【R18】女帝陥落～学園最強の女帝は決闘に敗れて隷属させられる～

２．エクレール・ディアトリトス

　ウィロート学園。
　魔術、武術分野における優秀な者を王国中から集め、未来の国を担う逸材を育てるための名門校だ。
　狭き門を通過した若者たちは、日々切磋琢磨しながら互いの実力を高めあっている。

　そんな学園には一風変わった校則がある。
　それは「決闘制度」だ。
　この制度は簡単にいえば、審判立ち会いの下一対一で決闘を行い、勝者は敗者に一つ命令できる権利を得るというものだ。

　もちろん、自由に決闘できるわけではない。
　決闘を相手に申し込めるのは、月に一度のみ。
　決闘を行うには勝者が与える命令も含め、互いに決闘を行うことを了承している必要がある。
　そして、決闘を申し込めるのは、己よりランキング上位の者に対してだけだ。

　この学園にはランキングというものが存在する。
　入学試験の成績を元にランキングへと組み込まれ、以降決闘での勝利をもってのみ順位を上げることができる。

　基本的に肉体的に成長し、また在学期間により多くのことを学ぶことのできる上級生の方がランキング上位に多い。
　それがこれまでウィロート学園における常識だった。

　しかしある時、その常識が覆された。
　エクレール・ディアトリトスが入学したのだ。
　エクレールは魔術、剣術共に非凡な才能を発揮し、なんと入学試験の成績の段階でランキング一位に名を載せてしまったのだ。
　この事にランキング上位の生徒たちは憤りを感じた。
　こんなことあっていいはずがない。
　生徒たちはこぞってエクレールへと決闘を申し込んだ。

　だが、エクレールはそのことごとくを呆気なく返り討ちにした。
　絶大な威力を誇る魔術。
　流麗にして神速の剣技。
　圧倒的なまでの実力の前に、次第に決闘を挑む者も減っていき、それに反比例するようにエクレールの名声は上がっていった。

　無敗のまま三年生へと進級したエクレールは、いつしか「女帝」と呼ばれるようになっていた。
　大層な二つ名だが、名前負けしているとは誰も思わなかった。
　むしろ、これ以上エクレールに相応しい名前もないだろう。

　かくいう俺も、かつてエクレールに挑み、敗れ、そして憧れを抱いていた者の一人だ。
　エクレールのようになりたい。
　その思いが、確かに俺の成長の糧となっていた。

　エクレールは学園の中心だった。
　彼女が敗れることなどない。
　いつしかそれが、皆の共通認識となっていた。

　しかし、エクレールが証明したように、常識というものはいつしか覆る。
　学園最強のエクレールが、まさかこうも一方的に敗れることになるなんて、誰も予想できなかった。