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5.僕をいじめた不良JKと友達になるまで

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 翌日。
 数日は悩むだろうと踏んでいた僕の予想に反して、玲奈の行動は早かった。

 僕と玲奈。
 二人だけしかいない放課後の教室。
 西日に照らされる玲奈は、どんなに憎らしい女だろうとやはり美しい。

 玲奈はゆっくりと自らの制服に手を掛けた。
 静かな室内に衣擦れ音だけが聞こえる。
 シャツのボタンが外されていき、黒の下着に包まれた豊かな双丘が露になった。

 僕が奴隷にされたあの日と同じようなシチュエーション。
 ただし違うのは、僕は覗いているのではなく正面から玲奈の脱衣を見ていた。

 ぱさりとスカートが落ち、下着姿になった玲奈はそこで僕を見た。
 もしかしたら僕が止めてくれると期待していたのかもしれない。
 しかし、なにも言わず黙って見つめる僕に覚悟を決めたのだろう。

 玲奈はとうとう下着に手を掛けた。
 あの日見ることのなかった布地の向こう側。
 同級生、それもあの須藤玲奈のあられもない姿が僕の前に晒された。

 豊かな膨らみも、女性の部分も。
 その全てを余すところなく目に焼き付ける。

 「綺麗だね」

 「うっ……」

 玲奈は顔を赤く染めながらも、女の部分を隠そうとはしなかった。
 ただ手を握り、あの日の僕と同じように生まれたままの姿をさらけ出している。

 じっくりと玲奈の裸体を観察した僕はひとつ頷いた。
 それを合図に玲奈はゆっくりと膝をつくと、芸能人のように整った顔を床に伏せた。

 普段クラスメートが歩く床。
 そこに広がるバターブロンドの艶やかな髪。
 シミひとつない滑らかな背中。
 上半身と脚の間に挟まれ、わずかに横へとはみ出している双丘。
 肉付きのよい丸い臀部。

 僕は玲奈の晒す屈辱的なその姿を見下ろしていた。
 あの日、玲奈から見た僕の姿はこんなにも惨めなものだったのだろうか。

 「なにか言いたいことは?」

 あくまで優しい口調で語り掛ける。
 この全裸土下座は僕が強要したものではなく、玲奈が自ら望んでしているのだから。

 「……これまで酷いことをして、すみませんでした」

 絞り出すような細い声。
 玲奈の中にあるのは屈辱か、後悔か、それとも怒りか。
 いずれにしろクラスの皆に恐れられている玲奈が、今こうして僕に全裸土下座しているということだけは紛れもない事実だ。
 それも脅されたわけでもなく、ただ僕と友達になりたいからだというのがなんとも笑える。

 「もしかして、全裸で土下座すれば終わりだと思ってないよね?
 僕が須藤さんにされたのはそれだけじゃないけど」

 「っ……。私がしてきたことを私にもしてください」

 「そう? ならまずは土下座してる須藤さんの写真を撮らせてもらうけど、問題ないよね。
 僕も撮られたわけだし」

 「そ、それは……」

 「嫌なの? 嫌なら別に撮らないけど。
 僕は須藤さんと違って相手の嫌がることをする趣味はないし。
 これからも須藤さんの奴隷として過ごすだけだし。
 友達になりたいなんて言って、結局その程度の気持ちなんだよ、須藤さんは。
 須藤さんにとって友達なんて弁当を作ってくれて、飲み物を買ってきてくれる存在なんでしょう?」

 「そんなことない! 私は本当に近藤と友達になりたくて……」

 「なら写真を撮ってもいいよね?」

 白い背中に葛藤が透けて見える。
 全裸土下座の写真なんて撮られてしまえば、もうここだけのことでは済まなくなる。
 引き返せなくなる。
 それでも玲菜は言葉を絞り出した。

 「……私の写真を撮ってください」

 僕はスマホを取り出すとまず一枚、見下ろすように玲奈を撮った。
 響く疑似シャッター音に伏した身体が震える。

 正から、横から、後ろから。
 あらゆる角度から玲奈の惨めな姿をスマホに収めていく。
 顔は写っていないが、クラスメートが見れば被写体が玲奈だと想像するのは難しくない。
 もし流出でもしようものなら、恐れられていた玲奈という存在は侮蔑と性欲の対象に成り下がることは避けられまい。

 「須藤さん、顔をあげて」

 土下座の姿勢を崩すことなく、玲奈は顔だけをあげた。
 感情に表情が追い付いていない。
 無表情のようでいて頬は赤みを帯び、瞳は今にも溢れそうなほど水をたたえていた。

 「全裸で土下座をして、写真まで撮られて。
 それでもまだ僕と友達になりたいと思う?」

 「……うん」

 こんなに弱々しい存在が、本当に僕をいじめていた玲奈なのだろうか。
 人をパシリにしたり、サンドバッグにしたりしていた女と同一人物とはとても思えない。

 僕はそっと玲奈の顔を抱き締めた。

 「っ!」

 「ごめんね、こんなことをさせちゃって。
 僕だって本当は須藤さんと友達になりたかったんだ。
 でも僕は弱いから。
 須藤さんのことを信じることができなかった」

 「ううん、ううんっ!
 近藤は悪くない……。
 私がたくさん酷いことをしたからっ……。
 だから……うっ……」

 嗚咽を漏らす玲奈の頭を撫でてやる。
 すると、心の中のなにかが壊れたように泣きじゃくり始めた。

 「須藤さん、まだ僕は須藤さんを信じきれていない。
 もしかしたらまた酷いことをしてしまうかもしれない。
 それでも僕と友達になってくれますか?」

 「なるぅっ!
 ごべんっ……、ごべんなさいぃっ……」

 腕のなかで震える温もりに、僕は笑みをこらえることができなかった。
 もう玲奈が僕をいじめることはないだろう。
 それどころか、多少のことなら僕のお願いも聞いてくれるに違いない。

 いじめられているときは辛かったが、これから玲奈を好きにできると思えばむしろお釣りが来る。
 まだ完全とはいえないが、これから少しずつ玲奈の依存度をあげていけば、それこそ本当に僕の言うことをなんでも聞く人形に仕立てることも可能だろう。

 これからが楽しみだ。
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