ロストソードの使い手

しぐれのりゅうじ

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ホノカ編

六十一話 前日

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 コノが求める関係性を見つけてから翌日。儀式の前日ということで学び舎は休みとなり、僕はいつもよりはゆっくりと起床した。しかし、祈り手の二人は練習のため早めに起きていたらしく、食事のために部屋へ行くともう二人は食べ終わっていて、机には僕の分だけ置いてある。部屋にはコノとホノカだけで、オボロさんの姿はなかった。

「おはようございます、ユウワさん」
「遅ようだな」
「おはよう二人共」

 彼女達は祈り手の服を着用して、隣り合って座っている。二人は奥の方にいて、食事は机の手前にあった。まだ温かさもあり早速食べることにする。

「もう練習は終わったの?」
「いや、あと少しある。ちょっとした確認が残っててな」
「お昼頃には終わる感じです」

 いつもの朝食で、僕は二人と話しながら箸を進める。

「そんでさ、練習終わったら三人で村を回りたいって話をしてたんだ」
「明日は忙しいので、ゆっくり村を皆で見たいなって。どうですか、ユウワさん」
「いいけど……僕もいていいの?」

 二人きりの方が思い出作りとしてもいいのではないだろうか。ノイズにはなりたくない。

「問題ない。練習で結構一緒にいたし、コノの安全性もあるしな」
「コノも三人がいいです。ユウワさん、お願いできますか?」
「二人がそう言うなら……わかったよ」

 しかし、ゆっくりと歩いて村を回るというのは初日ぶりだ。二週間前の事だけど、凄く前のような気がする。

「やった! ありがとうございます」

 コノは弾けるような笑顔を見せた。

「そ、そんなに……?」
「コノ的にはホノカとユウワさん、好きと好きが組み合わさって最高なんです!」
「す、好き……」

 ホノカは何気なく発したその言葉に反応するも、多分深い意味はないのだろう。

「ホノカ、どうかした?」
「へ? な、何でもない」
「何か顔赤いけど」

 小首をかしげて、気になったのかコノはホノカの顔を覗き込む。

「き、気のせいだ気のせい」
「何か最近様子がおかしくない? 何か悩みがあるなら聞くよ?」

 流石に、幼馴染の変化には薄々気づいているようで、訝しげな視線をホノカに送る。至近距離でそうされた彼女はたじろいで、さらに怪しさが倍増していた。

「て、てかそろそろ時間だろ。もう行かなきゃな」
「あ、逃げた」

 わかりやすく話を強引に変えて立ち上がると、コノから離れドアの方に。

「早く来いよー」
「ふふっ相変わらずだなー」

 そう言い残して部屋から出る彼女をコノは微笑ましく見送った。

「ねぇユウワさん。わかりましたか?」

 ホノカが遠くに行った足音を聞き届けてからコノは何を指すのか曖昧な質問をしてくる。でも、言葉にせずとも理解できて。

「まぁ……ね」
「流石、ユウワさんです。えへへ、気づいてくれるって信じてました」
「それで答えなんだけど――」
「待ってください、それは儀式後に聞かせて欲しいです」

 まだ決まりきっていない、そう言おうとするもその前にコノの頼み事が差し込まれる。

「後って……もし駄目だったら」
「それなら仕方ないです。未練を断ち切る関係性にこれ以上はないので」
「……そっか」

 不安そうな様子は微塵も感じさせず、覚悟が決まりきっている。そのエメラルドの瞳には、さっきのホノカとは真反対の現実が明瞭に映されていた。

「それじゃ行ってきますね」
「うん、いってらっしゃい」
「はい!」

 話が終わり、再び無邪気な顔つきに戻るとコノはまた練習のために部屋を出ていってしまう。一気に静寂に包まれ、それに心の適応にできないまま、一人残された僕は朝食を黙々と胃へと入れていった。

「ごちそうさまでした」

 食べ終わりそう言葉を発するも返ってくる声も同じようにごちそうさまを言う声もない。少し前ならそれが当たり前だった。それからこっちに来てそうじゃなくなって。そして最近になってそこにはいつもコノの声があった。

「……」

 コノの勇者となる、それはつまり今までの日々のように常に近くに彼女がいるということで。そんな日常は悪くないと思っている自分がいた。
 僕は二人が戻ってくるまで、また勇者となるか考え続けた。
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