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第二章
変わり果てた思い出に⑧
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「先生、お久しぶりです。三年の頃お世話になりました戸田です。覚えてらっしゃいますか」
金井先生を見つけると、俺はできるだけ陰鬱とした雰囲気を隠しながら声を掛けた。金井先生は数瞬考えをめぐらしてから、ハッとなにかに気づき、
「戸田だろう? もちろん覚えているとも」
と朗らかに言った。どこまで俺のことを覚えているかは微妙なところだが、流石に中三の担任である金井先生は俺のことを不審な目では見なかった。あるいは取り繕っているだけかもしれないが。
先生と当たり障りのない会話をしてから、俺はタイミングを見計らって美月のことを訊ねた。すると高野と山根と同じように先生は目をキョトンとさせて、「どうしたんだ、一体」と言った。
「どうしても佐波と連絡が取りたくて。あいつと仲が良かった高野や山根も、佐波が北海道に引っ越したということくらいしか知らないみたいなんです」
先生はわずかに訝しながらも、「俺も引っ越したということしか知らないんだよ」と言った。
「佐波が学校に来なくなってから、お母さんとは何度も話したが本人とは一切会えてなくてな。卒業後のこともお母さんとは話し合って、通信制高校に進学することにはなったが、そこから先のことはわからない」
「学校名は分かりますか」
「どこだったかな、さすがに十年も前のことだから覚えていないな。そんなことも高野たちは知らなかったのか」
「まったく」
「力になれなくてすまないな」
俺は礼を言って先生のもとを後にした。そして、多分これ以上ここにいても美月の情報は得られないだろうから俺は帰ることにした。
児島が他のクラスメイトへ向けて管を巻いている様子が見えた。案の定相手にされておらず、立ち去られてしまっていた。懲りずに金蔓を探しているのだろう。かつての友人の変わり果てた姿を見ると再び悲しみが込み上げてくる。
「おい、ちょっと待てよ」
会場を出ようとすると、不意に背後から声をかけられた。振り返ると、そこには俺の最も憎む奴らがいた。
木村雄介とその取り巻きたちだった。中学時代の忌々しい記憶がフラッシュバックした。中学時代、俺はこいつらに毎日のように嫌がらせを受けていた。
木村は“あっち”の中ではボスのような存在だった。不良ではないがそれなりにヤンチャもするようなポジションで、自分の気に入らない人間は仲間と一緒になって嫌がらせをするが、それでいて勉強はできるという狡猾でいやらしい男だった。
俺はその嫌がらせの最大のターゲットとなった。なぜ俺が狙われたのか。それは今思えば、俺の出身校と木村の出身校の文化の違いが原因だった。
金井先生を見つけると、俺はできるだけ陰鬱とした雰囲気を隠しながら声を掛けた。金井先生は数瞬考えをめぐらしてから、ハッとなにかに気づき、
「戸田だろう? もちろん覚えているとも」
と朗らかに言った。どこまで俺のことを覚えているかは微妙なところだが、流石に中三の担任である金井先生は俺のことを不審な目では見なかった。あるいは取り繕っているだけかもしれないが。
先生と当たり障りのない会話をしてから、俺はタイミングを見計らって美月のことを訊ねた。すると高野と山根と同じように先生は目をキョトンとさせて、「どうしたんだ、一体」と言った。
「どうしても佐波と連絡が取りたくて。あいつと仲が良かった高野や山根も、佐波が北海道に引っ越したということくらいしか知らないみたいなんです」
先生はわずかに訝しながらも、「俺も引っ越したということしか知らないんだよ」と言った。
「佐波が学校に来なくなってから、お母さんとは何度も話したが本人とは一切会えてなくてな。卒業後のこともお母さんとは話し合って、通信制高校に進学することにはなったが、そこから先のことはわからない」
「学校名は分かりますか」
「どこだったかな、さすがに十年も前のことだから覚えていないな。そんなことも高野たちは知らなかったのか」
「まったく」
「力になれなくてすまないな」
俺は礼を言って先生のもとを後にした。そして、多分これ以上ここにいても美月の情報は得られないだろうから俺は帰ることにした。
児島が他のクラスメイトへ向けて管を巻いている様子が見えた。案の定相手にされておらず、立ち去られてしまっていた。懲りずに金蔓を探しているのだろう。かつての友人の変わり果てた姿を見ると再び悲しみが込み上げてくる。
「おい、ちょっと待てよ」
会場を出ようとすると、不意に背後から声をかけられた。振り返ると、そこには俺の最も憎む奴らがいた。
木村雄介とその取り巻きたちだった。中学時代の忌々しい記憶がフラッシュバックした。中学時代、俺はこいつらに毎日のように嫌がらせを受けていた。
木村は“あっち”の中ではボスのような存在だった。不良ではないがそれなりにヤンチャもするようなポジションで、自分の気に入らない人間は仲間と一緒になって嫌がらせをするが、それでいて勉強はできるという狡猾でいやらしい男だった。
俺はその嫌がらせの最大のターゲットとなった。なぜ俺が狙われたのか。それは今思えば、俺の出身校と木村の出身校の文化の違いが原因だった。
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