ロストソードの使い手

しぐれのりゅうじ

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ホノカ編

五十二話 コノとの秘密、ホノカとの秘密

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 翌日は学び舎のある日という事で早めに起床した。この村では休日は一日にしかないみたいで、中々ハードだなとは思いつつ、僕はコノと共に外に出た。

「……ねぇ一つコノに提案があるんだけど」
「何でしょう?」
「祈り手の儀式までさ、村長の家でホノカと一緒に過ごさない?」

 意識がなくなりかけた時に思いついた。これは、ホノカがコノと距離を詰めさせられる上に、別れが近い幼馴染の二人のためにもなる。まさに一石二鳥のアイデアだ。

「わっ、いいですねそれ!」
「まぁ村長に許可を貰わなきゃだけどね」
「優しいですし村長さんはきっといいよって言ってくれると思います!」

 それから会話をしていくと、大きくなってからコノはホノカの部屋に入っていないということを教えてもらった。多分、成長して色々意識してしまったせいで呼べなくなったのだろう。戦闘ではアグレッシブだけれど、恋愛に関しては守備的みたいだ。
 道中神木の辺りで僕達はホノカと合流。いつもの通りに共に北側へと歩く。

「ねぇホノカ。さっきヒカゲさんが提案してくれたんだけど、今日からさホノカの家に泊まっていいかな?」
「え……」
「もうすぐお別れになるかもだから、できるだけ二人で長くいれた方がいいかなって」

 そう理由を付け加えて暗にもう一つの意図を伝える。

「あ、ああ! もちろん来てくれ!」

 満面の笑みになり、僕の方にナイスと親指を立てた。

「サンキューなユウワ!」
「いやいや、約束だからさ」
「え……いつの間に名前呼びになったの? というか約束って何?」

 コノの足が止まり、そして子供っぽくムッとして尋ねてくる。

「ははっそれはオレ達の秘密だ」
「ふ、二人だけの秘密……!? いつの間にそんなに仲良く……ここで新たなライバルが現れるなんて」
「ライバルって、何のだ?」
「そ、そんな事より、村長さんはオーケーしてくれるかな?」

 コノが僕を恋愛的に見ている事を知られるとややこしくなる、何とか話題逸らしを試みた。

「問題ない。駄目って言われても無理矢理にでも承諾させるからな」
「ホノカ、前みたく酷いことはしないようにね」

 コノがそう注意をする。一体何をしたのか凄く気になるんだけど。

「って、そうじゃなくて。秘密って一体何ですか、コノにも教えてください」
「秘密だから言えないよ」
「そ、そうですか。じゃあ名前呼びもその秘密も関係したり?」
「そうだ、秘密を共有する同志だからな。そんなに名前呼びが気になるなら、コノハもそうすればいいだろ」
「そ、それはそうだけど……でもなー」

 元々、勇者様呼びで僕の願いもあってヒカゲさんに譲歩してもらっていたから、簡単には変えられないのだろう。コノはうんうんと悩みだす。
 しばらくその状態が続いてとうとう学び舎に着いてしまった。ホノカ的には戻ってきたという感じだろうけど。彼女はコノといれてとても幸せそうにしていた。

「決めました! コノ、これからはユウワさんって呼びますね!」
「いいの?」
「はい、もっと仲良くなるためです。これからもよろしくお願いしますね、ユウワさん」




 放課後のトレーニングを終えてから僕達は、コノの両親にしばらく外泊することを許可してもらいある程度の荷物を持ってから、ホノカの家の中に訪れた。

「ってなわけで二人を儀式の日まで泊めたいんだけど」
「ウム、いいだろう」

 前にも来た広い部屋で、僕とコノが隣り合って座り、その向こうにオボロさんとホノカがいる。  
 そしてオボロさんに宿泊させてもらうよう頼むと即オッケーされた。

「本当にいいんですか?」
「うむ。孫の願いだからな当然だろう」

 予想通りの反応ではあった。彼はシワを作って微笑む。

「そんじゃ、コノハはオレの部屋を使えよな。ユウワはじいちゃんの部屋でいいよな」
「うん」
「ま、待ってください。ユウワさんも一緒じゃないと。トイレのお世話とかできないじゃないです」
「ちょっ……」

 彼女の発言で一気に空気が凍りついた。恐る恐るホノカの様子をちらりと見ると、驚愕から怒りが滲ませるように顔を引きつらせて。

「お、おい……それってマジの話か?」
「あ、一応言っておくけどコノからお願いしたんだ。魔法も使えないし、救ってくれた恩があったから」
「けどよ……異性のだろ?」 

 コノが説明してくれたおかげでヘイトから外れる。

「そんなの関係ないもん。コノはユウワさんに色々とお世話をしたいの」
「そ、そうか。まぁコノハがそう言うなら……ってそういやどうして同じ部屋である必要があるんだよ」
「常に一緒にいた方が頼りやすいでしょ?」
「一応聞くけどよ、まさか寝る時まで一緒じゃないよな」

 再びホノカの顔色に憤怒の色が浮かび上がってきた。何気なく立ち上がろうとすると、睨まれて石化させられたように動けなくなった。

「うん! 毎日添い寝してるよ!」
「そうか、よしユウワ一発殴らせろ」
「ま、待って欲しい。暴力は駄目だと思うし、それに積極的だったわけじゃなくて、仕方なくというか」
「でも、拒否する気になればいつでもできただろ。今でもそうしてんのは、お前の意思が入ってる証じゃないのか」

 反論はできなかった。実際、美少女と寝られて少なからず喜んでいるのは事実で。

「ど、どうしたのホノカ? そんなに怒って」
「当然だろ。コノハは世間知らずで抜けてるとこがあるから心配なんだよ」

 添い寝でこんなに感情を高ぶらせるのだから、もし告白されてるなんて言ったらいよいよ消されるかもしれない。

「ホノカ、流石にコノを馬鹿にし過ぎ。男の人と添い寝をするのは普通じゃおかしいってわかってるよ」
「な、ならどうして」
「……近くにユウワさんがいるって肌で感じられれば安心できたから。もし一人だったら怖くて寝られなかったもん」

 危なかった。好きだから、みたいな事を言い出すんじゃないかとヒヤヒヤしたが、杞憂に終わった。

「ま……まぁそれは分かったよ。ならオレじゃ安心できないか? 家にはユウワがいるんだし、トイレに関してもじいちゃんと寝れば頼めばいいわけだしさ」
「ああ、いつでも頼んでくれ。年故に頻尿でもあるから、何度も起きてしまうだろうからな」
「ってなわけだ。どうだ、コノハ?」

 コノは僕を見つめながら考え出す。多分、未練の事とホノカと二人きりでいたいという思いを天秤にかけているのだろう。

「元々が二人の時間を長く取るために来たんだからそうした方がいいんじゃないかな」
「……ですよね。わかりました、コノは今日からホノカと一緒に寝ます。けど、困った事があったらすぐに呼んでくださいね」
「うん」

 こうして何とか話がまとまった。最悪の状況にはならず安心する。

「ではおぬし、部屋を案内しよう」
「はい、お願いします」
「ユウワ、少ししたら戻ってきてくれ。話がある」

 感情の読めない普通の表情でそう告げられる。一発くらいは殴られそうで怖い。まぁ魔法を撃たれるよりはましだと思うことにして、一旦部屋を後にした。
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