私は悪役令嬢なのか、脇役なのか、モブなのかを知りたい

千代子レイ子

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21 カイン様の恋は燃え広がる

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 はっや!! 

 この一言に尽きるだろう……。物語の主人公やヒロインでも、もう少し救出には困難や時間がかかるものじゃないのか?

 結局私はどんな立場の何役なんだろうか? さっぱり検討がつかなくなってきた。もしかしてもう終わっているのだろうか?

 公爵家の客室で一泊しながらそんなことを考える。

「お嬢様、お加減はいかがですか?」
「大丈夫よ。お医者様も平気だと言っていたじゃない」
「ですが、あちらで飲食をしましたし……」
「ふふ。心配してくれてありがとう」

 (本当は状態異常無効が付いてるのに更に毒消し魔法を使って食べたから平気なんだけどね。これは家の侍女にも秘密だからなぁ……)

「……そう言えば貴女、国家機密に近い公爵様の魔法を知ってしまったけど大丈夫なの?」
「はい。それにつきましては契約魔法をかけてもらいましたので他言出来ません」
「契約魔法。……私のせいでしなくてもいい秘密を知ってしまってごめんなさい」
「お嬢様……。なんてお優しい。契約魔法など貴族に仕える者なら誰しも通る道ですのに……」

 (そうなの? しがらみが多いのは知っているけど、それだと大変ね。どんな内容になっているかは分からないけど死に直結しなければいいなぁ……)

 侍女とたわいもない話をしているとカイン様が心配して訪れてくれた。

「リコリス。体調はどう?」
「何も問題ごさいませんわ。わざわざありがとうございます」
「良かった。……ねぇ、リコリス。この後少し話せるかな?」
「えぇ。問題ございません」

 侍女は何かを察したらしく、笑顔で退出していった。

「……誘拐事件があった直後にこんなこと聞くなんて不謹慎だけど、どうしても聞きたいんだ……」
「? 何をです?」
「……こ、婚約のこと……」

 青ざめたような、苦虫を噛み潰したような複雑な顔をしながらカイン様は問う。

「……解消しないよな?」
「? えぇ。特には……」
「よ、良かった!!」

 よほど嬉しかったのだろう。先程とはうって変わりカイン様は攻略対象らしく、キラキラエフェクト付きで頬を染めながら微笑む。流石の私も少しクラっとしてしまう。

「? リコリス?」
「……いえ、そこまで喜んで貰えるとは思わなかったので……」
「……リコリス。俺、言ったよな。リコリスが好きだって」
「……えぇ」
「なら無事なのをちゃんと確かめてもいい?」
「? それは帝国むこうで確認されましたけど?」
「こっちではまだだろ?」

 そう言ってカインはそっと私を抱きしめた。まるで私が大切な宝物のようで心がくすぐったい。

「……リコリス。無事で本当に良かった……」
「はい。直ぐに助けて頂きありがとうございました」
「なら今度は誘拐されないように、今日からここに住めばいいよ!!」
「えっ?」
「もうリコリスを誰にも奪われたくないんだ!!」

 カイン様の目には不安と心配が溢れていて私を心から好きなんだと分かる。

 (そんな目で見つめられると私がヒロインじゃないかと錯覚してしまう。溺れるのが恐い……。…………そうか。そう言うことか!!)

「……カイン様。私、分かりました。カイン様を本気で好きになったら、捨てられた時再起不能になりそうで恐いんです。だから心に壁を作っていたのかもしれません!」
「それは俺もだよ!!」
「! ……そうですよね。でも私はカイン様がとても素敵な殿方だと知ってますから、平凡な私にはいつも不釣り合いで申し訳ないと思っていました」

 言ってみれば簡単なこと。ゲームでは美男美女の恋する話だから傍観して楽しめる。だがいざ平凡な私が超絶イケメンの婚約者になれば不釣り合いは勿論のこと、何もかも比較対象となり惨めになること間違い無しだ。

「それは俺の方だよ……」
「えっ?」
「この両親から貰った見た目以外は何もかもが平凡だ」
「そんなこと! 第一王子殿下の護衛に選ばれることは何よりも誉れなことですよ?」
「実力なら俺よりも強い奴は何人も知っている。だが彼等には爵位と見目の良さはない。その点俺はそれらを全て持っていた」

 カイン様は知っていた。王子の護衛はそれなり・・・・の強さがあればいいと。本当に強い猛者は城の近衛兵になり、定期的に戦場へと送られている。

「一見王子の護衛は花形に見えるけど実際は装飾と大差無いんだよ。俺は外観しか評価されない」

 (内心それだけでも有難いと思うけど……それに奢らず己自尊を評価して欲しいのね。まぁ、鍛練に明け暮れていたのは知っているけど……もしかして優秀なお兄様と影で比べられているのかしら?)

「その点リコリスは凄い! 己の能力を高める為の努力を怠らず、色んなことに挑戦してはその成果を上げている。しかも婚約者の俺を外見だけで判断せず、俺自身をちゃんと見ていてくれた」

 (そうなの? それこそ私、よいしょしかしてませんで
したけど?)

 何だか勝手に評価が上がっていて此方としては申し訳ない罪悪感がどんどん膨らむから止めて貰いたい。

「そんなリコリスだから好きになったんだ!!」
「!!」

 2度目の告白。本当なら歓喜しているのだろう。だが私は胸が痛い。罪悪感と過大評価に『そんな出来た人間じゃない!!』と叫びたいほどに今更ながら過去を悔やむとは思わなかった。
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