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第二章:無限の地獄
第10話 『永遠への第一歩』
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背後で聖域の白い光が鈍い音と共に消えた。それは、あの品のない安らぎと、絶対的な危機との境界を示す最後の残響だった。
俺はそこに立ち尽くした。重さすら感じさせるほど濃密な、あらゆる希望を飲み込むような暗闇に包まれて。
静寂が支配していた。聴覚の空白は、自分の鼓動をまるで戦太鼓のように耳の奥で響かせた。
時間は無駄にできない。意識の中にあるインベントリへ手を伸ばし、二度目の人生から持ち越していた樹脂の松明を実体化させた。
火花が散り、影と抗いながら、無限に続く石の回廊のわずか数メートル先を照らし出す。
「さて……また始めるとするか……」
光の届かない天井へと昇っていく煙を見つめ、独り言ちた。
進む前に、自分が今どこに立っているのかを正確に把握する必要がある。この場所では、無知こそが死への第一歩なのだから。
一瞬目を閉じ、このカオスにおける唯一の羅針盤である半透明のユーザーインターフェースを呼び出した。
---
【 英雄ステータス 】
【 ダミアン・ティーボルト 】
レベル:15
種族:人間
称号:引退した英雄
筋力:22
敏捷:35
知力:48
マナ:110 / 110
【 アクティブスキル 】
風操作(ランクC):風の突風を圧縮し放つ能力
圧力のオーブ:高い衝撃力を持つ濃縮された風の球体を生成する
ウィンドステップ:10秒間、移動速度を上昇させる
【 インベントリ 】
黒鉄の短剣(x2):鋭利。影の腐食に耐性あり
樹脂の松明(x10):基本照明
乾燥食料(x5):非常食
放屁の瓶(x1):アイリアナからの秘密の贈り物
帰還ボタン:【 使用不可 】
---
帰還ボタンの項目に直に目が止まった。「使用不可」の文字は胃を締め付けたが、同時に奇妙な解放感をもたらした。
もう安全網はない。ここで死ねば、苦痛のサイクルは最初からやり直しになる。
歩き始める。不揃いな石の床を叩く靴の音だけが、この旅の道連れだった。
進みながら、アイリアナがこの場所について語ったことを反芻した。
この「無限の地獄」は単なるモンスターの巣窟ではない。現実世界のゴミ捨て場なのだ。
可能性は文字通り、無限。知性ある種族がいるということは、そこには社会、経済、紛争、そして何より知識が存在することを意味する。
「ゴブリンが魔法を使うなら、他のクリーチャーがこの地下に帝国を築いていないなんて理屈はないよな」
その考えは魅力的だった。これまでの三度の人生において、世界は常に魔王や預言によって定義されていた。
ここは、すべてを見尽くした者にとっての究極の挑戦の場だ。
突然、右側で何かがきしむ音がして思考が遮られた。
バカ神の祝福によって研ぎ澄まされた感覚が、松明の光が届かない影のすぐ外側で、素早い動きを察知した。
壁の亀裂から一体のクリーチャーが飛び出してきた。土ウサギ。砂のような毛並みと、人間の肉を切り裂くために発達した石の爪を持つ獣だ。
退かない。躊躇もしない。
左手を突き出すと、驚くほどの流暢さでマナが血管を駆け巡るのを感じた。
「死ね!」
圧縮された風の突風を放つ。女神の屁で完成させた技術だが、今は不可視の致命的な弾丸となって顕現した。
衝撃は直撃だった。風が油圧ハンマーのような威力でウサギを打ち据え、瞬く間にその体を灰色の塵へと変えた。
回廊に再び静寂が戻り、怪物の塵が床にゆっくりと積もっていく。
拳を握り、指先に残るエネルギーの余韻を感じた。体の反応は完璧だ。あの品のない修行は、確実に実を結んでいた。
扉は見えなくなったが、聖域があるはずの後方へと視線を向けた。
「アイリアナ……」
今頃、テレビをつけようと苦戦しているか、『スーパーマリオワールド』の最初のステージで画面に毒づきながら酒を煽っていることだろう。
……なんだか、ここからでも彼女の豪快な一発が聞こえてきた気がした。
いや、気のせいか。もっとも、事実だとしても驚きはしないが。
彼女を思い描き、短い間目を閉じると、本物の笑みが顔をよぎった。
「次に会う時は……間違いなく、たっぷり長い時間一緒にいてやるよ……」
自分に言い聞かせるように囁いた。
バカ神の馬鹿げた笑顔と、ピクピク動くエルフの耳を脳裏に浮かべ、俺は前を向いた。
松明を高く掲げ、風を味方につけて、無限の回廊の深淵へと足を踏み出した。生存を賭けた物語が、今始まった。
俺はそこに立ち尽くした。重さすら感じさせるほど濃密な、あらゆる希望を飲み込むような暗闇に包まれて。
静寂が支配していた。聴覚の空白は、自分の鼓動をまるで戦太鼓のように耳の奥で響かせた。
時間は無駄にできない。意識の中にあるインベントリへ手を伸ばし、二度目の人生から持ち越していた樹脂の松明を実体化させた。
火花が散り、影と抗いながら、無限に続く石の回廊のわずか数メートル先を照らし出す。
「さて……また始めるとするか……」
光の届かない天井へと昇っていく煙を見つめ、独り言ちた。
進む前に、自分が今どこに立っているのかを正確に把握する必要がある。この場所では、無知こそが死への第一歩なのだから。
一瞬目を閉じ、このカオスにおける唯一の羅針盤である半透明のユーザーインターフェースを呼び出した。
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【 英雄ステータス 】
【 ダミアン・ティーボルト 】
レベル:15
種族:人間
称号:引退した英雄
筋力:22
敏捷:35
知力:48
マナ:110 / 110
【 アクティブスキル 】
風操作(ランクC):風の突風を圧縮し放つ能力
圧力のオーブ:高い衝撃力を持つ濃縮された風の球体を生成する
ウィンドステップ:10秒間、移動速度を上昇させる
【 インベントリ 】
黒鉄の短剣(x2):鋭利。影の腐食に耐性あり
樹脂の松明(x10):基本照明
乾燥食料(x5):非常食
放屁の瓶(x1):アイリアナからの秘密の贈り物
帰還ボタン:【 使用不可 】
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帰還ボタンの項目に直に目が止まった。「使用不可」の文字は胃を締め付けたが、同時に奇妙な解放感をもたらした。
もう安全網はない。ここで死ねば、苦痛のサイクルは最初からやり直しになる。
歩き始める。不揃いな石の床を叩く靴の音だけが、この旅の道連れだった。
進みながら、アイリアナがこの場所について語ったことを反芻した。
この「無限の地獄」は単なるモンスターの巣窟ではない。現実世界のゴミ捨て場なのだ。
可能性は文字通り、無限。知性ある種族がいるということは、そこには社会、経済、紛争、そして何より知識が存在することを意味する。
「ゴブリンが魔法を使うなら、他のクリーチャーがこの地下に帝国を築いていないなんて理屈はないよな」
その考えは魅力的だった。これまでの三度の人生において、世界は常に魔王や預言によって定義されていた。
ここは、すべてを見尽くした者にとっての究極の挑戦の場だ。
突然、右側で何かがきしむ音がして思考が遮られた。
バカ神の祝福によって研ぎ澄まされた感覚が、松明の光が届かない影のすぐ外側で、素早い動きを察知した。
壁の亀裂から一体のクリーチャーが飛び出してきた。土ウサギ。砂のような毛並みと、人間の肉を切り裂くために発達した石の爪を持つ獣だ。
退かない。躊躇もしない。
左手を突き出すと、驚くほどの流暢さでマナが血管を駆け巡るのを感じた。
「死ね!」
圧縮された風の突風を放つ。女神の屁で完成させた技術だが、今は不可視の致命的な弾丸となって顕現した。
衝撃は直撃だった。風が油圧ハンマーのような威力でウサギを打ち据え、瞬く間にその体を灰色の塵へと変えた。
回廊に再び静寂が戻り、怪物の塵が床にゆっくりと積もっていく。
拳を握り、指先に残るエネルギーの余韻を感じた。体の反応は完璧だ。あの品のない修行は、確実に実を結んでいた。
扉は見えなくなったが、聖域があるはずの後方へと視線を向けた。
「アイリアナ……」
今頃、テレビをつけようと苦戦しているか、『スーパーマリオワールド』の最初のステージで画面に毒づきながら酒を煽っていることだろう。
……なんだか、ここからでも彼女の豪快な一発が聞こえてきた気がした。
いや、気のせいか。もっとも、事実だとしても驚きはしないが。
彼女を思い描き、短い間目を閉じると、本物の笑みが顔をよぎった。
「次に会う時は……間違いなく、たっぷり長い時間一緒にいてやるよ……」
自分に言い聞かせるように囁いた。
バカ神の馬鹿げた笑顔と、ピクピク動くエルフの耳を脳裏に浮かべ、俺は前を向いた。
松明を高く掲げ、風を味方につけて、無限の回廊の深淵へと足を踏み出した。生存を賭けた物語が、今始まった。
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