の要所にあり商人や旅人、そしてそれを守る冒険者の行き交う栄えた街だった。
旅暮らしをしていれば生活用品が減っていく、そしてそれを補充するにはお金がいる。
ポラリスの両親は冒険者ギルドへ依頼を受けに、ポラリスは教会の孤児院に喜捨を行い一時預かりに、そんな一時逗留の中でポラリスは友達を見つけた。
その子は母親と二人暮らしで、母親が仕事に出かけている間にその子も小間使いのような事をして小銭を稼いでいたという。
その仕事が無い時はポラリスと会い、おしゃべりしたり遊んでいたらしいが、その子はちょくちょく土や砂にまみれてはケニーくんのように「転んじゃった」と力無い笑顔を見せて現れたらしい。
流石に子供ながら不審に思ったポラリスが彼女をこっそり追いかけると、彼女とは明らかに違ういい服を着た一般市民の子供数人に笑いながら殴る蹴るの暴行を受けていた。
止めに入ろうとするポラリスを無言で横に首を振り止めた彼女が、暴行していた子供達が去った後ポラリスに語った話は、一体何がどうなるとそんな風にねじ曲がって育ってしまうのか?と首を傾げたくなるような胸糞悪い話で。
暴行していた子供達のリーダーは、その街でも有数の大商家の息子で、勉強や店の手伝い等で溜まったストレスをその女の子に暴力を振るう事で解消し、その代わりに女の子を店の小間使いとして使ってくれる…という交換条件なのだそうだ。
「なにそれ!信じらんない!」
レシアナさんは眉を吊り上げ怒りを露わにしている。
「で、どうなったの?」
「我慢出来なくて、次の時乱入したけど勝てなくてボコボコにされた」
「あらら」
「でもそのすぐ後"千手"に覚醒して、逆にボコボコにした」
「やった!♪」
レシアナさんはガッツポーズで大喜びだ。
「でも…"余計な事しないで!"って怒られて、それっきり会えないまま、また旅に出ちゃった…」
「あ…」
レシアナさんの握り拳が力無く下がっていく…
「…きっとその子には、暴力振るわれる事よりも日々少しでも稼いで母親の助けになる事の方が大事だったんだね」
「うん。 その時は"助けたのに何で怒るの?"って思ったけど…あの子はああいう風に戦ってたんだ、って後から気がついた」
「たくましい子だね。
きっと今もたくましく暮らしてるよ」
「うん。私もそう思う」
産まれた環境やスキルによっては生きるだけでも大変なこの世界だ、たくましくないとやっていけない。
まぁ、お節介かも知れないけどケニーくんがどういう状況かは調べておこう。
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