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243話 ルティスタ 6
しおりを挟むギルド長から「まだ動くな」と言われてしまったので"夜の森"にもベスティア山脈にも行けない。
まぁ2~3日で伯爵から呼び出しがかかるだろうし、やる事はいくらでもあるので困らないが。
ーーーーーーーーーー
足りていない近接戦闘の訓練をポラリスやリーチェさんに手伝ってもらったり、酒場でマスターの話を聞いてレシアナさんが「体験したい」と言い出したので西の森の奥へ行き、職業持ちゴブリンとの戦闘を行ったりして2日間過していると、予定通りギルドから手紙が届き伯爵から呼び出しがかかった。
「リルト様」
夜の自室でラテルをモフりながらだらけていると、影の中からエレがヌルリと現れた。
ポラリスの話を聞いてすぐにエレへ念話を送りケニーくんの様子を見てもらっていた。
「何かあった?」
「はい、状況は確認出来たのですが…」
何となく煮えきらない態度のエレに話を聞いてオレも腕を組む。
「…う~ん、それはなんとも手を出していいか迷うところだね」
「そうですね…」
エレを手招きしてモフる。
「キュキュ!」
ラテルが「私も!」と言っている感じなのでWモフモフしながら考えていると、突然エレの尻尾がブワッと太くなりピンッと立ち、ベッドの傍らにストレージの扉が開いた。
「お父様」
珍しくキュベレーがストレージから出て来た。
「な!…リルト様、この精霊は?」
(エレの反応が何かちょっと激しい?)
「?あぁ、そういえばダンジョンでは出てこなかったからエレはまだ会ってなかったのか。キュベレー?」
オレの意図を汲んでエレの方を向きキュベレーが軽くカーテシーをする。
「悪魔のエレスマデュア様ですね? 私はキュベレー、お父様の創りだした魔道具です」
「え?」
エレは困惑している。
「初対面で相手が困る自己紹介をするな。
エレ、この娘はキュベレー。オレが最初に身体を与えた精霊だよ。
オレが作った身体だから"自分は魔道具だ"と頑なに言ってるけどあんまり気にしないでね?」
「あ、…はい、…え?"機の精霊"?」
「あっ、エレは"鑑定"も出来るんだね」
「は、はい…あっ、キュベレーさん、私はリルト様の従者ですので様付けは不要です」
「そうですか。ではエレさんと呼びますね」
「で、どしたの急に出て来て?」
「お父様、ケニーくんの事は私に任せてくれませんか?」
「……え~?」
なんかコイツに任せるのは不安があるなぁ…
「大丈夫です。何となく気になって私もケニーくんを見たのですが…」
「…」
キュベレーの話を聞く限り、確かに任せても良さそうなので頼む事にする。
「…やり過ぎるなよ?」
「分かってますよ」
…ホントに大丈夫かな?
ーーーーーーーーーー
翌日、伯爵との話し合いの為に冒険者ギルドへ向かう。
難しい話になるかもという事と、貴族は嫌だとポラリスが言うのでラテルを連れて一人で向かう。
ラテルはまた留守番させようと思ったんだけど今日は言う事を聞かなかった…
…コンコンコン
「失礼します」
室内からの許可を聞き扉を開きギルド長室へ入る。
そこにはギルド長と、シャツの胸元を開けベストを着た"休日の冒険者"みたいな格好をしたゼニス伯爵と、落ち着いた雰囲気のワンピースにカーディガンをはおった"いいとこのお嬢様"風のマリーベル嬢がいた。
(まぁ風も何も本当にいいとこのお嬢様なんだが…)
「すみません、お待たせしました」
「おう、久しぶりだなリルト」
「お久しぶりですリルトさん、私達も先ほど来たところですから」
「今茶を用意しているからな、まずは座ってくれ」
ギルド長に促され隣に座る。
「そいつが"精霊獣"ってヤツか」
「可愛いです!」
「あぁ、アレクトスさん以外は初対面でしたね。
地の精霊獣のラテルっていいます」
「キュー…」
チラッとだけ皆の方を見て、また胸に顔を埋めるラテル。
「もう一体は…おっ?」
「ピピッ」
「「おおっ?」」
「わっ!今一瞬だけ妖精みたいな小さい娘が!」
お得意の後髪の間に現れて、ちょっとだけ顔を出したな。
警戒心が強いのは変わらないけど、精霊界から出ても安全だと分かったのか瑠璃の方が社交的だな。
「見えました?瑠璃っていいます。警戒心が強いんで、慣れないとあまり姿を見せませんけど」
「ここに初めて来た時には冒険者でも無かったのに、ずいぶん成長したもんだな…」
ギルド長は少し感慨深い顔でオレを見ている。
「あはは、まぁそれなりに色々ありましたから」
言えないヤバい事も多いけど…
「使役獣どころか、実体化した精霊も複数使役してるんだろ?ランドルフから聞いてるぞ?」
アレクトス伯爵が呆れ顔でこちらを見ている。
「いえ、あの娘達はボクが錬金術で身体を作ってあげたので言う事を聞いてくれるだけで、使役している訳じゃないんですよ」
「そんな事が出来るのか…」
「ただ"使役されていない"って知られると馬鹿が湧きそうなんで、ナイショでお願いします」
「そうなんですか?」
マリーベル嬢がアレクトス伯に訊ねる。
「人型の精霊ってのは高位の精霊だ。
使役出来れば精霊魔法士なら一気に格が上がるだろうからな。
まぁ、人型の精霊なんて普通はその地域で"土地神"みたいに祀られているような存在だ、そこらのヤツに使役なんて出来ねぇよ」
実は精霊達が身体を手に入れる前にどんな存在だったのかは、キュベレーが選んで連れてきているのであまり知っていない。まぁ別に気にならないし。
ただオレがキュベレーに、
「ヘスティアみたいにお淑やかにしろ」
と言った時にナイショで聞いたが、ヘスティアは西のドワーフが住む大陸にある火山を支配領域にしていた上級精霊で、地元では"怒りの女神"と呼ばれ恐れられていたらしい…
「なるほど。だから使役されていないと知られると無謀な者が現れる、と」
「そういう事です。
あ、一応一人紹介しておきましょうか。
ネレイア?」
オレが呼びかけるとストレージが開き、中から水色のショートカットのメイド少女が現れる。
「「おお…」」
「わぁ…」
少女はそっとカーテシーする。
「お初にお目にかかります。お父様の魔道具であり水の精霊でもあるネレイアと申します」
「炭鉱が開発されたらこの娘に運営や連絡係を担当してもらおうかと思ってますので」
「おお、そうか。俺がこの領の領主アレクトスだ。
よろしくな?」
「こちらこそ、よろしくお願いしますアレクトス伯爵」
「…なんて美しい…
こんな事言っていいのか分かりませんが、私が小さい頃買って頂いたお人形さんのようです」
マリーベル嬢はウットリとネレイアを見ている。
「ありがとうございます。
この人形のような見た目はお父様に創って頂いた私達の大事なものですから、そう言って頂けると嬉しいです」
マリーベル嬢に笑顔を向けるネレイア。
「リルト…このクラスの精霊が、何人従ってるんだ?」
ギルド長は流石に元冒険者らしく、見た目より力の方が気になるようだ。
「…今はオルガスティアの王都に一人、アリルメリカへ一人行ってもらってますね。
飛空艇にも一人待機してますけど、全員で何人かはナイショですかね?」
「…もう冒険者として成長というか、めちゃくちゃになってるな…」
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