私は悪役令嬢なのか、脇役なのか、モブなのかを知りたい

千代子レイ子

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24 カインの嫉妬

 リコリスは今、非常に困っていた。

「リコリスも大きくなって更に可愛らしくなったねぇ」
「もうすぐ17になりますから」
「そうか17か! もう立派なレディなんだな。時が経つのは早い」

 まるで年始の親族に会ったような会話である。

「ケント様は久しぶりのご帰還でしたが帝都はどうでしたか?」
「北にあるからか、かなり肌寒かったよ」
「風邪などは召しませんでしたか?」
「勿論! これでも軍人だからね!」

 これら全てケント様の膝の上・・・で近状報告をしているので正直居たたまれない。なにせ目の前にはカイン様がいて、こちらを射殺すがのごとく睨み付けているのだ。

「ところでリコリスは本当にカインと結婚するの?」
「? えぇ。婚約者ですから」
「ならもし、俺とカインが婚約者を代えたらどうする?」
「!! 兄上!!」
「まぁまぁカイン。落ち着け。もしもの話だ」

 何か含みがある笑顔でケント様はカイン様を見る。

「で、リコリスはどうする?」
「そうですわね。とりあえずガーネット様と相談ですかね」
「はははは。家や実家に相談するんじゃなくてガーネットなの?」
「義姉様ほど信頼できる方は居ませんもの」
「おやおや、これを聞いたらガーネットは喜ぶね!」

 ケント様の婚約者であるガーネット様はそれはそれは私を可愛がってくれる。義理の姉になる方がこの方で本当に良かったと思うほどだ。





「何を考えているのかは知りませんが、そろそろリコリスを解放なさってあげて」

 噂をすればである。カイン様の堪忍袋も切れそうな頃、救世主のように現れたガーネット様が呆れ顔でこちらを見ていた。

「嫉妬かい? 嬉しいね」
「そう見えるのならそれでも宜しいですわ。ただお戯れはそこまでです。リコリスいらっしゃい」

 救世主に助けられた私はすぐさまカイン様にそのまま無言で連行された。

「カイン様!! ケント様の事ごめんなさいね!」

 後ろからの謝罪も無視するカイン様に代わって私が頭を下げる。

 (全く今日は何なんだ?)

 

 そしてカイン様に連れてこられたのは自室。

「茶はいいから出て行ってくれ!」

 メイドたちを部屋の外に追いやるとカイン様はいきなり私に抱きついた。

「リコリス。君は俺の婚約者だ。兄上でも駄目だ!!」
「えぇ。分かっておりますわ」
「なら、その証拠を提示してくれ!!」
「えっ? 証拠?」
「そうだ!」

 これはまた難しいことを言ってくる。

「では、手紙を書きますわ。カイン様のことを大切に想っていると……」
「…………」
「駄目ですか?」
「そ、それだけじゃ駄目だ」

 手の甲や頬にキスするだけでパニックになる人に愛を伝える方法がラブレターぐらいしか思い付かない。

「では、教えていただけませんか?」
「! ………………っだ……」
「えっ?」
「だからキスだ!」
「えっ?」
「リコリスから俺にキ、キスをしてくれたらいい!」
「…………」
「……何で黙るんだ?」

 (そりゃ黙るわ! またパニックにでもなられたら困るじゃない!)

「……では、手を出して下さいますか?」
「今、リコリスを抱きしめているから無理だ」
「……ではどこに?」
「く、唇だ……」

 顔を真っ赤にして横を向いてるが、大丈夫なのだろうか。

「……頬ぐらいにしていた方が良いのでは?」
「上書きしたいんだ……」
「…………」
「……駄目か?」

 (顔を紅くしたままこちらを可愛く伺うなど、どこの女子だ!! ……だが私で上書きになると言うのならやぶさかでもないけど……)

「……では、目をつぶって下さい」
「!!」

 チュッ

 ほんの触れるか触れないかの可愛らしいキスをそっとした。

「……えっ?」
「?」
「もう、終わり?」
「はい。終わりました」
「これじゃ駄目だ!!」

 カイン様は急に顔を近付けるとそのまま噛み付くようなキスをし始めた。そして何度も何度も口角を変えては貪るようにキスをする。

 (?!!!! えっ? 何?! どうしたっての?!)

「リコリス……」

 勢いのまま、気付けばベッドの上にいた。押し倒された私はカイン様にキスの嵐をくらっている。

「……リコリスはいい匂いだ……」

 首もとに顔を寄せ私の匂いを嗅ぎなからキスをする。

 (き、急にどうしたの? この前まであんなにパニックっていた人がどうした?)

「……好きだよ。リコリス」

 甘い顔でそんな台詞を言われればさすがの私もメロメロだ。

「……カ、カイン様?」
「これだけキスすれば、もう赤ちゃんは出来たかな?」
「…………えっ?」
「これでもう既成事実を作ったし、婚前だけど赤ちゃんが出来ても俺、立派な父親になるからね!!」

 物凄く決意を決めて宣言してくれたが、キスで子供は出来ない。

 (どうしよう。私が性教育すべきなのだろうか? いや、するべきだな。カイン様にトラウマを植え付けないように慎重に出来るのは私しかいない!)

「カイン様。嬉しい決意表明に水を差すようで心苦しいのですが、キスで子供は出来ません」
「えっ? でも本にはコウノトリが運んで来るって……」

 (くっ、純粋培養を私の手で汚したくないけど、これも運命さだめだと泣こう!)

「カイン様、これから私と子供が出来るまでの工程を勉強しましょうか?」
「えっ? う、うん……」
「恥ずかしいこともありますが、正しい知識はより良い夫婦になる為には必要です。覚悟してくださいね」
「分かった!」

 私は深呼吸をしてからベッドを降りた。
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