24 / 33
24 カインの嫉妬
リコリスは今、非常に困っていた。
「リコリスも大きくなって更に可愛らしくなったねぇ」
「もうすぐ17になりますから」
「そうか17か! もう立派なレディなんだな。時が経つのは早い」
まるで年始の親族に会ったような会話である。
「ケント様は久しぶりのご帰還でしたが帝都はどうでしたか?」
「北にあるからか、かなり肌寒かったよ」
「風邪などは召しませんでしたか?」
「勿論! これでも軍人だからね!」
これら全てケント様の膝の上で近状報告をしているので正直居たたまれない。なにせ目の前にはカイン様がいて、こちらを射殺すがのごとく睨み付けているのだ。
「ところでリコリスは本当にカインと結婚するの?」
「? えぇ。婚約者ですから」
「ならもし、俺とカインが婚約者を代えたらどうする?」
「!! 兄上!!」
「まぁまぁカイン。落ち着け。もしもの話だ」
何か含みがある笑顔でケント様はカイン様を見る。
「で、リコリスはどうする?」
「そうですわね。とりあえずガーネット様と相談ですかね」
「はははは。家や実家に相談するんじゃなくてガーネットなの?」
「義姉様ほど信頼できる方は居ませんもの」
「おやおや、これを聞いたらガーネットは喜ぶね!」
ケント様の婚約者であるガーネット様はそれはそれは私を可愛がってくれる。義理の姉になる方がこの方で本当に良かったと思うほどだ。
「何を考えているのかは知りませんが、そろそろリコリスを解放なさってあげて」
噂をすればである。カイン様の堪忍袋も切れそうな頃、救世主のように現れたガーネット様が呆れ顔でこちらを見ていた。
「嫉妬かい? 嬉しいね」
「そう見えるのならそれでも宜しいですわ。ただお戯れはそこまでです。リコリスいらっしゃい」
救世主に助けられた私はすぐさまカイン様にそのまま無言で連行された。
「カイン様!! ケント様の事ごめんなさいね!」
後ろからの謝罪も無視するカイン様に代わって私が頭を下げる。
(全く今日は何なんだ?)
そしてカイン様に連れてこられたのは自室。
「茶はいいから出て行ってくれ!」
メイドたちを部屋の外に追いやるとカイン様はいきなり私に抱きついた。
「リコリス。君は俺の婚約者だ。兄上でも駄目だ!!」
「えぇ。分かっておりますわ」
「なら、その証拠を提示してくれ!!」
「えっ? 証拠?」
「そうだ!」
これはまた難しいことを言ってくる。
「では、手紙を書きますわ。カイン様のことを大切に想っていると……」
「…………」
「駄目ですか?」
「そ、それだけじゃ駄目だ」
手の甲や頬にキスするだけでパニックになる人に愛を伝える方法がラブレターぐらいしか思い付かない。
「では、教えていただけませんか?」
「! ………………っだ……」
「えっ?」
「だからキスだ!」
「えっ?」
「リコリスから俺にキ、キスをしてくれたらいい!」
「…………」
「……何で黙るんだ?」
(そりゃ黙るわ! またパニックにでもなられたら困るじゃない!)
「……では、手を出して下さいますか?」
「今、リコリスを抱きしめているから無理だ」
「……ではどこに?」
「く、唇だ……」
顔を真っ赤にして横を向いてるが、大丈夫なのだろうか。
「……頬ぐらいにしていた方が良いのでは?」
「上書きしたいんだ……」
「…………」
「……駄目か?」
(顔を紅くしたままこちらを可愛く伺うなど、どこの女子だ!! ……だが私で上書きになると言うのならやぶさかでもないけど……)
「……では、目をつぶって下さい」
「!!」
チュッ
ほんの触れるか触れないかの可愛らしいキスをそっとした。
「……えっ?」
「?」
「もう、終わり?」
「はい。終わりました」
「これじゃ駄目だ!!」
カイン様は急に顔を近付けるとそのまま噛み付くようなキスをし始めた。そして何度も何度も口角を変えては貪るようにキスをする。
(?!!!! えっ? 何?! どうしたっての?!)
「リコリス……」
勢いのまま、気付けばベッドの上にいた。押し倒された私はカイン様にキスの嵐をくらっている。
「……リコリスはいい匂いだ……」
首もとに顔を寄せ私の匂いを嗅ぎなからキスをする。
(き、急にどうしたの? この前まであんなにパニックっていた人がどうした?)
「……好きだよ。リコリス」
甘い顔でそんな台詞を言われればさすがの私もメロメロだ。
「……カ、カイン様?」
「これだけキスすれば、もう赤ちゃんは出来たかな?」
「…………えっ?」
「これでもう既成事実を作ったし、婚前だけど赤ちゃんが出来ても俺、立派な父親になるからね!!」
物凄く決意を決めて宣言してくれたが、キスで子供は出来ない。
(どうしよう。私が性教育すべきなのだろうか? いや、するべきだな。カイン様にトラウマを植え付けないように慎重に出来るのは私しかいない!)
「カイン様。嬉しい決意表明に水を差すようで心苦しいのですが、キスで子供は出来ません」
「えっ? でも本にはコウノトリが運んで来るって……」
(くっ、純粋培養を私の手で汚したくないけど、これも運命だと泣こう!)
「カイン様、これから私と子供が出来るまでの工程を勉強しましょうか?」
「えっ? う、うん……」
「恥ずかしいこともありますが、正しい知識はより良い夫婦になる為には必要です。覚悟してくださいね」
「分かった!」
私は深呼吸をしてからベッドを降りた。
「リコリスも大きくなって更に可愛らしくなったねぇ」
「もうすぐ17になりますから」
「そうか17か! もう立派なレディなんだな。時が経つのは早い」
まるで年始の親族に会ったような会話である。
「ケント様は久しぶりのご帰還でしたが帝都はどうでしたか?」
「北にあるからか、かなり肌寒かったよ」
「風邪などは召しませんでしたか?」
「勿論! これでも軍人だからね!」
これら全てケント様の膝の上で近状報告をしているので正直居たたまれない。なにせ目の前にはカイン様がいて、こちらを射殺すがのごとく睨み付けているのだ。
「ところでリコリスは本当にカインと結婚するの?」
「? えぇ。婚約者ですから」
「ならもし、俺とカインが婚約者を代えたらどうする?」
「!! 兄上!!」
「まぁまぁカイン。落ち着け。もしもの話だ」
何か含みがある笑顔でケント様はカイン様を見る。
「で、リコリスはどうする?」
「そうですわね。とりあえずガーネット様と相談ですかね」
「はははは。家や実家に相談するんじゃなくてガーネットなの?」
「義姉様ほど信頼できる方は居ませんもの」
「おやおや、これを聞いたらガーネットは喜ぶね!」
ケント様の婚約者であるガーネット様はそれはそれは私を可愛がってくれる。義理の姉になる方がこの方で本当に良かったと思うほどだ。
「何を考えているのかは知りませんが、そろそろリコリスを解放なさってあげて」
噂をすればである。カイン様の堪忍袋も切れそうな頃、救世主のように現れたガーネット様が呆れ顔でこちらを見ていた。
「嫉妬かい? 嬉しいね」
「そう見えるのならそれでも宜しいですわ。ただお戯れはそこまでです。リコリスいらっしゃい」
救世主に助けられた私はすぐさまカイン様にそのまま無言で連行された。
「カイン様!! ケント様の事ごめんなさいね!」
後ろからの謝罪も無視するカイン様に代わって私が頭を下げる。
(全く今日は何なんだ?)
そしてカイン様に連れてこられたのは自室。
「茶はいいから出て行ってくれ!」
メイドたちを部屋の外に追いやるとカイン様はいきなり私に抱きついた。
「リコリス。君は俺の婚約者だ。兄上でも駄目だ!!」
「えぇ。分かっておりますわ」
「なら、その証拠を提示してくれ!!」
「えっ? 証拠?」
「そうだ!」
これはまた難しいことを言ってくる。
「では、手紙を書きますわ。カイン様のことを大切に想っていると……」
「…………」
「駄目ですか?」
「そ、それだけじゃ駄目だ」
手の甲や頬にキスするだけでパニックになる人に愛を伝える方法がラブレターぐらいしか思い付かない。
「では、教えていただけませんか?」
「! ………………っだ……」
「えっ?」
「だからキスだ!」
「えっ?」
「リコリスから俺にキ、キスをしてくれたらいい!」
「…………」
「……何で黙るんだ?」
(そりゃ黙るわ! またパニックにでもなられたら困るじゃない!)
「……では、手を出して下さいますか?」
「今、リコリスを抱きしめているから無理だ」
「……ではどこに?」
「く、唇だ……」
顔を真っ赤にして横を向いてるが、大丈夫なのだろうか。
「……頬ぐらいにしていた方が良いのでは?」
「上書きしたいんだ……」
「…………」
「……駄目か?」
(顔を紅くしたままこちらを可愛く伺うなど、どこの女子だ!! ……だが私で上書きになると言うのならやぶさかでもないけど……)
「……では、目をつぶって下さい」
「!!」
チュッ
ほんの触れるか触れないかの可愛らしいキスをそっとした。
「……えっ?」
「?」
「もう、終わり?」
「はい。終わりました」
「これじゃ駄目だ!!」
カイン様は急に顔を近付けるとそのまま噛み付くようなキスをし始めた。そして何度も何度も口角を変えては貪るようにキスをする。
(?!!!! えっ? 何?! どうしたっての?!)
「リコリス……」
勢いのまま、気付けばベッドの上にいた。押し倒された私はカイン様にキスの嵐をくらっている。
「……リコリスはいい匂いだ……」
首もとに顔を寄せ私の匂いを嗅ぎなからキスをする。
(き、急にどうしたの? この前まであんなにパニックっていた人がどうした?)
「……好きだよ。リコリス」
甘い顔でそんな台詞を言われればさすがの私もメロメロだ。
「……カ、カイン様?」
「これだけキスすれば、もう赤ちゃんは出来たかな?」
「…………えっ?」
「これでもう既成事実を作ったし、婚前だけど赤ちゃんが出来ても俺、立派な父親になるからね!!」
物凄く決意を決めて宣言してくれたが、キスで子供は出来ない。
(どうしよう。私が性教育すべきなのだろうか? いや、するべきだな。カイン様にトラウマを植え付けないように慎重に出来るのは私しかいない!)
「カイン様。嬉しい決意表明に水を差すようで心苦しいのですが、キスで子供は出来ません」
「えっ? でも本にはコウノトリが運んで来るって……」
(くっ、純粋培養を私の手で汚したくないけど、これも運命だと泣こう!)
「カイン様、これから私と子供が出来るまでの工程を勉強しましょうか?」
「えっ? う、うん……」
「恥ずかしいこともありますが、正しい知識はより良い夫婦になる為には必要です。覚悟してくださいね」
「分かった!」
私は深呼吸をしてからベッドを降りた。
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています
かきんとう
恋愛
王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。
磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。
その中心に、私は立っていた。
――今日、この瞬間のために。
「エレノア・フォン・リーベルト嬢」
高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。
完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす
小木楓
恋愛
完結しました✨
タグ&あらすじ変更しました。
略奪された大納言家の香子を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。
「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」
「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」
大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。
しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。
強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。
夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。
恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……?
「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」
逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。
それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。
「一生、私の腕の中で溺れていろ」
守るために壊し、愛するために縛る。
冷酷な仮面の下に隠された、
一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。
★最後は極上のハッピーエンドです。
※AI画像を使用しています。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
仮面王の花嫁
松雪
恋愛
婚約者を腹違いの妹に奪われ、新しい相手も見つからず修道院に行く覚悟を決めたルチア。修道女となるため髪を切った日の夜、王城から「国王がルチアを妻に望んでいる」という書簡を持った使者がやって来た。
しかし、従兄弟であり恋仲だったニールが国王のせいで死に至った過去を持つルチアは、国王からの求婚を喜べずーー。
元貧乏貴族の大公夫人、大富豪の旦那様に溺愛されながら人生を謳歌する!
楠ノ木雫
恋愛
貧乏な実家を救うための結婚だった……はずなのに!?
貧乏貴族に生まれたテトラは実は転生者。毎日身を粉にして領民達と一緒に働いてきた。だけど、この家には借金があり、借金取りである商会の商会長から結婚の話を出されてしまっている。彼らはこの貴族の爵位が欲しいらしいけれど、結婚なんてしたくない。
けれどとある日、奴らのせいで仕事を潰された。これでは生活が出来ない。絶体絶命だったその時、とあるお偉いさんが手紙を持ってきた。その中に書いてあったのは……この国の大公様との結婚話ですって!?
※他サイトにも投稿しています。
世継ぎは他の妃が産めばいい——子を産めない私ですが、帝の寵愛を独占して皇后になりました
由香
恋愛
後宮に入る女の価値は、ただ一つ。
——皇子を産めるかどうか。
けれど私は、産めない。
ならば——
「世継ぎは他の妃に任せます。私は、陛下に愛される女になります」
そう言い放ったその日から、すべてが狂い始めた。
毒を盛られても、捨てられず。
皇子が生まれても、選ばれたのは私だった。
「お前は、ここにいろ」
これは、子を産めない女が
ただ一つの武器“寵愛”だけで頂点に立つ物語。
そして——
その寵愛は、やがて狂気に変わる。
【完結】傷物令嬢は近衛騎士団長に同情されて……溺愛されすぎです。
朝日みらい
恋愛
王太子殿下との婚約から洩れてしまった伯爵令嬢のセーリーヌ。
宮廷の大広間で突然現れた賊に襲われた彼女は、殿下をかばって大けがを負ってしまう。
彼女に同情した近衛騎士団長のアドニス侯爵は熱心にお見舞いをしてくれるのだが、その熱意がセーリーヌの折れそうな心まで癒していく。
加えて、セーリーヌを振ったはずの王太子殿下が、親密な二人に絡んできて、ややこしい展開になり……。
果たして、セーリーヌとアドニス侯爵の関係はどうなるのでしょう?