ロストソードの使い手

しぐれのりゅうじ

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ホノカ編

四十四話 一日目の終わり

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 月が空に昇り始めた頃に、イチョウさんとリーフさんが帰ってくる。家には照明がないので部屋は真っ暗になるも、イチョウさんが魔法を発動させると、机の上に置かれた魔石が黄色く輝き、イチョウさんの手から居間の天井に丸い光が宙に出現して光で部屋を満たした。
 その後に夕食を全員一緒に食べてから、少ししてから一つの問題である風呂に入るということに直面する。

「コノがやります!」
「いや、リーフさんにやってもらうことになったから」
「そ、そんな……」

 あり得ないといった驚愕した反応を見せてくる。こちらとしては彼女のリアクションの方が驚きだけど。

「気持ちは嬉しいけれど、流石にお風呂まではまずいかな」
「むぅ……お世話したかったのに」
「ご、ごめんね」

 彼女は渋々ではあるものの引き下がってくれた。
 人を好きになるとそこまでしたくなるものなのだろうか。何だかコノからは好意とはまた別の熱量があるように思えた。

「じゃあヒカゲくん、脱いだものはそこのかごに入れておいて」

  二つある内の大きめのかごの方に着ていた服を置いて、もう片方の小さめのかごに着替えとタオルが用意されている。

「じゃあそこでじっとしていてね」

 脱いでから僕は風呂場の方に行き桶の手前に立たされる。

「ウォッシュ!」

 リーフさんは水の魔法を僕の頭上からシャワーのように降らせる。温水で勢いも良い塩梅で気持ちよく身体を洗い流してもらう。
 シャワータイムが終了し、続いては大きな桶に温水を入れるとあっという間に湯船に。

「じゃあごゆっくり」
「ありがとうございます」

 僕は桶の中に入り、少し腰をかがめるような形になると肩まで浸かれる。温度も絶妙でストレスなく暖かな水に包まれた。

「……ふぅ」

 結構身体を動かしたからか、熱を持つ水が染みてくるような感じがして、疲労を溶かしてくれる。ぽかぽかしてくると頭もリフレッシュされ、スッキリとしてきた。
 あんまり長すぎても悪いと思い、十五分くらいして僕は風呂から出た。タオルでしっかりと脱ぐって着替えを着る。もちろん、ミニモモ先輩が描かれたパジャマだ。
「上がりました」

「ヒカゲさん、どうでしたか?」
「凄く良かったよ。身体も楽になった」

 僕は改めてリーフさんにお礼を言ってから、風呂上がりの身体が冷めるまで居間でくつろいだ。入浴の順番は僕、リーフさん、イチョウさん、そしてコノだった。
 入浴時間は皆僕と同じくらいで、一時間も経たずに終えた。

「ヒカゲさん、そろそろお部屋に行きましょう?」
「う、うん」

 風呂から出て間もないコノの全身は血色がよく赤らみ、髪にはまだ水を含んでいる。何だかそういう女子のプライベート的な姿は、何だか見てはいけない気がして、直視はできなかった。

「あら、二人ともおやすみなさい」
「しっかり寝るんだぞ」
「「おやすみなさい」」

 二人でそう言ってからコノの部屋に入った。ここにも照明はないため、魔法で明かりを生み出してもらう。

「あっ、髪を乾かすのでそこでじっとしててくださいね」
「あ、ありがとう」

 畳の上に座ると彼女が僕の背後に立って、呪文を唱えだした。
「ヒート!」 

 すると髪の毛にドライヤーの如く熱い風が送られる。割と時間も経っていたため、少しで髪は乾ききって。それから、コノは自分自身に魔法をかけて髪から水分を飛ばした。

「ふぁぁ……」
「眠そうだね」

 可愛らしい欠伸をして、目もトロンとしている。やはり、今朝の事は結構心身に負担だったのだろう。
「ヒカゲさん……もう寝ましょう?」
「……わ、わかった」

 コノに両手を掴まれて、畳の上で寝る選択肢を消されてしまい、一緒に仕方なく布団に横になり、光の魔法を消した。

「あの、せめて背中合せで寝ない?」
「嫌です……手を繋いでいたいので」

 いくら暗闇とはいえ吐息が当たる超至近距離に女の子の顔があって、手を繋いで体温も感じるこの状況で安眠できるはずなくて。

「コノはヒカゲさんを感じていたいんです。そうじゃないと怖くて……」

 そう僕に縋るように訴えかけるコノは、とても小さな女の子のように見えた。途端に庇護欲がそそられてしまい、断るということはできなくなった。

「そういうことなら仕方ないね」
「ありがとう……ございます……ヒカゲさん」

 安心したからかそのまま目を瞑り、少しすると規則的な呼吸に変化する。その間にもコノの小さな手は握る力を緩めることはなかった。

「……どうしよ」

 この状態で普通に寝ることは不可能だった。全身が熱くなって、布団によってそれが外に逃されず、さらに隣からの熱を伝わってきて。もう燃えそうだ。それに理性もしっかり動かさなければいけなく、休ませてる場合じゃなくて。
 コノは気持ちよさそうに寝ていて安心するも、こちらはそれどころじゃないのにと感じていて。
 僕はとにかく何とか寝れますように祈りながら目を閉じた。
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