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第二章
変わり果てた思い出に
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俺は今、同窓会会場のホテルに向かって歩いていた。
服は大学入学時に親に買ってもらったスーツを着ている。長年のひきこもり生活で髪が伸び切っていたので一週間前に床屋でごくごく平均的な髪型に整えた。俺は普段、髪の毛を自分で切っているので、こうして床屋に行くのは大学入学時以来、実に六年ぶりだった。
周囲には既に見覚えのある顔がちらほらある。緊張で俺の心臓は跳ね回っていた。
ホテルに到着した。ごく平凡な佇まいだが、今の俺にとっては魔王の城のように見える。エレベーターに乗って九階に向かう。
九階に到着すると、すぐ目の前に二人の人物が受付係として待ち構えていた。あれは、橋本春美に……確か山岸大介だ。我ながらよく名前を覚えているものだと思った。
橋本は俺の顔を見て「戸田だよね?」と探るように言った。俺は招待状の葉書を見せてややためらいがちに返事をすると、橋本は「久しぶり」と言った。隣にいる山岸も、「中三の時同じクラスだったよな、元気にしてたか」と意外にも気さくに喋りかけてきた。俺は「ぼちぼちかな」と適当に話を合わせた。
橋本は小学校の頃割と仲が良かったが、元々関わりの薄い山岸までも愛想よく接してきたのが不思議だった。いわゆる社交辞令というやつだろうか。俺は大して仲良くもない相手にそういう対応はできないので山岸がやけに大人びて見えた。
それもそのはず、俺たちは今年でもう二十五歳だ。大卒でも社会人三年目になる。もう社会人としての振る舞いが板についていてもおかしくない頃合なのだ。
橋本は随分髪が短くなった。ショートボブにパーマをかけたような髪型をしている。勉強も運動もできる文武両道でありながらはきはきとした性格の明るい女子だったが、話した感じ、それは今も変わっていないように思う。
山岸の方はというと、小学校から同じだが関わった記憶があまりなく、正直なところ俺はほとんど関心がない。好き嫌い以前に印象がないので何ともコメントし難い男だった。勉強はできる方だったことは憶えている。
彼らは受付係というだけあってとてもその対応は丁寧だった。だが、俺はそんな彼らからもどこか“警戒”されていたように感じた。
受付を済ませ、会場に入った。小さめの体育館くらいの広さの会場には、中学以来の連中が大勢いた。早めに来たつもりだったのだが、既に二十人ほど集まって各々談笑している。そしてその多くは、よその小学校──俺はわけあって“あっち”と呼んでいた──の出身者で、中学時代に関わりのなかった連中だ。
見たところ美月の姿もまだない。早くも居心地の悪さを感じ始めた俺は手持ち無沙汰となり、わけもなくスマートフォンをいじくっていた。
その時だった。
服は大学入学時に親に買ってもらったスーツを着ている。長年のひきこもり生活で髪が伸び切っていたので一週間前に床屋でごくごく平均的な髪型に整えた。俺は普段、髪の毛を自分で切っているので、こうして床屋に行くのは大学入学時以来、実に六年ぶりだった。
周囲には既に見覚えのある顔がちらほらある。緊張で俺の心臓は跳ね回っていた。
ホテルに到着した。ごく平凡な佇まいだが、今の俺にとっては魔王の城のように見える。エレベーターに乗って九階に向かう。
九階に到着すると、すぐ目の前に二人の人物が受付係として待ち構えていた。あれは、橋本春美に……確か山岸大介だ。我ながらよく名前を覚えているものだと思った。
橋本は俺の顔を見て「戸田だよね?」と探るように言った。俺は招待状の葉書を見せてややためらいがちに返事をすると、橋本は「久しぶり」と言った。隣にいる山岸も、「中三の時同じクラスだったよな、元気にしてたか」と意外にも気さくに喋りかけてきた。俺は「ぼちぼちかな」と適当に話を合わせた。
橋本は小学校の頃割と仲が良かったが、元々関わりの薄い山岸までも愛想よく接してきたのが不思議だった。いわゆる社交辞令というやつだろうか。俺は大して仲良くもない相手にそういう対応はできないので山岸がやけに大人びて見えた。
それもそのはず、俺たちは今年でもう二十五歳だ。大卒でも社会人三年目になる。もう社会人としての振る舞いが板についていてもおかしくない頃合なのだ。
橋本は随分髪が短くなった。ショートボブにパーマをかけたような髪型をしている。勉強も運動もできる文武両道でありながらはきはきとした性格の明るい女子だったが、話した感じ、それは今も変わっていないように思う。
山岸の方はというと、小学校から同じだが関わった記憶があまりなく、正直なところ俺はほとんど関心がない。好き嫌い以前に印象がないので何ともコメントし難い男だった。勉強はできる方だったことは憶えている。
彼らは受付係というだけあってとてもその対応は丁寧だった。だが、俺はそんな彼らからもどこか“警戒”されていたように感じた。
受付を済ませ、会場に入った。小さめの体育館くらいの広さの会場には、中学以来の連中が大勢いた。早めに来たつもりだったのだが、既に二十人ほど集まって各々談笑している。そしてその多くは、よその小学校──俺はわけあって“あっち”と呼んでいた──の出身者で、中学時代に関わりのなかった連中だ。
見たところ美月の姿もまだない。早くも居心地の悪さを感じ始めた俺は手持ち無沙汰となり、わけもなくスマートフォンをいじくっていた。
その時だった。
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