62 / 102
ホノカ編
六十二話 村巡り、思い出巡り
しおりを挟む
昼になるとオボロさんと共に二人が戻ってきた。その間に僕は考えるのと同時に特別編に何度か目をやって、その二人を僕とコノを少し重ねてみたり。そんな事をしていたけど進展はしなくて。二人は着実に進んでいるのに、僕一人だけが動けないでいる。それに焦りと孤独感が押し寄せできて、どんどん自分がわからなくなっていった。
「それじゃ行こうぜ」
「ユウワさんも大丈夫ですか?」
「うん」
昼ご飯を食べ終えてから、少し時間を置いて部屋で休んでいるとでそう声をかけられた。二人はもう準備万端といった感じで、僕はすぐに立ち上がり二人と共に家を出た。
「……やっぱ高いなー」
「やっぱり慣れないか?」
「うん……毎日いるのにね」
そうコノは自嘲気味に笑う。ただ、恐ろしさを感じているからか浮べる笑みは引きつらせていた。
「で、でも長く下は見れるように……うぅ」
「無理すんな。さっさと降りるぞ」
ホノカの空飛ぶ魔法でふわりと地面の上に着陸。コノは安定した大地に戻れた瞬間に腰を屈めて落ち着かせていた。
「こ、怖かった」
「無茶すんなよ」
「う、うん。ごめんなさい。だけど前よりは頑張れたよ」
顔を上げたコノは幼さが残るにへらとした朗らかな表情を見せる。それにホノカはダメージを喰らったように一歩後ずさる。
「そ、そうか……えっと良いじゃん。頑張れよ」
「うん! ありがとうホノカ」
「お、おう」
ホノカは素直に褒めた事を照れくさそうに頬をポリポリとかく。コノはお礼を言いながら立ち上がると僕の方に来て。
「お待たせしてごめんなさい。早速行きましょう!」
「え、ちょ……」
「こ、コノハ?」
彼女は僕とホノカと手を繋いで歩き出した。僕らはそれに引っ張られる形でついて行く。
「急にやるなよな。びっくりするだろ」
「えへへ、ごめん。でもいいでしょ?」
「まぁいいけどさ」
横に広がって僕達は村の中心部へと向かった。僕の左手にはコノ柔らかくて小さな手が体温を伝えてくる。その熱と少しの緊張で手汗が出ないか心配になりながら歩いた。
「二週間前ってあっという間ですね」
「そうだね」
最初に訪れたのは神木の前。虹色の葉を持つこの木はまさしく神の木というか風格がある。まぁ、これは神木の一部だと言うことが最近わかったわけだけど。
周囲を見渡すと祭りの旗や建物も完成形のものが設置されていて、もう儀式まで間もないということが肌で感じれる。
「……」
ここでホノカと知り合ったんだっけ。その前は森の中で勘違いで殺されかけたっけ。
「コノ、何だかユウワさんとホノカといるのがずっと前からいる気がしてるんです。本当は二週間も経っていないのに」
「ちょっとわかるかも。毎日一緒だったからかな」
「そうですよね! ……もっと長くいればいつしか幼馴染みたいに思えたり?」
「流石にそれは……どうだろう」
コノの向こう側から不機嫌そうな目が僕の方に矢印が向いている。肯定したら魔法が飛んできそうだ。
「ユウワには、絶対的な幼馴染がいるから無理だろ」
「そうだよね……確かにコノにもホノカがいるからそこまでは思えないかー」
「そ、そうだよな」
コノのおかげですぐに機嫌が戻った。でもホノカの言う通り、やっぱり幼馴染がいるとそういう思い込みみたいなのはできなさそうだ。
そう話していて、ふと神木が風に揺れて見上げるとそこから果物が僕の方に落ちてきた。それはまたストロングベリーで。
「おっと……」
「また貰えましたね。流石はロストソードの使い手です」
少し間を置いてからさらに神木から二個、フルーツがコノとホノカにも落ちてきた。
「オレ達も……」
「もしかしてイリス様見てくれているのかな。明日儀式があるから」
「だといいな」
皆で一緒に食べた神木の恵みからは、とろけそうな甘みとみずみずしさ、それに元気が貰えた。
次に僕たちが向かったのは村の西側だ。ここも相当馴染の場所になっている。魔法で動くシーソーも並び立つ丸太も日常の風景だ。
「コノ、ユウワさんが来なかったら、ここにあまり訪れなかったですし、トレーニングとかも頑張れませんでした」
「そっか……」
「はい! おかげでコノは沢山走れるようになりました。ホノカも少しは安心できた?」
「まぁ、逃げる力はついてるからな。多少は」
足は決して速いわけじゃないけど、長く走れるだけの持久力は手に入れている。少しでも安心してもらうために彼女は僕達のトレーニングに付き合っていたんだ。
「やった、ホノカに褒められた」
「別に、褒めるのはレアじゃないだろ」
「そうかなー? 前は現実見ろとか言ってきたし」
「それは褒められることじゃないから」
でも、ここ最近のホノカは意識的に褒めたり共感したりしていた。
「そういや、最初はユウワは弱かったのに、今じゃ全然勝てなくなったな」
「ホノカのおかげで強くなれたよ。実践では活かせるかわからないけどね」
「安心しろ。死を恐れないユウワなら、プレッシャーで駄目になることもない。自信を持てよ」
ホノカの言葉には強い説得力があって、どんどん大丈夫な気がしてくる。
「ロストソードもある。そらに、オレの力も使えるようになるんだ。めっちゃ強いよ、ユウワは」
「……ホノカの力、使ってもいいの?」
「当然だろ。お前以外いないし、オレはユウワがいい」
ホノカは八重歯をちらりと覗かせて破顔する。彼女が側にいてくれるなら心強い。それに、ロストソードの中にあれば、コノの側にいさせてあげられる。
「ありがとうホノカ」
彼女の力に見合うようにもっと強くならないといけない。ホノカやコノのためにも。
「それじゃ行こうぜ」
「ユウワさんも大丈夫ですか?」
「うん」
昼ご飯を食べ終えてから、少し時間を置いて部屋で休んでいるとでそう声をかけられた。二人はもう準備万端といった感じで、僕はすぐに立ち上がり二人と共に家を出た。
「……やっぱ高いなー」
「やっぱり慣れないか?」
「うん……毎日いるのにね」
そうコノは自嘲気味に笑う。ただ、恐ろしさを感じているからか浮べる笑みは引きつらせていた。
「で、でも長く下は見れるように……うぅ」
「無理すんな。さっさと降りるぞ」
ホノカの空飛ぶ魔法でふわりと地面の上に着陸。コノは安定した大地に戻れた瞬間に腰を屈めて落ち着かせていた。
「こ、怖かった」
「無茶すんなよ」
「う、うん。ごめんなさい。だけど前よりは頑張れたよ」
顔を上げたコノは幼さが残るにへらとした朗らかな表情を見せる。それにホノカはダメージを喰らったように一歩後ずさる。
「そ、そうか……えっと良いじゃん。頑張れよ」
「うん! ありがとうホノカ」
「お、おう」
ホノカは素直に褒めた事を照れくさそうに頬をポリポリとかく。コノはお礼を言いながら立ち上がると僕の方に来て。
「お待たせしてごめんなさい。早速行きましょう!」
「え、ちょ……」
「こ、コノハ?」
彼女は僕とホノカと手を繋いで歩き出した。僕らはそれに引っ張られる形でついて行く。
「急にやるなよな。びっくりするだろ」
「えへへ、ごめん。でもいいでしょ?」
「まぁいいけどさ」
横に広がって僕達は村の中心部へと向かった。僕の左手にはコノ柔らかくて小さな手が体温を伝えてくる。その熱と少しの緊張で手汗が出ないか心配になりながら歩いた。
「二週間前ってあっという間ですね」
「そうだね」
最初に訪れたのは神木の前。虹色の葉を持つこの木はまさしく神の木というか風格がある。まぁ、これは神木の一部だと言うことが最近わかったわけだけど。
周囲を見渡すと祭りの旗や建物も完成形のものが設置されていて、もう儀式まで間もないということが肌で感じれる。
「……」
ここでホノカと知り合ったんだっけ。その前は森の中で勘違いで殺されかけたっけ。
「コノ、何だかユウワさんとホノカといるのがずっと前からいる気がしてるんです。本当は二週間も経っていないのに」
「ちょっとわかるかも。毎日一緒だったからかな」
「そうですよね! ……もっと長くいればいつしか幼馴染みたいに思えたり?」
「流石にそれは……どうだろう」
コノの向こう側から不機嫌そうな目が僕の方に矢印が向いている。肯定したら魔法が飛んできそうだ。
「ユウワには、絶対的な幼馴染がいるから無理だろ」
「そうだよね……確かにコノにもホノカがいるからそこまでは思えないかー」
「そ、そうだよな」
コノのおかげですぐに機嫌が戻った。でもホノカの言う通り、やっぱり幼馴染がいるとそういう思い込みみたいなのはできなさそうだ。
そう話していて、ふと神木が風に揺れて見上げるとそこから果物が僕の方に落ちてきた。それはまたストロングベリーで。
「おっと……」
「また貰えましたね。流石はロストソードの使い手です」
少し間を置いてからさらに神木から二個、フルーツがコノとホノカにも落ちてきた。
「オレ達も……」
「もしかしてイリス様見てくれているのかな。明日儀式があるから」
「だといいな」
皆で一緒に食べた神木の恵みからは、とろけそうな甘みとみずみずしさ、それに元気が貰えた。
次に僕たちが向かったのは村の西側だ。ここも相当馴染の場所になっている。魔法で動くシーソーも並び立つ丸太も日常の風景だ。
「コノ、ユウワさんが来なかったら、ここにあまり訪れなかったですし、トレーニングとかも頑張れませんでした」
「そっか……」
「はい! おかげでコノは沢山走れるようになりました。ホノカも少しは安心できた?」
「まぁ、逃げる力はついてるからな。多少は」
足は決して速いわけじゃないけど、長く走れるだけの持久力は手に入れている。少しでも安心してもらうために彼女は僕達のトレーニングに付き合っていたんだ。
「やった、ホノカに褒められた」
「別に、褒めるのはレアじゃないだろ」
「そうかなー? 前は現実見ろとか言ってきたし」
「それは褒められることじゃないから」
でも、ここ最近のホノカは意識的に褒めたり共感したりしていた。
「そういや、最初はユウワは弱かったのに、今じゃ全然勝てなくなったな」
「ホノカのおかげで強くなれたよ。実践では活かせるかわからないけどね」
「安心しろ。死を恐れないユウワなら、プレッシャーで駄目になることもない。自信を持てよ」
ホノカの言葉には強い説得力があって、どんどん大丈夫な気がしてくる。
「ロストソードもある。そらに、オレの力も使えるようになるんだ。めっちゃ強いよ、ユウワは」
「……ホノカの力、使ってもいいの?」
「当然だろ。お前以外いないし、オレはユウワがいい」
ホノカは八重歯をちらりと覗かせて破顔する。彼女が側にいてくれるなら心強い。それに、ロストソードの中にあれば、コノの側にいさせてあげられる。
「ありがとうホノカ」
彼女の力に見合うようにもっと強くならないといけない。ホノカやコノのためにも。
0
あなたにおすすめの小説
【長編版】悪役令嬢の妹様
紫
ファンタジー
星守 真珠深(ほしもり ますみ)は社畜お局様街道をひた走る日本人女性。
そんな彼女が現在嵌っているのが『マジカルナイト・ミラクルドリーム』というベタな乙女ゲームに悪役令嬢として登場するアイシア・フォン・ラステリノーア公爵令嬢。
ぶっちゃけて言うと、ヒロイン、攻略対象共にどちらかと言えば嫌悪感しかない。しかし、何とかアイシアの断罪回避ルートはないものかと、探しに探してとうとう全ルート開き終えたのだが、全ては無駄な努力に終わってしまった。
やり場のない気持ちを抱え、気分転換にコンビニに行こうとしたら、気づけば悪楽令嬢アイシアの妹として転生していた。
―――アイシアお姉様は私が守る!
最推し悪役令嬢、アイシアお姉様の断罪回避転生ライフを今ここに開始する!
※長編版をご希望下さり、本当にありがとうございます<(_ _)>
既に書き終えた物な為、激しく拙いですが特に手直し他はしていません。
∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽
※小説家になろう様にも掲載させていただいています。
※作者創作の世界観です。史実等とは合致しない部分、異なる部分が多数あります。
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係がありません。
※実際に用いられる事のない表現や造語が出てきますが、御容赦ください。
※リアル都合等により不定期、且つまったり進行となっております。
※上記同理由で、予告等なしに更新停滞する事もあります。
※まだまだ至らなかったり稚拙だったりしますが、生暖かくお許しいただければ幸いです。
※御都合主義がそこかしに顔出しします。設定が掌ドリルにならないように気を付けていますが、もし大ボケしてたらお許しください。
※誤字脱字等々、標準てんこ盛り搭載となっている作者です。気づけば適宜修正等していきます…御迷惑おかけしますが、お許しください。
明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。
彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。
最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。
一種の童話感覚で物語は語られます。
童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです
貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。
絡みあうのは蜘蛛の糸 ~繋ぎ留められないのは平穏かな?~
志位斗 茂家波
ファンタジー
想いというのは中々厄介なものであろう。
それは人の手には余るものであり、人ならざる者にとってはさらに融通の利かないもの。
それでも、突き進むだけの感情は誰にも止めようがなく…
これは、そんな重い想いにいつのまにかつながれていたものの物語である。
―――
感想・指摘など可能な限り受け付けます。
小説家になろう様でも掲載しております。
興味があれば、ぜひどうぞ!!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記
ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。
そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。
【魔物】を倒すと魔石を落とす。
魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。
世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる