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27 悪役令嬢
闇落ちしかけたツンデレほど厄介で面倒なことはない。
「……なんであんたがそこまで理解しているのよ……」
「……小説に出てくる登場人物と全く同じ行動だったので、そこに書かれていた心情をそのまま言っただけです」
(……と言う事にしておこう。詳しく説明しずらい)
「……やっぱりリコリス。あんた邪魔だわ。折角魅了を使って事件まで起こしたのに別れないなんてね」
「えっ?」
「どう言うことだ!!」
驚く私達に気分を良くしたマーガレット様はそのまま饒舌に喋りだした。
「私は辺境伯の娘よ? 魔王城とは密接に繋がっているから魔素の対処法なんてお手のものなの。だから魅了の道具を借りるくらいなんてことないわ」
あまりの衝撃的な発言にカイン様と息を飲む。一国を一瞬でも傾かせた大事件をこの人は何とも思ってない。罪悪感など初めから持ち合わせていないのだ。
「だけどまさかアイリスが裏切るとは思っていなかったわ。あの娘大人しくていつも苛めらても泣くことしか出来ない馬鹿だったからビックリしたわ」
(!! あの男爵令嬢が辺境伯と近しい仲だったなんて! しかも知り合いなの?)
「でも馬鹿はやっぱり治ってなかったのね。すぐにボロが出て無様に死んじゃうなんてっ! ぷっ。あはは!! しかも死因が魅了した男たちからの暴行って……やられてることは辺境にいた頃と変わんないじゃない! ほんと馬鹿過ぎて笑ったわ!! 今年で一番可笑しくてお腹が痛かった出来事よ!! あの娘お笑いの才能があったのかもね!」
思い出したのかマーガレット様は楽しそうにクスクスと口元を押さえて嘲笑う。その姿は異様で私は背筋がゾッとした。
(この人はツンデレなんて可愛いものじゃない。人を貶めて苛める事に快感を覚える異常者なんだわ……。弱者をいたぶって壊れる様を高みの見物をしながら余興として楽しむ事になんら罪の意識なんて無いから嗤うんだ)
カイン様も同じような事を思ったのだろう。背後にいる私を引き寄せて強く抱きしめる腕に少しの乱暴さがあった。
「なぁーに? 見せつけかしら?」
「魅了事件の首謀者が貴女なら国家転覆を狙ったことになりますよ?」
「国家転覆? それは私の物を盗んで自滅したあの娘が勝手にしたことよ? 私は関係ないわ」
「では、教会にヴァンパイア公爵の宝珠を忍ばせたのは貴女ではないのですね?」
「あぁ、あれ?」
不快な顔から一変、またマーガレット様は可笑しそうにクスクス嗤いだした。
「これは面白かったから教えてあげるわ。傑作よ?」
まるで楽しいお喋りの時間をしているかのように振る舞う姿はお茶会の令嬢そのものだ。
「あれは魅了の道具で好き勝手に遊んでたアイリスの自称被害者が私にすがったのよ。『神父様を元に戻したい』ってね。だから魅了道具の隣にあった嫉妬の道具と一緒に堕落の薬をあげたの」
「堕落の薬?!」
「ふふ、そう。本当は香水なんだけど容器を変えれば分からないでしょ? だから実験してみたのよ、香水を飲むかどうかってね?」
まるで取り留めもない話をしているかのように囁くが、香水を薬として渡す精神がやはり異常だ。
「そしたらあの娘! 嫉妬の道具をその言葉通りライバルの聖女に飲ませたのよ! 凄いでしょ? 物を飲ませたのよ? 私感激しちゃったからあの娘に教えてあげたの」
「あなたの神父様は元から魅了されてないわよってね!」
ほくそ笑むマーガレット様の顔は満足気で実に楽しそうだ。きっと当時の事を思い出しているのだろう。
「そしたら信じないってショックを受けて神父の所に行ったの。……ぷっ。ふふ、ふふ。あら、ごめんなさい。この後が可笑しくて先に笑ってしまったわ」
蔑む目と口元に自然と目が行く。今、私は本物の悪役令嬢を見ているのだと自覚する。
「ふふ。ねぇ、リコリス。興味の無い異性に突然自分の理想を押し付けられて非難されたらどうなると思う?」
「えっ? あっ、困ります」
「そうよね? 面倒くさいわよね? だから神父もその娘を棄てたのよ」
「捨てる? こ、殺したんですか?」
「はは! その方が幸せだったかもね?」
顔に手を軽く置き傾げる姿はとても可愛らしくて妖艶だ。でもその口から発せられる内容は悪魔のような残忍さに満ちていた。
「……上司たちに捧げたのよ。好きに遊んで下さいってね。」
「えっ」
「頭良いわよね? 邪魔者は消えるし昇進には役立つ。正に一石二鳥だわ!」
(つまり教会内部も腐っているから事件の発覚が遅れたのね。なんてこと……)
「まっ、それも聖女の暴走と正義感たっぷりのつまんない神父たちのせいで呆気なく終わってしまったけど! 本当にリコリスは運だけはいいわよねぇ?」
「えっ?」
「折角下半身にだらしない無能勇者をわざわざ付けたのに嫉妬の道具を飲み込んだ馬鹿な聖女たちのお陰で免れたでしょ? 力の強い聖女だったらしいけど魔道具には勝てなかったみたいね」
その時私は背筋が凍った。あの人選もマーガレット様に仕組まれていたことに……。
(私、聖女たちが居なければ今頃あの勇者にレイプされていたんだ……状況が状況でも危機感が無さすぎたわ)
本物の悪役令嬢。これにならないように生きてきたけど、到底無理な話だったと実感した。
「……なんであんたがそこまで理解しているのよ……」
「……小説に出てくる登場人物と全く同じ行動だったので、そこに書かれていた心情をそのまま言っただけです」
(……と言う事にしておこう。詳しく説明しずらい)
「……やっぱりリコリス。あんた邪魔だわ。折角魅了を使って事件まで起こしたのに別れないなんてね」
「えっ?」
「どう言うことだ!!」
驚く私達に気分を良くしたマーガレット様はそのまま饒舌に喋りだした。
「私は辺境伯の娘よ? 魔王城とは密接に繋がっているから魔素の対処法なんてお手のものなの。だから魅了の道具を借りるくらいなんてことないわ」
あまりの衝撃的な発言にカイン様と息を飲む。一国を一瞬でも傾かせた大事件をこの人は何とも思ってない。罪悪感など初めから持ち合わせていないのだ。
「だけどまさかアイリスが裏切るとは思っていなかったわ。あの娘大人しくていつも苛めらても泣くことしか出来ない馬鹿だったからビックリしたわ」
(!! あの男爵令嬢が辺境伯と近しい仲だったなんて! しかも知り合いなの?)
「でも馬鹿はやっぱり治ってなかったのね。すぐにボロが出て無様に死んじゃうなんてっ! ぷっ。あはは!! しかも死因が魅了した男たちからの暴行って……やられてることは辺境にいた頃と変わんないじゃない! ほんと馬鹿過ぎて笑ったわ!! 今年で一番可笑しくてお腹が痛かった出来事よ!! あの娘お笑いの才能があったのかもね!」
思い出したのかマーガレット様は楽しそうにクスクスと口元を押さえて嘲笑う。その姿は異様で私は背筋がゾッとした。
(この人はツンデレなんて可愛いものじゃない。人を貶めて苛める事に快感を覚える異常者なんだわ……。弱者をいたぶって壊れる様を高みの見物をしながら余興として楽しむ事になんら罪の意識なんて無いから嗤うんだ)
カイン様も同じような事を思ったのだろう。背後にいる私を引き寄せて強く抱きしめる腕に少しの乱暴さがあった。
「なぁーに? 見せつけかしら?」
「魅了事件の首謀者が貴女なら国家転覆を狙ったことになりますよ?」
「国家転覆? それは私の物を盗んで自滅したあの娘が勝手にしたことよ? 私は関係ないわ」
「では、教会にヴァンパイア公爵の宝珠を忍ばせたのは貴女ではないのですね?」
「あぁ、あれ?」
不快な顔から一変、またマーガレット様は可笑しそうにクスクス嗤いだした。
「これは面白かったから教えてあげるわ。傑作よ?」
まるで楽しいお喋りの時間をしているかのように振る舞う姿はお茶会の令嬢そのものだ。
「あれは魅了の道具で好き勝手に遊んでたアイリスの自称被害者が私にすがったのよ。『神父様を元に戻したい』ってね。だから魅了道具の隣にあった嫉妬の道具と一緒に堕落の薬をあげたの」
「堕落の薬?!」
「ふふ、そう。本当は香水なんだけど容器を変えれば分からないでしょ? だから実験してみたのよ、香水を飲むかどうかってね?」
まるで取り留めもない話をしているかのように囁くが、香水を薬として渡す精神がやはり異常だ。
「そしたらあの娘! 嫉妬の道具をその言葉通りライバルの聖女に飲ませたのよ! 凄いでしょ? 物を飲ませたのよ? 私感激しちゃったからあの娘に教えてあげたの」
「あなたの神父様は元から魅了されてないわよってね!」
ほくそ笑むマーガレット様の顔は満足気で実に楽しそうだ。きっと当時の事を思い出しているのだろう。
「そしたら信じないってショックを受けて神父の所に行ったの。……ぷっ。ふふ、ふふ。あら、ごめんなさい。この後が可笑しくて先に笑ってしまったわ」
蔑む目と口元に自然と目が行く。今、私は本物の悪役令嬢を見ているのだと自覚する。
「ふふ。ねぇ、リコリス。興味の無い異性に突然自分の理想を押し付けられて非難されたらどうなると思う?」
「えっ? あっ、困ります」
「そうよね? 面倒くさいわよね? だから神父もその娘を棄てたのよ」
「捨てる? こ、殺したんですか?」
「はは! その方が幸せだったかもね?」
顔に手を軽く置き傾げる姿はとても可愛らしくて妖艶だ。でもその口から発せられる内容は悪魔のような残忍さに満ちていた。
「……上司たちに捧げたのよ。好きに遊んで下さいってね。」
「えっ」
「頭良いわよね? 邪魔者は消えるし昇進には役立つ。正に一石二鳥だわ!」
(つまり教会内部も腐っているから事件の発覚が遅れたのね。なんてこと……)
「まっ、それも聖女の暴走と正義感たっぷりのつまんない神父たちのせいで呆気なく終わってしまったけど! 本当にリコリスは運だけはいいわよねぇ?」
「えっ?」
「折角下半身にだらしない無能勇者をわざわざ付けたのに嫉妬の道具を飲み込んだ馬鹿な聖女たちのお陰で免れたでしょ? 力の強い聖女だったらしいけど魔道具には勝てなかったみたいね」
その時私は背筋が凍った。あの人選もマーガレット様に仕組まれていたことに……。
(私、聖女たちが居なければ今頃あの勇者にレイプされていたんだ……状況が状況でも危機感が無さすぎたわ)
本物の悪役令嬢。これにならないように生きてきたけど、到底無理な話だったと実感した。
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