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1 伯爵令嬢
しおりを挟む私は前世持ちの伯爵令嬢。熱で寝込む度に前世を思い出すと言うちょっと特殊な形だったけど、それは別段問題ない。それより気になるのは私が伯爵令嬢で、魔法を使える異世界で魔物がいるという世界が常識の今世。
…………誰かー!! 教えて下さい!!……この世界は乙女ゲームモチーフですか? それとも王道ファンタジーですか?
私に死亡フラグは無いですか?
私がこんなに不安を覚えるのはこの前した政略的婚約だ。
それは貴族の使命なのだからと家父長制度と男尊女卑に多少の不満を持ちながらも業に入っては郷に従え精神で我慢した。
「初めまして。私はカルフィシファー公爵家次男、カインです。宜しくお願いします!!」
「は、初めまして! わ、私はアルファー伯爵家のリコリスです! こちらこそ宜しくお願いします!」
「まぁ、可愛らしいわね。家のカインは今年8歳になるの」
「わ、私は今年6歳になります!」
そう、どもってしまうほどカイン様は美形だった。しかも父親は近衛騎手団長のイケオジ。母親も「立てば芍薬 座れば牡丹 歩く姿は百合の花」を完璧に表現した人なので、将来やんちゃなイケメンお兄ちゃんタイプになるであろう素質をヒシヒシと感じさせる乙女ゲーム鉄板キャラにしか見えない。
(この世界乙女ゲーム系なのかな? 婚約者が皇太子じゃないからハーレム系か? ……となると悪役令嬢は私?)
私は顔見せお茶会の間はずっとそんなことばかり考えていた。
「良かったわね。リコリス。優しそうな方で」
「……はい」
帰りの車内で母親は嬉しそうに語りかけてくれたが、死亡フラグが警告音のように頭へ鳴り響いていたのでほぼ何を話していたか覚えてない。
そんな翌日の朝から外が騒がしい。何事かと朝の支度に来たメイドに聞くと父親が急遽領地に戻ると言う。
「? どうして急に?」
「はい。どうやら領内にダンジョンと淀みが発生したため、聖女と共に浄化しに行くようです」
「は?」
まてまて!! 重要ワードがマシンガンのように出まくってるんですけど?!!
「勇者様一行が魔王城に付く前に発生するとは、旦那様も不運です」
ちょっっ!! メイドさん!! 待って!! 追加ワードがされまくって脳内処理大変なんですけど?!
「さぁ、旦那様をお見送りしましょう」
まだ脳内整理出来てないまま、玄関にて慌ただしいお見送りをすることになる。でもお父様が行って何の役に立つのだろうか?
「あなた……どうか魔女に魅力されないでくださいね」
「あぁ。勿論だ」
「(えっ? 魔女?! 何それ?!!)……お、お父様、お気をつけて……」
「うむ。心配するな! すぐに帰る」
やや軽い死亡フラグを口にするお父様に不安が残るが仕方ない。
その後お父様を見送り自室に戻ってメイドに先ほどの話を再度聞いた。
ダンジョンとは! 淀みとは!! 聖女とは!!!
もし男性ヒーローのハーレム系ならたぶん関係無いから、ここは是非とも教えて欲しい。
「ダンジョンは魔素が洞窟などに溜まると変化するのです。詳しいことはその内、家庭教師の先生たちが教えてくださいますよ」
メイドはニコニコと笑顔で教えてくれるが、やはり詳しい内容は教師に聞くしかなさそうだ。
(まぁ、言うてまだ5歳だしな)
それから教師にダンジョン、淀み、聖女、勇者、魔王について教えてもらった。
ダンジョンは薄暗い洞窟に魔物が放つ魔素と言うものが長い年月溜まり続けるとある日ダンジョンにジョブチェンジするらしい。そこは宝箱の無い魔物の巣窟だから領主は見つけしだい、浄化出来る聖女を連れてダンジョンを消さなければならない。
ちなみに放置しとくと、どんどん増えていくので早期発見が大事だ。後、ダンジョン発生を知っていて放置していた場合は国から領地没収と一族死刑と言うメチャクチャ重い罰が下る。
次に淀みとは魔物が集団でその場にて死亡し、遺体をそのまま放置するとヘドロみたいな形に変わりやがて沼となる。ただの沼ならそこまで問題はないが、淀みは凶悪な魔物を生み出し、近くに洞窟などがあれば次々とダンジョンへと変化してしまう。
そして聖女は、そのダンジョンの魔素や淀みを浄化してくれる人。教会から派遣されるシスターみたいなものらしい。
(お父様は派遣依頼と浄化後の整備にいかれたのか)
最後に勇者様は魔王を倒す者ではなく交渉する人を皆そう呼ぶようだ。そしてその交渉とはダンジョンのこと。何処の地域でダンジョンが出来たか報告すると魔王の配下がそこに赴き魔物と魔素の回収に向かってくれる。
するとダンジョンは消滅してその地域では2世紀ほどはダンジョンが産み出されないらしい。(なので聖女がダンジョンでする浄化は一時しのぎの封印みたいなものらしい)
では何故魔王交渉する人を勇者と呼ぶのか。それは魔王城や魔王の土地は魔素が濃くて一般人はその魔素に当たると気が狂うか死んでしまうらしい。なので魔素耐性が強い人間が向かうことになっている。つまり文字のごとく勇気ある者ってことみたいだ。
ちなみにお母様が言っていた「魔女に魅了されないでね」は浮気しないでねって意味で出かける夫や恋人によく言う常套句となる。
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