モンスターセイバーズ

短髪

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60話~72話 オーロラオーシャン編

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60話/夏だ!いざ、オーロラ島へ!!

竜牙:「あ~暑い・・今年は猛暑が続いているんだろ?大丈夫かなオーロラ島。」
夏海:「去年も相当暑かったわよ?とはいえ、今年は最高気温を更新し続けているから熱中症にかからないよう注意しないと。」
白鳥:「剣崎先輩、楽しみましょうね!」
目を輝かせる白鳥に竜牙は呆れて言葉がでない。
白鳥:「えいっ!」
竜牙:「うわっ!お、おい・・ひっつくなって!」
夏海:「・・・。」
橘:「木嶋さん、今度こそ僕と愛の扉を「開けないわよ!」」
ビシッ、バシッ、ドカッ!
市原:「あ、相変わらずこりねぇな。」
夏海:「あ~もうイライラする。そういえばさ、市原くんって久しぶりに出るんじゃない?この小説に。」
市原:「そ~なんだよ。読者もああ、いたなぁこんな子って感じになっている頃にってかやめろよ、そういうメタ的な話。」
花音:「今から引き返してもいいのよぉ~銀河ァ?」
スペード:「黙れ花音。そもそもなんでお前まで付いてきてんだ?」
花音:「暇だからよ。銀河こそなんでここにいるのよ。」
スペード:「暇だからだよ、悪いか!」
竜牙:「お前らそんな理由で夏海のプライベートジェットに乗り込んだのかよ!言っておくけど、食費とかその他モロモロは自腹で頼むぞ。」
夏海:「全く、なんでこう自己主張の強いキャラばっかなの・・この作品。」
市原:「メタ発言はやめなさい、ね?」
竜牙:「じゃ、前年度に習って飛行機内の部屋決めと行こうか。」
夏海:「今回は人数も多いし、2人ずつ部屋に入ってもらうわ。それじゃあくじで決めるから、みんなそれぞれで引いてね。」
竜牙:「あ、あと異性同士になると嫌だろうから、同性同士になるようにくじ、分けておいたぞ。」
全員が引き終り、みんなが同時に見る。
結果
一部屋目 足速師覇王・本田雷攻
二部屋目 市原勇太郎・橘一
三部屋目 銀河スペード・花音麗華
四部屋目 桜優香・木嶋夏海
五部屋目 剣崎竜牙・白鳥百合花
スペード・花音:「「うぉぉぉいいいっ?!」」
竜牙:「うわぁっ・・な、なんだよ。」
白鳥:「やったぁ!剣崎先輩と同じ部屋っ!」
白鳥はガッツポーズを取る。
スペード:「いや・・まてまて、どういうことだ剣崎!異性同士の部屋にならないようくじ分けたんじゃないのか?」
竜牙:「・・・あれ?」
スペード:「あれじゃねぇよ!ど~なってんだ、あぁん?」
竜牙:「スペード、顔がすごいことなってるぞ。落ち着けって!」
花音:「仕切り直しを要求するわ、こんなアホゥと同じ部屋だなんて考えただけでもおぞましいわ。」
スペード:「あんだと、このクソアマァ?」
花音:「素直な意見を述べたまでよ、メガネノッポ。」
スペード:「はい・・カチンときました、カチンときましたよぉぉおっ?!」
橘:「うぉぉぉぉ!俺も仕切り直しを要求するぜ、木嶋さん以外と同室だなんて死んでもお断りだ。」
夏海:「あらそう?じゃあ橘くんにはコックピットで寝てもらうわね。もちろん、縛り上げて全身の身動きをとれなくした上でね。大丈夫よ、いざという時は自動運転装置が作動するから。」
橘:「ひぃぃぃ!」
夏海:「同室だなんてもっての外よ!この性犯罪者予備軍!」
市原:「ほら、お前は俺と一緒の部屋だろ?行くぞ~。」
橘:「い、いやだ・・いやだぁぁぁっっ!!」
竜牙:「デス〇ートの夜〇月みたいな感じで去っていくなよ!そこまで必死になるくじ引きじゃないから!」
市原:「竜牙、後は頼んだ!」
市原と橘は部屋に入っていく。
本田:「俺もこの部屋割りのままでいい、やり直すのはめんどうだ。」
覇王:「ま、そういうことだ。俺と本田はこのまま一部屋、借りることにする。悪いな、一緒に連れててってもらって。」
夏海:「気にすることはないわ、それじゃ二人ともゆっくり休んで。」
覇王:「ああ、またな竜牙。」
竜牙:「おう。」
桜:「私もこのままでいいよ~。」
竜牙:「桜もか、じゃあ俺もこの「竜はダメ、強制参加よ!」」
夏海:(優香はともかく、白鳥さんをこのまま竜と同室にしておくのはまずいわ。)
竜牙:「そ、そんなぁ~。」
白鳥:「む・・。」
(流石に認める訳にはいきませんよね、こんな部屋割り。いいですよ、どちらの運が強いか勝負です、会長!)
夏海:「それじゃ、くじを引き直すわね。」
サッ。
結果(決定版)
一部屋目 足速師覇王・本田雷攻
二部屋目 市原勇太郎・橘一
三部屋目 剣崎竜牙・木嶋夏海
四部屋目 桜優香・花音麗華
五部屋目 銀河スペード・白鳥百合花
白鳥:「そ・・そんな・・くっ!」
ガタン。
白鳥は地面に倒れこむ。
白鳥:「うっ・・うっ・・。」
竜牙:「し、白鳥?なんで涙を流してるんだ?全力で悔しがる必要ないから、部屋割りだから・・ね?」
白鳥:「なんで!なんでよぉぉっ!!」
悲痛な叫びが空の彼方に響き渡る。
竜牙:「うぉい・・。」
夏海:「ま、当然の結果よね。」
白鳥:「インチキです!絶対にインチキしてますぅ!!」
夏海:「なっ?!し、失礼な!!種もしかけもありませんよ~だ。」
桜:「・・何ムキになってんのよ、年下相手にらしくもない。」
(ま、先輩がらみだと仕方ないわよね。)
白鳥:「会長のいじわるぅ~!!」
夏海:「ふふん♪私の勝ちね。」
一部屋目
本田:「なるほどな。剣崎たちについていけば早いっていうのはそういうことだったのか。」
覇王:「ああ、目的地は同じだ。ま、あいつらは今回、幼馴染みの子と会うために動いてるから俺たちとは目的が異なるが。それで?なぜオーロラ島に。」
本田:「あそこにオーロラマウンテンってところがあるだろ?」
覇王:「ああ。ハンターの話だと、あの山にはモンスターが潜んでいたらしい。何よりあのロイヤルストレートフラッシュが一時期、あそこを拠点にしていたとハンターから聞いている。」
(スペードもロイヤルストレートフラッシュがあの山で何をしていたのかまでは知らなかったしな。)
本田:「モンスターが潜む山か。俺は異常な光景が見れる山だと聞いていたんだが・・。」
覇王:「オーロラが見れることか?その事に関しても竜牙から情報を得ている。山頂まで登りきると、空一面に広がるオーロラを見れるみたいだ。」
本田:「通りでな。」
覇王:「?」
本田:「公にはなってないが、一般人の中にも出始めたんだ。この世界に今未確認の生物が潜んでいることに感づいている奴らがよ。なんせこの情報化社会、情報の拡散速度を侮っていたら痛い目を見るぜ。俺はよ、親父が刑事だからそういう情報、嫌でも耳に入ってくんだよ。」
本田はとある写真を覇王に見せる。
覇王:「これ・・次元の狭間と瓜二つじゃないか!」
本田:「キングダムセイバーズのカイって奴から聞いた話だと、モンスターの奴らは次元の狭間っていう出入り口を使ってこっちの世界にやってきてんだろ?写真に写っている黒い塊が次元の狭間なのか確証はないが、そいつはオーロラマウンテンで撮影されている。」
覇王:「!だが次元の狭間に関しては、これまでもセイバーズが幾度となく日本中を探し回っている。モンスターワールドへとつながる唯一の手がかりだからな。けど目撃情報を得ることはできなかったんだぞ?」
本田:「可能性はあるだろ?オーロラ島は日本から孤立している。だからこそあの地に足を踏み入れることができる人間は限られた者だけなはず。セイバーズはモンスターの目撃情報を頼りに次元の狭間を出現地を調べているんだろ?日本を中心に調べを進めていたのなら、手が届いてなくてもおかしくはない。去年の時点でモンスターがその山で生息していたのなら・・今は・・。」
覇王:「去年と比較できないぐらいの数が潜んでいる可能性はあるだろう。この写真が指し示すものが次元の狭間だとすれば、次元の狭間のエネルギーが影響してオーロラが出現していてもおかしくはない。」
本田:「いずれにしてもこの目で確認するまでは憶測でしかない、だからこそお前とハンターに協力を要請したんだ。どうやらお前たちはあの麒麟とも繋がっているみたいだしな。」
覇王:「!・・何者なんだ、お前は。」
本田:「名乗るほどのもんじゃねぇよ。それに俺は麒麟がセイバーズの創始者だってことぐらいしか知らねぇよ、カイからそう聞いている。」
二部屋目
市原:「神谷さん・・ああ、駄目だ橘・・今からあの人に会えるって考えただけでウキウキだぜ!」
橘:「・・木嶋さん・・。」
市原:「うるさいなぁ。橘よぉ、人間諦めが肝心って場合もあるんだぜ?」
橘:「うぐっ・・。」
市原:「しゃ~ねぇ。俺の方からトドメを刺しておくか。」
橘:「?」
市原:「木嶋さん、彼氏できたってよ。」
橘:「は?・・・・・・・・・・・・・・・・・・はぁぁぁああああっ?!!」
市原:「うるせぇよバカ。」
橘:「相手は誰なんだ?まさか・・剣崎?」
市原:「なんだ、分かってんじゃん。」
橘は頭をかかえて座り込む。
市原:「古畑〇三郎みたいなポーズとるほど頭悩ます問題じゃねぇよ。」
橘:「ずっと引っかかってた、どおりでここ最近の木嶋さんが輝いて見えていたわけだ。」
市原:「恋する乙女はキラキラしてるってどこぞの少女漫画で言ってたしな。」
橘:「まった!それが事実ならまずくね?!」
市原:「なんで?」
橘:「だってあの二人、今一緒の部屋なんだぞ?!・・あれ、おかしいの俺だけなの?」
三部屋目
夏海:「えへへ~一緒の部屋だね、竜。」
竜牙:「夏海、暑い。」
夏海は竜牙にひっついてる。
夏海:「だって嬉しいんだもん。竜は嬉しくないの?」
竜牙:「いや、嬉しいけど「じゃあ別にいいじゃん!」」
夏海は竜牙のひざの上に座った。
夏海:「よいしょっと。」
竜牙:「ちょっ!お前・・。」
夏海:「ねぇ竜?」
竜牙:「な、なんだよ。」
夏海:「私、朱里にちゃんと言うつもりでいるから。」
竜牙:「・・え?」
夏海:「お父さんに無理言ってオーロラ島に行く猶予までもらったのはそのためよ。それに、オーロラ島でこうしてみんなと集まれるのも今年で最後かもしれないし。」
竜牙:「お前、無理してな「無理なんかしてないよ!これは私なりのケジメ、ここで決着をつけておきたいの。NYあっちに行ったらそう簡単に福岡こっちには戻ってこれないからさ。それに竜だって、腹をくくって優香の気持ちをお断りしたんでしょ?今度は私の番!」
竜牙:「俺は相手が桜だったから・・勇気を出せたんだ。あいつは俺に振られたからって距離を置いたり、関係をギクシャクさせちゃうような奴じゃないって信頼してたから。けど、朱里は・・たぶん、そうはならないと思う。」
夏海:「分かってる。でも、だからと言ってこのまま黙っているわけにはいかないでしょ?竜もそうなんじゃない?」
竜牙:「・・ああ、これ以上朱里にも総一郎さんにもぬか喜びをさせたくない!」
夏海:「じゃあ決まりね!」
夏海は竜牙の上から降りて背を向ける。
竜牙:「なぁ、俺も一緒に・・。」
夏海:「竜!」
竜牙:「な、なんだよ・・。」
夏海:「もしも・・あくまでもしもの話だけど、今回の一件で私と朱里が対立しちゃった場合。」
竜牙:「・・・。」
夏海:「竜は私の味方になってくれる?」
竜牙:「味方って言うか、そういう考え方は捨てろ。」
夏海:「え?」
竜牙:「そんなに背負いこむこたぁねぇよ、俺たちは互いに惹かれあって付き合っている。今回の一件で仮にお前たちが対立しちゃったとしても、俺が仲裁に入るから。だいたい、朱里との婚約の件をうやむやにしてきた俺にだって責任はある。」
夏海:「ふ、ふーん。」
竜牙:「なんだよ。」
夏海:「勉強はできないくせに、そういうところは変に大人よね。」
竜牙:「一言余計だ。」
夏海:「安心した。」
夏海は竜牙の方を振り向く。
竜牙:「な、なに?」
夏海:「だいすきっ!」
ギュッ!
竜牙:「ちょっ?!く、ぐるし・・・っ。は、はなして・・。」
夏海:「いやよ・・。」
(この夏休みが終われば竜とも会えなくなる。こうやって抱きしめることもできなくなる・・、だったらせめて今は、こういう時間を大切にしたい。)
竜牙:「し・・しぬっ・・。」
四部屋目
桜:「麗華ってさ、よく銀河くんと喧嘩してるよね。」
花音:「だからなんだ?」
桜:「喧嘩するほど仲がいいっていう・・ごぉとばぁがァァ・・っ!」
花音は桜の頬を引っ張る。
花音:「安心しろ、ただ単に仲が悪いだけだ。」
花音はメガネを光らせる。
桜:「い、いだいぃ・・いっがぁい・・いっがぁいはらひぃて・・。」
花音:「フン。」
パッ。
桜:「もうっ!口が裂けちゃったらどーすんのよ!」
花音:「余計な詮索をするからだ。」
桜:「え~だってぇ~幼馴染みなんでしょ~。」
花音:「私の事よりか、夏海と剣崎がどうなっているのか気にならないのか?」
桜:「・・・・。」
花音:「?」
桜:「もう、いいの。」
花音:「いいって?」
桜:「先輩の気持ちはもう・・。」
(!やばい・・涙が・・。)
花音:「優香?」
桜:「ちょ、ちょっとトイレ!」
タッタッタッ!
優香が部屋を出ていったのを確認して、花音はその場で頭を抱える。
花音:「無神経か私っ!あ~もう、後で優香に謝らないと。これだから色恋沙汰は面倒なんだ!」
(あの反応・・失恋の傷は思ってたよりも深そうだ、この旅行で少しでもリフレッシュさせてあげられればいいんだけど。)
五部屋目
白鳥:「あーあ、せっかく先輩と二人きりになれるチャンスだったのに。」
スペード:「おい白鳥。」
白鳥:「なんですか。」
スペード:「ずっとそうしているつもりか?落ち込んでいてもしょうがないぞ?」
白鳥:「ほっといてください。」
スペード:「お前なぁ、あいつらはまだ付き合い初めたばっかなんだからそっとしといてやれよ。」
白鳥:「は?」
スペード:「いや、だから・・。」
白鳥:「はぁぁぁぁああああっ?!!」
スペード:「うぉっ?!びっくりした~。」
白鳥:「た、ただの噂じゃないですか~もう、驚かさないでくださいよ。」
スペード:「残念ながら、あれは噂じゃない。あいつらはできている。」
白鳥:「なっ!・・じ、冗談きついですよ~もう~。」
スペード:「・・・。」
白鳥:「が・・ガチなんですか・・?」
スペード:「ああ。」
白鳥:「そ、そんな・・ビジュアルショック。」
スペード:「な、何だよビジュアルショックって。」
白鳥は憎悪のオーラを纏い、奮い立つ!
白鳥:「おのれ~生徒の模範となるべき立場にいる人が、よくもまぁ堂々と不純異性交遊をっ!!」
スペード:「別に不純じゃないぞ?おい、聞こえてるか?お~い!」
白鳥はスペードに指を差す。
白鳥:「私!白鳥百合花は、淫乱生徒会長の木嶋先輩から剣崎先輩の心を奪い取ることをここに誓います!」
スペード:「いや、俺に宣言されても・・。」
白鳥:「このまま無事にお付き合いできると思ったら大間違いですよ、会長!フッフッフ・・。」
スペード:「なんなんだこいつは。」
各々の目的を再確認し、一行はオーロラ島にたどり着いた。
竜牙:「あ、あつい・・。」
スペード:「こりゃあ予想を遥かに上回る暑さだな。」
夏海:「とりあえず大和のところまで行きましょ。」
黄河家前。
スペード:「おいおい・・まじか。」
本田:「で、でかい・・。」
花音:「まって・・ただのお金持ちじゃないわよね?!」
竜牙:「ああ。大和は黄河家財閥の御曹司で、資産だけで言えば夏海の家とは比較できないぐらいの大金持ちだ。」
覇王:「あの黄河家財閥の御曹司だと?!」
白鳥:「御曹司と幼馴染みだなんて聞いてないです・・。」
桜:「あ!」
桜の視線の先には、こっちに向かって手を振りながら歩いてくる人影が写った。
黄河:「おおう。来たな夏海、竜牙!」
竜牙:「ああ、今年も来たぜ。」
夏海:「久しぶりね大和。」
黄河:「ん?お前たちはいつぞやの!」
桜・市原・橘:「「「お久しぶりです。」」」
黄河:「ひぃふぅみぃ・・ん?あれ、前より増えてないか?」
夏海:「まぁ色々とあってね。」
白鳥:「初めまして!白鳥百合花です。」
スペード:「え・・ええっと、銀河スペードと申します。」
(財閥の御曹司だんて・・失礼のないようにしねぇと!)
花音:「花音麗華です。」
覇王:「お初目にかかります。私、足速師覇王と申します。」
本田:「本田雷攻だ、短い間だがよろしく頼む。」
黄河:「まて!俺の家に全員入るのか?」
夏海:「ま、まぁそこは黄河家財閥の力でなんとか・・ね?」
竜牙:「頼む大和!」
黄河:「ま、まぁ構わないが・・。」
桜:「すみません、のどが乾いてて。お水っていただけますか?」
黄河:「!す、すまん。とにかく入って。あ、竜牙・・雄介がもう来ているぞ。」
竜牙:「そうなのか、あいつにしちゃ早いな。」
夏海:「大和?」
黄河:「なんだ夏海?」
夏海:「朱里も来ているの?」
黄河:「いや、あいつはまだ到着してない。」
夏海:「そ、そう!あ、ありがとう。」
黄河:「?」
竜牙:「久しぶりだな雄介。」
林:「おおっ、竜!」
全員:「「お邪魔しまーす。」」
林:「?!こ、今年は随分と連れてきたねぇ~。」
竜牙:「悪りぃ、大所帯で。」
林:「旅行は賑やかな方が楽しいものさ。」
橘:「こっちを見てニヤニヤするな、相変わらずだなあんた。」
林:「今年もよろしくね、一くん!」
橘:「うぐっ・・やっぱりコイツは苦手だ。」
玄関を閉め、リビングにやってきた黄河が声をかける。
黄河:「みんな、唐突で悪いが今年はオーロラオーシャンに行こうと思っている。」
竜牙:「オーロラオーシャン?」
黄河:「去年はオーロラマウンテンに足を運んだだろ?せっかく来てもらったのに、同じところに足を運ぶのも悪い気がしてな。俺なりにプランを立ててみたわけだ。」
夏海:「オーシャンと名前がつくからには海ってことよね?」
黄河:「その通りだ。今年は思いっきり泳ごうじゃないか!」
竜牙:「ちょっといいか大和?」
黄河:「どうした竜牙?」
竜牙:「オーロラオーシャンは安全が確保されている場所なんだろうな?」
黄河:「事前に調査済みだ。安全は俺が保障する、それに今回に限っては貸切り状態にしているから自由に使えるぞ。」
竜牙:「そっか、奇妙な噂が流れている場所ってわけじゃないんだな。」
黄河:「オーロラオーシャンの名前の由来は、オーロラ島を中心に広がる巨大な海そのものを表している。念のため去年の反省点も踏まえて、今回に限っては俺が念入りに調査したから安心していい。」
竜牙:「そうか、疑って悪かったな。」
黄河:「今日はもう暗いし明日向かうとしよう。」
竜牙:「ああ。その方がいいだろうな。朱里もまだ来てないしよ。」
黄河:「ということで、今回は毎年恒例の花火をしに行くぞ。」
一方、ラスベガス・カジノでは。
速水:「僕の勝ちだ。」
ディーラー:「ウィーナー!トモヤハヤミ!!」
速水:「よし!去年の数倍は稼げている。あとは・・。」
(これだけギャラリーがざわつけば、嗅ぎつけて姿を見せにくるはず。)

61話/先輩の言った事って大きな力になるよね?

順調に勝負を勝ち上がっていく速水・・。
速水:「さ、次の対戦相手は誰なんだ?」
洋子:「あら?私を待っていたんじゃないの?」
速水:「!・・来たな、母さん。」
ディーラー:「キマシター!キョネンココラスベガスカジノデ、ダイハランヲマキオコシタハヤミオヤコのチョクセツタイケツダ―!!」
観客:「「イェェェエエエイ!!」」
速水:「本気で行くよ、母さん!」
洋子:「今年こそ、あなたの懐にある勝利を奪い取ってみせるわ。」
速水:「それじゃあ行くよ、僕はこの勝負に800億かける。」
洋子:「珍しいわね、私の手を警戒してちまちま賭けていたあなたが、序盤から一気に大金を賭けるなんて。」
速水:「僕の尊敬している部長は負けを恐れないんです。前に部長が教えてくれました、自分の心の弱さに打ち勝たなきゃいずれまた自分の弱い部分と向き合わなきゃいけなくなる。大事なことはいつ立ち向かうか・・・・・・だと。それはギャンブルでも言えることだと思います。」
洋子:「例のお世話になっている部長さんのことよね?あの智也がここまで影響を受けるなんてねぇ、いい人と巡り合えたじゃない。でもラスベガスは勝負の町、一つの判断ミスがあなたのすべてを奪う。それを承知の上で勝負に出てんでしょうね?」
速水:「そうだよ。そして、今年も母さんに勝って賞金を手に日本に帰るよ。」
洋子:「言うじゃない、なら私は・・。」
スッ。
速水:「・・・!」
(10兆?!)
洋子:「さすがのあなたも驚きを隠せないみたいね。去年、私は同じ賭場であなたに敗北したわ。それはひとえにあなたへの警戒を怠ったからだと私は考えてる。だから臆さず私は、私自身の運を信じ10兆・・この勝負に賭ける。」
速水:「・・・っ。」
洋子:「どうする?ルーレットの出玉はそう簡単に当てられないわよ。」
速水:「スピード勝負だ、ラインペット。」
洋子:「!」
(いきなりラインペット?!何を考えているの?)
速水:「出玉は赤だ!」
(大丈夫、僕は自分を信じてる。)
コロコロ・・。
出玉は・・赤!
速水:「よし!」
洋子:「!・・や、やるじゃない。始まっていきなり10兆も持っていかれるなんて思わなかったわ。」
それからも速水は怒涛の快進撃を続けた・・そして。
洋子:「そ、そんな・・。智也は今までわずかに2回ずつ張ってそのうち1回は確実にラインペット(5倍付け)以上のところを当てている・・。」
速水:「このギリギリの緊張感、これだからギャンブルはやめられない。」
洋子:「いくら運がついているからってこんな事っ?!私でさえ8回ずつ張って1回程度の確率でしかラインペットを当てられないのに!」
速水:「確か母さんの所持金はもう80億しかないよね?」
洋子:「・・・何が言いたいの?」
速水:「次がラストチャンスってこと。覚えてる?去年は僕が残り80億で今の母さんと同じ状況に陥ってたんだ。」
洋子:「フフッ・・やっぱり私の子ね、身震いしちゃうほどの強運の持ち主だこと。」
速水:「正念場だよ。」
洋子:「そうね、ここで当てなきゃ私の負け。面白い、私はラスベガスの女王・・賭けで失った金は賭けで取り戻して見せる!」
速水:「なんで・・笑ってるんだ?」
(まさか、このプレッシャーの中、ギャンブルを楽しんでるの?!)
洋子:「出玉は・・黒。」
コロコロ・・。
カラン・・カラン・・。
出玉は黒だった。
洋子:「っし!」
速水:「賭けグルイだ・・この土壇場で・・。」
洋子:「勝利の女神がどちらに微笑むかなんてわからないものね、さぁいくわよ!」

竜牙:「眠れねぇ・・外の空気でも吸いにいくか。」
夏海:「スースー。」
竜牙:「っと・・起こさねぇようにしねぇと。」
ガタン。
覇王:「!」
竜牙:「覇王?」
竜牙が部屋を出ると、覇王がトイレから出てきた。
覇王:「なんだ?お前もトイレか。」
竜牙:「あ、いや・・眠れなくてさ。そーいや悪かったな、花火の時。」
覇王:「?」
竜牙:「俺の連れのせいで余計な危害を加えっちまっただろ?」
覇王:「気にするな、俺は気にしてないぞ。」
さかのぼること二時間前。
竜牙:「相変わらずすごい量だな、花火。」
黄河:「今年は余分に買いすぎてしまってな、まぁ結果オーライってとこか。」
白鳥:「剣崎先輩!私と線香花火でもしませんか?」
竜牙:「ちょっ!ひ、引っ張るなって・・。」
夏海:「はいはい。」
白鳥:「ちょっ!なんで引き離すんですか?!」
夏海:「竜は私とロケット花火を楽しむんだから。」
白鳥:「先輩は一言もそんな事言ってませんよ、淫乱会長?」
夏海:「やめてくれる?そーいう誤解を招く卑猥な呼び方。」
白鳥:「なんなら、ここで全国大会の借りを返してあげてもいいんですよ。」
夏海:「上等じゃない、ひねりつぶしてあげるわ。」
バチバチ・・ッ!
桜:「モテる男は辛いですね~先輩?」
竜牙:「他人事だと思って~。」
桜:「あーあ、数ヶ月前までだったら私もあの二人に交じって火花散らしてたんでしょうね。」
竜牙:「それは勘弁だな・・ほんとに。」
クスッ。
桜:「冗談ですよ。ほら!2人の仲裁に行ってあげてください。」
トン。
桜は竜牙の背中を押す。
竜牙:「え~あの中に入るのかよ・・。」
橘:「木嶋さ~ん、僕と花火でも「外野は黙ってなさい!!」」
橘:「・・・・はい。」
市原:「竜牙。」
竜牙:「ん?」
市原:「おらぁっ!」
竜牙:「熱っ!!おいっ!花火をこっちに向けんな!」
※花火は人に向けてはいけません。
林:「なかなかに賑やかだね~。」
黄河:「朱里が来たらもっと賑やかになるんじゃないか?」
林:「朱里はパワフルだからね~。」
黄河:「竜牙が近くにいるときの朱里は特にな。」
林:「んじゃま、僕もひと夏の思い出をつくろうかな。」
黄河:「?」
林:「麗ちゃん、一緒に花火しないかい?」
花音:「え?わ、私とですか?」
林:「麗ちゃんには雄介って呼んでほしいな!」
花音:「い、いや・・それはちょっと・・。」
黄河:「ほ~雄介が女の子を自ら誘うなんてな。」
スペード:「な、なんだあいつ・・。」
花音:「は、林さん・・こういうナンパみたいなことをされるのは・・その・・な、慣れてないというか・・。」
林:「モジモジしちゃってかっわいい~!グイグイくるの苦手?」
スペード:「おいあんた!」
林:「おっと!騎士ナイトのご登場~。」
スペード:「は?」
林:「?あれ、君のこれじゃないの?」」
スペード:「?!お、俺は花音のことなんて好きじゃありません。むしろ嫌いなんですよ?!」
花音:「それはこっちの台詞だ!メガネノッポが!!」
スペード:「んだと~!」
花音:「なによ!」
林:「まぁまぁ。じゃあ麗ちゃん、僕とあっちで大人の花火をしようか。」
花音:「え?!あ、あの・・大人の?!え・・ええええっ?!」
林は花音の耳に口元を近づける。
林:「大丈夫、さぁいこ。」
花音:「あ、あのっ!み、耳はやめてください、あ・・あつい・・です。」
(な、なんなのこの人ぉ~!)
花音が赤面しながら抵抗している様子を見て、スペードはどうにも落ち着かない。
スペード:「くっそ・・キザなやつだなぁ・・。」
(だいたい花音の奴もデレデレしすぎなんだよ!確かに林さんはイケメンでスタイルもいいけどさぁ。)
黄河:「なんだなんだ?久々にドストライクな子だったのか、やけに積極的じゃないか雄介のやつ。」
スペード:「黄河さん、俺あの人苦手です。」
黄河:「フフッ・・。」
スペード:「何笑ってんすか?」
黄河:「あ、いや・・去年も同じことを言っていた人がいたなぁって。」
スペード:「そうなんですか?」
黄河:「ほら、橘だよ。」
スペード:「橘?」
黄河:「オーロラマウンテンに登った時にな、分かれ道に行き着いたことが何度かあったんだ。その度に雄介のやつが悪ノリして、橘にどちらの道に進むべきか選択を委ねてていたことがあったんだけど・・。」
スペード:「?」
黄河:「これがたち悪くてさ~橘が進もうとした道と逆の道を行こうとするんだよ。それで橘がカンカンにキレて・・。」
スペード:「そいつはたち悪りぃっすね。そんなんでオーロラマウンテンを登れたんですか?」
黄河:「登れた。」
スペード:「それもそれですげぇな。」
黄河:「だから余計に・・な?」
スペード:「あー気持ちは察するぜ、橘。」
本田:「なぁ覇王。」
覇王:「なんだ?」
本田:「花火って面白れぇんだな!」
覇王:「・・今までしたことなかったのか?」
本田:「見に行ったことはあるが、こういうのは初めてなんだ。」
覇王:「そうか。なら、思いっきり楽しんだらいいさ。」
竜牙:「ああっ、覇王!」
覇王:「ん?」
バチッ!
覇王の白マントに飛んできた花火が着火した。
ボォォゥウ!
覇王:「うおっ?!」
覇王は慌てて白マントを取り、仰いで火を消す!
白鳥:「うわぁぁっ!覇王のマントが・・す、すみません・・。」
夏海:「あちゃ~覇王、ごめんね。白鳥さんの花火が滑って飛んできちゃったんだと思う。」
ブチッ!
覇王:「火気厳禁と言う言葉を知らんのか?」
覇王は構える。
覇王:「・・X技・・。」
竜牙:「うわぁぁっ!ここで必殺技を使うな~!!」

覇王:「フッ、気にしてないぞ。」
竜牙:「いや待て、気にしてるだろ。」
覇王:「あの時はついカッとなってしまったが、本当に気にしてないぞ。」
覇王はそっぽを向き、たばこに火をつける。
竜牙:「どうだか。そーいやお前と本田ってオーロラマウンテンの調査に行くんだろ?」
覇王:「お前に話したか、俺?」
竜牙:「本田から聞いた。なぁ覇王・・お前は何を隠している?」
覇王:「オーロラマウンテンには次元の狭間が発生している可能性がある、その真実を調査するためにお前たちにここまで連れてきてもらったんだ。」

62話/パラレルワールドとモンスターワールド

竜牙:「次元の狭間?」
覇王:「時空間の歪みのようなものだ。」



ダイヤ:「ちなみに1つ申し上げるなら、先程のモンスターたちはわたしが呼び寄せました。」

- オーロラマウンテンの地下には化け物の巣らしきものが眠っている。それを目撃した大勢の取材班は行方をくらましている。しかし、この記事は表向きにすることはない。なぜならば、我々は化け物に口止めをされている。このことを外部に広めることを禁ずる。もし、そのようなことがあるならば、我々を一人残らず皆殺しにすると我々はその洞窟を管理しているという男から脅迫された。-

フォルテ:「モンスターと呼ばれる怪物が住みつくモンスターワールド。そして人という生き物が住みつく人間界、全く異なる生物たちの世界だ。」



竜牙:「・・!まさかその次元の狭間ってどこかに繋がっているのか?」
覇王:「高確率でモンスターが存在する異世界、モンスターワールドと繋がっているはずだ。」
竜牙:「なるほどな、今までひっかかっていたもの・・その点と点が線で繋がったぜ。よーはその次元の狭間が、モンスターの出入り口になっているってことか。」
覇王:「その口ぶり・・お前はモンスターワールドのことを知ってたのか。」
竜牙:「そういう世界があるってことぐらいしか知らなかったよ。となるとパラレルワールドってのも関係してくるんじゃねぇか?」
覇王:「パラレルワールド・・フォルテの住む世界のことか。直接関係しているというよりは、フォルテそのものが関係していると言った方がいいかもしれない。奴はパラレルワールドを通して様々な世界を行き来きできる。それが理由なのかは分からんが、光ヶ丘学院に限らず全国各地でモンスターの出現が確認された。これは奴が行き来きしたことで生まれた歪み、次元の狭間が原因だと俺は考えている。」
竜牙:「なるほど。理解したぜ、数の増えたモンスターに対抗するには、俺たちだけだと数が足りない。だからこそ、全国各地でモンスターセイバーズになれる器を見つけ、育成する必要があったんだな。けど、強くなったモンスターたちは一筋縄ではいかない。そこで行きついた答えが短期間で飛躍的なレベルアップが期待できるセイバーズ全国大会というわけか。」
覇王:「随分と察しがいいな、そういうことだ。」
竜牙:「そーいうあんたは、前にフォルテのアジトに入り込んで潜入捜査をしていたんだろ?何か情報は得られなかったのか?」
覇王:「奴が失踪した後、もう一度、アジトに足を運んだがすでにデータは削除されていた。残されていたものは、人獣の実験に関する書類やデータばかりで参考になりそうなものを見つけることはできなかったんだ。」
竜牙:「まてよ・・でも次元の狭間って出入り口のような役割をしているんだろ?」
覇王:「?」
竜牙:「そいつを使えば俺たちの方からもモンスターワールドに行けるんじゃないか?向こうにいけば何か分かるかも知れないぜ?」
覇王:「確かに次元の狭間を使えば、人間界からモンスターワールド、パラレルワールドに向かうことはできる。だが、人間界に戻ってくることができなくなるらしい。」
竜牙:「?!」
覇王:「戻ってくるためには証が必要だ。」
竜牙:「証?」
覇王:「選ばれたセイバーズのみに与えられる心の強さを表した小さなビー玉のようなものだ。」
竜牙:「選ばれたって・・誰に?」
覇王:「いずれ分かるさ。いずれにしても次元の狭間の有無を確認しないことには始まらない。だからこその調査というわけだ。」
竜牙:「事情は概ね把握できた、俺も「お前は来なくていい。」」
覇王はたばこの火を消し、吸い殻を携帯用の灰皿に入れる。
竜牙:「なんでだよ!」
覇王:「夏海・・日本を経つんだってな、ならこーいう時間は大切にすべきだ。お前は気にせず、幼馴染みや友人とそして恋人と沢山思い出をつくってこい。何か情報が入り次第、俺の方からまた連絡する。」
竜牙:「けど・・。」
覇王:「今日という日は二度とやってこない、一期一会だ。夏海のそばにいてやれ、お前にしかできないことだ。」
翌日。
黄河:「それじゃあオーロラオーシャンに向かうぞ、みんな!」
全員:「「おおーっ!」」
夏海:「あれ、覇王や本田は?」
竜牙:「あーあいつらは用事があるらしくてさ、行っちまった。」
夏海:「そういえば、そんな事を言ってたわね。」
スペード:「剣崎、黄河さんの姿が見当たらないんだが・・?」
竜牙:「大和ならトイレで精神統一でもしてんじゃね?」
スペード:「は?」
夏海:「大和は乗り物が苦手なのよ、オーロラオーシャンはオーロラマウンテンほど離れてはいないけど、プライベートジェットで移動しないといけないぐらいの距離はあるわ・・たぶん、今頃はトイレで身震いしてるんじゃない?」
スペード:「いやいや・・あの人ノリノリでオーロラオーシャンに行くぞ!って言ってたのに、なんだよそれ!」
竜牙:「俺たちの喜ぶ顔が見たかったんだろ、大和はそういう憎めないやつなんだよ。」
一方・・その頃。
覇王:「ここがオーロラマウンテンか。」
本田:「覇王、気づいてるか?」
覇王:「ああ。囲まれてるな・・それもかなりの数だ。」
本田:「まだ登り始めてすらないってのに・・。」
覇王:「強行突破しかないな、幸い俺たち2人は広範囲攻撃が放てる。」
モンスター:「キシャァァアアッ!!」
本田:「スパークリングサンダー!」
ビリリッ!!
本田の電撃を纏った拳が迫りくるモンスターをなぎ倒していく!
バシッ!バシッ!バシッ!
本田:「つってもなぁ、どこからともなく湧いてくる・・キリがないぞ!」
覇王:「・・・。」
本田:「おい!手が止まってるぞ!!」
覇王:「!なぁ本田、視界を遮る最低限の数だけをなぎ倒しながら、こいつらが歩いてきてる方向に向かってオーロラマウンテンを登山していけば、次元の狭間までたどり着けるんじゃないか?」
本田:「!・・なるほど、こいつらを逆に利用するのか。」
覇王:「竜牙曰く、山頂に近づけば近づくほど霧が濃くなって前に進むのが困難になっていくらしい。先のことを考えてもこれが最善の策だろう。」
バシッ!バシッ!バシッ!
本田:「なら・・道を開いて進むぞ。X技・ファイナルサンダーアロー!」
本田は両手に溜めていた電気エネルギーを配分調整し、両手で2本の矢を造形していく!
覇王:「!電力で武器を作りあげた?!」
本田:「合わせろ、覇王!俺のファイナルサンダーアローの速度に乗れば、あんたの武器はより殺傷力を増すはずだ!!」
本田は覇王に向けて矢を放つ!
覇王:「ほー、お前の電撃の矢をブースターとして俺の武器に纏わせる気か、面白い!奥義・ロイヤルセイバー!!」
覇王の投げたロイヤルセイバーはファイナルサンダーアローと混合し、光り輝く槍となって一直線にモンスターを貫いていく!!
シュゥゥゥゥッ!!
モンスター:「「「キシャァァアアッ?!」」」
ズバッ!ズバッ!ズバッ!
覇王:「これが俺たちの合体必殺技・・。」
本田:「ロイヤルサンダーアローだ!」
覇王:「!道が開けた、先を急ぐぞ。」
本田:「お、おい待てよ!」

黄河:「つ、着いたぁ・・マイラブブルースカイ・・。」
桜:「だ、大丈夫ですか?」
モンスター:「キシャァアッ!!」
竜牙:「!おい・・この鳴き声・・。」
スペード:「向こうの方からだ。行くぞ剣崎!」
夏海:「ちょっ!2人とも!!」
市原:「木嶋、お前も行って来い!」
桜:「上手いこと、私と市原くんで誤魔化しておくから!」
夏海:「?!ふ、2人とも・・ありがとっ!」
タッタッタッ!
スペード:「こいつら・・なんでこんな孤島に!」
竜牙、夏海、スペードの3人の前には数十体のモンスターたちが浜辺で放浪していた!
竜牙:「このままだと向こう岸にいる桜たちも危ない!スペード、こいつらごと俺らをフィールドワープできるか?」
スペード:「任せろ、フィールドワープ!」
シュッ!
竜牙:「ここは・・?」
スペード:「大分県にある耶馬溪だ。この山の中なら思う存分に戦える。」
竜牙:「よし・・いくぞ!」
タッタッタッ!
竜牙とスペードはモンスターたちに駆け寄り、剣で引き裂く!!
竜牙:「真ドラゴンソード!」
スペード:「超グラビティブレード!」
ズババッ!
ズババッ!
竜牙:「!」
スペード:「傷口が治っていく?!」
モンスター:「ギシャァァッ!」
パシッ!
パシッ!
竜牙:「うおっ?!」
スペード:「くそっ・・なんだこいつら!」
夏海:「2人とも伏せて、ハイパートリニティストーム!」
ビュゥン・・ドカァァァァアアアアアアアアアアン!!
同じ軌道に乗った5つの弾丸が連鎖爆発を起こす!

63話/謎の人物とオーロラ島の異変

竜牙:「げほっ、げほっ・・いつの間にマーカーを・・。」
夏海:「2人が剣を取り出した時にこっそりつけておいたの。」
スペード:「ごほっ、ごほっ・・俺たちの剣に貼りついていたマーカーはモンスターと擦れて、地面に落っこちた。・・そんなところか?」
夏海:「ええ、そこを突いたんだけど・・ただの雑魚モンスターじゃないみたいよ。」
竜牙:「な、なんつ~回復力だ、地べたにへばりついていたモンスターが起き上がっていくぞ!」
スペード:(いや・・さっきのモンスターよりか回復のスピードが遅い。もしかして・・。)
モンスター:「ギシャァァッ!」
考え込むスペードに回復を終えたモンスターたちが突進していく!
竜牙:「X技・ギャラクシーブレード・ザ・ルナ!」
ピカァァアン!
モンスター:「グゥッ?!」
竜牙のギャラクシーブレードの放つ光が突進してきたモンスターたちを怯ませる。
スペード:「!っ・・すまない剣崎。」
竜牙:「ぼーっとするなんてらしくねぇぞ?何かひっかかることでもあったのか?」
スペード:「・・木嶋。」
夏海:「?」
スペード:「爆裂弾を俺のグラビティブレード目掛けて放つんだ!」
夏海:「?!」
スペード:「早く!」
夏海:「わ、分かったわ。X技・第四の弾・爆裂弾!」
竜牙:「何を考えてるんだ?!爆裂弾はマーカーをつけた箇所に弾丸を撃ち込むことで、初めて連鎖爆発を起こす。スペードのグラビティブレードに放ったところで・・。」
スペード:「X技・ユニバースソード!」
アメイジングトルネードを切り裂いてできた無数の真空波が爆裂弾の弾丸を切り裂き、空気中で爆発を引き起こしながらモンスターたちを迎撃していく!!
ドカァァン!ドカァァン!ドカァァン!
竜牙:「す、すげぇ・・!」
スペード:「思ったとおりだ。どんどん撃って来い、木嶋!」
夏海:「ええ!」
ドカァァン!ドカァァン!ドカァァン!
スペード:「これだけの高速爆発なら奴らに備わった特殊な自然治癒力でも回復が追いつかないはずだ!これが合体必殺技・真空爆裂弾だ!」
ドカァァン!ドカァァン!ドカァァン!
竜牙:「す、すげぇ・・。」
夏海:「やっつけちゃった・・。」
スペード:「戻るぞ、フィールドワープ!」
シュッ!
フォルテ:「・・今のは・・もしや剣崎竜牙?まさかこんなところで・・。」
警官:「いたぞ、フォルテだ!」
フォルテ:「ちぃっ!もう来たのか。」
警官:「なっ!お、おい待て!!」

黄河:「おう、カブトムシは見つかったか?」
竜牙:「ハァハァ・・え?カブト・・なに?」
林:「そんなに慌てて帰ってこなくてもよかったのに。」
花音:「カブトムシを追いかけていった2人を夏海が探しに行ってたんでしょ?」
林:「それじゃ麗ちゃん、僕らはいこうか。」
花音:「あ、ちょっ・・林さん・・!」
スペード・夏海・竜牙:(小学生かよ、もうちょっとマシな嘘はつけなかったのか。)
3人は頭を抱える。
桜:「てへ。」
夏海:「優香たちに任せた私たちが馬鹿だったわ。」
桜:「心外ね、結果的に誤魔化せたんだからいいじゃない!」
黄河:「みんなもう泳いでるぞ、お前たちも着替えてきたらどうだ?」
竜牙:「そうする!」
スペード:「黄河さんは泳がないんですか?」
黄河:「それが、ジャンケンに負けてみんなの分のアイスを買いに出なきゃいけなくなって。」
スペード:「あーなるほど。」
夏海:「竜は行ったわよ、スペードも更衣室に向かったら?」
スペード:「ああ、行ってくる。」
?:「君が銀河スペードくんか。」
スペード:「・・・え?」
ゾクッ!
背筋に凍りつく・・。
スペード:「なんだ・・この殺気!」
?:「元ロイヤルストレートフラッシュの君がセイバーズをやってるなんてね、随分と楽しそうじゃないか。」
スペード:「お前・・何者だ。」
(どこから声が聞こえてるんだ?!)
?:「いずれ分かるさ。それにしても、こんな孤島にまさかセイバーズがいるなんてね。」
スペード:「声の方向は・・ここだ!」
(超必殺技・アメイジングトルネード!)
?:「うわぁっ!」
ドカァァアン!
スペード:「正体を現したか。」
?:「僕の位置を強引にあぶり出すなんて流石だね。」
スペード:「答えろ、何者だ。」
獣牙:「獣牙渡、コードネームはデストロイ。」
スペード:「コードネーム?」
獣牙:「現段階で教えられるのはここまでだよ、まだ君と会うことは許されてないからね。」
スペード:「まだ?」
獣牙:「おっと、あまり深入りしない方が身の為だよ。以後お見知り置きを、スペードくん?」
スペード:「おい、待て!」
シュッ!
スペード:「消えやがった・・一体何者なんだあいつ。」
男性更衣室。
竜牙:「なんであんなところにモンスターが生息してたんだ?」
?:「この島のどっかに何かがあるからだろ。」
竜牙:「うわぁっ!だ、誰だ・・お前!!」
竜牙が振り返ると、赤髪の男があぐらをかいて座っていた。
?:「お前、剣崎竜牙だろ?」
竜牙:「?!なんで俺の名前を・・。」
?:「やっぱりな、こりゃあいい土産話ができたぜ。」
竜牙:「おい、答えろよ!」
黒炎:「ったくめんどくせぇな・・黒炎拓也。コードネームはハデス。」
竜牙:「コードネーム?」
黒炎:「てめぇが知る必要はねぇよ、あばよ剣崎。」
竜牙:「おい!」
パシッ!
黒炎:「俺に触れんじゃねぇよ!心配しなくてもてめぇとはいずれまた会えるだろうぜ。」
竜牙:「どういう意味だ?」
ニタァ~。
黒炎は口元を緩める。
黒炎:「俺たちとつるんでる新入りがてめぇの事を心底拒んでる。誰のことだと思う?」
竜牙:「俺の事を・・拒んでる?」
黒炎:「おっと!口が滑っちまった・・あばよ!」
シュッ!
竜牙:「なんだったんだ・・あいつ・・。」

黒炎:「おい小池。」
小池:「・・・。」
黒炎:「会ったぜ、お前の言っていた剣崎竜牙によ。」
獣牙:「私は銀河スペードと顔を合わせてしまったよ。なぜやつらがオーロラ島にいる?」
小池:「知らん。剣崎がどこで何をしていようと興味ない。」
黒炎:「フュー、クールだねぇ~。」
獣牙:「止めろハデス。」
黒炎:「いいじゃねぇか別に。」
獣牙:「こいつはブラッディ様のお気に入りだ。」
黒炎:「ケッ!知るかよ、ブラッディ様もどうかしてるぜ。こんなキザ野郎にデレデレしてよ。」
ブラッディ:「共士郎ぉ~ねぇ共士郎ぉ~今夜は一緒に寝ましょうよ、一人じゃね・れ・な・い・の。」
小池:「だったら寝るな、俺は一人で寝れる。」
ブラッディ:「んもう!相変わらず冷たいんだから。」
小池:「勘違いをするな、俺はあんたがベルゴンザの持っていた究極の闇の力よりもすごい力を見せてあげると言ったから、この組織に加わったまでだ。慣れ合うつもりはない。」
ブラッディ:「も~舞って呼んでって言ってるのにぃ・・そんな態度をとってたら、舞積極的になっちゃうかも。」
小池:「勝手にしろ、俺はあんたにも興味はない。」
黒炎:「あんにゃろう、ブラッディ様に生意気な態度を取りやがって!」
獣牙:「落ち着けハデス。今あいつを殺ってもブラッディ様の怒りを買うだけ、今は耐え凌ぐ時だ。」
黒炎:「チッ!」
小池:「フン・・。」

64話/本当に好きな人との時間

スペード:「そうか、お前も会ったんだな。」
竜牙:「一体何が起こってるんだ、このオーロラ島で!」
スペード:「落ち着け。お前が騒いだところでどうしようもないだろ、ただ気がかりなのは奴らが俺や剣崎の事を知っていた点だ。」
竜牙:「スペード、ロイヤルストレートフラッシュのメンバーだったお前なら何か知ってるんじゃないのか?知っていることがあるなら教えてくれよ、どう考えたって今、オーロラ島で起きていることは普通じゃない。今までのことが関係しているのかは分かんねぇけど、覇王や本田はモンスターワールドと人間界を繋いでいる次元の狭間を探す為に、オーロラマウンテンに探りを入れているんだ。」
スペード:「!・・そうだったのか。」
竜牙:「その反応、やっぱり何か知ってるんだな?」
スペード:「ダイヤの奴が言っていた、次元の狭間は一方通行の入り口みたいなもの。お前の言う通り、モンスターの住む世界と俺たちの世界を繋いでいる時空間の歪みが次元の狭間だ。ロイヤルストレートフラッシュの連中もその歪みからこちらの世界にやってきていた。」
竜牙:「やっぱりそうだったのか。」
スペード:「だが、次元の狭間を通っちまったらもう後には戻れねぇ。奴らはそれを承知の上でこちらの世界に足を踏み入れ、人間界で封印されたジョーカーの復活を企てていた。けどモンスターすべてがあいつらみたいに知識と意志を持ってこちらの世界に来ているわけじゃないはずだ。」
竜牙:「知らず知らずのうちにこちらの世界に来ているモンスターもいるってことか?」
スペード:「あくまで憶測だけどな。そもそも次元の狭間なんて本来存在すべきものじゃない、そんなものが現れてしまったのには何か原因があるはずなんだ。その原因が俺たちの住む人間界にあるのか、はたまたモンスターワールドにあるのかは俺にも分かんねぇけど。」
竜牙:「何かが原因で生じた歪み、次元の狭間。その入り口から迷い込んだモンスターたちは自分の身を守る為に人々を襲ってたってことか・・。」
スペード:「俺もそう考えている。とは言ってもなぁ、次元の狭間がどこで発生しているのかまでは俺も分からない。」
竜牙:「・・・なぁ、今日俺たちと遭遇したやつらなら何か知ってるんじゃないか?」
スペード:「駄目だ、不明確な部分が多すぎる。奴らを当てにするのは効率が悪い、それにあいつらには何か別の目的があるようにも見えた。そこでハンターからの情報なんだが。」
竜牙:「?」
スペード:「帝王フォルテ、覚えているだろ?」
竜牙:「フォルテ?さすがにもう捕まってんじゃないのか?」
スペード:「残念ながら捕まってはいない、逃走を続けているみたいだ。」
竜牙:「は?!う、嘘だろ・・あいつは全国で指名手配されているんだぞ、いくらなんでもそれは・・。」
スペード:「あいつはパラレルワールドを行き来きできる、逃げる手段ならいくらでもあるだろ。そうじゃなくても奴には人獣の力が備わっている、不思議じゃない。お前、モンスターワールドのことを知ってるんなら当然パラレルワールドの事も知ってるんだろ?」
竜牙:「知ってっけど、次元の狭間を自由に行き来きすることはできないって聞いたぞ。」
スペード:「フォルテならできる。どういう理屈なのかは分かんねぇけど、あいつはそれができたから人獣の実験を行えたんだ。でなきゃ、都合よく被験体のモンスターを捕獲し優秀な人間をかき集めるとか困難を極めるだろ?」
竜牙:「っ・・言われてみればそうかもしれない・・。」
スペード:「剣崎、これはチャンスだ。俺たちが先にフォルテを見つけて、とっ捕まえることができれば・・。」
竜牙:「そうか!パラレルワールドの仕組みを知ってるあいつなら、確実に手がかりとなる情報を持っているはず!」
スペード:「そういうこと。あいつを捕まえて情報を引き出せば、次元の狭間の発生している場所、そしてなぜこんな歪みが発生してしまったのかも分かるかもしれない。」
竜牙:「・・・。」
スペード:「どうした?」
竜牙:「いや・・なんでもない。」
スペード:「?」
竜牙:(さっき俺の前に現れた赤髪の男、あいつは俺の事を拒んでる人物とつるんでいると言ってた・・まさか・・んなわけないか。)
スペード:「花音たちに危害が加わるのだけは避けたい、奴らとまた出くわす可能性も高いがくれぐれも慎重に動こう。」
竜牙:「ああ。」
一方、その頃オーロラマウンテンでは・・。
本田:「ぐっ・・何者なんだ、あいつ・・!」
オルフェ:「ここから先は通さん、命が欲しければすぐさま立ち去れ。」
覇王:「そういうわけにはいかない、この先に何があるのかは知らんが俺たちには目的がある。」
オルフェ:「愚か者が。」
本田:「スパークリングサンダー!」
オルフェ:「ベルヘルデスカル!」
覇王に気を取られていた目頭に青あざのある男の隙をついて、本田はスパークリングサンダーで猛攻に出ようとしたが・・。
シュゥゥゥン・・ドカァァアン!!
青あざの男が両腕を勢いよく開くと、周囲にある木々や覇王、本田が一気に吹き飛ぶ!!
本田:「うわぁぁぁぁ!!」
覇王:「なんだ・・この技は?!!」
オルフェ:「俺の名はオルフェバンデモン。コードネーム・・オルフェ・・。」
覇王:「コード・・ネーム?」
本田:「これほどの力を持つモンスターがいたなんて!」
オルフェ:「我らと関わることもこの先に進むことも断じて許さん!まだ抵抗するならば・・。」
覇王:「っ・・一旦退くぞ、本田!」
本田:「なっ?!・・ここまで来て何を!」
覇王:「死にたいのか!冷静に戦況を分析しろ、奴は相当な手練れだ。俺たちには成すべきことがある、ここで命を落とすわけにはいかない!!」
本田:「くっ・・ちきしょう・・!」
(あの覇王にここまで言わせるなんて・・マジで何者なんだあのモンスター!)
オルフェ:「これに懲りたら二度とこの地に足を踏み入れるな、愚かなる人間よ。」
本田:「んだとぉ!!」
覇王:「挑発に乗るな!全速力で山を降るぞ!!」

夏海:「竜!」
竜牙:「・・。」
夏海:「?・・竜!!」
竜牙:「・・。」
夏海:「聞こえてないの?竜ってば!!」
竜牙:「・・。」
ブチッ!
夏海:「目ェ覚ませぇぇっ!!」
バシィッ!!
竜牙:「いだっ?!!いったぁぁっ~!」
夏海は竜牙の頬をひっぱたいた。
竜牙:「何すんだよ!」
夏海:「あなたが反応してくれないからでしょ!」
竜牙:「ど、怒鳴るなよ・・悪かったよ・・。」
夏海:「スペードと何を話してたの?」
竜牙:「な、何でもねぇよ!!」
夏海:「うそ!あれからずっと物思いにふけってる。」
竜牙:「それは・・。」
夏海:「私には言えないことなの?」
竜牙:「・・・。」
夏海:「もういい!」
竜牙:「な、夏海!」
夏海:「なによ。」
竜牙は夏海の手を引っ張って思いっきり海に飛び込んだ!
夏海:「ちょっ!」
バシャァン!
夏海:「もうっ!なにすんのよ!!」
バシャッ!
竜牙:「うわっ!やりやがったな・・。」
バシャッ!
夏海:「きゃっ!」
互いにびしょ濡れになった姿を見て、自然と口元が緩んでく。
竜牙:「ふっ・・。」
夏海:「ふふっ・・あははっ!やっと笑ったね。」
竜牙:「え?」
夏海:「オーロラ島に来てから、ずっと心ここに在らずって感じだったわよ?やっと笑ってくれたね。」
竜牙:「もしかしてずっと気にかけてくれてたのか?」
夏海:「・・好きな男の子がそばにいればそりゃあ嫌でも視界に入るでしょ。」
竜牙:(俺は・・何をしていたんだ。あいつとってこの旅行は高校生活最後の・・いや日本でつくる最後の思い出となるかもしれないってのに・・知らず知らずのうちにあいつに気を遣わせちまってた・・。)
夏海:「はい!またその顔~それ禁止!!」
竜牙:「な、なんだよ・・。」
夏海:「あの時こーしてれば良かったって後悔しないよう現在いまを生きていくしかないんでしょ?」
竜牙:「!」
瞬間、2人の唇が重なった。
竜牙:「?!」
夏海はゆっくりと唇を離す。
夏海:「ごめんね、急にこんなことして。」
竜牙:「・・い、いや・・えっと・・!」
夏海:「あははっ、落ち着いて。私だってこんなことしたの初めてで・・すごくドキドキしてる。」
竜牙:「あ、えっと・・ごめん。」
夏海は両手を後ろで組んで背を向ける。
夏海:「竜がふと呟いた言葉だったよね、けどあの時の私には結構響いたんだ。あの言葉を聞いて、決めたの!向こうに行っても後悔しないように、沢山の思い出をここで作るんだって!」
竜牙:「夏海・・。」
(声が震えてる・・。)
夏海:「だから、そういう思い詰めた顔はしないで!」
ガシッ!
夏海:「ちょっ?!」
竜牙は夏海を後ろから抱きしめる。
夏海:「な、なに・・どうしたの?!」
竜牙:「ほんっとに・・ごめん。」
夏海:「・・・。」
竜牙:「俺、お前の彼氏なのに・・お前の事、見えているようで見えてなかった。」
夏海:「竜、何か勘違いしてない?」
竜牙:「え?」
夏海は竜牙の手を振りほどいて、ゆっくりと向き合う。
夏海:「付き合ってるからって、無理に相手のことを気遣う必要はないわ。」
竜牙:「え・・でも・・。」
夏海:「デートを積み重ねてお互いの事を知り、より好きになっていく。それがお付き合いをする定義だと私は思うの。だから私はあなたを束縛しない、嬉しい時や辛い時になんでもないことをいつでも言い合える・・そんな関係を私は竜と一緒に築いていきたいの。」
竜牙:「あ・・。」
ポロッ・・。
竜牙の目から涙がこぼれ落ちる。
夏海:「え・・ちょっ・・!!」
竜牙:「夏海には・・敵わないな・・。」
夏海:「も~涙を拭きなさいよ。」
竜牙:「ありがと・・うん、俺も夏海とそんな関係を築いていきたい。」
夏海:「・・うん!」
竜牙:「-お願いがあるんだ。明日の深夜、もう一度ここに来てくれ。」
夏海:「え、今じゃ駄目なの?」
竜牙:「ああ、大事な話なんだ。」
夏海:「分かった、明日の深夜ね。」
2人が見つめ合う様子を物陰に隠れてコソコソとする見つめる市原。
市原:「うわぁ、姿見かけねぇと思ったら・・こいつらみんなが居ないとこだとチューとかしてんのかよ。」
神谷:「驚いた・・。」
市原:「?!か、かみ・・ん~っ!!」
驚きのあまり叫びそうになる市原の口を慌てて抑える神谷。
神谷:「し、し~!!2人に気づかれるでしょ。」
市原:「す、すみません。」
神谷:「とにかく質問に答えなさい。あの2人は付き合ってるのかしら?」
市原:「あ・・いやそれは・・えっと・・。」
神谷:「答えなさい。」
市原:「・・・・はい。」
(こ、怖ぇぇぇ・・竜牙、木嶋さん・・すまん!)
神谷:「なんで・・こうなるのよ。」
神谷は2人のところに向かっていく。
竜牙:「!」
夏海:「!」
神谷:「久しぶりね、竜くん・・夏海っち。」
夏海:「朱里?!」
竜牙:「いつ来たんだよ!」
神谷:「ついさっきね・・それにしてもしばらく見ない間に、随分と仲良くなったのね。」
夏海:「はっ・・!」
夏海は慌てて竜牙から離れる。
竜牙:「これは・・その・・。」
神谷:「今すぐ私の乗ってきたプライベートジェットに来てくれる?聞きたいことが山ほどあるわ・・ね、竜くん?」
竜牙の顔が険しい表情になる。
神谷:「ちなみに夏海っちはここにいて、用があるのは竜くんだから。」
夏海:「で・・でも!」
ポン。
竜牙は夏海の肩に優しく手を置いた。
竜牙:「約束しただろ?大丈夫だ、夏海。」
夏海:「だけど!」
神谷:「・・先に行ってるから。」
神谷の姿が見えなくなるのを確認し、竜牙はそっと口を開く。
竜牙:「お互いに腹はくくっただろ?大丈夫、朱里にお前とは付き合えないって言うだけだ。夏海は大和たちに心配をかけないようにここにいてくれ。」
夏海:「朱里の表情、見たでしょ?竜と2人きりにさせるのが怖いの。」
竜牙:「心配すんなって。ずっと婚約の話をうやむやにしてきたんだ、けじめをきちんとつけたい。」
夏海:「・・分かった、無茶はしないで。」
竜牙:「おう、また後でな!」

65話/引き裂かれる思いと朱里の暴走

神谷:「遅かったわね、竜くん。」
竜牙:「朱里、単刀直入で悪いんだけど聞いてほし「聞きたくない!!」」
竜牙:「あ・・朱里・・。」
神谷:「何を伝えようとしているか言わなくても分かってるから!でもね、受け入れたくないのよ!竜くんの気持ちが私に向いてないことぐらい分かってた。それでも、わずかな希望を繋ぎとめていたのが婚約の話だった。その婚約が破棄になるかもしれない?・・なんで・・なんで!!」
竜牙:「落ち着いてくれ。まずは・・。」
竜牙はゆっくりと姿勢を落としていく。
神谷:「ちょっ!何をする気よ!!」
竜牙:「ごめん・・俺は・・お前とは結婚できない。気づいたんだ・・俺の本当の気持ちに。」
竜牙は土下座をし、深々と頭を下げる。
神谷:「なんなの・・ほんとっうに・・何なのよ!!何に気づいたの?夏海っちの・・夏海のことが好きってことに?なんで?なんでそーなるのよ!!だって・・今まであなたたち、ただの幼馴染みだったじゃない!・・何でそうなっちゃったのよっ!!私の気持ちは・・どーなるの?!!」
竜牙:「落ち着けっ・・「ねぇ!答えてよ!!」」
竜牙:「朱里!!」
ビクッ!
竜牙の叫びが響き渡る。
神谷:「・・・。」
竜牙:「・・頼むから、一旦落ち着いてくれ。」
神谷:「最低・・誰のせいでこーなってると思ってるのよ!」
パシッ!
今度は神谷のビンタがプライベートジェット内に響き渡った。
竜牙:「痛っ・・。」
神谷:「ううっ・・本当に最っ低!・・顔・・上げなさいよ。」
竜牙:「ごめん・・。」
神谷:「謝らないでよ!これじゃ私が・・あなたを追い詰めているみたいじゃない。傷ついてるのは私なのよ?!」
竜牙:「・・・けど・・謝ることしか俺には・・。」
神谷:「竜くん、私と・・初めてあった時のこと覚えてる?」
竜牙:「覚えてるよ。俺んとこの母さんの友人が誘ってくれたパーティ。そのパーティがまさか総一郎さんの・・神谷プロの主催するパーティだとは思わなかったけどな。たしかお前はあの時・・。」
神谷:「政略結婚をさせられそうになってたわ。うちのママはまだ幼いんだから婚約するにはあまりにも早すぎるってパパに言ってくれたんだけど、うちのパパは結構頑固者で娘の将来を心配して何が悪いんだ!って言って、半ば強引に婚約の話を相手方の両親と進めてた。それが嫌になった私はパーティの途中で全速力で抜け出したのよ。でもま、沢山のSPに囲まれている中を子供の足で逃げ切るのは至難の業よね・・結局、私は婚約者側のSPに囲まれ追い詰められた。そんな時に駆けつけてくれたのが竜くんだったのよ。」
竜牙:「すまん。そうとは知らずに、俺はお前が黒い服を着た男たちに襲われてると早とちりして飛び出したんだ。」
神谷:「理由がどうであれ、私とっては結構衝撃だった。凄かったなぁ・・だって、私を囲んでるSPの急所に仮面ライダーの玩具を下から突き上げて攻撃していくんだもの。本当にヒーローみたいだった・・。」
竜牙:「今考えると相当痛かっただろうな、あれ・・。」
神谷:「ふふっ・・そうね。そうしてあなたは私の手を取って両親のところまで引っ張っていってくれた。何の為にSPを倒したのよって思ってたけど、自然と言葉は出なかったわ。真っ直ぐ前を見つめて引っ張っていくあなたに見とれてしまってたから。そして、その光景を影から見ていたパパもあなたの事を気に入っちゃったのよね・・なんて勇気のある子なんだ!って。」
竜牙:「み、見られてたのか・・。」
神谷:「パパだけじゃない、あの出来事があったから私はあなたのことを好きになったの。今まで、色んな男が私に交際を申し込んできたわ。けど比較しちゃうのよあなたと・・その度に思うの、竜くんは私にとって特別な存在なんだって。だって私のヒーローだったから。」
竜牙:「・・朱里。」
神谷:「最初に言っておくけど、私はあなたと夏海が両想いだとしても潔く身を引くつもりはないわ。夏海にとってあなたが大切な存在であるように、私にとってもあなたは特別な存在なのよ。」
竜牙:「分かってるよ・・でも、俺はお前の気持ちには答えられない。」
神谷:「平行線ね・・私さ、夏海を密かにライバル視してたの。心のどこかであの子には負けたくないっていう変なプライドが常にあった。いつも自分に問いかけるように夏海に劣っている部分はない、大丈夫!私は負けてないって言い聞かせていたわ・・でも、そうじゃなかった。現実を突き付けられたわ、だって今・・最愛の人をこうして取られてる。後だしジャンケンのように夏海は、竜くんの心を奪っていったのよ!」
神谷は拳を握りしめる。
竜牙:「そんなことは「何が違うって言うのよ、そう思われても仕方がないじゃない。現にあなたたちは、密着してキスをしてたんだから。」」
竜牙:「それは・・。」
神谷:「悔しいわ、あなたの事をずっと前から見ていたのは私なのに・・私はあなたを振り向かせることができなかった。」
竜牙:「・・・!」

桜:「あ・・。」
竜牙:「ごめん・・俺は桜の気持ちには答えれない。」
桜:「っ・・なんで・・。」
竜牙:「え?」
振るえる拳をそっと抑え、桜はゆっくりと顔を上げて満面の笑みを見せる。
桜:「先輩、そんな顔しちゃ駄目です。」
竜牙:「え・・?」
桜:「相手が夏海で良かった。親友に打ち負かされたのなら本望です・・えへへ。」
竜牙:「・・。」
桜:「・・・本当はすっごく悔しいです。先輩、今まで恋愛になんて興味ないって感じだったでしょ?その先輩を振り向かせたんです、夏海は・・。」
竜牙:「桜・・。」
桜:「分かりました。私の完敗です。」
竜牙:「え・・。」
桜:「クスッ、何ですか・・え?って。」
竜牙:「いや・・もっと色々と言われる覚悟で来てたんだ、だからその・・。」
桜:「も~私、こう見えても引き際はわきまえてますので。それに・・。」
竜牙:「?」
桜:「私には先輩の幸せを奪うことはできませんから。でも、幸せを願うことはできます。2年前、私の背中を先輩は押してくれましたよね、今度は私が先輩を後押しする番です!2人の事、応援させてください。」
竜牙:「っ・・!」
ポロッ。
今にも泣き出しそうな桜を見て、竜牙は涙を流してしまう。
桜:「な、なんで先輩が泣くんですかぁぁ。」
竜牙:「だって・・お前、お人好しすぎだって・・こんなの・・ううっ!」
桜:「じゃあ・・私行きますね!」
タッタッタッ!
全速力で階段を駆け下りる桜。
雫:「優香。」
桜:「っ!」
すれ違いそうになる桜を呼び止めたのは親友だった。
雫:「頑張ったね。」
桜:「うぐっ・・ホントは・・応援なんて・・したくないっ・・先輩の幸せを願うなんて嘘なの・・ホントは・・あたし・・の・・気持ちに答えてほしかっ・・!」
ギュッ!
雫からふいに抱きしめられ口ごもる桜。
雫:「もう頑張らなくていいら、いっぱい泣きな!泣いた分だけあんたの視界も多少は広くなるでしょ、広い視野でまたいい人を探したらいいじゃん!ね?」
桜:「し、しずくぅぅっ!!」
雫:「うわっ!鼻水っ!ちょっ・・汚っ・・拭け!拭けぇぇっ!!」

竜牙:(桜も同じ気持ちだったんだ・・なのにあいつは・・。)
竜牙は拳を握りしめる。
神谷:「竜くん、正直私自身もまだ気持ちの整理がついてないの。でも、あなたの気持ちは嫌というほど伝わったわ。」
竜牙:「俺の事、諦めて・・くれるのか?」
神谷:「一つ、条件を飲んでくれるなら。」
竜牙:「条件?」
神谷:「明日・・。」
竜牙:「?」
神谷:「明日一日だけ・・あなたの時間をいただけないかしら?」
竜牙:「どういう・・?」
神谷:「こんな形じゃ諦められない、こんな形であなたへの想いを断ち切れない。そんな私の最後のワガママよ。」
その日の放課後。
夏海:「結局、明日・・朱里とデートをすることになったの?」
竜牙:「ああ。」
夏海:「なんで?!竜は私の・・!」
竜牙:「しょうがないだろ、明日デートしてくれたら諦めるって言われたんだから。」
夏海:「あの状態の朱里と2人っきりでデートなんて何されるかわかんないじゃん!少しは警戒してよ!!」
竜牙:「か、考えすぎだって!」
夏海:「そんなことない!私、絶対認めない!!」
竜牙:「おま・・「だいたい、竜はいつもいつも女とイチャイチャしすぎなのよ!白鳥さんといい、朱里といい、私の気持ちも考えてよ!」」
竜牙:「じゃあどうしたらいいんだよ、あいつ言い出したら聞かないクチだからな?」
夏海:「って何よ!」
竜牙:「ちょっ、冷静になれって!とにかくもう約束しちまってる、それにこれを破ったら最後、どんな手を使ってでも婚約の話を強引に進められそうで怖いんだ。悪いけど、俺は行かせてもらう。」
夏海:「ちょっと!話はまだ終わってな・・もうっ、竜のバカ!!」
翌日。
市原:「ふぁ~おはようございます。」
黄河:「市原か、おはよう。」
市原:「竜牙のやつ、知りません?」
黄河:「竜牙なら朱里と朝早くから出て行ったよ。」
市原:「えっ・・神谷さんと?」
黄河:「俺にもよく分からん。」
市原:(嫌な予感がする、大丈夫かよあいつ・・。)
オーロラ島市街地。
神谷:「うわぁ~ねぇ竜くん、見てみて!」
竜牙:「うん?」
神谷:「このチワワ、すっごく可愛い!」
竜牙:「律儀にお座りしてお前が来るの待ってる、よくしつけられてるな。」
神谷:「ねぇ竜くん、私この子を抱っこしたい!」
竜牙:「ここの店員さんに聞いてみようぜ、俺聞いてくるよ。」
神谷:「うん、お願い!」
その様子を遠くから監視する怪しげな人物が2人・・。
ゴゴゴゴッ!
桜:「うおっ、すごい殺気。ちょっと落ち着きなさいよ、背中からドス黒いオーラが出てるわよ?」
夏海:「そう?そんな事ないと思うけどな。」
桜:「ってかさ~やっぱ尾行とか止めようよ、こういうの良くないって。」
夏海:「駄目よ優香、目を光らせておかないといつ何が起こるか分かったもんじゃないわ。ていうか・・。」
バァン!
夏海は側に置いてあったドラム缶を思いっきり蹴り飛ばした!
桜:「ちょっ!何してんの?!」
夏海:「何か無性に腹が立った。」
桜:「な、夏海?せっかくオーロラ島に来たんだしさ、この辺見て回ろうよ。」
夏海:「あの2人が離れるまで気が気でないのよ。」
(ん?今度は何・・フードコードに入っていったっぽいわね。)
桜:(はぁ~付き合わされるこっちの身にもなってよ。修羅場は勘弁して、苦手なのよこういうの~!)
神谷:「フフッ、ハンバーグが好きだなんて案外お子様ね。」
竜牙:「い、いいだろ別に!」
神谷:「私が食べさせてあげよっか?」
竜牙:「は?!いやいやいいよ!恥ずかしい。」
神谷:「今日一日は、私の言うことを聞いてくれる約束じゃなかったかしら?」
竜牙:「うっ・・。」
神谷:「つべこべ言わないの、はいあ~ん。」
竜牙:「くっ・・あ、あ~ん。」
(すまん、夏海!)
ゴガガガァァァァアアアアア!
桜:「うわぁ!ちょっ夏海、顔!顔っ!!」
夏海:「まだ一度もあ~んとかしたことなかったのに・・しかもあいつあ~んしやがった!!」
桜:「やけん先輩の気持ちにもならんと!あんたの為に頑張っとんのに、冷静にならんば!」
(前々から思ってたけど夏海の嫉妬やばいわ、ホント狂気。私、先輩の身の安全の方が心配です。)
夏海:「ゲームセンターに入っていった!追いかけるわよ優香!!」
桜:「はぁ~。」
神谷:「さすがね竜くん、この手のゲームじゃさすがに勝てないか。」
竜牙:「いや、結構難しいぞコレ。」
神谷:「私、ここの踊りができないのよ。」
竜牙:「それは右足を前にだして・・。」
神谷:「こう?」
竜牙:「そうそうそれから・・。」
神谷:「フフッ・・。」
竜牙:「どうした?」
神谷:「なんでもな~い。」
竜牙:「?」
ブチッ!ブチッ!
夏海:「手取り足取り・・ベタベタ触れ合っちゃって・・これじゃ付き合いたてのアツアツカップルじゃない!」
桜:「も~!いちいち炎上ヒートアップしないの、ほら先輩たちゲームセンターの外に出たわよ。」
夏海:「え?!ちょっ・・い、行くわよ!!」
ちびっ子:「ママ~あのお姉ちゃんとお兄ちゃん、ラブラブだ!」
子供の母:「こら!す、すみません。」
神谷:「いえいえ、お気になさらず♪」
竜牙:「おまえ・・嬉しそうだな。」
神谷:「さぁ!次行きましょ!!」
夏海:「ぐぬぬぬっ~!!」
桜:「ヒィッ!体中から悪寒が・・先輩、夏海の堪忍袋の緒が切れちゃいます!早く終わってぇぇ!!」
遊園地。
竜牙:「オーロラ島にこんなところが・・。」
神谷:「知らなくても無理ないわ。昔、オーロラ島で観測された震度7の大地震があったじゃない?この遊園地は、その震災の後に復興活動の一環として造られたそうよ。離れて行った観光客にまた足を運んでもらう為に。もう造られてからだいぶ経つけどね。」
竜牙:「そうだったのか。」
神谷:「それじゃクライマックスと行きますか。」
竜牙:「え?」
神谷は竜牙の腕をつかみ、遊園地の中に入ってく!
竜牙:「お、おい・・!」
神谷:「私、ずっと前から竜くんと乗りたかったの!あの観覧車に!!」
その様子を見ていた夏海は・・。
ガタッ!
桜:「も、もうっ!急に立ち上がらないでよ、びっくりしたじゃ・・夏海?」
夏海:「か、観覧車は・・観覧車はだめっ!!」
桜:「ほ、本当に落ち着いて。声が震えてるじゃない、大丈夫?」
夏海は親指を口元に持ってきて悔しそうに見つめ、小声で呟く。
夏海:「観覧車は、二人だけの空間をつくってしまう・・。」
桜:「大丈夫よ、こんな事もあろうかと用意してたものがある。」
桜はバックから双眼鏡を取り出す。
夏海:「な、ナイス優香!」
桜:「これで夏海の気が済むなら安いものだわ。」
観覧車内。
竜牙:「なぁ朱里。」
神谷:「うん?」
竜牙:「あまり引っ付かないでもらえると助かるんだけど・・すげぇ傾いてるし。」
神谷:「いや。」
(うん?)
神谷は遊園地内にいる夏海と桜に気づいた。
神谷:(まさか尾行してたの?健気なものね、夏海っち。)
竜牙:「?何か見えるのか。」
神谷:「なんでも!それよりさ~竜くん。」
竜牙:「ちょっ・・だからあまり近づくなって!」
神谷:「このデート、そろそろ終わりにしたいでしょ?」
竜牙:「!」
神谷:「キス・・してよ。」

66話/キーワードは大切な思い出

竜牙:「なにを・・いって・・・!」
神谷は無言のまま竜牙に近づいていく。
竜牙:「ちょっ!いい加減にしろ!!」
神谷:「・・・どうして?」
竜牙:「俺は夏海の彼氏だ。お前とそんなことはできな・・!」
チュッ・・。
2人の唇が不覚にも重なってしまう。
竜牙:「?!」
クチュ・・クチュ・・。
神谷は突き放そうとする竜牙の手を抑えて唇を動かし始める・・。
竜牙:「~めろっ!」
バン!
竜牙は力を振り絞って思いっきり神谷を押し出した!
竜牙:「ハァハァ・・なに・・すんだよ!!」
神谷:「前に言ったでしょ?次に会う時は私の”本気”を見せるからねって。」

神谷:「じゃあね、みんな!」
林:「今年の夏はとても楽しかったよ。」
黄河:「たまには夏休み以外でも時間とって遊びに来い。俺はいつでも歓迎だぞ。」
夏海:「ごめんね二人とも。友達が一緒に来て迷惑してなかった?」
林:「何言ってんの?いい思い出がたくさんつくれたよね一くん?」
橘:「もう会いに来ることはねぇから安心しろ。」
林:「!つ、つれないなぁ・・。」
黄河:「悪ノリして人をおちょくるお前が悪い。」
橘:「フン!」
神谷:「夏海っち、竜くんの事お願いね?」
夏海:「うん。任せて!」
市原:「神谷さん、色々と学ばせてもらったよ。」
神谷:「こちらこそ、ありがとう!」
竜牙:「朱里!・・その・・。」
神谷:「また来年・・でしょ?」
竜牙:「・・!」
神谷:「次会う時は私の本気を見せるからね!」
夏海:「なっ!」
桜:「は?!」
竜牙:「は・・お前何を・・!」
神谷:「残念ながら今の台詞は ”本気” よ?」

竜牙:「っざけんな・・っ!」
神谷:「あら、私に手を出す気?まずは自分の置かれている状況をきちんと把握したほうがいいわよ?」
竜牙:「あ”?」
神谷:「下を見てみなさい。」
竜牙:「・・・!」
(夏海と桜?!)
神谷:「あれ、双眼鏡でしょ?夏海にははっきりと写ったんじゃないかしら、私と竜のキスが鮮明に。」
竜牙:「分かってて・・やったって言うのか?」
神谷:「だったら?」
竜牙:「やることが汚ねぇんだよ!なんで夏海を傷つけるようなことをするんだ!!お前、最低だぞ。」
神谷:「観覧車で2人っきりのシチュエーション。そこからのアツアツのキス、いいじゃない!まさしく遊園地デートの醍醐味ってやつだわ!」
竜牙:「朱里てめぇ!」
神谷:「フフフッ、アハハハッ!!」
ドン!
高笑いを上げながら神谷は竜牙に壁ドンをして顔を近づける。
神谷:「この観覧車に乗った以上、あなたに逃げ場はないわよ。」
竜牙:「正気かよ・・なんで、なんでっ!お前の事を裏切ったのはオレだ、なんで夏海を必要以上に傷つけんだ!!」


神谷:「私にとって、あなたがかけがえのない存在だったからよ!!」


竜牙:「?!!」
従業員:「あ、あの・・気を付けて降りてくださいね。」
竜牙:「・・・出るぞ。」
神谷:「ハァ・・ハァ・・。」
ボトッ・・。
夏海の手から双眼鏡が滑り落ちる。
桜:「ど、どうしたの・・?」
夏海:「いやぁぁぁぁっ!!」
(もう嫌だ、耐えられない!)
タッタッタッ!!
桜:「何を見たの・・・。」
桜は地ベタに落ちた双眼鏡を拾って覗き込むが・・。
桜:「あれ、先輩たちもう観覧車に乗ってないじゃない。一体、何を見たの?・・夏海。」
遊園地の出入り口。
神谷:「今日はありがとう、私、とっても幸せだった。」
竜牙:「嘘をつくな!」
ビクッ!
神谷:「・・・な、私は嘘なんて!」
竜牙:「誰かを傷つけて得られる幸せなんてあってたまるか。なぁ朱里、夏海はお前に俺との関係を認めてもらう為に、おじさんに無理言って、オーロラ島に行ける時間を作ってんだ。」
神谷:「・・!」
竜牙:「夏海のおじさんが海外に転勤する関係でな。おばさんや夏海も残り一月ひとつき足らずで日本ここを離れるだってよ。本来なら旅行なんてしている余裕、今のあいつにはないんだよ。でもあいつは昔から見てたんだ、お前の俺に対する気持ちを!分かっていたからこそ、俺の良さに誰よりも最初に気づいたお前に認めてほしかったんじゃねぇのかよ!」
神谷:「!・・・っ。」
竜牙:「相手を思いやる気持ちを忘れたら駄目なんだよ。今日一日、お前は自分の気持ちを俺に押し付けているようにも見えた、そんなのただの我欲でしかない。」
神谷:「違う!私はあなたのことが好きで・・大好きで!」
竜牙:「あーも~っ!」
右手でそっと作り上げた拳を自らの左胸に軽く当てて竜牙が口を開く。
竜牙:「俺たちはただの友人じゃない、幼馴染みなんだ。長い間詰み重ねてきた時間がここにあんだよ!あいつは、色恋沙汰でその繋がりを失いたくなかったから、勇気出してお前と会おうとしてたんだ!」
竜牙の言葉が神谷の胸に突き刺さる。
神谷:「わ・・たし・・。」
竜牙:「悪りぃ、言い過ぎた。俺はこのまま夏海を追う、帰りが遅くなりそうだったら夏海と出掛けたって事にしといてくれ。」
タッタッタッ!
竜牙が走り出すと同時に神谷はその場に立ち尽くす。
神谷:「私・・あたしっ!・・う、うわぁぁぁぁん!!」
(私、何してんだろ・・大好きな人に嫌われて・・夏海の気持ちを踏みにじって・・2人を・・傷つけて・・自分も傷つけて・・ホント最低だ。)
・・神谷は顔を上げて目を瞑ったまま、動くことはなかった。
一方竜牙は、夏海との約束を果たす為にオーロラオーシャンに向かって全速力で駆け出していた。
竜牙:「いた!夏海!!」
夏海は走ってくる竜牙に気づくと無言のまま、逃げるように走り出す!
竜牙:「ちょっ!・・待ってくれ!!」
夏海:「あたしがっ!尾行していた事、気づいてなかった?」
竜牙:「それは・・観覧車に乗った時に「気づいたよね?朱里が私たちの方向に向けて指差してたもん!」」
夏海の目から涙がこぼれ落ちる。
夏海:「なんで、ディープキスなんて・・信じられない!!」
竜牙:「あれは朱里が強引に「朱里と竜が楽しそうにデートしているところを見て気持ちが落ち着かなかった!ざわついた!!」
竜牙:「・・お前。」
夏海:「私が・・竜を好きにならなければこんなことにならなかったの?分かっていても辛かった!吐き気が止まんなかった!わたし・・心が折れたよ・・自分に自信を無くしちゃいそう。」
竜牙:「・・本当にごめん、夏海の言う通りだった。もっと警戒すべきだった、まさか朱里があんなことをするなんて・・。」
夏海:「・・・・。」
竜牙:「どんな理由であれ、俺はお前を傷つけた。でも、俺はお前の事が好きなんだ、まだお前と作りたい思い出が沢山ある。この先離れ離れになったとしても別れたくない、・・お前を失いたくない。」
夏海:「私も同じ気持ちよ。でも・・こんな事になった以上、今は朱里のそばに平常心でいられる自信がない。だから竜、福岡に帰ったらあの場所に来て。」
竜牙:「あの場所?」
夏海:「私とあなたにしか分からない場所よ、私はきっとそこにいるから。」
竜牙:「ちょっ!まさかお前、このまま帰る気なのか?」
夏海:「ホント、どうかしてるよね・・気が狂いそうなほどあなたのことが愛おしい。これがきっかけで朱里と疎遠状態になったとしても、私もあなたと別れたくない・・。」
夏海は竜牙の横を過ぎ去る。
夏海:「でもこのままじゃ疑心暗鬼になっちゃいそうで怖いの。だから確かめさせて、私たちのお互いの気持ちを。」
竜牙:「・・分かった。それでお前がもう一度俺の事を信じてくれるなら。」
夏海:「・・先に向こうで待ってる。」
竜牙:「行っちまった・・やむを得ず了承しちゃったけど、あの場所って結局どこなんだ?ど、どーしよう。」
翌日。
黄河:「おはよう、随分と早いな。」
竜牙:「・・おう。」
黄河:「ってどうした?!目の下にクマができてるぞ。」
竜牙:「・・風呂入ってくる。」
黄河:「まさか一睡もせず、一晩ずっとここに座っていたんじゃないだろうな・・。」
桜:「いた!先輩!!」
竜牙:「桜?」
桜:「何があったんですか、夏海の部屋に置き手紙が・・。」

― みんなへ

私は気分が優れないので福岡に帰ります。迷惑をかけてしまって申し訳ありません。帰りは私のプライベートジェットを手配します、大和が代表して木嶋家の使用人に連絡をかけてください。

木嶋夏海より ー

竜牙は小声で桜の問いに答える。
竜牙:「桜・・話を合わせといてくれ。原因は昨日のあれだ。」
桜:「せ、先輩・・。」
竜牙はそのまま大浴場に向かって歩いてく。
黄河:「心ここに在らずといった感じだな。」
2人が心配する中、林と市原が歩いてくる。
林:「朱も帰ったみたいだよ。」
黄河:「は?!朱里は昨日来たばかりだろ、何で?」
林:「急ぎの用なんじゃない?昨日の夜中、総一郎さんとプライベートジェットに乗って島を出るところをたまたま見たんだ。」
市原:「そ、そんな・・神谷さん、帰ったのか・・。」
アメリカ・ラスベガスカジノ。
洋子:「結局、智也に負けてしまった・・。」
速水:「そんなに気をおとさないで!」
洋子:「悔しい・・。」
速水:「次は大差をつけて勝つよ、落ち込んでる暇はないかもね。」
洋子:「大きくでたわね~。ねぇ智也?明日、久しぶりに家族全員で食事でもしない?」
速水:「ホント?!」
洋子:「たまには悪くないんじゃない?」
(問題はあの人が来れるかどうかよね。)

67話/互いに思い合う気持ち

全員:「「それじゃ、お世話になりました!!」」
黄河:「気を付けて帰るんだぞ?」
竜牙:「あれ、雄介は?」
黄河:「一足先に帰ったよ、それより大丈夫なのか竜牙?」
竜牙:「大丈夫。心配かけて悪かったな。」
黄河:「そうか、夏海にもよろしく伝えといてくれ。」
スペード:「覇王と本田の姿が見えないぞ?」
竜牙:「あの2人は、まだ例の件で調査が難航しているみたいでよ。今朝連絡があったよ、まだここに残るって。」
黄河:「例の件?」
竜牙:「あ、い、いや・・こっちの話だよ!」
スペード:「じゃあ俺ら帰ります。」
黄河:「ああ、元気でな!」
その後、福岡に降り立った竜牙たちはその場で解散することに。竜牙はこの足でそのまま夏海を探そうと試みるが・・。
竜牙:「うーん、どこなんだ?俺と夏海しか知らない場所って・・。」
(ずっと考えてたけど、何も思いつかなかった。)
頭を抱え込む竜牙の目にあるものが映る。
竜牙:「あの先に見えるのって観覧車か・・あ~ダメだ!あれ見ると朱里とのキスを思い出してしまう、インパクト強ぎだろ、くそっ!!」
(ん?・・待てよ・・観覧車?)
竜牙:「今、何時だ?!」
竜牙は慌ててスマホを開く。
竜牙:「19時・・確かあの遊園地は20時まで営業しているはず。・・よし!行って見るか!!」
竜牙があの遊園地に向かって走りだした頃、夏海は・・。
夏海:「私、何してるんだろ。付き合い始めたばかりの相手にこんな事・・竜もきっと困ってる。」
(後1時間でこの遊園地も閉まってしまう。竜が来なかったらどうしよう・・。)
橘:「木嶋さん?」
夏海:「!」
橘:「やっぱりここにいた!」
夏海:「橘くん?!な、なんで・・。」
橘:「こんな夜遅くに1人で出歩いてたら危ないだろ。」
夏海:「そ、それは・・。」
橘:「体調、大丈夫?」
夏海:「ええ。ごめんなさい、先に帰ったりして。」
橘:「剣崎と・・付き合ってるって市原から聞いた。」
夏海:「・・。」
橘:「ショックだった。俺的には結構本気マジだったんだけど、木嶋さんがずっと剣崎のこと見てたの・・俺知ってたからさ、木嶋さんの恋が実ったのなら、潔く身を引くにもありかなって・・そう思ってた。」
夏海:「橘くん・・。」
橘:「そんな顔すんなよ、らしくない。」
夏海:「・・自信がないの、私は竜のことが好き。でも・・これから先遠距離になっても、竜の心を繋ぎとめておける自信がない。竜が他の女の子と仲良くしているところを見るだけで心がざわつくの。それに私はこの恋を実らせるために、友人を傷つけた・・幼馴染みを裏切った・・そして今度は、好きな人を私の気持ちで振り回している・・ホント最低だよね、出来る事なら1年前に戻りたい。」
橘:「戻る必要はないよ。」
夏海:「えっ・・?」
橘:「戻らなくていい。自分の感情を制御できない?そんな事言ったら俺なんて日常茶飯事なんだけど・・。」
夏海:「・・・。」
夏海が鋭い目つきで睨みつける。
橘:「待って!いつもの流れにもっていくのやめて!今、いいこと言おうとしてるから!えっと、俺ん中ではさ、人間関係って変化していくものだと勝手に解釈してるところがあって。ほら!良くも悪くも年齢が上がれば環境も変わるし、環境が変われば人間関係も変わっていく。だから何が言いたいかというと、う~ん何ってったら言いのかなぁ。」
ポン!
橘:「これだ!」
夏海:「?」
橘:「変化した環境に応じて自分が変わればいい!・・うん、難しいことは分かんねぇけど俺はそう思うよ。」
夏海:「あ・・・。」
橘:「俺は剣崎に恋をしていた木嶋さんしか知らないけど、キラキラしてたよ!木嶋さんが好きな人と結ばれたって聞いたとき、ショックだったけど心のどこかで祝福している自分もいた。だからさ、今抱いている感情と変化した関係に後悔しないでほしい。その姿に心を奪われた人間もいたんだから。」
夏海:「ばかっ・・うっうっ・・!」
橘:「えっ?!な、なんで泣くの?!!」
夏海:「ありがとっ・・橘くんっ・・!」
橘:「気にしないで・・さてと。」
夏海:「もう行くの?」
橘:「俺に出来るのはここまでだからさ、後はあいつに任せる。あ!あの時デートを邪魔した借り、これでチャラにしといて。」
夏海:「なにそれ~カッコつけちゃって。」
橘:「-うん、いい笑顔だ。」
橘はそう言い残して、遊園地を去っていく。

夏海:「ありがとーっ!」

夏海の大きな叫びが橘の耳に響く。
橘:「・・・!」
夏海:「元気・・もらった!」
橘:「オウっ!」
橘は背を向けたまま遊園地を出た。
桜:「やるじゃん、橘。」
橘:「うおっ?!お前・・見てたのかよ。」
桜:「オーロラ島を出るときから何か企んでいたっぽいから尾行させてもらいました。」
橘:「立ちの悪いやつだな。」
桜:「にしてもよく分かったね、夏海がここにいるって。」
橘:「まぁ山が当たったって感じかな、あ、詮索はなしな。」
桜:「しないわよ。さてと、振られた者同士一杯やりますか!」
橘:「・・そうか、お前も・・。」
桜;「そ~いうのナシ!」
橘:「?」
桜:「な~んか、あんた見てたらあたしもまだまだだなって前向きになれた。と、いう訳で今宵は私が奢って差し上げましょう。」
橘:「おいおい、俺ら高校生だぞ?」
桜:「な~んばいいよっとね、ものの例えばい!」

竜牙:「ハァ、ハァ・・頑張れ、俺の足!」
夏海:「7時58分・・。」
従業員:「あの・・すみません。もうそろそろ出入り口を・・。」
夏海:「すみません、もう出ます。」

竜牙:「待てよ!」

夏海:「!」
竜牙:「ハァ、ハァ・・。」
夏海:「竜なら見つけてくれるって信じてた。」
竜牙:「ギリギリ・・だったけど・・と、とにかく・・出るぞ。」
2人は遊園地を出て、付近のベンチに腰をかける。
竜牙:「「懐かしいな、この観覧車。」
夏海:「私にとってこの観覧車は特別なの。」
竜牙:「シルバーウィークの時、乗ったもんな。」
夏海:「幼い頃にも乗ったでしょ。」
竜牙:「あったな!おじさんが帰ってこれなくて大泣きしてたもんな、お前。」
夏海:「うん。そんな私に竜は言ってくれた、大きくなったらまた俺と一緒に観覧車に乗ろうって。」
竜牙:「・・ごめん、俺がもっと早く着いてればまた観覧車に乗れたかもしれないのに。」
夏海:「いいの!ちゃんと来てくれたからそれだけで・・。」
竜牙:「夏海、昨日はその・・ごめん。」
夏海:「私の方こそ、試すようなことをしてごめんなさい。」
竜牙:「夏海・・。」
夏海:「そういえばあの時、浜辺で大事な話があるって言ってたじゃない。今、二人きりだし話してよ。」
竜牙:「そ、そうだな・・じゃあ。」
夏海:「どうぞ・・。」


竜牙:「卒業したら俺と結婚してほしい。」


夏海:「・・・・・・え?」
竜牙:「まだ先の話だ、けどこれからは結婚を前提にお付き合いしてほしいんだ。」
夏海:「えと・・話が急すぎて飲み込めない・・。つまりそれはプロポーズって事?」
竜牙:「うん。」
夏海:「っ・・!//」
夏海はベンチから思わず立ち上がる!
夏海:「ちょっ・・は?!だって私たちまだ高校生だよ?!それにまだ付き合い始めたばかり・・。」
竜牙:「もちろん、付き合っていく中でそれが無理だと感じたら別れていいんだ。ただ、俺の方からお前に別れ話を持ち出す気はないっていう意思表示のつもり。これから結婚を見据えてお前との思い出を沢山つくっていきたい。お互いに信頼しあえる最愛のパートナーになるために・・ホント、早すぎるかもしれないけどっ!」
夏海は両手で口を塞ぎ、涙を流す。
竜牙:「だ、大丈夫か夏海!顔、真っ赤だぞ?」
夏海:「ごめん・・あまりにも嬉しすぎて・・。」
竜牙:「じ、じゃあ・・。」
夏海:「はい。これからは結婚を前提にお付き合いさせてもらいます。」
竜牙:「や、やった・・!」
夏海:「ってか、よくそんな恥ずかしい台詞を平気な顔で言えるわね。」
竜牙:「平気じゃねェよ、心臓がドキドキしてるよ。」
夏海:「私だって・・。」
静かな月明かりの下で2人の唇がゆっくりと重なった。

68話/激闘!最強のオルフェバンデモン

速水:「こういう風に家族で食事するの、新鮮。」
洋子:「そうね。」
幸一:「フルコースを頼んである。好きなものを好きなだけ食べなさい。」
速水:「フルコースって・・お金は大丈夫?」
洋子:「言っておくけど私、今お金ないから。」
幸一:「どうして?」
洋子:「智也にコテンパンにされたのよ。有り金全部持ってかれたわ。」
幸一:「え?!あ、あー母さんに勝つなんてすごいな、智也。」
洋子:「何よその反応。まさか私に奢ってもらおうとか考えていたんじゃないでしょうね。」
幸一:「違う違う!ラスベガスの女王とまで言われた洋子はもの凄い強運の持ち主なんだ。素直に驚いてるよ、大したものだ。それに今夜は俺が出すからお金の心配はいらないよ。」
洋子:「そう・・ならいいけど。」
速水:「現金な人だなぁ。」
洋子:「智也、本当に強くなったわ・・なんていうか精神的に動じなくなってる。」
速水:「褒めすぎだよ。」
幸一:「いやいや、洋子に勝ったことは自信をもって自慢していい。なんせ俺は洋子が賭け事で負けたなんてこと初めて聞いたことがない。」
洋子:「そうね、ここまで大金を失う大負けは人生で初めてかもしれない。」
幸一:「うん、お父さんの自慢の息子だ。」
洋子:「あなたの自慢の息子にされたら智也の価値が下がるわ。」
幸一:「どういう意味かな?」
速水:「あーはいはい、落ち着いて。」
その頃、オーロラマウンテンでは
オルフェ:「またお前たちか、何を狙っている?」
本田:「俺たちにも黙秘する権限はある、お前が情報提供しない限りな。ギャラクシーボルテックス!」
ビリリリィッ!!
オルフェ:「よかろう、身の程を教えてやる。ダークネスゲート。」
オルフェの目の前に現れた黒い球体が本田のギャラクシーボルテックスを吸いこんでいく!
本田:「技を吸収しただと?!」
オルフェ:「ディバインオーガ!」
本田:「!・・換装した?!」
覇王:「気をつけろ!奴が動く!!」
スタッ!
バシィッ!
本田:「うぐっ?!」
覇王:「はやっ・・!」
オルフェ:「はぁぁぁっ!!」
バシッバシッバシッ!!
本田:「うあぁぁぁぁっ!!」
覇王:「超必殺技・プロミネンスカタストロフィ!!」
ドカァン!
オルフェ:「っ・・空中爆破だと・・。」
本田:「助かった・・げほっ、げほっ・・。」
覇王:「身体能力を向上させる技のようだな、動きも突きも速すぎて捉えられん。」
オルフェ:「ベルヘルデスカル!」
シュゥゥゥン・・ドカァァアン!!
青あざの男が両腕を勢いよく開くと、周囲にある木々や覇王、本田が一気に吹き飛ぶ!!
本田:「うおっ!!」
覇王:「またあの技か・・厄介な広範囲攻撃だ、ほんとに!」
本田:「覇王!オルフェの姿が見えないっ!!」
覇王:「!しまっ・・。」
バシィッ!
覇王:「がは・・っ!」
オルフェ:「X技・ザ・オーバーテクノロス!!」
シュゥッ・・バァアン!
覇王の両サイドからものすごい風圧が覇王を挟みこむ!!
本田:「覇王!」
オルフェ:「随分とあっさりやられたものだな、足速師覇王。」
覇王:「っ・・くそっ・・肋骨が折れたか。」
本田:「ヤロウ・・!」
覇王:「待てっ・・ここは俺が引き受ける、お前は竜牙たちにオーロラマウンテンで起こったことを伝えるんだ。」
本田:「何言ってんだ、お前その状態じゃまともに戦えないだろ!」
覇王:「コイツは自分の名前とは別にコードネームを名乗っていた。コードネームというものは、ある特定の人物又は関係者、大雑把に言うなら呼び方を知っているもの同士でお互いを呼び合う際に用いるものだ。恐らく奴には仲間がいる。」
本田:「!」
覇王:「もしオルフェが次元の狭間を守っているとしたら、福岡のどこかに潜んでいる次元の狭間の側にも奴の仲間が潜伏している可能性が高い。だからこそ、俺たちは2人揃ってここでやられるわけにはいかないんだ。ここで俺たちが2人ともやられれば、コイツの存在を竜牙たちに伝える者がいなくなってしまう!」
本田:「つってもよ・・くそっ!」
(覇王を置いていけるわけがないだろ・・どうしたら!)
オルフェ:「今更逃がさん!究極必殺技・エンシェントデーモン!!」
オルフェの背中から抜き出てきた無数の黒い手が覇王と本田に襲い掛かる!!

竜牙:「楽しかったな。」
夏海:「うん!すっごく楽しかった。」
竜牙:「にしてもお前、この数日間で色々と詰め込みすぎだろ。」
夏海:「だって・・竜と行きたいところ、沢山あったから。」
竜牙:「・・明日か。」
夏海:「うん、楽しい時間ってあっという間だよね。」
竜牙:「そういえば、もうあっちに行く準備はできたのか?」
夏海:「どうしてそんな事聞くの?」
竜牙:「あ、いや・・荷造り終わってねぇなら手伝おうかなと思って。」
夏海:「そんなに早くいなくなってほしいんだ。」
竜牙:「え”?!い、いや・・違う!ごめん!!そういうつもりで言ったわけじゃなくて。」
夏海:「冗談よ♪」
竜牙:「・・・。」
夏海:「何冷汗かいてんのよ、バーカ。」
竜牙:「う、うっせぇ!も、もう騙されないからな!!」
夏海:「それは嫌だなぁ・・これで許してくれる?」
チュッ。
夏海は竜牙の頬にキスをした。
竜牙:「おまっ・・!人前!!人前だから!!!」
夏海:「かっわいい~。」
竜牙:「も、もう知らねぇからな!」
夏海:「ちょっ、待ってよ~!」

オルフェ:「身を滅ぼしてまで仲間を守ったか、愚かな。」
本田:「覇王!しっかしろ!!」
覇王:「はや・・く・・いけ・・!」
オルフェ:「次はお前だ。」
本田:「くっ、どうしたらいいんだ!」
オルフェ:「迷う必要はない、お前に待っているのは死のみだ。」
覇王:「俺は・・まだやれる・・。」
オルフェ:「!」
本田:「何言ってんだ!」
覇王はロイヤルセイバーを地面に突き立ててゆっくりと立ち上がる。
オルフェ:「ならばその減らず口を叩けなくしてやろう。」
覇王:「くっ・・!」
本田:「俺が・・。」
覇王:「ま・・「いい加減にしろ!」」
オルフェ:「・・・。」
覇王:「お前・・。」
本田:「守ってもらう為にお前に協力をお願いしたわけじゃない、俺だってモンスターセイバーズだ。相手が人に危害を加える恐れがあるモンスターなら、討伐する。それだけだ!」
オルフェ:「いいだろう、かかってこい小僧。」
覇王:「やめろ!お前じゃあいつには・・。」
本田:「そんなのやってみなきゃ分かんねぇだろ!あの大会を得て強くなったのは大会の勝者だけじゃない、敗北した奴にとっても己の未熟さを知り強くなるきっかけとなってる。それを今から証明してやる。」
本田が右手をあげると、上空から落雷が落ちていく!
ゴゴゴゴゴッ!
覇王:「?!」
本田:「究極必殺技・・。」
本田の右手は落雷を吸収し、光り輝く!
本田:「スパークヘルハリケーン!!」
本田が右手を突きだして手を広げると、落雷が竜巻の如く回転しながら地面をえぐりつつオルフェに向かっていく!
オルフェ:「あれはまずい!究極必殺技・エンシェントデーモン!!」
シュゥツ・・ドカカカッカッ!!
本田のスパークヘルヘリケーンとオルフェのエンシェントデーモンが激しくぶつかり合う!!
オルフェ:「うぐっ!ばかなっ・・・エンシェントデーモンが押し負けているだと?!」
(ダークネスゲートで吸収するか?いや、間に合わ・・!)
ドッカァァアアアン!!
スパークヘルハリケーンがエンシェントデーモンを消し飛ばし、オルフェに命中する!!
覇王:「すごい・・やったのか?!」
本田:「いや・・たぶん逃げられた。」
覇王:「そうか・・。」
本田:「あれ、なんだ?」
覇王:「!」

69話/迫りくる闇の力

黒炎:「それにしてもオルフェの奴、どこほっつき歩いてんだ?」
獣牙:「たしかオーロラマウンテンに行っていたはずだ。」
オルフェ:「俺が・・なんだって?」
獣牙:「!」
黒炎:「どうしたんだその傷!」
オルフェ:「セイバーズにやられた。」
黒炎:「なっ!てめぇ、ザークのメンバーでありながら情けねぇぞ!!」
獣牙:「あのオルフェがここまで手傷を負わされたんだ、相当な手練れかもしれん。」
黒炎:「おいデストロイ!オルフェの味方につくのか!!」
獣牙:「落ち着けハデス、いちいち熱くなるな。」
ブラッディ:「そこまでよ、デストロイの言う通りだわ。」
オルフェ:「申し訳ありませんブラッディ様、このような失態を招いてしまって。」
黒炎:「小池のやつはどこに?」
ブラッディ:「共士郎なら自分の部屋に戻ったわ。」
獣牙:「側についていなくてよろしいのですか?」
ブラッディ:「大丈夫よ、それより聞いて。ダークモンスターの蘇生が成功したの!!」
獣牙:「本当ですか!」
ブラッディ:「白虎軌跡の中に潜んでいた魔王の力の断片、相当なものよ。これをもっと培養できれば、数百匹のダークモンスターを生み出すことも夢じゃないわ。」
黒炎:「そいつぁいいぜ。戦力増強か、面白くなってきたじゃねぇか!」
獣牙:「でもなんであの子に魔王の力が?」
ブラッディ:「あの子の母親が原因でしょうね。昔、魔王の力を封じていた土地で偶然生んだあの子に力が乗り移ったと私は推測してるけど、正直経緯なんてどうでもいいわ。それにこの力は断片にすぎない。大元はここから離れた場所で封印されてるし。」
オルフェ:「いずれにしても、計画が順調で何よりだ。」
ブラッディ:「プロジェクトの第一段階は終了、ハデス!」
黒炎:「?」
ブラッディ:「共士郎の相手を。」
黒炎:「な、なんで俺が!」
ブラッディ:「計画を進めるためには彼の成長が必要不可欠なのよ。共士郎の究極必殺技の特訓に付き合いなさい。」
黒炎:「敵に塩を送るようなこと出来っかよ。」
ブラッディ:「なんなら本気で倒しにかかっても構わないわ。」
黒炎がピクッと頷く。
獣牙:「本気ですか?あいつ、死ぬかもしれませんよ。」
ブラッディ:「大丈夫、共士郎は相当な手練れよ。」
黒炎:「面白れェ、この機会にあのヤロウへのストレスをすべてぶつけてやらぁ!」
ブラッディ:「あなたがどこまでやれるのか見せてもらうわ、共士郎。」
小池:「静かにしてくれないか、俺は疲れてんだ。」
黒炎:「おい小池ェ、特訓に付き合ってやる。さっさとおっぱじめようぜぇ!」
小池:「俺は頼んでない。」
黒炎:「てめぇの事情なんて知ったことか、こちとら戦いたくてうずうずしてんだ!」
小池:「単細胞が、どうなっても知らないぞ。」
黒炎:「恰好つけがァ~デスハデス!!」
黒い炎が小池に向かって放射される!
小池:「フッ。」
シュッ!
黒炎:「消えた?!」
小池:「黒炎弾!!」
バァン!バァン!!
姿を消した小池から容赦のない連射攻撃が黒炎を襲う!
黒炎:「チィッ、うざってぇ!」
黒炎は腰につけている二本のライフルを持ち構える。
黒炎:「デスペラードブラスター!!」
ドカカカカカカッ!!
小池:「奥義・レジェンドライブ!!」
小池は青い光を放ちながら高速回転し、黒炎の弾丸を弾いていく!
黒炎:「ヤロォ、せこい手使いやがって~イービルブレイカ―!」
黒炎は小池の影に向かって拳を叩きつける!
バシィィツ!!
小池:「っ・・動けない・・。」
黒炎:「俺に拳を叩きつけられた影は一定時間影そのものが消える。その際、影をつくっていたてめぇの体は身動きができなくなるぜ。クククッ・・さぁ、フルボッコタイムだ。」
小池:「暗黒衝撃波!」
黒炎:「ぐあっ!!」
小池:「ベルゴンザの力を得た俺は体が動かずとも戦うことはできる。」
黒炎:「上等だ、借りモンの闇の力なんぞに俺ぁ負けねぇ!」
黒炎の腕は刻印の入った腕へと変化していく・・。
小池:「何をする気だ?」
黒炎:「へっ!X技・オーバーアンダーサタン!!」
ビシュゥン!
小池:「ロケットスタートってやつか・・チッ!」
黒炎:「おらぁっ!!」
バシィッ!
小池:「うぐっ?!」
黒炎:「おらぁっ、おらぁっ、おらぁっ!!」
小池:「くそがぁ・・っ!」
(上下に繰り出される拳、分かっていても動きがここまで速いと交わしきれねェ!)
黒炎:「最っ高だぜ、オラ・・立てよ、まだ終わってねぇぞ!」
バシィッ!!
小池:「がは・・っ!」
獣牙:「これじゃチンピラの喧嘩だな。」
オルフェ:「いや・・。」
小池:「フッ・・やるじゃないか単細胞。丁度いい・・。」
黒炎:「あ”?」
小池:「昨日完成させた究極必殺技の威力、この場を借りて試すとしよう。」
黒炎:「なっ?!お、おい!話が違うじゃねぇか!!なんでこいつの究極必殺技が完成してんだよ!!!」
獣牙:「もしや・・ハメられたのか、あいつ。」
オルフェ:「ブラッディ様は小池が完成させた究極必殺技の威力を確かめたかったのかもしれない。その相手として犬猿の仲であるハデスは打ってつけだったということか。」
黒炎:「まぁいい、完成仕立ての技でやられるほど俺はヤワじゃねぇしよ。」
小池:「究極必殺技・激震滅!!」」
小池が力いっぱい地面を殴りつけると激しい地震が起こり、黒炎たちはバランスを崩してその場に倒れこむ!!
ゴゴゴゴゴゴッ!!
黒炎:「っ・・!」
(足場が崩れて態勢を保てねェ・・んだよこの技は!)
小池:「X技・・。」
黒炎:「!・・やべぇ・・不安定なこの足場じゃ避けきれねェ!!」
小池:「レボリューションサーガ改!」
小池が手の平を広げると紫の光線が勢いよく黒炎に襲い掛かる!
シュゥゥゥゥン・・ドカァァアン!!
ブラッディ:「上出来。」
小池:「満足したか。」
デストロイ:「あのハデスを・・こんな簡単に。」
オルフェ:「それがベルゴンザの力をコントロールした姿、アルティメットフォームか。」
小池はアルティメットフォームを解いた。
デストロイ:「容姿が特別変わったようには見えなかったが、身体能力の底上げが規格外すぎる。」
小池:「まだだ・・この程度じゃ足りない。」
ブラッディ:「どこに行くの共士郎?」
小池:「どこに行こうと俺の勝手だ。」
ハデス:「げほっ、げほっ・・ヤロォ・・。」
ブラッディ:(想像以上の威力だったけど、彼の潜在能力はこの程度じゃないはず。仲間に情けを掛けるような人でもないでしょうし、手加減をしている様子も見受けられなかった。)
デストロイ:「あのブラッディ様、なぜ微笑んでおられるのですか?」
ブラッディ:「だって・・おかしくって。」
(無意識に力をセーブをして戦っていたとしたら・・何があなたの中でひっかかっているのかしら?)

70話/宣戦布告!真の力とは何なのか?

夏海:「じゃあね竜!今日も楽しかった。」
竜牙:「俺も!」
夏海:「・・・。」
竜牙:「いよいよ明日か。」
夏海:「うん、もうこっちに残しているのは明日必要な物ぐらい。」
竜牙:「そっか・・明日の見送りには必ず行くから。」
夏海:「・・・。」
竜牙:「夏海?」
夏海:「見送りは・・いいわ。」
竜牙:「な・・な、なんでだよ!そんな「ずっと!」」
夏海:「ずっと考えていた。この先、いつ会えるかも分からない・・だからこそ見送りには絶対に来て欲しいなって・・昨日まではそう考えてたんだ。でも、楽しい時間が過ぎて行くたびに痛感するの。」
竜牙:「・・・。」
夏海:「竜が見送りに来たらきっとNYニューヨークに行けなくなっちゃう。」
少女の震えた小さな叫びが静かに響いた。
竜牙:「なつ・・み。」
夏海:「ごめんなさい・・。」
竜牙:「お、おい!待ってくれよ!!」
(そんな・・こんなお別れ・・俺は嫌だ!)
小池:「追わないのか?」
竜牙:「!」
小池:「久しぶりだな、剣崎。」
竜牙:「小池?!」
小池:「話がある、ついて来い。」
竜牙:「何を一方的に・・おい待て!」
小池:「・・。」
竜牙:「おい、小池っ!」
小池:「・・前に俺に言ったよな?」
竜牙:「はぁ?」
小池:「最強だけを求めた強さが真の強さなのか?お前は強くなって、弱かったあの時の自分に討ち勝とうとしているだけなんじゃないのか?今のお前に必要なのは表面的な強さじゃなくて、心の強さなんじゃないのか?ってよ・・。」
竜牙:「んだよ、覚えてたのか。」
小池:「お前の言葉がずっと引っかかっている。あれから俺は、ベルゴンザというマフィアの頭を倒して強力な力を手に入れた。そしてこの力で数えきれないほどの敵をなぎ倒してきた。けど戦いを終えた後に残るのは虚しさだけだった。」
竜牙:「・・・。」
小池:「セイバーズとしてモンスターと戦っていた頃は、ただひたすら強さを求めていた。けど、強さというカタチは様々だ。そんな曖昧なものを求めてきた結果、ジョーカーを相手に立ち向かったあの日地獄を味わってしまった。ジョーカーに吹っ飛ばされて、倒れた時に、俺はあるごみクズの言葉を思い出していた。」
竜牙:「言葉?」
小池:「昔の話だ。中学の頃、俺はイジメっ子どもの標的にされ悲惨な日々を送っていた。そのイジメっ子どものリーダー的立ち位置にいた野郎が俺にある言葉を放ったんだ。力がある者が弱い立場の者を制する。これに関しては大人も子供も関係ない、社会というものをいち早く経験できて良かったじゃないか、社会勉強だよ。それにな?コイツの心の弱さが俺たちの遊び心に火をつけるんだよ、なぁ・・お前が弱いからこーなんだよ、小池・・ってよ。」
竜牙:「なっ・・なんだよそれ・・っ!!」
小池:「強い者が弱い者を支配する、自然の道理だ。剣崎、強さってのは何んだ?お前の言う心の強さってのは何なんだ?強くなければ大事なモノを守れない、失ってからじゃ遅いんだ。人はいつ死ぬか分からない、その人が側にいるのが当たり前じゃない・・大半の奴がそんなこと分かってると受け流すだろう。でも、大事なモノを・・大切な人を失った奴はそう受け取らない。涙を流して拳を握りしめるはずだ、俺もその一人だ。俺にはかつて自分をイジメっ子から守ってくれた親友がいた。けど、あいつはを死んじまった。イジメられていた俺のために拳を振るったせいでよ。」
小池は空を見上げる。
竜牙:「んだよ・・それ・・。」
小池:「もう二度と・・大事なモノを俺は失いたくないんだ。なぁ剣崎、俺の想いは・・俺が今まで積み重ねてきた努力は無駄だったのか?」
竜牙:「そんなことねぇよ!そうか、だから一人で強くなろうと・・お前は今まで戦ってきたのか。」
小池:「俺は近いうちに今ある自分の力を遥かに凌ぐ魔王の力を得ることになるだろう。俺はその力をもってもう一度お前の前に立つつもりだ。剣崎、お前の戦う理由、お前がこれまで積み上げてきたものすべてをお前の剣に乗せてお前も俺の前に立て。お前を倒すことで、俺の歩んできた人生が間違ってなかったことを証明してみせる。さっきの問いに対する答えはきっとお前との戦いの先にある。」
竜牙:「・・宣戦布告ってことか?」
小池:「ああ、そう取ってもらって構わない。」
竜牙:「分かった。その代わり一つ約束してくれ、この勝負もし俺が勝ったら戻ってきてくれ。俺たちのところに。」
小池:「・・邪魔したな。」
小池は竜牙に背を向けてゆっくりとその場を立ち去っていく。
竜牙:「俺はあいつのこと・・何も知らなかったんだな。苦しんでたんだ、あいつはずっと・・一人で。」
去っていく小池の小さな背中を竜牙は最後まで目で追った。

黒炎:「随分と遅い帰りだな、小池。」
小池:「お前に心配される筋合いはない。」
黒炎:「このヤロウ、図に乗ってんじゃねぇぞ!!」
獣牙:「落ち着けハデス。」
黒炎:「けどよォ!」
獣牙:「小池、お前は今ザークのメンバーなんだ。身勝手な行動は慎め、組織の調和を乱す。」
小池:「勘違いするな、俺はお前たちの仲間になったつもりはない。お前たちのボスが究極の闇をも超える魔王の力をくれてやると言ったから入ってやったまでだ。」
黒炎:「ハッ!化けの皮がはがれやがったな、聞いただろデストロイ?コイツはいつ俺たちを裏切るか分かんねぇ、ここで始末しておくべきだ。」
オルフェ:「よせ。ここで争っても何の解決にもならない。ブラッディ様の怒りを買うだけだ。」
黒炎:「チッ!」
小池:「俺の邪魔をするなら容赦はしない。」
小池が去っていくのを確認した後、ハデスは側にあったドラム缶を蹴とばした!
バシィッ!
カランカラン・・。
黒炎:「ざっけんな!マジでぶっ殺してやりたいぜ、あのヤロォ。」
獣牙:「ブラッディ様も何を考えているのやら。」
ブラッディ:「みんなそろってご立腹のようね。」
獣牙:「い、いえ・・そのような事は。」
ブラッディ:「プロジェクトを最終段階へと進めるわよ。」
獣牙:「魔王復活の儀式を始めるのですか?」
ブラッディ:「ええ。復活したダークモンスターたちに人々を襲わせて、魔王復活の為の生贄を用意させるわ。」
オルフェ:「ほう。」
獣牙:「かしこまりました。」
ブラッディ:「容赦はしない、セイバーズによって討伐されてった我らの仲間たち・・その雪辱を我らザークが晴らす!」
黒炎:「いいねぇ~腕がなるぜ!!」
ブラッディ:「共士郎、あなたの心の中に潜んでいる闇・・利用させてもらうわよ。」

71話/さらば夏海!涙の別れ!!前編

翌日の木嶋家。
夏海:「来ちゃったか、この日が。」
未央:「夏海~荷物はこれで全部?」
夏海:「うん、後は自分で持っていく。」
未央:「分かったわ。」
雅治:「夏海。」
夏海:「どうしたのお父さん?」
雅治:「夏海、竜牙くんにお別れは伝えたのか?」
夏海:「うん・・伝えた。」
雅治:「嘘はよしなさい。なんできちんとお別れをしないんだ。竜牙くんのこと、好きなんだろ?」
夏海:「え・・。」
雅治:「親の勘というやつだ。」
夏海:「もういいの。」
雅治:「・・私には無理をしているように見える。」
夏海:「・・。」
雅治:「すまん、余計な世話だった。未央と私は先に空港に行って搭乗手続きを済ませてくる。」
雅治はゆっくりとその場を立ち去る。
ピンポーン。
未央:「夏海~お客さんよ出てくれる?」
夏海:「あ、はーい。」
ガチャッ。
夏海:「!・・みんな。」
未央:「あらあら。夏海、お友達と最後のお別れをして来なさい、みんなあなたの為に来てくれたみたいよ。」
夏海:「う、うん・・。」
桜:「おはよ、夏海。」
速水:「おはようございます。」
市原:「朝早くから迷惑かなとは思ったんだけど、いつ出発するか分からない以上早めに会いに行った方がいいかなと思って。」
橘:「みんなで見送りに来たんだ。」
白鳥:「あれ、木嶋先輩・・剣崎先輩は?」
夏海:「私が見送りに来ないでって言ったの、竜にお別れを言いたくなかったから。」
白鳥:「・・・。」
桜:「駄目よ、そんなの。」
夏海:「優香?」
桜:「こっちに戻れなくなるかもしれないって言ってたじゃない。夏海の気持ち、理解できるけど先輩の気持ちはどうなるの?夏海がいなくなった後、寂しい思いをするのは先輩だって同じじゃない!」
全員がかける言葉を失い、沈黙が流れる。
白鳥:「だったら別れてくださいよ。」
橘:「お、おい!」
桜:「百合花ちゃん!」
夏海:「・・・。」
白鳥:「木嶋先輩と剣崎先輩はこれから遠距離恋愛をしていくことになるですよね、でもこの先会えるかどうか分からない。わかります?どんなに想いが募っても会えないんですよ、言葉で言うよりもずっと辛いものになると思うんです。だから剣崎先輩は辛い気持ちをぐっとこらえて残り少ない日数をあなたを過ごしたんじゃないんですか?それなのに見送りにすら行かせてもらえないなんてひどいです。」
市原:「白鳥・・。」
夏海:「ごめんなさい・・でも、竜の顔見たらきっと足がすくんで動けなくなる。積み上げてきた思い出が沢山あるから・・。」
橘:「木嶋さん・・。」
白鳥:「なんでっ・・そうなるんですか!言っておきますけど意地悪で言ってませんから、こんな別れ方したら2人ともダメになるから言っているんです!木嶋先輩、残された剣崎先輩がこれからどうなったとしても側にいないあなたには責任を取ることはできないんですよ!・・離れてくださいよ、先輩から。」
桜:「百合花ちゃん、やめなさい!」
夏海:「いいのよ優香。白鳥さんは間違ってないわ・・うん、時間も押してるしひとまず空港に行きましょ!」
光ヶ丘国際空港。
桜:「ここでお別れか。」
速水:「木嶋さん、色々と面倒を見て下さって本当にありがとうございました。向こうに行っても頑張って下さい!」
夏海:「ありがとう速水くん。」
市原:「オーロラ島での思い出は俺にとって忘れられない時間になってる、今までありがとう。」
夏海:「私もよ、竜のことよろしくね市原くん。」
橘:「グスッ・・きじ・・まさ・・。」
夏海:「橘くん、ありがとう。あなたのおかげで大事なことに気づけた。私の事、最後まで好きでいてくれてありがとう。忘れないよ!」
橘:「っ・・・それはこっちの台詞だよ・・ううっ・・。」
白鳥:「・・・。」
夏海:「白鳥さん、ごめんなさい。竜と別れることはできない、この数日間で今まで以上に好きになっちゃたの。」
夏海はミュージックプレイヤーを白鳥に渡す。
白鳥:「?」
夏海:「聴いてみて。」
白鳥:「これって、キセキ?」
夏海:「そうGreeeN のキセキ。これが毎晩22時ぐらいにお父さんが聴いているラジオで流れるの。いつもこれを聞きながら寝てるんだ。」
白鳥:「・・・。」
夏海:「この歌の歌詞ってホントにそのまんま今の私の気持ちなの。大好きなのよ、竜のことが。確かにお互いの為には別れた方がいいのかもしれない、でも別れるつもりはないわ、それは必要のないことよ。確かに、お互いに違う道を進んで行ける存在って大事な関係だと思う。でもそれは友達という関係でしかない、恋人なら同じ道を進まなきゃ・・辛い思いも寂しいも2人で分け合えば乗り越えられる。私はそう信じてる・・!」
イヤホンを外し、白鳥は顔を上げる。
白鳥:「!・・うん・・それでこそ元淫乱生徒会長さんです。」
夏海:「誰が元淫乱生徒会長よ!」
白鳥:「さっさと行っちゃって下さい、剣崎先輩の側には私がついているのでご安心を。」
夏海:「この・・最後まで嫌なやつね・・あんたは。」
白鳥はミュージックプレイヤーを返す。
桜:「夏海。」
夏海:「!ちょっ・・なんであなたが泣いてるのよ。」
桜:「やっぱり嫌だよ・・泣かないで見送ろうって決めてたのに・・ううっ・・。」
夏海:「優香、あなたには多くは語らないわ。私の後継人として生徒会のこと、任せたから。」
桜:「・・うんっ!」
桜は涙を拭い、夏海にあるものを手渡す。
桜:「これは光ヶ丘学院であなたにお世話になった人たち、全員の寄せ書き。麗華が2日間徹夜してみんなの言葉が収まるようにつくった特注の色紙よ。」
夏海:「麗華が・・。」
桜:「見送りにいけないからって一生懸命空いた時間を使って作ってた。」
麗華が頑張って作っていたところを思い浮かべた夏海、その目からは涙が流れる。
桜:「後、これは私からのプレゼント。」
夏海:「!」
桜:「その・・頑張ったから!飛行機の中で開けてみて。・・グスッ・・また会えるって信じてる。」
夏海:「ううっ・・うっ、うっ!」
未央:「夏海、行くわよ!」
夏海:「みんな、ありがと!!」
夏海は駆け出し、エスカレーターに向かう。
桜:「夏海・・っ!」
夏海:「!」

桜:「頑張ってね!」

夏海:「うん!さようなら!!」

夏海はエスカレーターで降りて行った。
桜:「い、行っちゃった・・。」
白鳥:「桜先輩、ずっと聞きたかったんですけどなんでそんなに指を怪我してるんですか?」
桜:「あ、いや・・これは。」
竜牙:「うぉぉっ!!」
速水:「!ハヤブサランニングストームの風?!」
竜牙:「!あれっ・・みんな・・?!」
速水:「部長!何やってたんですか!!」
白鳥:「遅いですよ先輩!」
橘:「まだ間に合う、行って来い剣崎!」
竜牙:「っし・・ありがとう、みんな!」
タッタッタッ!
竜牙:「あ・・・!」
竜牙の目線の先には飛行機に乗り込もうとしている夏海の姿が映った!
竜牙:「待ってくれっ!!」

72話/さらば夏海!涙の別れ!!後編

夏海:「!なんで・・・。」
雅治:「夏海。」
夏海:「気にしないで!竜には悪いけど、出発しましょ。」
雅治:「待ちなさい。出発まで後10分程待ち時間がある、きちんとお別れをしてきなさい。」
夏海:「お父さん!」
雅治:「竜牙くんが待っている。」
未央:「夏海、ほら!」
夏海:「・・・分かった。」
夏海は急いで飛行機から降りる。
竜牙:「夏海!」
パシィッ!
夏海のビンタが竜牙の頬を叩く。
夏海:「バカっ!!なんで来たのよ・・・来ないでって言ったでしょ!!」
竜牙:「気がついたら・・体が勝手に動いてた。」
呼吸を整えて竜牙は夏海の側による。
竜牙:「ごめん。」
ギュッ。
竜牙はそっと夏海を抱きしめる。
夏海:「・・・・なんでっ・・!」
竜牙:「ははっ、顔ぐちゃぐちゃだな。」
夏海:「うっさいわね・・目にゴミが入ったのよっ!」
竜牙:「これを・・。」
夏海:「!これって・・。」
竜牙:「プロポーズもどきみたいな事しておきながらこれがないのはおかしいだろ。まだ、こんなものしか買えないけど。」
夏海の手を取り、竜牙は夏海の手の平に指輪のついたネックレスを渡す。
夏海:「ゆ、指輪・・?!」
竜牙:「俺たちは離れ離れになっても繋がっている、同じ空の下にいる。寂しい時や辛い時はその指輪を見て思い出してほしいんだ、俺のことを。愛してるよ。」
夏海:「・・・っ!」
竜牙:「お前には感謝したいことが沢山あるんだ。幼馴染みとしていつもそばにいてくれたこと・・あっ、一緒に戦ってくれたことも・・・あと、あと・・そうだ!・・・俺に恋を教えてくれてありがとう。」
夏海:「!・・・うっ、ううっ・・。」
夏海は両手で顔を隠し、涙を流す。
竜牙:「良かった・・いなくなる前に全部言えた。」
夏海:「バカっ・・。」
竜牙:「もうそろそろだよな・・出発まで。」
夏海:「無神経な事言ってごめんなさい!来てくれて嬉しかった、ホントにありがとう!私も大好きだよ、竜。」
夏海は竜牙に背を向けてゆっくりと飛行に向かおうとするが・・。
竜牙:「夏海!」
振り返った夏海の唇に竜牙の唇が重なった。
夏海:「っ?!」
竜牙はそっと唇を離す。
竜牙:「・・行ってらっしゃい。」
夏海:「・・うん!行ってきます!!」
夏海は飛行機に乗り込む。
雅治:「夏海。」
夏海:「うん?」
雅治:「心のモヤモヤは取れたようだな。」
夏海:「・・・うん!」
雅治:「良かった。」
雅治はそう言い残しトイレに向かっていく。
夏海:「お父さん・・。」
未央:「良かったわね、夏海。いいなぁ、青春ね。」
夏海:「うん、みんなには感謝してもしきれないぐらい沢山のものをもらった。」
夏海は桜からもらった小包を開けていく。
未央:「それは?」
夏海:「優香からのプレゼントなんだけど・・・・!」


海外に行っても夏海らしさを忘れないでね!ガンバ!!
あなたの大親友より。


未央:「うわぁ凄い!このお守り、すべて刺繍でメッセージが入ってるじゃない!!」
夏海:「うっ、うっ・・ゆう・・か・・。」
(もう涙出ないよ・・ばかっ。)
親友の想いが詰まった小さなお守りを握りしめて少女は飛び立った。

~to be continued


番外編07/人生の転機、カイとの出会い

本田:「スパークリングサンダー!!」
ビリリリッ・・ドカァァアン!!
本田:「電気エネルギーの制御がここまでできるようになるなんて。」
幸子:「コラ雷攻!」
ビクッ!
本田:「な、なんだよ・・。」
幸子:「こんな遅くまで練習しないの!ご近所迷惑でしょ。」
本田:「・・・ごめん。」
幸子:「今の・・雷攻がやったの?」
本田:「え?そうだけど・・。」
幸子:「凄いじゃない!あれだけの電気エネルギーをコントロールできてる!!」
本田:「俺も驚いてるよ、セイバーズとして日頃からこの力を扱えるようになったからかも。」
幸子:「人生の転機だったのかもしれないわね、ソフィアちゃんに感謝しないと。」

俺の体には、生まれた時から体内に電気エネルギーという特殊な電力が流れている。とはいえ、日常生活で支障がでることはなかった。けど、感情が高ぶった時に体内で流れる電気エネルギーを放出してしまうこと傾向があり、それゆえに周囲の人から恐れられてきた。当時の同級生クラスメイトたちは、喧嘩とかそういうこと以前に俺と関わり合いになることを避けるよう親から言われていたみたいだ。誰もが俺と一定の距離を置き、必要最低限の会話しかしてもらえず、輪に溶け込めないままずっと孤独を味わってきた。そんな俺をどうにかしてあげたいと、両親は俺を特殊な施設に預け入れた。

本田:「ぐあっ!」
武田:「言ったはずだ、いつ力が発動してもコントロールできるようにしておく必要があると。そうでなければこの先、お前は一生独りで生きていなかければならなくなる。」
本田:「っ・・うおぉぉぉっ!!」
ビリリリリッ!!
武田:「フン!」
バシィッ!
男は本田の電撃を掌でなぎ払う!
本田:「なんで・・電撃が当たらないんだ・・。」
武田:「お前の力は所詮、初見殺しだ。ネタが割れれば対策は練れる。」
本田:「それは・・?!」
武田:「ゴム手袋だ。戦闘用に改良を加えた特注品ではあるが。」
本田:「そうか・・絶縁体・・!!」
武田:「そういうことだ。ゴムは電気を通さない絶縁体に分類される。」
バシィィッ!!
本田:「ぐはっ!」
男の下突きが本田の腹に勢いよく入る。
武田:「こいつはお笑いだ。技を放った後、7秒間のインターバルがあることに気づいてないようだな。自分の技の特徴を熟知してないやつが制御などできるわけがないだろ。」
本田:「んだとぉ・・。」
カイ:「そこまでよ武田。」
武田:「なっ・・!」
カイ:「上からの命令よ、あなたには彼の担当から外れてもらうわ。」
本田:「あ、あんたは?」
武田:「そ、ソフィアさん・・。」
カイ:「馴れ馴れしく呼ばないで。今は甲斐の名字で名を通しているんだから。」
武田:「も、申し訳ありません!ですが、聞き捨てなりませんね・・なぜ奴の担当から外れることになったのです。」
カイ:「彼の力が危険だから常人には任せられないそうよ。分かったらさっさと身を引いてもらえるかしら。」
武田:「そんなっ・・納得がいきません!」
カイ:「Заткнись黙れ!」
武田:「?!」
カイ:「私をあまり怒らせないで、こういう台詞はあまり吐きたくないの。」
本田:「ろ、ロシア語・・。」
カイ:「!・・・あらご存じ?」
武田:「この・・舐めるなァ!」
ズバッ!
武田が前に踏み出すと同時に武田の右足が吹っ飛んだ!
武田:「あ・・?!」
カイ:「кретин馬鹿ね。私はかつてセントラル王国を守護していたハイソルジャーの一人よ。日本の軍人風情が随分と舐めてくれたものね。」
本田:「い、いつの間にこれだけ精密なワイヤーを仕掛けて・・。」
武田:「ああああああああああああああああああああああああああああああっ!!足がぁぁぁっ!!」
カイ:「そこのあなた、ついてきなさい。彼の処分はここの軍隊に任せましょう。」
本田:「ちょっ、待って!」
タッタッタ!
本田:「あんた、本当に何者なんだ?」
カイ:「かつてセントラル王国で国を守っていたハイソルジャー、カイ・ソフィアよ。」
本田:「は、ハイソルジャー?!」
カイ:「日本ではお世話になっている叔父さんのご厚意に甘えて、甲斐の名字で名を通しているわ。私の事はカイって呼んでよ。」
本田:「カイ、あんたは俺の事を知ってるのか?」
カイ:「ええ。あなたがこの施設に入った経緯まですべて聞かせてもらいました。」
本田:「・・・。」
カイ:「本田くん、あなたの力は常人にはない特殊な力そのもの。不運な子よね、この平和なご時世に生まれてきてさぞつらい思いを沢山してきたでしょ?」
本田:「だったらなんだよ・・。」
カイ:「単刀直入に言わせてもらうわ、私たちの仲間にならない?」
本田:「・・・は?」
カイ:「あなたの力、貸してほしいのよ。」
本田:「い、意味分かんねぇよ。言っておくけど、俺はこの力をコントロールできねぇんだぞ?」
カイ:「あなたが私たちに手を貸してくれるのなら、その力を扱えるように手を貸してあげてもいいわよ?」
本田:「!ど、どうにかなるのか?」
カイ:「あなたは力を抑えよう抑えようと今まで必死だったみたいだけど、それじゃあいつまで経っても自分のモノにできない。」
本田:「?!」
カイ:「自動車みたいなものよ。MTマニュアルのチェンジレバーを動かす時、ローギアからいきなりオーバートップギアにギアチェンジはできない。あなたの力もきっとそう、よーは力を一気に放出しようとするから、体に負荷がかかってコントロールが利かなくなるの。電気エネルギーを少しずつ放出するコツを体で覚えていけば、その力は間違いなくあなたの武器になる。」
本田:「簡単に言ってくれるな。」
カイ:「?」
本田:「口で言うほど簡単に制御できる力じゃねぇんだよ。」
カイ:「・・随分と腰の引けた男ね。」
本田:「なに?」
カイ:「見せてみなさいよ、あなたの力。」
本田:「・・・。」
カイ:「私がひねりつぶしてあげる。証明してあげるわ、制御できない力なんて所詮宝の持ち腐れ。大したことはないって事を!」
本田:「このヤロウォッ!!」
ビリリリッ!!
カイ:「フン!」
バシィィッ!!
本田:「!地面を蹴り上げて跳んだ?!」
カイは尻ポケットに備えてある拳銃を手に取り、構えて引き金を引く!
バン!バン!!
本田:「!」
カイ:「フン!」
ヒュゥン・・バシッ!
ヒュゥン・・バシッ!
放った弾丸の側面からワイヤーが飛び出し、本田の囲う壁に突き刺さる!!
本田:「弾丸にワイヤーを仕込んで?!」
カイ:「これであなたは身動きが取れない。」
本田:「冗談だろ?こんなモノ・・!」
ビリリリッ!!
本田:「・・?!」
(電撃を通さない・・そんな!)
カイ:「私の使用するワイヤーは多種多様。あなたに使ったワイヤーはプラスチックを素材として作られている。」
本田:「自由電子のないプラスチックを・・くそっ!だったら力づくで!!」
カイ:「させない。」
バシィィッ!!
本田:「痛っ!」
本田は張ってるワイヤーに腕が引っかかり、身動きがとれなくなってしまった!
カイ:「その動きは想定済み。」
本田:「まさか俺がワイヤーを引っ張ることを想定して、俺が引っ張れば、他のワイヤーが俺の腕に絡みつくようワイヤーを張ったとでも言うのか?・・ここまで正確に・・っ!」
カイ:「派手な武器じゃない、ましてや殺傷力があるわけでもない。けど、私はこのワイヤーを愛用している。何故だと思う?」
本田:「・・・。」
カイ:「比較的安易に自分の戦いやすいフィールドをつくれるのよ、それも熟練者なら数分でね。これがワイヤー戦術の最大の利点。何よりワイヤーは団体戦で大きな力を発揮する。罠が張れるのよ?罠があると思わせるだけで敵の注意の何割かは奪える。それだけじゃない、相手の行動範囲を制限できる。そして、ワイヤーの張り方を工夫すれば仲間の動きをアシストすることもできる。どう?そう考えると恐ろしい武器でしょ。」
本田:「自分のペースに相手を引き込める・・!」
カイ:「そういうこと。小さな力もようは使いよう、武器は使用者によって化ける。それはあなたの力にも言えることよ。」
本田:「・・・。」
カイ:「私がこのワイヤー戦術を完成させるのにどれぐらいの年月をかけたと思う?」
本田:「こ、こんなの・・コツさえ掴めりゃ誰でも・・!」
カイ:「3年半。」
本田:「ま・・マジかよ。」
カイ:「何かを成し遂げるためにはそれなりに時間を費やするもの。あなたはその力を自分のものにする為にどれぐらいの時間を費やしてきたのかしら?半端な努力でモノを申すのはやめなさい。自分の弱さを受け入れ、それを克服しようと思わない限り、あなたの中身が成長することはないわ。」
本田:「っ・・。」
カイ:「・・少々言い過ぎたわ。もし、私たちに力を貸してくれるのならここに連絡を頂戴。」
カイは連絡先を記入したメモ紙を本田に渡してその場を立ち去ろうとするが・・。
本田:「・・待てよ!」
カイ:「・・なに?」
本田:「あんたたちの仲間になれば、この力を扱えるように協力してくれるんだな?」
カイ:「約束するわ。」
本田:「分かった。」

それから約半年、俺はカイの元で修行をしながらモンスターセイバーズについて色々と教えてもらった。
荒削りな部分はまだ見受けられる、それでも確実に力を扱えるようになっていくのを実感しながら俺は時折姿を見せるモンスターを討伐しつつ、日々の修行に明け暮れていた・・そんな時・・。

本田:「全国大会?」
カイ:「ええ。セイバーズの力を底上げするための場を麒麟が設けたらしいわ。これが何を意味するのか何となく察しはつくかしら?」
本田:「今まで以上に力をつけたモンスターがこの世界にやってくるか、あるいは数が極端に増えるのか・・いずれにしてもそういう場を設けたということは、近いのか?最後の決戦ってやつが・・。」
カイ:「一概にそうとは言い切れないわ。でも次元の狭間がどこで出現しているのか未だ確認されてない以上、警戒するに越したことはないってことでしょうね。でもま、これはチャンスよ。あなたにとっても今の力を試すことができるいい機会じゃない?」
本田:「ああ。エントリーするにはどうしたらいい?」
カイ:「エントリーの方は私が済ませてくるから安心して。それと、エントリーした参加者には招待状と大会が行われる会場までのチケットが郵送されるらしいわ。なくさないようにね?」
本田:「カイも出場するのか?」
カイ:「キングダムセイバーズには参加規制がかかっている。私が出場することはないわ。」
本田:「あくまで俺たち次世代のセイバーズを育てる為の大会というわけか。」
カイ:「そういうことよ。」


番外編08/本田雷攻、新たなる門出!

本田:「負けっちまった・・。」
カイ:「コテンパンにされたようね。」
本田:「何の用だよ。」
カイ:「全国大会で己の未熟さを少しは痛感したのかしら?」
本田:「何も・・できなかった。くそっ・・。」
ギュッ・・。
本田は拳を握りしめる。
カイ:「相手が白虎拳王なら無難な結果とも言えるけど。なんせ彼は全国でも指折りのセイバーズの1人。相手が悪かった・・それでいいじゃない。」
本田:「あいつがモンスターだったら俺は確実に死んでいた!」
カイ:「・・・。」
本田:「ガキの頃の話だ。俺が風邪をひいたりして親が病院に連れて行く時、医者は決まってこう言う。施設に預けろと・・俺の力は危険なんだって!」
カイ:「本田・・。」
本田:「俺が・・俺だけが人から避けられる状態ならまだいいんだ!でも、母さんも俺が家にいるせいでご近所付き合いが上手くいかず、避けられてた。俺の力を恐れて託児所だってどこも引き受けてもらえねぇ!親父だってストレスで衰退していく母さんに無理をさせない為、家事と仕事を一生懸命こなしていたんだ!!・・すべて俺の持っている力のせいだ。だから、俺はあんたの元で修行してきた。なのに・・。」
カイ:「・・・。」
本田:「そんな光景を毎日毎日・・見るに耐えきれなくなった俺は、自殺しようと思ったことも少なくない。そん時は・・これ以上、両親に迷惑はかけられない・・生きているのが辛くて、しんどくて・・ここに・・俺の居場所はないって自分を追い込んでいてさ。ある日、精神的に追い込まれてしまった俺は人気のない場所に足を運んで自らの命を絶とうとした。未遂で終わったんだけどな、警察に捜索願を出して必死に俺の行方を探している母ちゃんとバッタリ合っちまったんだ・・。」

バシィッ!
本田:「痛っ・・!」
幸子:「何してるの!!心配したんだよ!!」
本田:「死のうと思った・・。」
幸子:「・・・!」
本田:「父ちゃんと母ちゃんに苦しい思いをさせるぐらいなら・・俺・・おれっ・・!」
幸子の目の色が変わる。
本田:「かあ・・ちゃん?」
幸子:「バカタレッ!母ちゃんも父ちゃんもあんたに死んでほしいだなんて一度だって思ったことないよ!!」
ビクッ!
本田:「ひぃっ・・!」
幸子:「我が子が親より先にいなくなる?この親不孝者が!冗談じゃない!!二度とそんなことさせない、いい?あなたは私たちの足枷じゃない、生きる希望なの!」
本田:「・・・!」
幸子:「いい?雷攻、二度とこんなことしないで。自分の運命に負けちゃダメ、あなたは一人じゃない。あなたには家族がいる。」
本田:「・・・うっうっ・・。」
幸子:「悔しいけど、人の評価ってあなたを見る第三者の人たちが決めるものなの。私たちにできることは変わる努力だけ、そんな人たちにあなたという存在を認めさせることぐらいしかできない。でも、だからこそ強く生きてほしい。理不尽な世の中だけど、強くたくましくあなたには生きてほしいの!」

本田:「強くたくましく生きてほしい・・それが親の願いだった。さっきも言ったけど、色んな事があったからこそカイの勧誘を承諾したんだ。強くなって俺のことを避けてきた奴らを見返す為に・・。それなのに負けたんだ、カイの言う通りだったよ・・俺の力は大したことねぇ、器の小さい俺の手には有り余るモノ・・宝の持ち腐れだ。」
カイ:「期待外れだったようね。」
本田:「?!」
カイ:「あなたには失望したわ。」
本田:「お、おい・・。」
バシィッ!
本田:「ぐあっ?!」
ソフィアのビンタ本田の頬を引っ叩いた!
カイ:「努力してきた自分をあなたが否定するんじゃないわよ・・。」
カイはその場を去っていく・・。
本田:「なんだよあいつ・・。」
本田家。
本田:「ただいま。」
幸子:「雷攻?!どうしたの、その顔・・。」
本田:「あはは・・ダチと喧嘩して派手にぶっ叩かれっちまった。」
幸子:「待ちなさい。」
本田:「な、なんだよ・・。」
幸子:「ソフィアちゃんから話は聞いてるわ。」
本田:「っ・・話したのかよ、あいつ。」
幸子:「ご両親に心配をかけさせないようにと説明してくれたんでしょ。そういう言い方はやめなさい。」
本田:「っせぇな、ほっといてくれよ!」
幸子:「ほっとかないわよ!」
本田:「・・・っ!」
幸子:「あの時と同じ目をしている、自分を悲観的に見ている目だわ。」
本田:「っ・・。」
幸子:「これを見て。」
本田:「巻物?」
幸子は巻物を開く。
本田:「来光・・?」
幸子:「あなたに本来つけるはずだった名前よ。光が来ると書いてらいこう。」
本田:「俺の・・名前?で、でも・・!」
幸子:「ええ、変えたのよ。あなたが生まれた時に名前をね。」
本田:「どうして?!・・昔から気に入らなかったんだ、なんで俺の名前を雷攻なんかにしたんだ!こんなの・・!!」
幸子:「お父さんが変えたのよ、あなたのおじいちゃんがね。」
本田:「じいちゃんが?!」
幸子:「電気エネルギーなんぞわけのわからん力など己の一部として取り込んで、人生という名の険しい道のりを攻めて攻めて突き進んでほしいという願いを込めてね。」
本田:「・・・・!」
幸子:「私は反対したんだけどね、最後の最後でじいちゃんに根負けたわ。あんな事言われたらね~断れないわ。」
本田:「・・じいちゃんは何て言ったの?」
幸子:「名前ってのは親が最初の誕生日に与えるプレゼントだ。カッコイイ名前をつけてあげなさい。将来、その名を誇って歩いていけるいい男になれるように・・ってね。」
本田:「んだよ・・それ・・。」
本田の目から涙がこぼれ落ちる。
幸子:「雷攻、一度や二度の失敗でへこたれないで。その名前には亡くなったおじいちゃんの想いが込められてる、忘れないであなたは一人じゃないってことを。」
本田:「・・っ・・ありがと・・母ちゃんっ!!」
幸子:「それとこれ。」
本田:「・・!」
幸子:「ソフィアちゃんに渡しといてもらえる?楚五郎さんの部下がたまたま見つけたらしいんだけど。」
本田:「!この写真、どこで撮られているか分かる?」
幸子:「オーロラマウンテンだと言っていたわ、楚五郎さんがソフィアちゃんなら何か分かるかもってこれを預かったの。・・調べてほしいって言ってた。」
本田:(次元の狭間・・だとしたら・・。)
幸子:「頼んだわよ雷攻、もしかしたらあなたが戦っている未確認生物に繋がる手掛かりになるかもしれない。」
本田:「分かった、心当たりがあるんだ。連絡してみるよ!」
プルルル・・。
覇王:「はい?」
本田:「覇王か?」
覇王:「本田?」
本田:「連絡先を交換して早々悪りぃな。」
覇王:「構わん。どうしたんだ?」
本田:「オーロラ島を調査したい。」
覇王:「む・・。」
本田:「あそこには何か秘密がある。」
覇王:「何か知ってるのか?」
本田:「まだ不確定要素の多い情報だけど、それを確かめるためにオーロラ島を調査したいんだ。協力してくれないか?」
覇王:「それなら今度の日曜、今から言う待ち合わせ場所に来い。」
本田:「え?」
覇王:「竜牙たちがそこにいるはずだ。」
本田:「剣崎たちが?」
覇王:「同行しよう、恐らく一緒についていった方が効率がいい。」
本田:「?分かった、また連絡する。」
ピッ。
カイ:「目の曇りが晴れたわね。」
本田:「!カイ・・っ?!・・お前、いつから俺の部屋に!」
カイ:「あなたの戦いはこれからよ、本田。」
ソフィアの一言で本田の表情が引き締まる。
本田:「・・ああ、俺はもう後ろを振り向かない。セイバーズとして今の俺にできることを全力でやってやる。」
カイ:「手に持っているそれは何?」
本田:「あ・・そうだ、これ。」
カイ:「次元の狭間?!」
本田:「やっぱりそうなのか?」
カイ:「あれだけ探し回っても見つからなかったのに・・。」
本田:「オーロラマウンテンで撮られたものらしいんだけど・・。」
カイ:「日本の外?!通りで・・。」
本田:「俺、調べてみようと思うんだ。何か嫌な予感がする。」
カイ:「分かったわ、私たちの方でも色々と手をまわしてみる。」
本田:「?!・・日本を経つのか?」
カイ:「ええ。日本には私の仲間たちが探りを入れてるし、これ以上この国に人員を割く必要はないわ。ここでお別れね、本田。」
本田:「そっか。世話になったな、色々と。」
カイ:「これからよ、あなたはまだスタートラインに立っただけ。Давай встретимся снова.」
本田:「な、なんて?」
カイ:「また会いましょうって意味よ。健闘を祈るわ。」
本田:「あ、おい!い、行っちまった・・。」
この後、カイの元を離れた俺は覇王と共にオーロラマウンテンに探りをいれるべく、オーロラ島に向かうことになる。そこで待ち受けていたオルフェバンデモンはある組織のメンバーであることが後々判明していくんだけど、ここから先はまた別のお話。俺のは戦いはここからが始まるんだ。そう、ここから!

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