モンスターセイバーズ

短髪

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140話~155話 竜牙&鳥牙 それぞれの未来へ!編

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140話/空手を使う少年

白金学院校舎内
黒谷の手下:「うぉぉい、剣崎ィ・・借りを返しにきたぞぉっ!!」
白金の不良:「おいてめぇ、敷地内は土足厳禁だぞコラァ?」
黒谷の手下;「てめぇなんぞに用はねぇんだよ、剣崎を出せゴラァ。」
石橋:「鳥牙さんだと?俺たちを舐めてんのか、てめぇらみたいな輩・・俺らだけで充分なんだよ。」
黒谷の手下:「あんだと?舐めやがって・・。」
黒谷:「どけ、俺がやる。」
石橋:「なんだガキ・・出しゃばんねぇ方が身の為だぞ!」
ズバッ!
石橋:「がは・・っ!」
黒谷:「・・・。」
石橋:「ぐ・・この!」
バシィッ!
少年の前蹴りが石橋の顎を蹴り飛ばした!
石橋:「今の・・空手・・っ?!」
黒谷:「雑魚はやっぱり雑魚のようだな。」
石橋:「空手にしちゃあ動きが速すぎる・・なんなんだ一体。」
黒谷:「空手は最強の武術だ。空手の真髄は一撃必殺。腰の入った正拳突きや、勢いの乗った蹴りは急所に入れば相手を一撃で倒すことが出来る。そして俺の動体視力はその命中精度をより跳ね上げる。」
石橋:「何が言いてぇんだ、この・・!」
黒谷:「俺が扱う空手はどの武術にも負けない、最強の武術だということだ。」
黒谷の眼光が男たちを怯ませる。
石橋:「っ・・。」
黒谷:「剣崎の居場所を教えろ。」
白金の不良:「くそっ、俺らみたいな三下じゃ敵わねぇ・・。」
(飢餓さんに報告した方がいいな。)
白金の不良たちは一斉に校舎内に散っていった。
黒谷の手下:「おい!てめぇら!!」
黒谷:「尻尾を巻いて逃げ出したか。仕方がない、校舎に殴り込むぞ。」

鳥牙:「とりあえずは退院か・・。フェニックスソードも麒麟が直してくれたし一件落着といったところか。」
大島:「退院したんだな。」
鳥牙:「!飢餓・・。」
大島:「おめぇの戦いは終わったのか?」
鳥牙:「セイバーズとしての役目は終えた。ただ、ケジメをつけなきゃいけねぇ問題がまだ残ってっけどな。」
大島:「ご両親の件か。」
鳥牙:「ああ。お前には最後まで世話になったな。すまない・・関係のないお前まで危険な戦いに巻き込んじまって。」
大島:「俺が勝手に首を突っ込んだだけだ、気にする必要はないぞ。」
鳥牙:「だが、お前が一緒に行動を共にしてくれたから魔王力を封じる時もロイヤルストレートフラッシュのアジトに潜入する時もフォルテの計画を阻止する時も助かったんだ。俺一人じゃここまで隠密に行動することはできなかっただろう。」
大島:「ダチが怪物とタマ賭けて戦ってんのに見て見ぬフリなんてできるかよ。」
鳥牙:「フッ、お前はそういう奴だもんな。」
大島:「まだ病み上がりなんだろ?おめェはしばらく休んでろよ。白金は俺らが守ってんだ、大船に乗ったつもりでいろ。」
鳥牙:「・・。」
大島:「どうした?」
鳥牙:「ある不良ヤンキーが俺のことを血眼になって探しているという噂を小耳に挟んだ。」
大島:「何?」
鳥牙:「お前がいれば何も心配する必要はないと言いたいところだが、そいつはブツに手をつけている可能性がある。」
大島:「んだと・・確かなのか?」
鳥牙:「俺の剣舞眼でそいつを見ていない以上、絶対とは言い切れないが用心するに越したことはないだろうな。」
大島:「ひと悶着あってもおかしねぇな、そりゃ。そもそもなんで鳥牙を探してんだ?」
鳥牙:「さぁな。ただ俺はまともな人生を歩んでいない、見覚えのない喧嘩も数えきれないほどやっている。どこで恨みを買われてもおかしくない。」
大島:「ったく、そう自分を否定的に見るなよ。分かった、こちとら喧嘩にはなれてんだ。防衛ラインは張っておこう。」
鳥牙:「頼んだぞ。」

141話/悪名髙き不良高校 白金学院!

白金の不良:「おい、飢餓さんがどこにいるか知ってるか?」
スペルA:「あぁ?知るか、俺らは今機嫌が悪りぃんだよ。」
白金の不良:「お前ら”スペル”だろ?大変なんだ!」
スペルA:「だから知るかよ。光ヶ丘の小僧どもにやられたせいで俺らは戦意喪失してんだよ。」
スペルB:「いつの話してんだよ・・。」
スペルA:「てめぇは黙って・ろ・よ!」
白金の不良:「光ヶ丘にやられたのか?」
スペルA:「ああ、ボクシング野郎に眼鏡野郎に剣道坊主にな。めちゃくちゃ強かったぜ。・・もうあれから会ってないが、今度会った時は正々堂々タイマンで決着ケリつけてやる。」
スペルB:「それにしても光ヶ丘のあの子、可愛かったなぁ。ひっぺがす時、マジで興奮して下が止まんなかった。」
スペルA:「っせぇんだよ!思い出せば思い出すほどイライラするぜ。俺らをコケにしやがって・・。」
白金の不良:「それって以前お前らが言っていたナンパん時の・・まだ引きづってんのか?」
スペルA:「黙ってろよ!こちとらプライドをズタボロにされてんだよ。」
白金の不良:「はぁ~って今はそんなことどうでもいいんだ!荒高の奴が校内に侵入してきやがったんだ。」
スペルA:「荒高ぉ?!間違いねぇのか?」
白金の不良:「ああ、あの制服は間違いなく荒高だ。おまけに空手を扱う強ぇ奴が指揮ってやがる。」
スペルA:「タダの空手使いにいもってんじゃねぇよ!」
白金の不良:「石橋がやられてんだよ!」
スペルA:「んだと?!マジかよ・・。」
白金の不良:「瞬殺だったぞ。」
スペルB:「でもよ、飢餓さん・・今日はまだ来てないだろ?」
白金の不良:「じゃあ”キラー”の連中は?」
スペルB:「やめとけ。飢餓さんなら心の広い方だから話ぐらいなら聞いてもらえるかもしれねぇが、キラー相手じゃ話し出す前にボコボコにされて返り討ちに合うのが目に見えてるぞ。」
スペルA:「全くだ・・恐っろしいことを言いやがる。それにだ、まずはあの3年生の教室に行かねぇと。」
スペルB:「あの階段を登るって考えだだけでも背筋が凍りつくな。」
白金の不良:「けど!こうしている間にも暴れてんだよ、荒高の奴らが!」
スペルA:「!おい、今誰かが階段を駆け上がっていったぞ。」
スペルB:「おいおい、例の空手野郎がやって来たんじゃねぇのかァ?」
スペルA:「うちの四天王に挑みに来るなんてなァ、身の程知らずもいいところだぜ。」
白金の不良:「そんなに”キラー”の連中はヤバいのか?」
スペルA:「てめぇ・・うちの生徒もんであるにも関わらずそんなことも知らねぇなんて常識知らずもいいところだぞ。」
スペルB:「だな。自動車学校に通ってる教習生がこの学校って何を教えているんですか?って聞いているようなもんだぞ。」 
白金の不良:「俺はこの学院に来て日が浅いんだよ。」
スペルA:「しょうがねぇな。いいか、キラーってのはここ白金学院の四天王のことを指してんだ。」
白金の不良:「かじる程度の知識しかないが、他校の不良ヤンキーたちが迂闊に手が出せない最強の猛者たち。一人目は武器使い霧島海驢きりしまかいろだっけ?」
スペルA:「マシンガン、ダイナマイト、拳銃、剣、木刀、炸裂弾、ライフル等様々な武器を所持し、自衛隊をも凌駕する洗練された動きで武器を巧みに使い分ける。武器を扱うという面ではあの人の右に出る者はそういないはずだ。」
スペルB:「二人目は圧倒的な速度で敵を翻弄する新派回忌しんぱかいき。相手の弱点、戦い方を把握するまでは並みの不良ヤンキーとさほど変わらないが、一度情報を把握したあの人は別人のような動きをする。相性のいい戦法を使い、その鍛え上げた足で一気に相手を仕留める通称・悪魔のハヤブサ。」
スペルA:「三人目はカウンターを得意としつつも、全く隙のないガードから恐れられる梶原紘かじはらひろ。その中でも最も得意としているのはヒットアンダーウェイだ。あの人は攻守共にバランスが取れている、戦うとなれば持久戦を覚悟して望まなければならないだろうな。」
スペルB:「四人目は一発一発の攻撃がとてつもなく重い柊祐ひいらぎゆう。あの人はとにかくパワーで押し切る戦い方を得意としている。最初に繰り出される一発目を懐にやられてしまうと一気にあの人のペースに持っていかれる。特に額、心臓、内臓・・これらの部位をやられた場合、命はないと思った方がいい。」
スペルA:「そしてそのキラーの連中の頂点に立つのが幹部である大島飢餓。あの方はキラーの連中とはちがう。必要以上の戦いは望まない温厚な人だ。」
スペルB:「だが、権力もさながらその強さもトップクラスだ。何よりあの方は白金学院ここをこよなく愛している。だから侮辱されることを決して許さない、そんな人だから人望も厚いんだ。」
スペルA:「あの方に勝てる人といえば一人しかいない。」
白金の不良:「そんな人がいるのか?!」
スペルA:「剣崎鳥牙。この学院の首領ボス、俺たちの中だけでなくこの地区の中でも桁違いに強い。」
白金の不良:「剣崎鳥牙・・!」
スペルB:「当時一年生ながらこの学院で首領アタマ張ってた川島を相手に全く動じず、一瞬で決着カタを着けた最強と呼ぶにふさわしい人だ。どのグループにも属しておらず一匹狼で白金を手中に収めている。飢餓さんとは古くからの友人関係らしい。鳥牙さんが川島を倒してからも鳥牙さんに挑戦する者も複数人いたが、全員病院送りだ。ゆえにここ二年間はあの人が白金学院うち首領ボスを務めている。ただ、学院に足を運ぶことは滅多にない・・他にやらなければいけないことがあると言い残してすぐにいなくなるような人だ。ま、飢餓さんが実質この学院を征しているといっても過言ではないな。鳥牙さん相手に口答えなんて口が裂けてもできない。」
白金の不良:「そんな人たちが白金のトップ・・。」
スペルA:「ま、そんなわけだ。いかに手練れの空手使いといえどキラー相手じゃ勝ち目はないだろうぜ。」
スペルB:「荒高も県内で内の次に強いと言われている有名な不良高ヤンキー校だからなぁ。どんなやつがいても不思議じゃねぇわな。」
ドカァアン!バシィッ!バシッ!!
白金の不良:「うわっ!な、なんだ・・?!」
スペルA:「どうやら始まったみてぇだなァ~。」
白金の不良:「お、おい!このままじゃ校舎が無茶苦茶になるぞ!」
スペルB:「ってもなァ~俺らにはどーすることも出来ねぇんだわ。」
白金の不良:「やっぱり飢餓さんを呼ばないと・・。」
大島:「俺ならここにいる。」
スペルA:「き、飢餓さん?!」
スペルB:「シャァース!」
白金の不良:「あなたが・・大島飢餓さん・・!」
大島:「上・・派手に暴れてるみたいだな。何があった?」
スペルA:「あー荒高の奴らが攻めてきたらしんすよ。」
大島:「荒高か、奴らの目的は?」
白金の不良:「・・鳥牙さんです。」
スペルA・スペルB:「「何だって?!」」
スペルA:「おまっ、そんな事・・一言も言ってなかったじゃないか!」
白金の不良:「いや、言うタイミングが・・。」
大島:「鳥牙か・・どおりで派手に暴れているわけだ。」
スペルB:「飢餓さん、奴らを先導している頭は空手の使い手みたいです。」
大島:「空手か。って事は黒谷で間違いないな。」
白金の不良:「黒谷?」
大島:「ま、いい。お前らは引っ込んでろ。俺が決着ケリをつけてくる。」
そう言い残し、大島はその場を後にした。
スペルA:「うわぁお・・ありゃあ久々にキレたな飢餓さん。」
スペルB:「なんと言っても学院を破壊されちゃあな。あの人に喧嘩売っているようなもんだ。」
白金の不良:「なぁ、黒谷って?」
スペルB:「黒谷のことも知らねぇのか。荒高の中枢を担う人物でプライドが高く、筋金入りの負けず嫌いってやつだ。敗北しても勝利するまで何度でも立ち上がり向かってくる面倒な奴だよ。」
スペルA:「けどよォ、黒谷が空手を使うなんて聞いたことがないぞ?あいつが噛んでいる噂があったのはキックボクシングと柔道だけだった。空手となると今言った二つの武術と内容が全く異なってくる。」
白金の不良:「もしかして演じていたんじゃないのか?」
スペルA:「?どういうことだ。」
白金の不良:「荒高の誰かが偽物の黒谷を演じていたんじゃないか?偽者が派手に暴れれば嫌でも名前は浸透していく。そうすれば、自分の武器を隠した状態で白金に名を轟かせることができる。」
スペルA:「いや意味わかんねぇよ。なんでわざわざ手の込んだことをする必要があったんだ?」
白金の不良:「少なからず手練れで名が知れ渡っていればキラーの連中の誰かが出てくると踏んだんじゃないのか?そこで隠し続けてた空手を使えば、相手の隙を突くことができる。キラーの内の誰かを仕留めることができれば、否が応でも飢餓さんか鳥牙さんが出てくるだろ?」
スペルA:「だとしたら余計にわかんねぇ。なんでこのタイミングで自分の隠し持っていた牙をむき出しにして白金うちを襲ったんだ?」
白金の不良:「・・。」

142話/爆薬の危機!黒谷の狙い・・

黒谷:「待っていたぜ大島飢餓。お前なら剣崎の居場所・・分かるよなァ?」
大島:「やっぱり、黒谷良也くろやよしなりか。大方、鳥牙への逆恨みってところか?」
黒谷:「さすがだねぇ~そんなとこだ。今の俺は”コイツ”で頭がいかれてるからなァ。」
大島:「覚せい剤に麻酔注射器?!鳥牙の話はマジだったのか・・行くところまでいきやがって・・。」
白金の不良:「飢餓さん、コイツ・・マジでいかれてる。」
大島:「っ・・スペルの連中が空手を使うとか言っていたが、ブツを使ってるとなると話が変わってくるな。お前らは離れてろ・・。」
黒谷:「いいからァ・・剣崎を出せよ。」
大島:「この匂い・・っ今のコイツに交渉は厳しいな、海驢!」
霧島:「やっていいんすか?飢餓さん。」
大島:「ああ。とにかくコイツを校舎内から外に押し出せ!この狭い校舎内で暴れたりでもすりゃ死人が出る。」
霧島:「了解っす。」
大島:「校舎内でこんなやつを暴れさせるわけにはいかねぇ。狭いうえにモノも溢れてる、何をしてくるか動きが読めない以上、外に連れ出すのがベストだ。」
霧島:「なら・・コイツだ。」
霧島は玉のようなものを投げつける。

ドッカァァァアアアアン!!

霧島:「私が改良した超小型のW54だ。」
大島:「しかも即効性の核弾頭か、物騒なものをまた作ったな・・。」」
霧島:「多少の校舎損壊は見逃してくださいよ?なんせ相手は人の道から外れた化け物だ。」
黒谷はガラスを突き破ってグラウンドに吹き飛ばされた!
霧島:「後は任せやした。」
大島:「上出来だ。祐!回忌!」
新派:「ああ、任せろ飢餓。」
柊:「こんな奴、飢餓さんが手を下す必要はないですよ。」
黒谷:「ペッ!・・てめぇら・舐めんじゃねぇぞ!!」
柊:「飢餓さん、今の内に避難誘導を。」
大島:「ああ、わかった。」
新派:「来い、薬物野郎。」
黒谷:「おらぁぁっ!!」
バシィッ!バシィッ!!
柊:「前蹴りを二発か・・なかなかのキレだ。」
新派:「祐、俺がやつを霍乱する。お前の拳をあいつの溝にお見舞いしてやれ。」
柊:「ああ、やってやる!」
新派:「こっちだ黒谷!」
黒谷:「アァ?くらぇぇっ!」
シュッ・・ガシィッ!!
黒谷の上段回し蹴りを予測していたかの如く新派は彼の蹴りを受け止める!
黒谷:「俺の蹴りを・・!」
新派:「足が長いから攻撃範囲も広いんだな。」
黒谷:「くそっ!放しやがれぇっ!!」
新派:「今だ、祐っ!!」
柊:「おらぁぁぁぁっ!!」
バシィィッ!!
黒谷:「ごほっ・・!」
柊:「効いたか?今の俺の拳はてめぇにはいい薬だろ?」
黒谷:「なんだ・・こいつの拳っ・・。」
柊:「止めとけ。俺の拳を食らってまともに立ち上がった奴はいねぇよ。」
黒谷:「それでマウント取ったつもりか?」
黒谷はポケットから複数の薬を取り出した。
新派:「薬・・?」
柊:「ちげぇ!あれは・・。」
黒谷:「オウ。特注のやつだ。」
新派・柊:「「?!」」
黒谷:「試作品段階の薬品だが爆発的に広がる感染薬だ。しかもこいつは感染したやつの体内から飛沫感染し、さらに感染者を増やしていく。一晩もすりゃこの辺り周辺は一気に感染地帯だァ。」
新派:「ヤロォ・・。」
柊:「学院を人質にとったか。」
新派:「馬鹿野郎っ・・飛沫感染でもすりゃもう学院どうこうの騒ぎじゃなくなっちまう。」
黒谷:「カッカッカ。用があるのは剣崎だ、てめぇらはおとなしくこの場を去りな。コイツをバラ撒かれたくなかったらさっさと剣崎を出せ。妙な真似はするなよ~主導権を誰が握っているのかよ~く考えな。」
新派:「飢餓に連絡してくる。」
黒谷:「ククク・・計画は順調・・。」

大島:「?新派から電話・・。」
ピッ。
大島:「どうした?・・何っ、爆薬?!」
ピッ。
霧島:「どうしたんですか飢餓さん?」
大島:「鳥牙を呼んでくる。」
霧島:「え?」
大島:「事態が急変した。鳥牙が来なければ爆薬をまき散らすと言っている。」
霧島:「爆薬?!」
大島:「鳥牙の言っていたブツがまさか一つだけじゃなかったとはな。あのヤロォ、大規模なテロをおっ始める気だ。」
霧島:「っ・・黒谷・・ここまで入念に計画を立ているとなると、鳥牙さんが戻ってきたところでまともに殺り合うタイマンするかすら怪しいですね。」
大島:「だとしても、今のあいつを刺激するのはまずい。いいかお前ら?奴が妙な事をしないように見張ってろ。下手に動けばここら一帯がすべて感染地帯と化してしまう。爆薬の中に仕込んでる細菌が何なのかも分かっちゃいねぇ。くれぐれも慎重に行動してくれ。」
霧島:「飢餓さんこそ、道中気をつけて。なんせ薬に溺れて頭が逝ってる奴です、どんな手を打ってくるか見当もつかない・・。」
大島:「ああ。とにかく、俺たちが帰ってくるまで絶対に黒谷を刺激するな!わかったな?」
霧島:「・・っ、指を咥えて見ているだけしかできないなんて。」

大島家。
大島:「おふくろ!鳥牙見なかったか?」
喜美:「ん?さっき出かけたわよ。」
大島:「どこに?」
喜美:「それがね、弟さんに会いにいくとか。」
大島:「え?!」
喜美:「この前うちに帰ってきた辺りからあの子変わったと思わない?剣崎家の話を持ち出すことすら嫌がっていた子なのに・・・何があったのかしら?」
大島:「あいつが・・実家に?」

剣崎家。
鳥牙:「急に邪魔して悪いな、竜牙。」
竜牙:「お、おう・・。ってか家に帰ってくるとか何年ぶりだよ。」
鳥牙:「さぁな・・ずっと考えないようにしていたから、分かんね。」
鳥牙はどこか落ち着きがなく、辺りを見回している。
竜牙:「やけに落ちつかないな・・。心配しなくても母さんはママ友の集まりで出掛けているし、父さんは出張中だ。」
鳥牙:「そ、そっか!良かったぁ・・。」
竜牙:「フッ・・。」
鳥牙:「な、なんだよ・・。」
竜牙:「いや、戦いではめっぽう強い兄貴でも挙動不審になったりするんだなぁって。」
鳥牙:「当たり前だ。あの戦いが終わった後も自分で撒いた種とは言え、気持ちの整理をつけるまで大変だった。俺がお前や剣崎家のご両親にしたことは許されることじゃない、今更どんなツラをして会えばいいのか分かんねぇよ・・。」
竜牙:「兄貴さ、難しく考えすぎなんじゃね?」
鳥牙:「?」
竜牙:「俺はあの世界に足を踏み込みすぎた。このままここにいれば父さんにも母さんにも迷惑をかけてしまう。どうしようもない親だが、俺のいざこざに巻き込みたくないからな。って言ってただろ?兄貴はさ、不器用なんだよ。たとえ血が繋がってなくてもあの日出たあの言葉は偽りの言葉じゃねぇ、本心のはずだ。父さんと母さんならきっと分かってくれるよ。」
鳥牙:「・・。」
竜牙:「なんだよ、人の顔をじーっと見て。」
鳥牙:「偽りじゃない・・か。」

桜:「あの日、あなたを助けたのはあなたのご両親だけじゃない。竜牙のご両親もあなたの為に動いてたんです!竜牙のお父さんが血を分けてなかったらあなたはとっくの昔に亡くなっています。偶然にも竜牙のお父さんとあなたの血液型が一致したんです。あなたは剣崎家の人に助けられて今もこうして生きている、一緒に過ごしてきたあなたたちの時間は偽りではなく確かにあった時間です!」

鳥牙:「そーいや、光ヶ丘学院に在籍している生徒たちの様子はどうだ?世界恐慌の日の記憶がきちんと抹消されているのか心配だ。」
竜牙:「あー。それがさ、誰一人としてあの日の事を覚えている奴はいなかったよ。フォルテと戦ったあの時の出来事もな。つくづく麒麟の力には驚かされるよ、テレビで取り上げられることもなくなったし、あの日の事を覚えているのはもう俺たちセイバーズだけみたいだ。」
鳥牙:「!そっかぁ・・ほっとしたよ。」
竜牙:「さっきかららしくねぇな、気持ち悪りぃ。」
大島:「いた、鳥牙!」
鳥牙:「飢餓?どうしてここに・・。」
大島:「今から白金に来れるか?」
鳥牙:「何があった?」
大島:「黒谷が暴れている。」
鳥牙:「後にしてくれ、今は・・。」
大島:「鳥牙を連れてこないと爆薬をまき散らすと言っていた。」
鳥牙:「爆薬・・?!」
竜牙:「な・・!」
大島:「細菌の詳細は不明だが、奴の言葉を素直に受け止めるなら非常に感染力の高い細菌だ。あれをもしバラ撒かれたりでもしたら白金学院だけでなく近辺の人々を巻き込む大惨事になっちまう!」
鳥牙:「っ・・すまない竜牙。話はまた今度だ、俺は白金に向かう。」
竜牙:「あ、兄貴・・!俺も行くよ!」
鳥牙:「駄目だ、危険すぎる。」
竜牙:「そんな話を聞いて見過ごすわけにはい。それに何も面と向かってついていくつもりはないよ。兄貴を敵視しているなら間違いなく兄貴が顔を出した瞬間にそいつの注意が兄貴に向くはずだ。その瞬間を突いて俺が黒谷って奴をこの剣舞眼で見る。事態は一刻を争うはずだ、手段は選んでられない・・そうだろ?」
鳥牙:「お前・・。」
竜牙:「力にはなれるはずだ、協力させてくれ。」
鳥牙:「・・分かった、無茶はするなよ。」
大島:(鳥牙の弟か・・凄いな、爆薬の話をしても臆することなく冷静だ。何より、あの短時間で自分が同行する上でのメリットを簡潔に伝えてくるとはな。血は繋がってなくても流石というべきか。)

143話/白金を守る戦いの幕開け!

黒谷:「うぉぉぉぉい!剣崎はまだかァ?早くしねぇとマジでバラ撒いっちまうぞ!!」
新派:「おおおお、落ち着け!安心しろ、鳥牙さんは必ず来る。な?」
鳥牙:「待たせたな、黒谷。」
新派:「!ち、鳥牙さん・・来てくれたんですね。」
大島:「悪りぃ、連れてくるのが遅れた。」
新派:「いえ、助かりました。ずっと硬直状態が続いてましたからね。」
黒谷:「随分と遅かったじゃねぇかァ、剣崎ィィ!」
鳥牙:「うちのモンが随分と世話になったみてぇだな。」
黒谷:「ククク・・やる気になってるとこ悪ぃが、俺はタイマンサシであんたとやる気はねぇ。微塵も思っちゃいねぇからな、はき違えんなよォ?」
鳥牙:「・・狙いは白金の勢力か。」
大島:「なに?!」
黒谷:「察しがいいねぇ~その通り。形だけ学院を乗っ取ることはいつでもできるが、それだと内部口論が起きちまう。そう。この学院の不良どもを屈服させるにゃ絶対権力を前に俺が上だと証明させなきゃならねぇ。だからてめぇを呼んだんだよォ。見せしめにすんだ、誰が支配者ご主人様なのかはっきりさせるためになァ。」
大島:「狙いが・・俺たち全員だと・・っ!」
黒谷:「荒高と白金が一つの勢力になりゃこの地区の絶対的勢力、黒金を潰すことも夢じゃねぇ。そうなりゃこのエリアを俺が支配できる。分かるか?俺の国の完成ってわけだァ。」
鳥牙:「なるほどな、確かにうちと荒高が一つの勢力になれば兄弟校の黒金を完膚なきまでに叩きのめすことができるだろう。黒金は簡単には潰せない。なんせ黒金は暴力団から多額の支援金を受けている、つまり、強力なバックアップが控えているというわけだ。黒金の中には反社会的勢力の一部と深く関わり合いのある奴もいるだろう。もしそんなやつらを屈することができれば、裏社会の勢力そのものがお前のものになる。」
黒谷:「ご明察だなァ。」
大島:「なんて奴だ・・。」
鳥牙:「で、どうする気だ?俺に何をさせるつもりなんだ?」
黒谷:「白金のボスの座を降りてもらう、俺がこいつらの新しい支配者になる。」
鳥牙:「お前、なんでそこまでして黒金を潰したいんだ?黒金はヤンキー校ではない、むしろえりすぐりの秀才が集まるエリート校だ。」
黒谷:「憎ったらしいクソ親父が建てた高校なんですよォ。黒金学院は。」
鳥牙:「!」
大島:「そういえば・・黒金の理事長の名は・・。」
黒谷:「血の繋がりがないだけで随分と酷い仕打ちを受けたモンだ。要はよォ~あのクソ親父がひれ伏す様を見てぇわけよ。」
鳥牙:「っ・・。」
(・・コイツ、まるで・・昔の・・。)
黒谷:「だからと言って・・てめぇに恨みがないわけでもねぇ。忘れもしない、3年前の出来事だ。」
鳥牙:「3年前・・?」

橋爪:「あれぇ?お前、朝日東中の剣崎?」
鳥牙:「あ?だったら何だよ、てめぇみたいなのに構っている余裕なんざねぇんだよ。」
(橋爪か、今まで受験を控えてたから喧嘩は控えていたが・・もうどうでもいいや。こいつで腹の虫を抑えてやる。)
橋爪:「なんだと?」
鳥牙:「黙って道を開けろ、そしたら見逃してやる。」
橋爪:「舐めやがって・・俺を誰だと思って・・!」
鳥牙:「赤羽中三年の橋爪。すでにこの近辺のヤンキーを舎弟につけているすご腕のつっぱり・・だろ?」
橋爪:「んだよ、よく知ってんじゃねぇか。丁度い、お前をやっちまえば100人目に到達するわけだ。俺の足元に膝まつくヤンキーはよォ!!」
鳥牙:「御託はいいからやるならさっさと来いよ、返り討ちにしてやる。」
橋爪:「どこまでも上から目線なヤロウだ・・お望み取りボコボコにしてやるぜ。」
鳥牙:「お前の連勝記録を99で止めてやるよ。」
橋爪:「どこまでも気に触るヤロウだ・・おらぁっ!!」
パシッ!
橋爪の拳を鳥牙は片手で握り締め、止める!
橋爪:「な・・俺の拳をいとも簡単に・・。」
鳥牙:「この程度か?」
橋爪:「くっ・・おらぁぁっ!!」
ドカドカドカドカッ!!
橋爪が拳を繰り出すよりも素早く拳を繰り出していく鳥牙・・橋爪は血反吐を吐く!
橋爪:「ぐはっ・・!」
鳥牙:「ハッ!どうした?もっと楽しませろ・・よっ!!」
バシィツ!!バシッ!!
鳥牙の容赦のない蹴りが橋爪のふくらはぎを痛めつける!
橋爪:「ぐあぁあぁああっ!!」
静まり返った河川敷で橋爪の悲鳴が響き渡る。

黒谷:「あの日、てめぇがボコした橋爪は中学時代の俺の親友だった。あの後、あいつがどうなったか教えてやるよ。両足の再起不能だ。橋爪は生涯車椅子生活ってわけだ。」
鳥牙:「そんな喧嘩、いちいち記憶しているわけがないだろ。それにだ、俺は売られた喧嘩は買うが自分から喧嘩は売らない。飢餓たちに白金学院を任せている理由の一つだ。」
黒谷:「知ったこっちゃねぇよ!てめぇにはどんな手を使ってでも負けるわけにはいかねぇ・・例え、人の道を外れっちまうようなブツに手を出すことになっても・・だ。」
鳥牙:「逆恨みもいいところだな。ま、いいだろ・・ボスの座はくれてやる。」
大島:「なっ・・!」
黒谷:「ニヤ・・。」
大島は鳥牙の胸ぐらを掴む!
大島:「正気かてめぇ!お前がボスの座を譲ったところで事態は悪くなるだけだぞ!!」
鳥牙は大島に聞こえる程度の声で小さく囁く。
鳥牙:「策がある。」
大島:「!」
鳥牙:「この場を抑えるためにはあいつの手に降ったと思わせた方が手っ取り早い。」
大島:「リスクがデカすぎるだろ!」
鳥牙:「あいつを止めるにはあいつを突き動かしている黒谷理事のことを調べる必要がある。力で力を押さえつけても何の解決にもならないからな。それと黒谷の覚せい剤や爆薬の入手経路も押さえておきたい。その為には時間がいる。」
大島:「お前・・。」
鳥牙:「気持ちはわかるが、今は耐えてくれ。何かを得るためには何かを失わなければならない。飢餓、並びにキラーのみんなには悪いが黒谷に寝返ったフリをしてくれ。実現させてやろうじゃないか、あいつが支配する白金学院を。だが・・それが演技だと奴に勘づかれてしまえば色々と面倒なことになる。」
大島:「どうする気だ?」
大島:「これからちょっとした子芝居を打たせてもらう。不良ヤンキーらしくな。」
黒谷:「何をコソコソしている・・。」
鳥牙:「友人を説得していただけだ。」
竜牙:「そんなのダメだ!」
黒谷:「あ?」
大島:「!」
(おい、まさか・・!)
鳥牙:「竜牙、落ち着け。」
竜牙:「黒谷・・あんたの支配する白金学院は俺がぶっ潰してやる!」
黒谷:「!クックック・・アッハッハ!!何を言い出すかと思えば・・小僧、面白れぇじゃねぇか。いいぜ、新生白金の初陣にはうってつけだ・・一週間、猶予を与えてやるよ。俺が支配する白金のキラーがてめぇを叩き潰す。」
竜牙:「上等だ。」
黒谷はそう言い残し、白金の校舎に戻っていった。
大島:「鳥牙!お前、弟を巻き込む気か!!」
鳥牙:「大丈夫だ。竜牙は今の俺がサシでやりあっても勝てるかわからん。そのぐらいの手練れだ。それに言ったろ?黒谷に自分がこの学院を支配したんだと思わせる必要がある。そのためにはこのデモンストレーションがうってつけだ。竜牙のおかげであいつの標的が俺から竜牙へと移ったはずだ。これで俺は心置きなく、奴を調べることができる。」
大島:「だからって・・危険すぎるだろ!俺たちは白金だ、腐っても普通の高校生相手に負けるわけがない。下手な芝居売って負けたふりでもしろっていうのか?」
鳥牙:「お前は弟を舐めすぎだ。」
大島:「・・?!」
鳥牙:「それにあいつは昔の俺とは違う。一人で突っ走ったりはしないさ。」
竜牙:「ああ。」
大島:「何なんだ・・この兄弟は・・訳が分かんねぇ。」
鳥牙:「時期に分かるさ。竜牙、この学院に攻める以上・・この学院のしきたりに沿ってお前は戦っていかなければならない。うちのルールではキラーの連中を全員倒さなければここにいる大島飢餓には辿り着けない。飢餓を倒すことができればボスである黒谷とやり合うことができる仕組みだ。悪いが、そのルールには従ってもらう。」
竜牙:「面白れぇ、やってやるよ。」
大島:「バカバカしい、俺は降りるぜ。」
鳥牙:「飢餓、挑戦しにきた相手には敬意をもって対峙する。それが俺たちが諸先輩方から受け継いできた暗黙のルールだ。勝負を望む相手を前に背を向けるのか?」
大島:「っ・・どうかしてるぞ、お前。俺は親友の弟を傷つけたくない。例えそれがこの学院を守るために必要なことであったとしても。」
鳥牙:「そうか・・そこはキラーの連中に俺から伝えておこう。」
竜牙:「兄貴、俺は光ヶ丘学院に向かうよ。」
鳥牙:「ああ、手間を取らせたな。」
竜牙は駆け出して行った。
鳥牙:「飢餓、これからが正念場だ。お前は内部で奴が何か企てていたらそれを随時俺に報告してほしい。二人で白金を守るぞ、俺たちの居場所を。」
大島:「鳥牙・・お前変わったな。」
鳥牙:「・・・。」
大島:「分かった、無茶はするなよ。」
鳥牙:「お前もな。」

144話/いよいよ秋季大会・三年間の集大成

その夜・・。
夏海:「なんかこうやって電話するの久しぶりよね。」
竜牙:「だな。悪りぃな、急にかけたりして。」
夏海:「気にしないで、嬉しいよ。」
竜牙:「秋季大会が3日後にある。」
夏海:「!秋季大会かぁ~早いねぇ、もうそんな時期なのね。」
竜牙:「ああ、それも単なる三年間の集大成じゃない。俺にとっては海外留学のかかった大事な大会だ。」
夏海:「そうね、剣道一本でアメリカこっちに来るつもりならここで結果を残さないと入試をパスできないかもしれないわ。推薦じゃないと竜の学力じゃ厳しいかも。」
竜牙:「・・夏海。」
夏海:「ん?」
竜牙:「実は昨日、おじさんと電話したんだ。」
夏海:「・・・ん?お父さんと?」
竜牙:「ああ。」

雅治:「珍しいな君から連絡がくるなんて。」
竜牙:「お忙しい中申し訳ありません。」
雅治:「いや、久しぶりに君と話ができて嬉しいよ。どうしたの?」
竜牙:「お願いがあります、おじさん。あいつを高校生活最後の2か月間だけ、そう高校生活最後の晴れ舞台をこの学院で送らせてもらえませんか?」
雅治:「!・・竜牙くん、気持ちはわかる。だが・・。」
竜牙:「余計なお世話なのは重々承知です。ですが、木嶋夏海は光ヶ丘学院にとっても特別な学生なんです。卒業式に向けて夏海の跡を継いだ現生徒会長が言っていたんですよ。叶うなら2年半の月日を共に過ごし、笑ったり泣いたり切磋琢磨した彼女と沢山のことを学んだこの学び舎で卒業したいって。」
雅治:「・・。」
竜牙:「お願いします、俺も夏海と一緒に卒業したい。どうか、俺たち学生の最初で最後のわがままを汲み取ってはいただけないでしょうか?」
雅治:「全く・・娘も強情だが君も負けず劣らずといったところだねぇ。」
竜牙:「あ、あはは・・。」
雅治:「夏海と付き合っているんだろ?」
竜牙:「え?!あ、えと・・はい。」
雅治:「そうかしこまらんでいい。いいねぇ青春だ。私も悔いているんだよ、あの子の高校生活最後の一年を親の都合で無茶苦茶にしてしまったことをね。人生はたった一度、その中でも青春時代と呼ばれる時間はわずかに3年間しかない。私は大人になる上で誰しもに分け隔てなく与えられた貴重で輝かしいその時間を奪ってしまったんだ。」
竜牙:「おじさん・・。」
雅治:「光ヶ丘の校長と掛け合ってみよう。私の一存で決められることではないからね。」
竜牙:「ほ、本当ですか!」
雅治:「過度な期待はするなよ、それじゃあな。楓さんにもよろしく伝えておいてくれ。」

夏海:「そんなことが・・。」
竜牙:「んで、帰ってきた返事なんだけど・・。」
ゴクリ・・。
夏海は息をのむ。
竜牙:「正月終えたら家に来い。卒業までの間、短い時間だけどまた学校にいこう。」
夏海:「!・・ほんと・・?」
竜牙:「ああ、家の両親とおじさんとおばさんで話はついている。お前には俺から伝えてほしいってさ。」
夏海:「ほ、ほんとに・・?!」
竜牙:「うぉっ、お、おい泣くなよ・・。」
夏海:「またみんなと会える・・みんなと卒業できるなんて・・。」
竜牙:「おじさんとおばさんに感謝しろよ?」
夏海:「ありがとう。」
竜牙:「!」
夏海:「そのきっかけをつくってくれたのは竜でしょ?だからありがとう。」
竜牙:「俺だけじゃない。クラス全員の署名と生徒会の署名、お前が個人的に関わった数々の生徒たちみんなの署名運動が教頭の心を動かして、校長に交渉してくれたんだ。」
夏海:「みんなが・・!」
竜牙:「その先導に立っている人物が誰なのかは言わなくても分かるよな?ほんとすげぇ女だよ。」
夏海:「む?」
竜牙:「ん?」
夏海:「まさかあんた・・今更優香のこといいなとか思い始めてんじゃないでしょうね?」
竜牙:「はぁ?なんでそうなるんだ?!んなことねぇから安心しろって!」
夏海:「ほんっとかしら~?普段は隙のないあなたでも女の子の前では隙だらけなの私知ってるんだからぁねぇ?」
竜牙:「うっ・・思い当たる節がありすぎて返す言葉が見つからない。」
夏海:「覚悟しておきなさいよ、そっちに戻ってもし他の女の影がちょっとでも見えたら・・。」
竜牙:「ひ、ヒィッ・・!あ、そ、そーいえば・・スペードのやつが花音に告ったらしいぜ。」
夏海:「は?!え、なにそれ・・初耳なんだけど・・。」
竜牙:「どういう心境の変化なのかは知らねぇが、卒業したら花音は実家の花屋を継ぐらしい。スペードは進学だし、もしかしたらどこか思うところがあって決断したんじゃねぇか?」
夏海:「ちょっちょっ・・それでどうなったの?」
竜牙:「それは・・わかんね。」
夏海:「はぁ~?何よそれー。」
竜牙:「花音に聞いてみろよ、俺は人の色恋沙汰の話にはあんまり興味ないからさ。つーか苦手だ。それに今は秋季大会に向けて集中しねぇと・・あー!」
夏海:「ど、どうしたの?!」
竜牙:「そー言えば俺、勢いで言っちゃったんだよな。」
夏海:「言っちゃったって・・何を?」
竜牙:「俺がそっちに留学できたら夏海との交際を認めてほしいって。」
夏海:「あんたは~そういう大事なことは私とちゃんと話し合いなさいよ。ほんっとに何を一人で突っ走ってんのよ。で、お父さんは何て言ってたの?」
竜牙:「泣いてたよ。」
夏海:「はぁ?」
竜牙:「俺や夏海が思っていた以上に成長していて感極まったらしい。」
夏海:「・・・竜も竜だけど、お父さんもあれで相当親バカよねぇ。」
竜牙:「安心しろって。ちゃんと激励はもらったからさ、まだ君に娘はやれんってよ。」
夏海:「真っ向から否定されてるじゃない!ってか、なんで結婚を前提に話が進んでいるのよーほんっとにもう男って単純なんだから・・。」
竜牙:「そうか?俺にはまだって言ってる言葉の裏に大人になるまで待ってるぞと言っているように聞こえたけどな。」
夏海:「はいはい。頑張ってね竜、離れていても私はずっと竜を応援してるから。」
竜牙:「ああ、ありがとう。」
夏海:「怪我だけは気をつけてね、あと無茶はしないこと!水分補給はこまめにそれから・・。」
竜牙:「お前は俺の母さんか!」
夏海:「大好きだよ。」
竜牙:「っ・・ばーか、」
夏海:「何照れてんのよ・・ばか。」
竜牙:「あの~照れるぐらいなら無理すんな?」
夏海:「うっさい、ばーか。」
竜牙:「んだとぉ~このばーか。」

そして・・。
竜牙:「・・。」
炎斬:「・・。」
スッ・・!
部員:(すげぇ・・個人戦で炎斬先輩に負けた時とは動きが全く違う・・。)
速水:(流石は部長だ・・切り返しの上手い炎斬先輩を相手に延長戦にまで持ち込むなんて。)
竜牙:「はぁ~。」
炎斬:「・・。」
「「面!!」」

バァン!
速水:「っ・・!」
(タイミングが全く同じ・・ダメだ、有効打突は両者同時に打ち合った場合は認められない。仮に主審が認めても副審の判定が曖昧だと合議が行われてしまう!)
部員:「!」
(いや・・!)
竜牙は態勢を低くして炎斬の胴を打っている・・そのせいか胴を竹刀の先端で突かれていることによって炎斬の竹刀が竜牙の面にわずかに届いてないようだ。
速水:(打ち合っていない?!)

炎斬:「くっ・・!」
(完全に打ち合いの間合いだっただろ・・延長戦の限られたこの数分間で自分の態勢を崩してを腰を落とすなんて芸当・・相手の反撃を食らうリスクを考えたら普通はできない!それにこれまでの試合で筋肉の張っている両足への負担を考えたらこの態勢は相当きているはず・・なのに・・コイツ・・!)
主審:「勝負あり!勝者、剣崎竜牙!!団体戦総合優勝は光ヶ丘学院剣道部!!」

観客:「「うぉぉぉぉっ!!」」
速水:「やりましたね部長っ!!」
部員:「優勝ですよ!」
竜牙:「や・・やったのか?」
炎斬:「一勝一敗ってとこか。お前とは卒業した後にでもどこかで決着をつけなきゃいけないようだな。」
竜牙:「あはは。その時に俺が渡米していなければ相手になるぜ。」
炎斬:「竜牙、おめでとう。」
竜牙:「おう。・・へへっ、やったぜ。」

その放課後・・。
竜牙:「ふぅ~先生も随分と椀飯振舞してくれたなぁ、」
速水:「そりゃあそうですよ、団体戦優勝ですよ?でも残念でしたね、個人戦では炎斬先輩に勝ち越せなくて。」
竜牙:「まぁ、剣道での試合とセイバーズとしての戦闘は全く別物だからなぁ。剣道ではあいつの方が一枚上手だったってことだろ。」
速水:「そういえば小池先輩は今日受験だったらしいですよ。」
竜牙:「え、もう?早くね・・。」
速水:「青銅大宮大学ですよ、スポーツ専攻で有名な。」
竜牙:「まじか・・やっぱあいつプロのボクサーになるんだろうなぁ。」
速水:「小池先輩のブラックエーストライアルにさらに磨きがかかるともうとゾッとしますね。」
竜牙:「あはは、確かにな。」
速水:「ちなみに銀河先輩は有無を言わさず東大を受けるみたいですね。」
竜牙:「やべぇよな。東大受けようとしている友達に対して普通頑張れとか言うもんだけど・・不思議と微塵も心配してねぇんだよな。そう考えるとあいつってやっぱ天才なんだなぁって。」
速水:「ですよね、何て言うか銀河先輩の学力で右に出る者はいない謎の安心感凄いですよね。本当に同じ人間なんでしょうか。」
竜牙:「あいつも人の子だよ。東大受験控えていながら一人の女の事考えてんだからよ。」
速水:「?」
竜牙:「速水。」
速水:「どうしました?」
竜牙:「剣道部のこと、任せたぞ。」
速水:「あ・・。」
竜牙:「次期剣道部部長はお前だ速水。お前の優しい心に俺は何度も救われた、ありがとな。その冷静な分析力とどんな相手にも怯むことなく立ち向かう心の強さで部員たちを引っ張って行ってくれ。」
速水:「は、はい!粉骨砕身の覚悟で頑張りますっ!!」
竜牙:「おいおいこれ以上身を砕くような戦闘は勘弁してくれよ~。」
速水:「あ、あはは・・返す言葉がありません。」
竜牙:「お前は十分俺の右腕だったよ。」
速水:「え・・。」
竜牙:「セイバーズとして何より同じ志を持った剣道部の部員として今まで一緒に戦ってきてくれてありがとう。今度はお前が腕でなく柱になる番だ。期待してるぜ、速水智也!お前の成長に。」
速水:「うっうっ・・。」
竜牙:「っておい!なんで泣いてんだよ~。」
速水:「すみません。こちらこそ、あなたの背中はいつだって大きかった、そんなあなたと過ごした日々は僕にとってかけがえのない宝物でした。本当にお疲れ様でした!剣崎部長!!」
速水は深く頭を下げる。
竜牙:「ああ!さて、二次会にカラオケでも行こうぜ~。」
速水:「え~部長は仮にも受験生なんですから切り替えないとまずいですよ~。」
竜牙:「固ってぇ事言うなって!今日ぐらいは・・な?」
速水:「しょうがないなぁ~今日だけですよー。」
竜牙:「おう!」

145話/ついに海外留学決定?!後は・・

竜牙:「ただいま・・。」
パン!パン!!
竜牙:「うわっ!な、なんだ・・。」
楓:「優勝おめでとう竜牙!」
竜牙:「母さん・・ありが・・・え?」
未央:「久しぶりね~竜牙くん。」
竜牙:「おばさん・・それに・・。」
ガシッ!
竜牙は夏海に強く抱きしめられた!
夏海:「おめでとっ!!」
竜牙:「な、なんで・・?!」
楓:「私が呼んだのよ、竜牙の事を夏海ちゃんが心配してるっていうから今日うちに来る?って。まぁ大会の応援には間に合わなかったけどね。」
竜牙:「いやいやご近所にいるわけじゃないんだぞ?!」
未央:「木嶋家にはプライベートジェットがあるからその辺は気にしなくていいのよ?」
竜牙:「か、金持ちやべぇ・・。」
夏海:「凄いじゃない!全国一位だよ!!」
竜牙:「ま、まぁ個人戦では炎斬に負けて暫定三位だけどな。」
夏海:「そんなことないよ!やっぱり竜は凄い!!」
竜牙:「お、落ち着けって・・とりあえず風呂に入らせてくれ・・。」
夏海:「あ・・。」
楓:「いいわねぇ~。」
未央:「私たちにもあーいう時期があったわね。」
楓:「若い時は色々やったものよね。」
夏海:「ごめんね、急に抱き着いたりして。」
竜牙:「気にすんな、とりあえずさーっと浴びてくるよ。」
竜牙はその場を後にする。
楓:「夏海ちゃん。」
夏海:「あ、はい!」
楓:「あの子の事、お願いね。もう知っているとは思うけど、あの子には鳥牙の事や家庭の事で色々と悩ませてしまったから。」
夏海:「あ・・私も竜があんなことを抱えていたなんて本当に知らなくてびっくりしました。でも、乗り越えたみたいですよ、あいつは。」
楓:「だといいんだけどね。これから先、もっといろんな壁が竜牙の前に立ちはだかると思うのよ。あの子、考えすぎちゃうところがあるから、そんなときは背中をそっと押してあげてほしい。」
夏海:「もちろんですよ!任せて下さい。」
未央:「あらあら・・さっきまであー竜が負けたらどうしよう。私、何て言葉かけたらいいんだろう~とかブツブツ言ってた乙女のセリフとは思えないわね。」
夏海:「も、もう!お母さん!!」
楓:「あはは。」
未央:「あらぁ?私は本当の事を言っただけだぞー?」
夏海:「普通空気読むでしょ、そこは。」
未央:「ごめんごめん。娘が小さな体で立派な事を言ってるもんだからつい意地悪しちゃった。」
夏海:「も~!」
楓:「さぁ主役が上がってくる前にここを片付けましょうか。」
未央:「楓、留学の推薦状の件は進んでるの?」
楓:「あー12月に控えている三者面談でもし推薦がいただけるならそこでお話があるみたい。」
未央:「来月には結果が分かるわけか・・。」
夏海:「大丈夫ですよ、元々竜は剣道で推薦入学してきた生徒ですし、その実力は光ヶ丘の教師も織り込み済みだと思います。ただ、推薦を出すうえでそれを強く証明できる結果がなかった。だから、今回叩き出した結果がきちんと受理されれば推薦は受けられるはずですよ。ぬか喜びはさせたくないので竜には黙っていますけど。」
楓:「元生徒会長の夏海ちゃんがそう言うなら安心ね。」
夏海:「・・。」
楓:「どうしたの?」
夏海:「いえ。」
(竜はここぞと言うときに何かしらの問題に巻き込まれることも多い・・嫌な予感がするわ。)

黒金学院 応接間。
鳥牙:「すみません。わざわざ時間を取っていただいて。」
理事:「いや、あの子の事はいずれどうにかしなければならないと思っていた。構わんよ。」
鳥牙:「理事長、あなたの息子は薬に手を染めてしまったようです。」
理事:「なに?」
鳥牙:「俺が黙認した限りだと覚せい剤だけでなく爆薬にも手をつけています。」
理事:「っ・・堕ちるところまで堕ちたか。」
鳥牙:「不用意に動けば何をするかわからない故、警察にはまだ連絡しておりません。ですが、事が進むにつれていずれ世間には知れ渡るはずです。そうなれば親であるあなたにも大きな責任が問われます。ですが、こうなる前から黒谷からのサインが出ていたはずです。失礼を承知の上でお聞きいたします、なぜ行動を起こさなかったのですか?」
理事:「・・君も良也と同じようにご両親と血の繋がっていない人間なら分かるはずだ。息子がどういう境遇の中で過ごしてきたのかを・・私はあの子を見失っていた。」
鳥牙:「・・。」
理事:「あの子を養子として引き取った私たちだが、ご覧の通り私は一学院の理事長。女房は客室乗務員キャビンアテンダントをやっていてね。あの子に接してあげられる時間が本当に少なかったんだ。そしてあの子は気づいてしまった、自分が養子であることに。私たちが養子だから冷たく接しているとはき違えてしまったのだろう。拠り所のないあの子が憧れた世界・・それが不良ヤンキーだった。その変化にいち早く気づいた私は止めようと行動に出たんだ。だが、良也から出た言葉は・・。」

黒谷:「あんたらなんか親じゃねぇ!いつも仕事、仕事・・俺の事なんか放ったらかしだったじゃねぇか!俺が習字で初段取った時も、初めて満点取った時も、いつだってあんたたちの姿はそこになかった。なぁ、教えてくれよ・・本当の両親のこともすっと隠し通すつもりだったのか?」

鳥牙:「っ・・。」
(俺と同じ・・。)
理事長:「隠すつもりなんてなかった。けど、言えなかったんだ。だって私たちは本当の両親じゃないだなんて・・そんなの・・まだ十代の子が受けるにはあまりにも重過ぎる言葉じゃないか。この子が何をしたっていうんだ。」
鳥牙:「!・・。」
(父さんと母さんもこんな気持ちだったんじゃないのか・・?ずっと俺のために・・隠して・・。)
理事長:「でも・・そうか、ついにそんな物にまで手を出してしまったか。あの時しっかりと伝えておくべきった。そして、もっと愛情を注いで大切に育てなければならなかったんだ。どこか、距離をとっていたのかもしれない。不器用なんだよ、私も女房も。困ったな・・もっと早く良也の心の変化に気づくべきだったんだ。」
鳥牙:「-まだ遅くないですよ。」
理事長:「え?」
鳥牙:「やっぱりあいつは放っておけない。あいつにも気づいてほしい、ご両親の思いに。繋がりのカタチは一つじゃないって。」
理事長:「剣崎君・・だがもう。」
鳥牙:「確かにあいつはやりすぎました。罪は償わなければならないと思います。そのために俺はあいつが自らの意志で自首するように説得してみようと思います。」
理事長:「自首か・・。けど、薬にまで手を染めたあの子が自首なんて。」
鳥牙:「しないでしょうね。ですが人の心を動かせるのは人の心だけだということを年下の女の子に俺は教わりました。理事長の黒谷への思いは伝えるべきです。あいつを改心させる為にもどうか協力して下さい、お願いします。あいつがもう一度人生をやり直せるように。」
理事長:「そーは言っても今のあの子が聞く耳をもつとは思えない、どうしたら・・。」
鳥牙:「一つ、考えがあります。」
(待ってろ黒谷、今その苦しみから解放させてやる!)

146話/動く鳥牙 黒谷を助けるために

黒谷:「カッカッカ、まさかこんなにもあっさりとボスの座につけるとはねぇ。」
大島:「・・。」
(見たところ他に薬は所持してなさそうだな。とにかく爆薬を抑えないと俺たちは身動きが取れない。)
黒谷:「おい、大島。」
大島:「?」
黒谷:「わかってんだろうな?」
大島:「何をだ?」
黒谷:「妙な事は考えんなよ?ちょっとでも怪しい動きを見せて見ろ、学院中に仕掛けた爆薬を爆破させる。」
大島:「チッ・・。」

私立荒目黒高校。
嵐山:「ほう、てめぇが単独で乗り込んでくるなんてな。どういう風の吹き回しだ?」
鳥牙:「頼みがある。」
嵐山:「んだと?」
鳥牙:「お前んとこのモンが今うちの学院に攻め込んできて大変なことになっているんだ。」
嵐山:「黒谷か・・。いよいよ動き出したってわけね、けど助けてやる義理はねぇなァ。」
鳥牙:「奴がもっている爆薬は、爆破すればこの辺り一帯を感染地帯と化してしまう。荒高だって他人事ひとごとじゃ済まねぇ!」
嵐山:「俺らが行ってどうにかなる話でもねぇだろ。」
鳥牙:「なにっ?」
嵐山:「柄にもなく熱くなってるようだが今のあいつは人としての正常な思考判断能力が鈍くなっている。特に感情が高ぶったときのあいつは正直、歯止めが利かない。それと奴が所持してんのはM-85637899。マイクロウイルスと言われている非情に感染力の高い細菌だ。」
鳥牙:「そんなもの・・あいつはどうやって・・。」
嵐山:「最近、高値で取引されているやべぇ代物だ。細菌の出どころは不明だが反社会勢力面々に流通しているようだぜ。しっかしそんなモンにまで手を出すとは・・よっぽど恨まれているみてぇだな。」
鳥牙:「いや・・あいつの矛先は俺じゃない。だが、このまま奴を放っておけば事態は悪化する一方だ。」
嵐山:「で、俺たちに内輪揉めでもしろって言うのか?」
鳥牙:「いや、黒谷の手下を抑えてほしい。裏で何をするか分かったもんじゃないからな。標的を黒谷だけに絞ることが出来れば後はこっちで抑え込む。」
嵐山:「てめぇ・・黙って聞いてれば、偉そうに指示してんじゃねぇぞ!」
鳥牙:「黒谷がもし細菌をバラ撒いたりでもしてみろ。同校で指揮タマっているお前たちも無事じゃ済まないぞ!」
嵐山:「ちっ、なるほどねぇ。黒谷が下手に横暴するリスクを軽減するためにも手段は選んでられないわけか、お前も俺らも・・。」
鳥牙:「そういうことだ。」
嵐山:「面倒な事になってきやがったな。おい剣崎ィ!!手を貸す以上、裏切りは許さねぇぞ。あのバカを絶対に止めると約束しろ。もし出来なかったら・・。」
鳥牙:「筋は通す、一人の不良ヤンキーとしてな。お前たちこそ、下手な動きをしたら容赦はしない。」
嵐山:「あぁん?てめぇの筋を通してから物申せや、焼き鳥にすんぞコラ!!」
鳥牙:「安心しろ、男に二言はねぇ。」
 
光ヶ丘学院正門前。
鳥牙:「ん?」
竜牙:「よ、兄貴。」
鳥牙:「お前なあ・・今何時だと思ってるんだ。」
竜牙:「秋季大会は無事に終わった、後は12月に控えた三者面談で推薦を貰えるかどうか・・。」
鳥牙:「推薦?どういうことだ。」
竜牙:「高校を卒業したらアメリカに渡米するつもりだ。夏海のところに俺は行きたい。」
鳥牙:「っ・・お前、そんな大事なもんを控えているのに俺の作戦に買って出たのか!」
竜牙:「ああ。」
鳥牙:「もういい、後は俺が・・「白金を人質に取られている以上、兄貴は迂闊に動けないだろ。」」
竜牙:「明日、小池たちに声をかけるつもりだ。」
鳥牙:「おいおい・・関わる以上は自己責任だぞ、相手は白金の精鋭だ。もし、この事が学院に知られたりでもすれば暴力沙汰で推薦が取り消される可能性だってある。他の友人だって進学、就職を控えた大事な時期だろうが。」
竜牙:「けど爆薬をバラ撒かれたりでもすればそれも水の泡になっちまう。」
鳥牙:「っ・・。」
竜牙:「俺さ思うんだよ。兄貴がいなかったらデストロイヤとの戦いで俺たちは詰んでいたんじゃないかって。だから今度は俺たちが兄貴を助ける番だ。さっさと終わらせてまたいつもの日常に戻ろう。って兄貴にとってはこれが日常なのか。」
鳥牙:「不甲斐ない・・本当に。」
竜牙:「顔を上げろって。兄貴には考えがあるんだろ?俺たちにできることはキラーのメンバーを倒して兄貴を黒谷とまた対面させてあげることぐらいだ。そっから先は頼んだぜ。」
鳥牙:「ありがとう、竜牙。」

147話/仲間の再集結、来るべき戦いに備えて

竜牙:「ふわぁ~さすがに冷え込んできたな。」
速水:「部長!おはようございます。」
竜牙:「おはよう速水。ってかもう部長じゃないぞー。」
速水:「剣崎先輩って長いじゃないですかー。」
竜牙:「まぁそっちで呼び慣れているってのもあるのか。ま、いいや。速水、後で話がある。」
速水:「どうしたんですか?改まって。」
竜牙:「まぁ後で話すよ、昼休みに屋上に来てくれ。」

光ヶ丘学院屋上。
小池:「悪い、遅くなった。」
竜牙:「いや、急に呼び出して悪かったな。」
速水:「部長、呼び出したのって僕だけじゃなかったんですね。」
竜牙:「ああ。内容が内容だからな。」
スペード:「それで?話というのは何なんだ。」
竜牙:「白金学院が荒校の黒谷ってやつに乗っ取られている。」
スペード:「なに?」
小池:「白金っていうと前に江口を誘拐した例のヤンキー校か。」
竜牙:「俺の兄貴がそこで頭張ってんだけどよ、その攻め込んできた黒谷って不良ヤンキーは覚せい剤と爆薬に手を付けているやべぇ奴だ。」
全員:「「?!」」
竜牙:「そしてその爆薬に仕込まれている細菌がM-85637899。マイクロウイルスと言われている非情に感染力の高い細菌らしい。兄貴が得た情報を鵜呑みにするなら。あれをもしバラ撒かれたりでもしたら白金学院だけでなく近辺の人々を巻き込む大惨事になる恐れがある。」
スペード:「んだと・・。」
小池:「それは見過ごせねぇな。せっかく平和になったっていうのに。」
速水:「まさか部長、その黒谷って男を止めるつもりなんですか?」
竜牙:「俺がその事実を知った時には、すでに白金学院の連中を人質に取られている状態だった。現状、兄貴が迂闊に動くことができない状態だったんだ。だから俺は兄貴に強力して俺に注意が向くよう奴を挑発した。うん・・黒谷の注意を兄貴から反らす必要があった。現状を打破するためには兄貴が一時的に白金学院のボスの座を降りる方法が一番無難な方法だったんだ。」
スペード:「なるほどな。どちらにせよ爆薬が黒谷の元にある以上白金が人質に取られている状態は変わらない。だからこそボスの座を降りて竜牙に注意を向けさせることで鳥牙さんは隠密行動を起こす上での足枷を外したというわけか。」
竜牙:「流石だな、理解が早くて助かるぜ。」
小池:「なんとなく招集された理由が分かったよ。」
速水:「いやいやこの三年生の大事な時期に他校との暴力沙汰だなんて危険ですよ!」
竜牙:「無理にとは言わない。でも、俺一人で白金のキラーを全員相手にするのは流石に骨が折れる。」
小池:「キラー?」
竜牙:「他校の不良ヤンキーたちが迂闊に手が出せない最強の猛者たち。白金の四天王と呼ばれている連中だよ。兄貴の話だと兄貴が黒谷とやり合う場を取り繕うには、白金のルールに乗っ取ってキラーの連中を全員倒さなければいけないらしい。そうしなければボスの側近である大島飢餓、そしてその先にいる黒谷とやり合うことができない。」
小池:「面白れェ、受験勉強のストレスが溜まっていたんだ。」
スペード:「モンスターとの戦いを終えて丁度体力が有り余っていたところだしな。」
速水:「なんでやる気なんですか!ダメですって!皆さん将来を左右する大事な受験を控えているんですよ?!」
小池:「速水、俺はかつて人を殺めたり苦しめたりした側の人間だ。実際にはあの日の事実は上書きされ、あの日亡くなっていたはずの人も今は生きている。けどな、人を殺めた事実は俺の中に残っているんだ。そしてこの先も消えることはないだろう。だからこそ関係のない人たちの日常が脅かされる可能性が万に一つでもあるのなら俺は動くぞ。剣崎と約束したしな、殺してしまった人以上の人達を救うって。」
速水:「小池先輩・・。」
竜牙:「相手はモンスターじゃないが、脅威であることに変わりはない。ありがとうな、小池。」
小池:「フッ。」
スペード:「難しい理由なんか必要ないだろ。医者を志望している者として未知のウイルスをバラ撒こうとしている奴がいるというのなら止める。友人が困っているなら手を差し伸べる。戦う理由ならそれだけで十分だ。」
スペードは眼鏡を指で押し上げて眼鏡を光らせる。
小池:「お前は固いなぁ。」
スペード:「お前にだけは言われたくないわ!」
竜牙:「はははっ、まぁそういうわけだ。速水、無理に付き合う必要はない。自分たちの行動にはそれなりの責任を持って俺たちは動く。何も心配する必要はねぇよ。」
速水:「全くこの人たちは・・分かりました!僕も協力しますよ、先輩方と一緒に拳を交えるのもこれが最後かもしれませんし。」
スペード:「そーいや聞いたぞ速水、告白してきた女の子を泣かせただけでなく野郎同士のいざこざに巻き込んだらしいな。じらして落とすか・・匠の技だな。」
速水:「東大受験を控えているにもかかわらず意中の女性にうつつを抜かしているあなたにだけは言われたくないです!ってか語弊がありますよ?!僕はそんな乙女心を弄ぶようなことは断じてしていません!」
スペード:「おまっ・・?!どこでそれを・・てめぇ竜牙!!」
竜牙:「んだよ、隠すことでもないだろ~。」
小池:「ほう、ついにお前も動いたか。」
竜牙:「んだよ、知ってたのか?」
小池:「いや気づけよ・・鈍感すぎると木嶋に愛想突かされるぞ。」
竜牙:「聞き捨てならないなきょうしろうくん?クールでかっこいい小池君に最近彼女ができたと噂が広まっているんだぞ?」
小池:「な、何の話だ・・。」
スペード:「おいおい、どこに行く気だ小池?」
速水:「小池先輩って嘘をつくとこめかみを触りますよね~。」
小池:「うっ・・も、もういいだろこの話は!ほら、昼休み終わるぞ!」
竜牙:「瞳は美人だもんなぁ~何っーの清楚系美人?」
スペード:「黒髪ロングもポイントが高いよな。」
速水:「何で小池先輩なんですかね?」
竜牙:「やっぱ顔なんじゃないか?」
小池:「おい!なんで瞳が恋人の前提で話が進んでいるんだ?!」
スペード:「瞳と言えば・・。」
小池:「聞けよ!」
スペード:「確か白恋女学院の生徒だったよな。」
速水:「白女?!お嬢様学校じゃないですか・・。」
竜牙:「お前、澄ました顔をしてやることやってんな。」
小池:「やってねぇよ?!もういい、話は済んだだろ。俺は教室に戻る。」
小池は弁当を風呂敷に包み、カバンの中に入れて持ち去ろうとするが・・。
コトッ・・。
速水:「あれ、何か落としましたよ?」
スペード:「!おー小池、ピンクのポーチを落としたぞ。」
小池:「ん?・・!!やべっ!あのアホ・・俺のカバンに間違えて・・。」
竜牙:「女性ものの・・ポーチ?なんでこんなものがカバンの中から落ちるんだ?」
小池:「くっそ返せ!」
スペード:「フン!冷静さをかいだお前のステップなど見切るのは容易い。」
速水:「銀河先輩!パスです!」
小池:「パスです!じゃねぇ、このやろっ!!」
竜牙:「あの小池が必死なの、なんだか笑えるな。」
小池:「てめぇ、何笑ってんだこの野郎!江口とマンツーマンで放課後練習していることをチクるぞ!」
竜牙:「てめ・・なんでそれを?!プライバシーの侵害だぞ!!」
小池:「お前も同罪だろうが!」
スペード:「ほんとにお前は・・やっぱり木嶋の鉄槌を受けないとお前の天然ジゴロは治らないようだな。」
竜牙:「いや、何もしてねぇって!話を聞いてくれ、誰だってあんな健気な眼差しで頼られたら断れねぇだろ!!」
小池:「哀れだな剣崎、それが江口の口実とも知らずに。」
スペード:「鈍感ってのは罪だねぇ。」
速水:「言ってるそばから部長、白鳥さんが後ろに!!」
竜牙:「?!」
竜牙は目にも止まらない速さで後ろを振り返る!
白鳥:「せんぱい・・ふけつ・・!」
竜牙:「ち、違う!おい!!まって、ねぇ?!ちょっとぉぉ!!」

148話/小池VS柊・拳と拳のぶつかり合い!

白金学院グラウンド。
竜牙:「さて、ようやく着いたな。」
速水:「意外と光ヶ丘から離れているんですね。」
竜牙:「ああ、前に江口を襲った連中がワゴン車で足を運んできた理由に納得がいくだろ?」
スペード:「しかしやけに静かだな・・。」
鳥牙:「黒谷の手下を荒校の連中に抑えてもらったからな。」
竜牙:「兄貴・・。」
鳥牙:「すまない。俺のいざござにみんなを巻き込んでしまって。」
スペード:「関係ありませんよ。ここにいる連中は皆自分の意思でここに足を運んでいます。」
小池:「頭の中にあるのはさっさと終わらせてまたいつもの日常に戻ることだけだ。」
竜牙:「というわけだ、兄貴。」
鳥牙:「ありがとう。」
柊:「はぁ~来たんですね、鳥牙さんと弟さん御一行。」
スペード:「え、何そのその他諸々をオブラートに包んで言ってあげた感。」
速水:「あの人、すっごいため息ついてますけど?!」
柊:「よくお越しくださいましたー。」
速水:「何ですかそのやる気のない湯ば〇ばみたいなセリフ・・。」
柊:「すいません。俺、王道不良更生漫画とか下克上漫画とか大嫌いなんで。」
速水:「なんなんですかあの人!やる気なさすぎて気を引き締めてきた僕らがバカみたいじゃないですか!」
小池:「更生する必要もねぇし、下克上をしにきたつもりもねぇ。殴り合いに来た、お前が俺のサンドバックになってくれるのか?」
柊:「はい、カチーン。カチーンときましたー寝言は口元についた米粒とってから抜かせカス~。」
小池:「え・・あ・・。」
小池は慌てて米粒をとる。
速水:「・・かっこ悪。」
小池:「聞こえてるぞ。」
柊:「その位置につくということは口を広げて入りきれないぐらい大きなおにぎりを食べた証拠ですね。つまりは・・手作り。」
柊は人差し指を指す。
柊:「愛情たっぷりですね。」
柊は満面の笑顔で返す。
スペード:「小池、後で話がある。」
小池:「うぉい、何か勘違いしてないか?!」
速水:「小池先輩、決戦を前に彼女とイチャイチャしてくるなんて正直見損ないました。」
小池:「違う!ただご飯粒が付いていただけだ!!」
竜牙:「見苦しいぞ小池。」
小池:「ちがうんだっ!!くっそ、お前マジで叩き潰す!!」
柊:「物語終盤でキャラ迷走とか勘弁してくださいよ~今時ギャップ萌えとか流行らないんで。」
竜牙:「もうやめて!小池のライフはゼロよ!!」
小池は無言のままナックルグローブをはめる。
小池:「ふぅ・・・お前だけは許さねぇ!」
柊:「頭隠して尻隠さずですね!」
柊は満面の笑顔で返す。
小池:「マジで殺す。」
タッ!!
柊:「この動き・・。」
シュッ!!
小池はクロスストレートを放つが・・。
小池:「交わされた?!」
柊:「なるほど・・ただのDK男子高校生じゃなさそうだ。」
小池:「この態勢・・まずいっ!」
バァァアン!!
柊の右下アッパーが小池の顎に入る!
竜牙:「小池!!」
速水:「あの動き・・喧嘩の動きじゃないですよ!」
スペード:「!」
小池:「ふぅ・・。」
柊:「アッパーカットか。」
小池:「フッ・・。」
鳥牙:「祐の拳を食らうどころか、額に拳を?!」
速水:「あれはクロスカウンターという技ですね。」
竜牙:「クロスカウンター?」
速水:「ボクシングにおけるカウンター・ブロウの一種で、選手両者が正対しているときに相手の打撃に相前後して相手の顔面に打撃を加える高等技術です。アッパーカットからの切り替えが早い・・流石です。」
小池:「はぁぁっ!!」
小池は高速ジャブで柊との距離を取る!
柊:「俺の両腕の筋肉を見て距離を取るか・・お前、相当な手練れだな。」
小池:(間違いない、こいつはワンキルを得意としている。だから腕と足の筋肉の付き方が比例してないんだ。フットワークに体重が乗ってないのがその証拠だ。長期戦に持ち込めばこいつが体力を切らせて倒れるんだろうが、お前の武器が一撃必殺っていうんなら逃げる必要はねぇ・・受けて立ってやるよ!)
タッ・・タッタッタッ!!
柊:「!」
(突っ込んできただと・・警戒する必要はないと判断したのか?舐めやがって!!)
バァン!!
柊の重たい一撃が容赦なく小池の顔面を撃ち抜く!
竜牙:「痛っ!」
スペード:「顔面を強打したぞ?!大丈夫なのかあいつ!」
小池:「ごほっ・・どうした、その程度か?」
柊:「俺の拳を受けて尚挑発してくるのか・・っ。」
小池:「お前の土俵で勝負してやる、有名なヤンキー校の不良の拳を受ける機会なんざそうそうないからな。」
柊:「上等だ、再起不能になるまで叩き込んでやる!」
バァン!!
小池:「ぐっ・・!」
柊:「まだまだァ!!」
バァン!!バァン!!
竜牙:「何考えてんだあいつ!」
速水:「でもストッピングであの人の拳をしっかりと受け止めています、もしかしたら体力切れを狙っているのかもしれません。」
竜牙:「ストッピング?」
速水:「最初の一撃こそ顔面で受けてしまいましたが、二発目からは彼の拳に合わせて掌でパンチを止めています、この防御技術をストッピングっていうんですよ。」
鳥牙:「なんて男だ・・祐と拳を合わせるのは初めてなはずなのに拳に合わせて両手がついてきている!」
柊:「ぐっ!おらぁぁぁぁっ!!」
ドカドカドカドカドカドカッ!!
小池:「負けねぇ・・負けられねぇ!!」

瞳家前。
瞳:「不良ヤンキーとの喧嘩って・・受験を控えたこの時期に正気?」
小池:「ああ、友達の為に拳を振ってくる。舞には心配をかけたくないからさ、一言伝えておこうと思って。」
瞳:「・・ま、私に止める権利はないわね。ちょっと待ってて。」
小池:「?」
数分後・・。
瞳:「お待たせ。これ、食べてって!」
小池:「これって・・!」
瞳:「梅干し入りのおにぎり、やるからには負けないで。もうあなたは一人じゃない、あなたの事を心配している人がいるって事忘れないでね。」
小池:「ああ。ってか・・でかくない?」
瞳:「う、うっさい!ほら、早く行きなさい!」
小池:「お、押すなって!」
瞳:「ふふっ。」
(あなたが陰で努力してきたの・・誰よりも知ってるんだから。大丈夫、今のあなたなら相手が誰であろうと負けないわ。)

柊:「ハァハァ・・くそ・・血だらけになって・・額から流血してんのになんで倒れねぇ!!」
小池:「これが梅干しの力か・・悪くない。ちょっとしょっぱいけどな。」
小池は拳を構える!
柊:「っ・・!」
小池:「ストームモード・・くらえぇぇっ!!」
シュルルルルルルッ・・・ドカァァアン!!
小池のコークスクリュー・ブローが柊を殴り飛ばした!!
柊:「がは・・っ!」
ドサッ・・。
竜牙:「お、おおおっ!!やりやがった!!」
スペード:「今のってまさかコークスクリュー・ブローか・・?」
速水:「ワインの栓を抜く道具、そうコルク抜きの如く腕に軸回転を加えて放つパンチ・・ストームモードの勢いが混ざり合ってとんでもない攻撃に変貌しましたね・・腰が抜けそうでした。」
小池:「っ・・流石に攻撃を受けすぎたか・・。」
小池はよろける・・。
鳥牙:「だ、大丈夫か!」
小池:「ええ・・みんな、先に行け・・負けたら承知しねぇぞ。」
竜牙:「小池・・。」
小池:「後ろを振り返ってる場合じゃねぇ、違うか?」
速水:「前言撤回です、最高にかっこよかったです先輩。」
小池:「高速掌返しやめろ、ったく・・。」
速水は氷河転結絶対零度で筋肉を冷やしていく。
速水:「お疲れさまでした、先輩の思いは僕らが繋ぎます。」
小池:「ああ、頼んだぞ!」
スペード:「校舎の中に進もう、鳥牙さん。」
鳥牙:「よし、こっちだ!」

149話/速水VS新派・速すぎる戦いの行方!

タッタッタッ!!
竜牙:「おい大丈夫かこの校舎・・床ギシギシ言ってるぞ。」
速水:「上の階に行けば行くほど老朽化が酷いですね。」
スペルA:「!鳥牙さん・・とえっ?!おめぇらはいつぞやの剣道坊主に眼鏡野郎?!」
竜牙:「あー!江口を誘拐してた・・。」
スペード:「丁度いいじゃないか、キラーの連中はどこにいる?」
スペルB:「あぁん?それが人にモノを頼む態度かよぉ?」
速水:「えっと・・お知り合いですか?」
竜牙:「ああ、この二人とは前にひと悶着あってな。」
鳥牙:「悪いが先を急いでいる、もし知っているなら教えてほしい。」
スペルA:「ちょっと待ってくださいよ!なんで鳥牙さん、こいつらとつるんでいるんすか?」
鳥牙:「弟とその友人たちだ。」
スペルB:「弟っ?!」
スペルA:「まじかよ・・どおりで規格外の強さを誇っていたわけだぜ。」
スペード:「俺たちは黒谷を止めに来たんだ、邪魔立てする気なら容赦はしない。」
スペルB:「・・確かにお前たちならキラーと張り合えるかもしれない。」
スペルA:「おいおい、目の敵にしていた奴らに情報提供する気かよ。」
スペルB:「んな事言ってる場合じゃねぇだろ!飢餓さんがタマ掛けて黒谷を抑えているのに他校よそものの連中といがみあってる場合じゃねぇ!」
鳥牙:「どういうことだ?!」
スペルB:「黒谷のやつが事あるごとに爆薬を見せつけて俺らを脅すもんだから飢餓さんが屋上に連れ込んだんですよ。」
鳥牙はスペルBの胸ぐらを掴む!
鳥牙:「あいつは無事なのか!」
スペルB:「ちょちょっ?!く、くるしい・・ですっ!!」
鳥牙:「あ、す・・すまん。」
鳥牙は手を放す。
スペルB:「硬直状態が続いているみたいです。俺らは偶然その光景を見ちまったけど、キラーの連中は何も知らされてないだろうから各々が例の階段を守るように配置されているはず・・です。」
竜牙:「階段?」
鳥牙:「三年生の教室へと続いている階段だ。その先にある生徒会室がボスの居座る空間となっている。だから白金うちに挑む挑戦者もんたちはそこを目指してキラーの連中と戦っていくんだ。ただ、キラーの配置は定まっていない。本来なら模索しながら出会った者としらみつぶしに戦っていくんだがなんせ時間がない。頼む、もっと詳しい情報はないか?」
スペルA:「ちっ・・鳥牙さんの頼みなら仕方がねぇ。この先の2-6の教室に新派さんがいる。他のメンバーの所在まではわかんねぇ。」
竜牙:「すまねぇ、恩に着る!」
鳥牙:「行くぞ!」
速水:「はい!」
タッタッタッ!!
スペード:「・・。」
スペルA:「まてよ。」
スペード:「なんだ?」
スペルA:「持ってけ。」
スペード:「これは?」
スペルA:「白金の見取り図だ。即興でつくったもんだが役に立つはずだ。てめぇには瞬時に空間を移動できる特殊な力があるだろ?にわかには信じがたいが俺らは実際にその力を目のあたりにしている。もしもの時はその見取り図使って脱出しろ。」
スペード:「さっき鳥牙さんともう一人の不良ヤンキーが揉めていた間に書いたのか。即興の割にはなんて正確な図面だ。」
スペルA:「手先だけは器用だからよ。弱ぇ俺らにはこんなことぐらいしかできねぇ、後は任せたぞ。」
スペード:「確かに受け取った、ありがたく使わせてもらう。」
タッタッタッ!!
スペルB:「なんだかんだ協力しちゃって。」
スペルA:「フン。」

タッタッタッ!!
新派:「お、来たか。」
鳥牙:「回忌・・。」
新派:「こっから見てたぜ、祐を倒すとはな。」
速水:「僕に行かせてください。」
竜牙:「速水?」
速水:「頭のキレる銀河先輩はなるべくこの先で待ち構えているキラーに備えて待機しておいて下さい。」
新派:「随分と威勢のいい中坊だな。」
速水:「僕は高校生です、はき違えないでもらえますか?」
新派:「祐と同い年か・・随分と幼い顔立ちしてっから勘違いしてしまったようだ。」
速水:「人は見た目では測れませんよ。」
新派:「言うねぇ~だったら見せてもらおうじゃねぇの。」
シュッ!
速水:「消えた?!」
バァン!!
速水:「ぐあっ?!!」
竜牙:「速水っ!!」
スペード:「何っー速さだ・・。」
鳥牙:「回忌は相手を分析し、持ち前の足を使って一気に畳みかける。別名・悪魔のハヤブサだ。」
竜牙:「本当に人間なのか・・。」
速水:「スピード対決というわけですか・・なら負けるわけにはいきませんね!」
(ハヤブサランニング!!)
シュッ!シュッ!!
新派:「何っ・・!俺の攻撃を交わしはじめただと・・?!」
速水:「いつも部室で誰と競い合ってると思ってるんですか?うちの元部長はこの数倍早い!」
速水は持参してきた木刀を引き抜く!
速水:「やぁ!!」
バシィッ!!
新派:「なんつぅ木刀裁きだ・・剣道か!」
シュッ!シュッ!
速水は木刀で新派が半身になった隙を突いていこうとするが、新派は拳で受け流しつつ速度に乗ったまま反撃を撃ってくる!
速水:「すごい・・スピードを出しているにも関わらず僕の攻撃をすべて丁寧に受け流している・・一朝一夕でできるものじゃない・・!」
新派:「どうしたどうした?手数が足りてねぇぞ!!」
バァン!!
速水:「ぐっ!!」
(相手がモンスターじゃないぶん、やりづらい!僕の間合いに持っていくことができれば・・どうすれば・・。)
竜牙:「すごい、二人とも足だけが勝手に移動しているみたいに移動する速度に合わせて拳や木刀を繰り出している。」
スペード:「ああ、弧を描くように流れている様はまるでアイススケートのようだ。」
速水:(アイススケート・・・それだ!)
新派:「おいおい、勝負の最中によそ見してんじゃねぇぞ!!」
速水:「よそ見なんてしていませんよ・・あなたに対抗するために策を考えていただけです。」
新派:「なに?」
速水:(腰につけたハイゼルセイバーを使わず冷気だけを両足の底に流し込む!氷河転結・絶対零度!!)
カチカチカチ・・!!
速水:(そして・・ハヤブサランニング!)
シュッ!シュッ!!
新派:「?!速度が上がった・・。」
鳥牙:「これは・・!」
速水:「アイススケートの基本ってご存じですか?」
新派:「なに・・?」
速水:「それはエッジに乗ることによって『弧』を描くこと=正確なサークルを描くことなんです。つま先を開きながら、右足、左足と出していく。そこでポンと両足に体重を乗せると、スーッと滑っていくんですよ。このスケーティングの手法を応用すれば・・。」
シュゥゥッ・・!!
新派:「?!!」
竜牙:「新派との間合いが開いた!」
新派:「クッソ・・早ぇっ!!」
速水:「はぁぁぁっ!!」
ズババババッ!!
新派:「ぐあああっ!!」
速水:「木刀を振り切ったことであなたとの距離が大きく開く・・そしてこの助走をつけたまま・・!」
速水は氷河転結・絶対零度で地面に溝をつくる!
シュッ!!
勢いをつけた速水は勢いよく大ジャンプした!!
新派:「?!」
速水:「おらぁぁっ!!」
バシィィッ!!
新派:「ぐあ・・・っ!!」
ドサッ!!
速水の空中からのローリングキックが新派の顔面を蹴り飛ばした!!
ズザザザザッ!!
速水:「はぁはぁ・・僕の・・勝ちです。」
竜牙:「す、すげぇ!!」
スペード:「オリンピック選手みたいな動きだったぞ速水!」
速水:「あはは・・一回で成功して良かったです。」
鳥牙:「もし回忌と長時間にわたってスピード対決していればスタミナ切れで間違いなく彼がやられていたであろうに・・起点と発想で回忌の裏をかくとは・・。」
速水:「ですが・・みなさんと同行するのは厳しそうです。」
スペード:「お前・・足が・・。」
速水:「慣れない動きをしたせいか肉離れと流血でしばらく動けなさそうです。みなさん、後はお願いします。」
竜牙:「すまねぇ・・無理させちまって。」
速水:「あはは・・身を砕くような戦闘はするなと念を押されていたのに不甲斐ないです。」
スペード:「見せて見ろ。」
速水:「あ、はい・・。」
スペード:「ちょっと待ってろ。」
竜牙:「どこに行くんだよ。」
スペード:「よし・・これで・・。」
鳥牙:「濡れたハンカチ?」
スペード:「肉離れってのは太ももやふくらはぎなどの筋肉が切れたり裂けたりすることによって、炎症や内出血を起こし患部が腫れ激しい痛みを伴う症状だ。部分的に断裂することが多いがまれに筋肉が完全に断裂してしまうこともある。見たところまだ軽傷だが歩行して悪化する可能性も否定できない。」
スペードは速水の患部をハンカチで当てる。
速水:「あ、ありがとうございます。」
スペード:「しばらくこうやって患部を冷やしてろ。ただ冷やしすぎると血行を悪くしてしまうから30分程度経過したら様子を見て離すんだ。それと膝は軽く曲げてできれば足を上げて置け。そうすることで肉離れの膨張を防止して痛みがいくらか軽減できるはずだ。」
竜牙:「すげぇなお前・・。」
速水:「医者を目指しているだけのことはあります。」
スペード:「このぐらいできて当然。ま、この程度の肉離れなら安静にしてれば一週間程度で完治するはずだ。」
速水:「よかった~、」
竜牙:「速水、お前の戦いは決して無駄にはしない。」
速水:「はい!道中気をつけて。」

150話/銀河VS梶原・鉄壁を攻略する秘策!

タッタッタッ!!
竜牙:「この先で控えているのは誰なんだ?」
鳥牙:「分からん、キラーの配置は日によってバラバラだ。」
竜牙:「うーん、スペード・・何か策でも考えておいたほうが・・。」
スペード:「・・。」
竜牙:「ん?スペード・・?」
スペード:「・・。」
竜牙:「おい、スペード!」
スペード:「うわっ・・?!な、なんだ・・。」
竜牙:「何物思いにふけってんだよ・・こうしている間にも黒谷に近づいているんだぞ?気を引き締めろよ。」
スペード:「わ、悪い・・。」

花音:「は・・・?」
スペード:「だからっ・・その!」
バァン!!
花音:「はぅっ?!!」
スペード:「すっ・・・きだ・・・。」
花音:「あ・・・あああああんた・・自分がな・・にゃに言ってるかわかって・・!」
スペード:「こ、声を張り上げるな!こんなの・・誰かに見られたら俺卒業までひきこもるからな?!」
花音:「し、しょうがないでしょ!だいたい・・か、壁ドンだなんて・・何柄にもないことをして・・。」
スペード:「見てほしい・・から。」
花音:「は?」
スペード:「お前、動揺すると目をそらすだろ・・ちゃんと聞いてほしいんだ。」
花音:「あ・・いや・・だからって・・。」
スペード:「さっきからどこ見てんだよ・・何もしねぇから目線を上げてくれ。」
花音:「っ・・どうしちゃったのよ・・あんた。」
スペード:「きっかけはオーロラ島で林さんがお前にアプローチしている時に不覚にもやきもちを妬いたことだった。」
花音:「!」
スペード:「そっから・・お前が視界に入ってくるたびに胸が高鳴って・・授業中とかお前の方に意識がチラついて全然集中できなくなった・・。」
花音:「っ・・。」
花音は両手で口元を抑える。
花音:「ば、ばかなのかあんたは・・!いつからそんな可愛い生き物になったのよ!!」
(銀河が・・私の事を・・?!これは夢、これは夢よ!消費税8%が5%に戻る?!否っ!むしろ跳ね上がる見込みしかないわ!今まで犬猿の仲だったコイツが私をす・・好きになるだなんてそんなことあり合えるはずが・・!)
スペード:「仕方がないだろ!目で追ってしまうんだよ!お前と顔を合わせるたびに頬の筋肉が強張る一方なんだよっ!!」
花音:「ちょちょちょ・・!ストップ!すとっぷぅぅ!!あんたには羞恥心というものがないの?!告白にこぎつけて余計なことまで自白しなくていいの!この場に立っている私の気持ちも考えて!」
(わぁぁぁぁぁああああん!これ本気ガチなやつだぁぁぁぁ!!ど、どうしよう・・異性からの告白ってこんな音沙汰もなく来るものなの?!)
スペード:「わ、悪い・・。と、とにかく!お前が他の男と仲良くしている様子はもう見たくないんだ、嫌なんだ!こう胸が締め付けられて苦しんだよ!・・卒業しちまえば俺は大学進学、お前は実家の花屋を継ぐ。そうなれば前よりもお前との距離が離れてしまうんじゃないかって・・そう思ったら考えるよりも先に体が動いていた。すまない。」
花音:「は・・はわぁ・・。」
スペード:「あーゴホン。取り乱して悪かった・・だからその・・俺と・・。」
花音:「ま・・て。」
スペード:「え?」
花音:「まっ・・・て。」
花音は人生初の告白を前に緊張してしまい、戸惑いながらも精一杯声を張り上げる。
スペード:「っ・・。」
(か、かわぃ・・・!)
そんな様子を見て口元が緩むスペード。惚気ている場合ではない。
花音:「今は考えさせて。」

女性が告白を保留にする理由としていくつかあげられるものがある。

・はっきりと断ることができず保留という返し方で察してほしい場合
・そもそも恋愛対象として見てなかったため、考える時間がほしい場合
・自身が誰とも付き合ったことがなく、付き合うことに対して大きなハードルを感じている場合
・今までの関係を壊したくない場合
・元カレもしくは以前好きだった男性を忘れられない場合
・自身の友人が当事者の事を好きな場合
・告白されたこと事実に戸惑い心の整理がついておらずすぐに返事ができなかった場合

つまり、保留は限りなく振られる可能性が高い、もしくはそれなりの期間を必要とする場合が多いわけだ。花音麗華と距離が空いてしまうことを恐れているスペードにとってここからが正念場である。場合によっては振られていない分、ズルズルと引きずりジレンマな日々を送る可能性だってある。もちろん、返事の催促は絶対NGである。場合よっては相手に幻滅し今の関係を壊しかねないからだ。

スペード:「くそっ・・竜牙の言う通りだ。あいつのことを考えている場合じゃない、くっそ・・こんなことなら先急がず卒業のタイミングを見計らって思いを伝えるべきだった。」
竜牙:「だいたい想像がつくが、そんなお前のやる気スイッチを押してやる。」
スペード:「?」
竜牙:「前に当人から聞いた話だが花音の花屋は黒金学院の近くにあるそうだ。もし、黒谷をここで阻止できなければ・・。」
スペード:「フィールドワープ!!」
スペードたちは一瞬で生徒会室へと飛んだ!
竜牙:「うわぁお。」
スペード:「・・・。」
梶原:「てめぇ・・足音もなく階段を登ってきやがったか。」
スペード:「・・・。」
バシィィッ!
梶原:「え・・・。」
ドサッ!!
スペード:「黒谷はどこだ?」
梶原:「痛っ~てめぇ!挨拶もなしにいきなり殴りかかるとたぁいい度胸じゃ・・!」
バシィィッ!
バシッ!バシッ!バシッ!!
梶原:「ぐはっ・・!やろぉぉぉ!!」
シュッ!!
梶原の拳をスペードは上半身をゆらして交わす!
梶原:「交わした?!」
竜牙:「あの動きは小池の!」
鳥牙:「だが梶原はカウンターを得意としている、油断はできないぞ。その様は鉄壁と称されている。」
スペードは手刀で梶原の脇の下を狙い撃つ!
パシィィッ!
梶原:「どこを狙ってやがる、こいつは俺の間合いだぁぁ!!」
バシィッ!!
スペード:「ぐふっ!」
梶原:「もういっちょ!」
バシィッ!!
スペード:「ごふっ!」
梶原の容赦のない膝蹴りがスペードの腹部を襲う!
梶原:「おいおいどうしたどうした?仕掛けてきたわりに俺の攻撃を交わす一方じゃねぇか。」
スペード:「っ・・これだから脳筋は。」
梶原:「あ”?今、何つった。」
スペード:「単細胞の相手は疲れるって話だよ。」
梶原:「てめぇぇぇぇ!!」
グラッ・・・。
梶原:「あれ・・。」
スペード:「なぜ俺が拳でなく手刀で攻撃していたか、そんな些細な事にもお前は疑問を抱かなかったんだろう?」
梶原:「んだと・・。」
スペード:「視線から俺の動きに合わせて体を動かしていることには気づく。カウンターを狙っていたんだろうが攻撃を受けた俺は立っていて、お前は地面に這いつくばっている。なぜだと思う?」
梶原:「知るかっ・・くそっ・・体が動かねぇ!」
スペード:「人体には急所というものが存在する。喧嘩慣れしていて体力も筋力もある白金の精鋭を相手にするなら馬鹿正直に同じ土俵で戦っても勝ち目はない。だから俺はそこを突いたんだ。」
梶原:「!」
スペード:「最初の一発目は乳様突起を狙った。乳様突起ってのは耳の後ろの隆起した骨のことだ。刺されると運動機能が麻痺する。相手の動きに合わせて半身になれば安易につくことができるからな。ま、場所を知っていればの話だが。」
梶原:「っ・・。」
スペード:「連投していくとお前の動きに乱れが生じ始めた。そこで俺は反撃に転じたお前の脇の下を狙ったわけだ。」
梶原:「脇の下だと・・。」
スペード:「脇の下は神経が集中しているゆえにダメージが大きい。圧迫による止血が不可能なため失血死を起こしやすい部位になる。」
梶原はだんだんと青ざめていく・・。
スペード:「そして・・!」
スペードは動けなくなった梶原の股間を蹴り上げる!

梶原:「ぐあああああああああああああああああっ!!」

スペード:「はぁぁぁっ!!」
バシィィッ!!
そして追い打ちをかけるようにスネを蹴り上げた!!



梶原:「あああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」


想像を絶する罵声に竜牙と鳥牙が思わず顔を背ける。
スペード:「男性の睾丸は内分泌器であり腹痛のような痛みを伴う、何より膀胱ぼうこうには神経の束がありわずかに刺されただけでも動けなくなってしまう。金玉が男の急所と言われている所以はそこにある。トドメに狙った脛は弁慶の泣き所とも呼ばれ骨がすぐそこにあり、蹴られると激痛が走る。狙い撃ちしにくいがダメ出しの一手には最適だ。なんせ弁慶ほどの豪傑でも弱点となる急所だからなぁ。」
梶原:「あ・・が・・っ・・。」
竜牙:「悪魔だ・・これ喧嘩じゃねぇだろ・・。」
スペード:「当たり前だ、俺たちは喧嘩をしにきたんじゃない止めに来たんだ。そうだろ?時間は限られている、それと傍から見たら人でなしかもしれんが安心しろ、手刀で狙い撃ちしている分力は加減されている。障害が残ることはないだろう。」
霧島:「先手必勝。」

151話/孤独の痛み

ドカァァァン!!
霧島:「しっしっし・・油断したところを大型ダイナマイトで木っ端微塵・・。」
竜牙:「随分と手荒い歓迎だな。」
霧島:「ってあれ・・ここはどこだ?!」
爆発が起こる前にスペードのフィールドワープで竜牙たちはグラウンドに移動したようだ。
霧島:「ばかな・・なぜグラウンドに!」
鳥牙:「お前・・校舎をよくも・・。」
霧島:「あ・・しっしっし・・そんな事を言ってる場合じゃないですよ。」
鳥牙:「何?」
霧島:「ま、弟さんたちが無事に勝ち残れば説明しますので悪しからず。」
霧島は線香のようなものを空中にバラまいた!!
竜牙:「んだ・・あれ!」
霧島:「線香炸裂弾!!」
竜牙:「くそっ・・X技・ドラグアーマーバーストモード!!」
ボォォォオウウ!!
竜牙は片手を広げて、ドラグアーマーの炎を一点に手中させる。
竜牙:「くらえっ!」
ボォォォゥ!!
鳥牙:「バーストモードの炎をバーナーの炎みたく噴射した?!」
竜牙:「全部空中で燃やし尽くす!」
霧島:「一体なんなんだ・・面白い、私が勝利した暁にはぜひその鎧を研究させてくれぇ!!」
霧島は羽織っているジャケットを広げる!
竜牙:「な・・っ。」
スペード:「なんだあいつのジャケットは!」
霧島:「私の奥の手・・トリプルランチャー。数万個を超えるスタングレネードが一気に放出されるぅ。」
スペード:「あいつ頭おかしいんじゃないのか?!M84は非致死性兵器だぞ!!」
竜牙:「な、なんだよM84って!」
鳥牙:「フラッシュバンや閃光発音筒とも呼ばれるアメリカで現在使用されているスタングレネードの名称だ。」
竜牙:「?!」
スペード:「起爆すると同時に170‐180デシベルの爆発音と15mの範囲で100万カンデラ以上の閃光を放ち、突発的な目の眩み・難聴・耳鳴りを発生させる危険極まりない代物だ。この辺り一帯が吹き飛ぶぞ!!」
竜牙:「ハヤブサランニングストーム!!」
シュッ!!
スペード:「お、おい!!」
竜牙:「兄貴が必至こいて守ろうとしているモンをお前がぶっ壊すな!そんな本末転倒なことやらせるかぁ!!」
霧島:「トリプルランチャーはっし・・あれ・・。」
鳥牙:「・・・。」
霧島:「まさか・・ロストタイムで俺のジャケットの爆薬をすべて取り除いて・・。」
鳥牙:「創作活動に没頭するのはいいが自分を見失うところがお前の弱点だ、悪いがそのジャケットの使用を認めるわけにはいかない。」
霧島:「ノォォォォォォォォ!!」
竜牙:「イナズマドラゴン!!」
ビりりりッ!!
霧島:「ぎゃあああああああっ!!」
竜牙:「ふぅ・・気絶したか。なんてサイコパスな野郎だ。」
鳥牙:「すまない・・アドレナリンが放出しすぎるとこいつは自分を抑制できなくなるんだ。」
スペード:「存在そのものが次元爆弾じゃねぇか・・。」
竜牙:「とにかくこれで全員倒したんじゃねぇか?」
スペード:「竜牙。」
竜牙:「ん?」
スペード:「俺は負傷した速水と小池を連れて病院に足を運ぶよ。お前は鳥牙さんと一緒に黒谷を止めてくれ。どちらにしてもこの怪我じゃ足手まといだしな。」
竜牙:「ああ、助かったぜみんな。」
スペード:「うん。それじゃあお前たち二人をあの生徒会室に戻す。爆発は起こる直前、ダイナマイトはここから遠く離れた水中にワープさせたから問題はないはずだ。」

竜牙と鳥牙は生徒会室にワープする。
竜牙:「ん?なんだ・・この臭い。」
鳥牙:「!・・吸うな!!」
鳥牙は慌てて竜牙の口を塞ぐ!
竜牙:「むむむぅ?!」
鳥牙:「いいか、ここから先はハンカチを当てて進むぞ。」
鳥牙は窓を開けて喚起する。
竜牙:「どういうことだよ!
鳥牙:「・・・やっぱりな。」
先に生徒会室の奥に足を運んでいた鳥牙が足を止める。
竜牙:「どうしたん・・?!」
(飢餓さんが倒れてる・・?!)
鳥牙:「これはクロロホルムだ。」
竜牙:「え?!」
鳥牙:「麻酔薬の一種で大量に吸引すると気を失い、場合によっては亡くなることがある。そいつが気化して生徒会室に充満しているんだ!」
竜牙:「な・・さっきまでこんな臭いしなかったのに。」
鳥牙:「・・黒谷っ!!」
黒谷:「キラーを一網打尽とは恐れ入った。」
竜牙:「あ・・あいつ!」
鳥牙:「年貢の納め時だ。飢餓には何もしてねぇんだろうな?」
黒谷:「安心しろ、俺の隙をついて爆薬を強奪しようとしてたから眠らせただけだ。」
鳥牙:「!」
竜牙:「おまえ・・クロロホルムを吸引しすぎて飢餓さんが死んでたらどう責任を取るつもりだったんだ!」
黒谷:「そりゃあ・・それまでの人生だったってこった。」
竜牙:「やろぉ・・。」
鳥牙は右腕を伸ばして竜牙の前に突き出す。
竜牙:「兄貴?!」
鳥牙:「俺が買った喧嘩だ、手ェ出すな。」
竜牙:「っ・・!」
覇気迫る重圧プレッシャー・・今まで見せたことのない怒りを鳥牙が見せる。
黒谷:「おっと!いいのかァ?俺の手元にはコイツがあるんだぜ?」
鳥牙:「・・ずっと孤独で不安だったよな。」
黒谷:「あ?」
鳥牙:「お前が不良ヤンキーの世界に憧れた理由、それは幼少時ガキのころに味わった不安や孤独を二度と味わないようにするため・・違うか?」
黒谷:「っ・・知ったような口を!」
鳥牙:「親から本来貰えるはずだった愛情が欠けてしまうと人っていうのは些細なことで不安を感じるようになってしまう。だから、常に周囲には話を聞いてもらえる人がいないと不安に耐え切れなくなってしまうんだ。孤独の不安っていうのは一人で乗り越えようとしても簡単には消せない。不安だから周囲に目がいく、そして視界に入っちまうんだ、親と仲良さそうに歩いている同年代の奴がよ。結果、否が応でも他人と比較して不安に飲み込まれそうになっちまう・・だから、自分の力でどうにもならない得体の知れない恐怖を少しでも和らげるために他人に依存するんだ。」
竜牙:「・・兄貴。」
黒谷:「知ったような口をきくな!お前に何が分かるって言うんだ!!」
鳥牙:「分かんだよ!」
黒谷:「っ・・?!」
鳥牙:「俺もそうだったから。」
黒谷:「剣崎・・お前・・泣いて・・。」
鳥牙:「俺さ、思うんだよ。もしも飢餓がいなかったら俺もお前みたいになっていたんじゃねぇか?ってよ・・言葉で言い表すのは難しいが自分の存在を受け入れてくれる存在ってのはきっと生きていくうえで大きな存在なんだ。」
黒谷:「くっ・・うぐぐっ・・。」
ポロッ・・。
黒谷の瞳から涙がこぼれ堕ちる。
鳥牙:「もうお前は一人じゃない。」
黒谷:「うわぁぁぁっ!!」
黒谷は鳥牙に向けて拳を振るう!
バシィッ!
黒谷:「なんで・・なんでっ!!」
バシィッ!バシィッ!
黒谷:「ずっと・・。」
バシィッ!バシィッ!
黒谷:「ずっとずっとずっと・・!!」
バシィッ!バシィッ!
黒谷:「かけてほしかった言葉をっ!!」
バシィッ!バシィッ!
黒谷:「お前が言うんだぁぁっ!!」
ボコッ!
鳥牙:「・・がはっ!」
竜牙:「兄貴!」
鳥牙:「はぁ・・はぁ・・手ェ出すな!」
竜牙:「何で・・何で無抵抗なんだよ!反撃しろよ!!」
鳥牙:「こいつの苦しみを全身で受け止めてやれるのは・・俺だけだ。」
竜牙:「っ・・!」
黒谷:「うぐっ・・ぐっそぉぉぉっ!!」
バシィッ!バシィッ!
黒谷:「わぁぁぁぁぁっ!」
バシィッ!バシィッ!
竜牙:「あにき・・死んじまうぞ・・・おい・・おいぃぃっ!!」
理事:「っ!」
鳥牙と黒谷の間に駆け付けた理事長が割って入る!
鳥牙:「?!」
黒谷:「うぉぉぉぉっ!!」
バシィィィィッ!!
理事長:「がは・・っ!」
ドサッ!!
鳥牙:「理事長!」
黒谷:「親父っ・・?!」
理事長:「剣崎くん・・ありがとう。私も私がやるべきことを・・!」
黒谷:「今更どのツラ下げてきやがった・・クソ親父っ!!」

152話/息子の心と親の心情

理事長:「お前にはたくさん・・・辛い思いをさせてしまった。」
黒谷:「コイツは驚いた、理事長様直々に謝罪とはねぇ~。」
理事長:「私はお前を見失っていた、嘘に嘘を重ねすぎて私はいつの日か自分自身に大きな嘘をついていた。」
黒谷:「剣崎に心酔したか?お前が今更何言っても俺の心には響かねぇぞ!!」
理事長:「指導者として最もやってはいけないこと・・ごほっ!それは・・人を追い詰めることだ。」
黒谷:「!」
理事長:「私は愚かだ・・一番してはいけないことを大切なわが子にしてしまい、この子を苦しめてしまった。」
鳥牙:「理事長・・。」
理事長:「すまないとかごめんなとか・・安易に謝ることで私はお前を苦しめた罪から逃れる気はない。それよりもまず!お前には・・伝えなくちゃならないことがある。」
理事長は黒谷を抱きしめる。
黒谷:「?!」
理事長:「大きくなったな・・そして・・・よく頑張ってここまで生き抜いてくれた、ありがとう。」
黒谷:「は?!・・なに・・いって・・。」
理事長:「お前を引き取った時にな、私は母さんと決めたんだ。この子を幸せにしようって、お前はもう覚えてないかもしれないが、小さい頃お前は施設の中でもすごく優しい子だったんだ。当時施設の先生に連れられて買い物にきていた子供たちと私たちは遭遇してね。タブレット型のお菓子をみんなで買おうとしていたんだろう。だが、売り場に置いてある分だけでは数が足りず一人だけ買えなくて泣いている女の子がいたんだ。そんな子にお前はすっと自分のお菓子を差し出した。」
黒谷:「おれ・・が?」
理事長:「ああ。友達思いのいい子だなと見ていたらお前はトイレにいったんだ。少々気になってトイレに向かった私がそこで見たもの・・それは涙を流す少年の小さな背中だった。」
黒谷:「あ・・。」
理事長:「本当は大好きなお菓子だったのに自分の感情を押し殺して小さなお友達にお前はお菓子を渡したんだ。そして一通り泣き止むと何事もなかったかのようにみんなと合流して帰っていったんだ。その様子を見てた私は目を奪われたよ。なんて器の大きな子なんだと。それからというもの妙に私はお前のことが気になってね・・施設の居場所を突き止めて先生に話を聞いたんだ。そこで聞かされたのはご両親が離婚し育児放棄された子だという事実だった。どうして?自分よりも他者を重んじる子がなんで捨てられなきゃならないんだって・・そう思ったらお前を引き取っていた。」
黒谷:「・・・初耳だ。」
理事長:「ずっと話してなかったからなぁ~それからというもの、私も母さんも死に物狂いで働いたんだ。お前が笑ってくれるように色んな事をさせてあげよう、色んな物を与えようと。お前が将来成りたいものを見つけた時のためにお金を貯めようと・・私たちはお前がうちに来る前から仕事人間だったわけじゃない。お前がいつしか私たちの生きる希望になっていたんだ。」
黒谷:「んだよ・・それ。」
黒谷の瞳から涙が溢れ出てくる・・。
理事長:「でもな、お前が大きくなればなるほど・・避けてはならない問題と直面するようになった。それは私たちは本当の両親ではないという事実を告げることだった。でも言えなかったんだ。そんなの・・まだ十代の子が受けるにはあまりにも重過ぎる言葉だ。ましてやお前は他人に気を使い一人で背負い込むからな。けど、言わなかったからこそお前を苦しめてしまった。私たちが捧げないといけなかったものはお金でどうにかなるものじゃなかった、見えるけど・・見えないもの・・親の・・愛情だ。」
黒谷はその場に倒れて泣き崩れてしまう。
黒谷:「おれは・・おれは・・・!」
鳥牙:「・・黒谷・・。」
黒谷:「・・・自首するよ。」
理事長:「良也!待ちなさい。」
黒谷:「んだよ、説教なら後にしてくれ・・。」
理事長:「確かにお前のしたことは人としてやってはいけないことだ。どんな理由があるにせよ、それ相応の罪は償わなければならない。だがしばしの別れになる、母さんがお前の大好物だったオムライスを作って待ってるそうだ。顔を見せに行ってやりなさい。」
黒谷:「!・・おふくろ・・。」
理事長:「お前の帰る場所はここにある。今までしてあげられなかったことをせめて今だけでも私たちにさせては貰えないだろうか?」
黒谷は無言のままうなづく。
理事長:「ありがとう。」
鳥牙:「・・・。」
竜牙:「まさか、自分はこのまま帰るとか言わないよな?」
鳥牙:「当たり前だ、俺も向き合わないとな。」
黒谷:「剣崎、二度は言わねぇ。・・・ありがとう。」
鳥牙:「ああ。」

剣崎家。
竜牙:「ただいま~。」
楓:「おかえ・・え!」
鳥牙:「・・・。」
楓:「なんで・・!」
楓は両手を口元に当てる。
鳥牙:「たっ・・だいま・・。」
圭介:「鳥牙・・!」
竜牙:「お、父さん。」
圭介:「どうして・・。」
鳥牙は無言のまま頭を深々と下げた。
鳥牙:「震災の真実を知りました、その節は助けていただき本当にありがとうございました。助けていただいたにも関わら・・ず・・。」
緊張していたのか、鳥牙は早口で淡々と深々と謝罪していく。そんな鳥牙を楓はそっと抱きしめた。
鳥牙:「かあ・・さん?」
楓:「おっきくなったねぇ~ずっと顔見せに来ないから心配してたんだよ。」
鳥牙:「え・・いや・・え?」
圭介:「家族が揃うなんて何年ぶりだ?今日は寿司でも取ろう!な?」
竜牙:「おっ?!いいねぇ~!」
鳥牙:「ま、まって!俺、今まで散々酷いこと言ってきて・・一方的に距離取って二人の事傷つけたのに・・。そんな・・何事もなかったかのように。」
楓:「相変わらず固い子ねぇ~。」
鳥牙:「いやだって!俺は・・。」
圭介:「確かにお前はうちの者とは血が繋がっていないのかもしれない。だが俺たちは同じ時間を共に過ごしてきた家族だ。そんな辛い過去を振り返るより今を生きた方が楽しくないか?」
鳥牙:「その言葉・・あの時かけてくれた・・。」
圭介:「お前が帰ってきたときにかける言葉はこれにしようと決めていた。」
ポロッ・・。
鳥牙:「あ・・。」
鳥牙は慌てて涙を拭く。
圭介:「剣舞眼は相手の弱点を見抜くからなぁー今の言葉は胸に響いただろ~?」
鳥牙:「う、うっせぇよ!だいたい、俺みたいな親不孝者を受け入れたら絶対後悔するぞ?」
楓:「・・バカね。」
楓は自分の胸に鳥牙の額を当てる。
鳥牙:「え・・。」
楓:「あなたがこうして生きて私たちの前に元気な姿で帰ってきた。これほどの親孝行、他にないじゃない。」
鳥牙:「っ・・うん。」
竜牙:「なーに泣いてんだよ兄貴。」
鳥牙:「うっせぇ・・目にゴミが入ったんだよぉ・・。」
竜牙:「またベタな嘘を・・。」
楓:「あははっ、私も・・目にゴミがはい・・っううっ・・。」
圭介:「あはは。」
竜牙:「父さん?!目が真っ赤なんですけど?!」
圭介:「いやぁ・・父さんこう見えても涙もろいんだよ。」

圭介:「父さん・・俺、どうしたらいいか。」
誠一:「信じろ。」
圭介:「え?」
誠一:「一家の大黒柱であるお前が情けない背中を子供に見せるな。ドンと構えておればいいのじゃ、大丈夫!あいつは必ず帰ってくる。」
圭介:「え?そ、その根拠は?」
誠一:「ない。」
圭介:「えぇ~説得力に欠けますよ。」
誠一:「ほっほっほ・・血は繋がってないはずなのにのぉ、どこかお前に似ておる。」
圭介:「お、俺・・?そんなに反抗してましたっけ?」
誠一:「はぁ~無自覚な分、お前の方がよっぽど立ち悪い。」
圭介:「いやぁ、あはは・・。」
誠一:「圭介、わしから一つ助言じゃ。鳥牙がいつ帰ってきてもいいようにかける言葉は考えておれ。」
圭介:「!」
誠一:「その時はきっとすごく勇気を出してきてるはずじゃ、剣崎家の人間としてお前が先陣切って輪の中に引き込んでやれい。まぁ楓ちゃんの方がしっかりしとるからお前の出番はないかもしれんがのぅ。」

圭介:(全く、あなたには頭が上がりませんよ。)
竜牙:「ほら!母さんも兄貴も中に入ろうぜ?」
圭介:「おう!今日は大盤振る舞いだ、盛大にいこう。」
楓:「そうね、積もる話もたくさんあるだろうし。」
鳥牙:「みんな・・ありがとう。」

153話/色んな壁を乗り越えてついに春が来た!

森園病院、ここは白金学院付近の病院である。
大島:「痛っ・・ここは?」
鳥牙:「気がついたか、心配したぞ。」
大島:「ちょう・・・!黒谷は?!」
鳥牙:「親父さんとここを発った。落ち着いたら自首しにいくんだってさ。」
大島:「大丈夫なのか?あいつは覚せい剤を摂取しているんだぞ。」
鳥牙:「大丈夫とは言い切れないけどここから先は俺たちがどうこうする問題じゃない。黒谷の親父さん・・理事長と警察の成すべき事だ。念のため確認するけど例のウイルスを嗅がされたりしてないよな?」
大島:「それが・・あの時黒谷が所持していたのはM-85637899じゃない・・かもしれない。」
鳥牙:「え?」
大島:「最初に対面したときにあいつが所持していた梱包袋と俺がクロロホルムを嗅がされた時に見た袋がかすかに違っていたんだ。見た目はほぼそっくりでよーく見ないと気づけない・・けど、クロロホルムを嗅がされた時にふらついた俺の視界にははっきり映った。光が反射して梱包袋の色が異なっていたことに。」
鳥牙:「まさか・・誰かがすり替えたのか?!」
大島:「変なモンを嗅がされたせいで俺の記憶も曖昧だ。はっきりとした証拠が残ってない以上何とも言えないがその可能性は十分にある。」
鳥牙:「っ・・。」
大島:「まぁ仮にすり替えた人物がいたとしても危害を加えるつもりはないはずだ。」
鳥牙:「どうしてそう言い切れるんだ?」
大島:「もしそうなら鳥牙たちが来る前に細菌をバラ撒いているはずだ。つまり、すり替えた人物がいると仮定した場合・・そいつの目的は爆薬の回収だったと考えるのが妥当だ。」
鳥牙:「なるほどな・・。」
大島:「ま、この件に関してははこれ以上深入りしないほうがいいだろう。世の中には知らなくていいこともある。」
鳥牙:「危険極まりない爆薬の出どころは気になるが俺も同意見だ。これ以上詮索してもメリットがない。ひとまずは誰一人死ぬ事無く事なきを終えたことに安堵しよう。」
大島:「大きな借りができてしまったなぁ・・。」
鳥牙:「いやお前には返しても返しきれないぐらいだ。お前がいなかったら今頃俺もきっと・・。」
大島:「ならねぇ。」
鳥牙:「?」
大島:「確かにお前は自分を譲歩して動くところはある。けど本気で人を傷つけたり迷惑をかけたりする人間にはならなかったはずだ。親御さんの元を離れたのだって憎しみの中にこれ以上迷惑をかけるわけにはいかない・・そんな気持ちがあったはずだ。モンスターセイバーズになったのも罪滅ぼしのような思いがあったんだろ?人様に沢山迷惑をかけた自分にもしできることがあるのなら・・っていうな。だからアースの申し出を承諾した。」
鳥牙:「的を射すぎていて笑えねぇよ、伊達に長い付き合いじゃないな。」
鳥牙は奇跡の証を手に取る。
大島:「んで親御さんとは仲直りしたのか?」
鳥牙:「あの人たちは俺が考えているよりもずっと温厚な人たちだった。数年間の溝なんてなかったかのように俺をすんなりと受け入れてくれたよ。」
大島:「しんみりしやがってよ~素直に喜べばいいのに。」
鳥牙:「飢餓、俺卒業したら旅に出るよ。」
大島:「え?!」
鳥牙:「バイトして金貯めて、ある程度の額が貯まったら他県の育児院を巡って支援活動を行うつもりだ。」
大島:「いいのかよ、将来の道が狭まるぞ?」
鳥牙:「俺もまだ道半ばだ。色んな人と接して将来どうなるべきなのかを見定めたい。」
大島:「そうか、なら俺もついていくか。」
鳥牙:「おいおい、何もそこまで・・。」
大島:「おめぇといると楽しんだよ。これは俺の意思だ。」
鳥牙:「とりあえずベットの下に隠したエロ本を閉まおうぜ。」
大島:「おまっ?!い、いつから・・。」
鳥牙:「病院のベットの中で読むもんじゃねぇぞ。」
大島:「っせぇ!いいだろ別に~。」
鳥牙:「・・さてと、ちょっくら様子でも見に行くか。俺らよりも先に学び舎を巣立つあいつらを。」
大島:「そっか・・今日は卒業式か。」
鳥牙:「ああ。」

光ヶ丘学院。
教頭:「卒業証書、授与。」
校長:「3年1組・・。」

校長:「市原勇太郎。」
市原:「はい。」

時はさかのぼり・・三者面談。
担任:「青銅大宮大学合格おめでとう。」
市原:「や、やった・・!」
担任:「あなたの夢は確か・・プロサッカー選手だったわね。あなたは地区大会でも優秀な結果を残してる。先生影ながら応援してるわ、頑張りなさい。」
市原:「ありがとうございます!」
担任:「市原くん、あなたはうちのクラスだけでなくサッカー部でもムードメーカー的な存在だったと聞いてるわ。あなたには人を惹きつけるそんな魅力かある。」
市原:「大げさな・・。」
担任:「大げさなんかじゃないわ。そんなあなたの性格に救われた人も沢山いるはずよ。これからも頑張ってね。」


市原:「竜牙、モンスターセイバーズってなんだよ。2人はあの怪物たちの事を知っているんだろ?」
竜牙:「っ・・。」
神谷:「竜くん・・。」
竜牙:「2人を巻き込んじまったのは俺の責任だ。本当にすまねぇ・・。」
市原:「だから!あいつらはなんなんだよ!!訳が分かんねぇよ・・。」
竜牙:「俺たちがモンスターセイバーズになったのはここ最近で、モンスターについての詳細については何もわからない。俺たちにも奴らが人に危害を加える未知の生命体だって事以外は何も分からねぇんだ。それに今までは、光ヶ丘学院の周辺でしかその存在を確認できてなかったんだ。警戒を怠ったつもりはねぇけど、どこか俺も安心しきっていた。結果がこれだ。2人を巻き込んじまった。」
市原:「なんでそんな平然としていられるんだよ。下手したら死んでたかもしれないんだぞ・・。」


校長:「小石原由里。」
小石原:「はい。」
小石原は卒業証書を受け取る。

校長:「吉沢里奈。」
吉沢:「はい。」

時はさかのぼり・・三者面談。
担任:「優蘭女学院合格おめでとう。」
吉沢:「ほんとですか!や・・やったっ・・やったよ・・ママ。」
担任:「優蘭の経営学部って聞いたときは驚いたわよ?」
吉沢:「あはは・・私、母が経営しているランジェリーショップを継ごうと考えているんです。でもその前にしっかりと経営戦略を学ばないとと思いまして・・。」
担任:「素敵じゃない!その日がきたらぜひ先生もおもてなししてね。」
吉沢:「もちろんです!そのときは旦那さんと一緒に!!」
担任:「なんで知ってるの?!」
吉沢:「新婚ほやほやですもんねぇ~。」
担任:「大人をからかわないの。」


吉沢:「あの・・何か御用でしょうか?」
竜牙:「江口のこと知ってるよな?」
吉沢:「沙織の事ですか?」
竜牙:「そうそう!実はさっき・・。」
竜牙は事の経緯を吉沢に説明していく・・。
吉沢:「あーそれで・・。」
竜牙:「どうにも気になってさ。」
吉沢:「心配ないですよ。」
竜牙:「?」
吉沢:「あの子、剣崎くんに憧れているんです。」
竜牙:「俺に?!」
吉沢:「隣町にある剣道クラブのメンバーなんですよ、あの子。2学年に上がって間もない頃、剣崎くんが剣道部部長を倒した事で一時期、学年中で話題になってたじゃないですか。その時から沙織は剣崎くんに憧れを抱くようになったらしいんですよね。剣道部に入ったらいいのにって言ったんですけどかなり内気な子で・・今思えば憧れが強すぎて剣崎くんの側にいれなかったんだと思います。」


校長:「以上31名。3年2組・・。」

校長:「花音麗華。」
花音:「はい。」

時はさかのぼり・・三者面談。
担任:「実家の花屋を継ぐということで二言はないな?」
花音:「はい。」
担任:「うん、曇りのないい目だ。お母さん、この子はすごく気配りができる子です。そして事、生徒会業務でもその力を存分に引き出してくれました。我々も何度助けられたことか・・本当に感謝しております。」
祐実:「あ、頭を上げてください。この子は本当によく出来た子です。実はその、麗華は何でもそつなくこなしてしまう為、今まで他人への興味は皆無でした。言ってしまうと人が近寄りがたい性格をしていたのです。」
担任:「え・・。」
祐実:「でも私思うんです。この学院に入って生徒会に在籍してからというもの、なんだかんだいいながら楽しく皆と業務をこなしていたんだろうなぁと・・この子の愚痴を聞くたびに、それが嬉しくて嬉しくて。」
花音:「ちょっと!余計な事まで言わなくていいから。」
祐実:「まぁまぁ。麗華、それほどまでにあなたが得たものは凄く大きなものなのよ。人に寄り添い、誰かに気を遣うこと。それはこれから多くの人と接していく中で必要不可欠な能力スキルであり、難しいことなの。」


桜:「麗華ってさ、よく銀河くんと喧嘩してるよね。」
花音:「だからなんだ?」
桜:「喧嘩するほど仲がいいっていう・・ごぉとばぁがァァ・・っ!」
花音は桜の頬を引っ張る。
花音:「安心しろ、ただ単に仲が悪いだけだ。」
花音はメガネを光らせる。
桜:「い、いだいぃ・・いっがぁい・・いっがぁいはらひぃて・・。」
花音:「フン。」
パッ。
桜:「もうっ!口が裂けちゃったらどーすんのよ!」
花音:「余計な詮索をするからだ。」
桜:「え~だってぇ~幼馴染みなんでしょ~。」
花音:「私の事よりか、夏海と剣崎がどうなっているのか気にならないのか?」
桜:「・・・・。」
花音:「?」
桜:「もう、いいの。」
花音:「いいって?」
桜:「先輩の気持ちはもう・・。」
(!やばい・・涙が・・。)
花音:「優香?」
桜:「ちょ、ちょっとトイレ!」
タッタッタッ!
優香が部屋を出ていったのを確認して、花音はその場で頭を抱える。
花音:「無神経か私っ!あ~もう、後で優香に謝らないと。これだから色恋沙汰は面倒なんだ!」
(あの反応・・失恋の傷は思ってたよりも深そうだ、この旅行で少しでもリフレッシュさせてあげられればいいんだけど。)



校長:「銀河スペード。」
スペード:「はい。」

時はさかのぼり・・三者面談。
担任:「正直、光ヶ丘から東大受験をした学生は過去にいない。お前の功績はすごくでかいよ銀河。」
スペード:「ありがとうございます。」
担任:「しっかしたまげた・・東大医学部って・・全く、将来が楽しみだよ。」
スペード:「あはは・・恐縮です。」
担任:「医者を目指そうと思ったきっかけは何なんだ?」
スペード:「昔、大切な人が大怪我をして血だらけになったことがあるんです。俺はその人を背負って無我夢中で病院に駆け出しました。そいつは一命を取り止め、今は何事もなかったかのように日常を送ってます。けど俺は今でもその日の出来事を悔やんでいる。なにもできなかったって・・ずっと悔やんでます。あの日、俺に知識があれば・・応急処置ぐらいはできたんじゃないかって。」
担任:「すまん・・聞いてはいけないことを・・。」
スペード:「いえ。ですが、ある人に言われました。方向転換してもう一度踏み出せばいいじゃないかって。もう二度とあんな悔しい思いはしたくない、そして同じように悔しい思いをしている人たちをこの手で助けたい。それが俺が医学部を目指すことになったきっかけです。」
担任:「お前の背中が大きすぎて先生はかける言葉が見つからないよ。ただ、これだけは言える。光ヶ丘の教職員は皆口を揃えてお前のことを天才と評しているが俺はそうは思わない。お前は努力の天才だ。まだ受験は終わっていない、頑張れよ!」
スペード:「はい!!」

スペード:「・・今から1年ほど前の話だ。俺には花音麗華という幼馴染みがいたんだけどよ、ある日・・得体の知れない生物に花音が襲われた。」
ハンター:「モンスター・・のことかい?」
スペード:「ああ。花音とは犬猿の仲ってやつだけど、流石に見て見ぬフリはできなかったよ。とにかく、怪物から逃げる為に、花音を担いで俺は付近にある病院まで必死に走った。幸い、怪物のやつが追ってくる事もなく、俺はどうにか花音を病院まで送り届けることができたんだが・・自分の非力さを悔やみに悔やんだ。何もできなかったってな・・。」
ハンター:「・・・。」
スペード:「花音が退院する時によ、よりにもよって例のモンスターと出くわしてしまった。そんな時に助けてくれたのがロイヤルストレートフラッシュの連中だったわけだ。」
ハンター:「彼らが・・助けた?」
スペード:「当時、奴らのリーダーだったダイヤにジョーカー様が復活するまで俺たちの力になってくれないか?と誘いを受けた。助けてもらった恩もあったが、何よりこいつらについていけば強くなれるかもしれないという俺の目論みもあって、俺は・・かつて剣崎鳥牙に討たれ戦死したメンバーの一人、スペードとしてあいつらの仲間に加わったんだ。」
ハンター:「それがロイヤルストレートフラッシュに加入した経緯だったのか。けど、彼らもまたモンスターだ。そもそも一般人がモンスターに対抗できるわけがないだろう。」
スペード:「そりゃ承知の上だったぜ、けどよ・・花音の命を救ってもらったんだ。受けた恩はきちんと返したい、俺はそういうの大事にしてんだ。だから俺はロイヤルストレートフラッシュに加入してから毎日修行をした。戦死したスペードってやつの能力を特殊な手術を施して、体の中に取り入れたんだ。」
ハンター:「改造人間ってやつか。」
スペード:「おかげで俺は強くなった。けど・・負けっちまった、剣崎に。」
ハンター:「戦った君の目から見てどうだった?剣崎くんの実力は・・。」
スペード:「発想も機転もすげぇ、何より体の動きに無駄がなかった。けどよ、ジョーカー様には届かないと思う。俺との戦いで見せた力が今あいつが出せる精一杯、100パーセントだと俺は感じた。違うか?もしそうだとしたら早く止めに行った方がいい。下手したら死ぬぞ、あいつ。」
ハンター:「いや、ちょうどいい機会だ。勝手な判断で実力差のある敵の手中に入り込んだのは彼らだ、僕は手を出さない、負けを知ることも時には必要だからね。」
スペード:「なるほど、伝説のセイバーズは経験値が違うな。ま、俺が心配するってのもおかしな話だな、俺は化け物の復活に手を貸した共犯者ってやつだ。」
ハンター:「君は君の信念のもと、行動を起こした。確かに犯した罪は消えない、自覚していながら奴らに力を貸したならば罪を償うべきだと僕は思う。」
スペード:「・・言われなくても分かってるよ、ほとぼりが冷めたら警察に自主するつもりでいたさ。」
ハンター:「それをされるとモンスターの存在がマスコミから世間に広まって大騒動になる。だから!」
ハンターはスペードに手を伸ばす。
スペード:「?」
ハンター:「君の強い信念と恩義にセイバーズの素質を感じた。君が手に入れたその力を今度はモンスターセイバーズとして生かしてみないか?」
スペード:「俺がセイバーズに?ハハ・・冗談でも言っていいことと悪いことがあるだろ。」
ハンター:「冗談じゃないよ。・・僕は本気だ。」
スペード:「俺は剣崎を殺そうとしたんだ、そんな奴を人々を守るセイバーズにスカウトするなんて・・お前、いかれてるよ。」
ハンター:「罪を償うんじゃなかったかい?」
スペード:「!」
ハンター:「ありきたりな台詞だけど、未来ならまだ変えられる。そうだろ?」
スペード:「なるほどな、セイバーズとして俺の力を奮う場を与えるから、犯した罪を帳消しにするぐらいの人々を救えってことか?」
ハンター:「違うよ。」
スペード:「なにがちがうってんだ?」
ハンター:「もう一度人として人生をやり直してほしいんだ、君に。このままだと君はその責任感からずっと自分を責め続けるはずだ。ならいっそ、矛先をを自分にではなくモンスターに向けてほしいんだよ。君の人生の進むべき方向を変えてしまったモンスターと言う存在に。」
スペード:「けど・・俺は・・。」
ハンター:「怪物から幼馴染みを救い出すために一生懸命走ったって言ってただろ?一度、道を踏み間違えたからって足を止めるなよ、方向転換してもう一度踏み出せばいいじゃないか!・・・君は何の為に力を求めたんだ?」
スペード:「それは自分自身の為だ、逃げずに立ち向かう強さがほしかった・・。」
ハンター:「だから君は過去の自分を超えようと努力し、強くなったのか。だったら尚更だよ、今度は未来の自分と向き合ってみないか?」
スペード:「もう一度やり直すために・・か。」
スペードはハンターの手を取った・・!
スペード:「くそっ!そこまで言われてよ・・座り込んでいるわけにもいかなねぇじゃんか。」


校長:「以上33名。3年3組・・。」

校長:「橘一。」
橘:「はい。」

時はさかのぼり・・三者面談。
担任:「春山出版さんから内定だ。これで君も来年からサラリーマンになるわけだが・・。」
橘:「やったぁ!!ようやく面接地獄から解放される~。」
担任:「コラコラ!何を戯けた事を言っとるんだ、これからだぞ!」
橘:「いやぁすいません。ずっと気を張っていたから肩の力が抜けて。」
担任:「ずっと落ち続けていたからな、正直心配してたんだ。まぁ春山出版さんは幸い高卒でも昇給できるチャンスがあるいい会社だ。学歴ではなく業務成績と人柄で社員を評価する。ここからが戦いだぞ、橘。」
橘:「へいへい。」
担任:「どうしてこう素直になれんのだ。」
担任はとあるノートを橘に差し出す。
橘:「お、俺のノート・・。」
担任:「中身を拝見させてもらった。ノート一冊、あり余すことなく企業研究されている。」
橘:「ひ、人様のものを勝手に見るなよ!ま、まぁ忘れていった俺にも責任はあるけど。」
担任:「生徒は外見や成績、素行では測れん。このノートがまさにその証拠だ。断言しよう、この内定は間違いなくお前が努力で勝ち取ったものだ。そんなお前を誇りに思う。」
橘:「ったく・・くせぇんだよ。」
担任:「言葉遣い!」
橘:「へいへい。」
担任:「人の話は最後まで聞く!」
橘:「へいへい!」


橘:「やっぱりここにいた!」
夏海:「橘くん?!な、なんで・・。」
橘:「こんな夜遅くに1人で出歩いてたら危ないだろ。」
夏海:「そ、それは・・。」
橘:「体調、大丈夫?」
夏海:「ええ。ごめんなさい、先に帰ったりして。」
橘:「剣崎と・・付き合ってるって市原から聞いた。」
夏海:「・・。」
橘:「ショックだった。俺的には結構本気マジだったんだけど、木嶋さんがずっと剣崎のこと見てたの・・俺知ってたからさ、木嶋さんの恋が実ったのなら、潔く身を引くにもありかなって・・そう思ってた。」
夏海:「橘くん・・。」
橘:「そんな顔すんなよ、らしくない。」
夏海:「・・自信がないの、私は竜のことが好き。でも・・これから先遠距離になっても、竜の心を繋ぎとめておける自信がない。竜が他の女の子と仲良くしているところを見るだけで心がざわつくの。それに私はこの恋を実らせるために、友人を傷つけた・・幼馴染みを裏切った・・そして今度は、好きな人を私の気持ちで振り回している・・ホント最低だよね、出来る事なら1年前に戻りたい。」
橘:「戻る必要はないよ。」
夏海:「えっ・・?」
橘:「戻らなくていい。自分の感情を制御できない?そんな事言ったら俺なんて日常茶飯事なんだけど・・。」
夏海:「・・・。」
夏海が鋭い目つきで睨みつける。
橘:「待って!いつもの流れにもっていくのやめて!今、いいこと言おうとしてるから!えっと、俺ん中ではさ、人間関係って変化していくものだと勝手に解釈してるところがあって。ほら!良くも悪くも年齢が上がれば環境も変わるし、環境が変われば人間関係も変わっていく。だから何が言いたいかというと、う~ん何ってったら言いのかなぁ。」
ポン!
橘:「これだ!」
夏海:「?」
橘:「変化した環境に応じて自分が変わればいい!・・うん、難しいことは分かんねぇけど俺はそう思うよ。」
夏海:「あ・・・。」
橘:「俺は剣崎に恋をしていた木嶋さんしか知らないけど、キラキラしてたよ!木嶋さんが好きな人と結ばれたって聞いたとき、ショックだったけど心のどこかで祝福している自分もいた。だからさ、今抱いている感情と変化した関係に後悔しないでほしい。その姿に心を奪われた人間もいたんだから。」
夏海:「ばかっ・・うっうっ・・!」
橘:「えっ?!な、なんで泣くの?!!」
夏海:「ありがとっ・・橘くんっ・・!」
橘:「気にしないで・・さてと。」
夏海:「もう行くの?」
橘:「俺に出来るのはここまでだからさ、後はあいつに任せる。あ!あの時デートを邪魔した借り、これでチャラにしといて。」
夏海:「なにそれ~カッコつけちゃって。」
橘:「-うん、いい笑顔だ。」


校長:「以上30名。3年4組・・。」
校長:「佐々木類。」
佐々木:「はい。」
佐々木は卒業証書を受け取る。

校長:「吹石雫。」
雫:「はい。」

時はさかのぼり・・三者面談。
担任:「まずは滝川大学合格おめでとう。後は第一志望の子供養育専門学校ね。」
雫:「はい。滝大の保育科より学費が安く、部分分野でも細かい指導を受けられるので進学するなら後者の方に進学したいです。」
担任:「少子高齢化とはいえ、共働きが進む中保育士の需要は高まる一方だわ。吹石さん、あなたがその第一線で活躍してくれることを心から願っている。」
雫:「ありがとうございます。」
担任:「ただ、わかっているとは思うけど保育士って体力勝負で収入と仕事量が見合ってないのが現状よ。保育士を目指している生徒はこの学年にも複数いるからあえて辛口なことを言わせてもらうと、それ相応の覚悟は必要よ。モンスターペアレントによる精神的重圧プレッシャーも相当かかってくるだろうし。」
雫:「・・私も負けていられませんから。」
担任:「え?」
雫:「フフッ。」
(私もあんたに負けないぐらい努力して輝いてみせるよ、優香。)


雫:「な~に外見ながらたそがれてんのよ。」
桜:「私には何もないなぁと思ってさ。」
雫:「なんかすっごいナイーブになってるね。」
桜:「高校生になったら何か変わるのかなとか思ってたけど何も変わらなかったわ。バドミントン部入っても全然上達しなくて退部したし、先生の目を盗んでバイトしたらバイト先の先輩から告られるし、お断りしたら仕事きまずくなって私の方が結局辞ざる終えない形になっちゃったし、中学からの友達はバンドし始めたり、彼氏つくったりして付き合い悪くなるし・・高校デビューっていうの?なんか私だけ空回りしてる気がしてさぁ~こうして毎日淡々と過ごしていくのかなぁって思うと。」
雫:「華の女子高生がネガティブなことばっかりつぶやいてるんじゃないわよ。じっとしてても何もやってこないぞ。それにさ、あんたって興味あることにはのめり込むじゃん?それこそ人のプライベートな内容まで気になったら探りいれるっしょ?」
桜:「ご、ごめんなさい・・。」
雫:「いや責めてないって。あたしが言いたいのはさ今まで通り色んなことに首つっこんでみなって事よ。何かに夢中になってる人間ってのは一生懸命やってるもんだ。だからキラキラしてるように見えるのよ。幸い光ヶ丘には色んな事を学べる環境が整ってるし、あんたはお金に困ってないんだからやれる事って多いと思うわよ?」
桜:「雫せんせぇ~。」
雫:「まてまていつから私は先生になった、同い年だバカ。」
桜:「えへへ。あっ、私売店でジュース買ってくる。」
雫:「あたしはカフェオレで。」
桜:「なんで当たり前のようにパシろうとしてるのよ。」
雫:「あたしには今から優香のノート写す大作業が控えてるのよ。」
雫は桜の席に腰をかける。
桜:「ちゃんと授業受けなさいよ、っとに・・。」


校長:「以上28名。3年5組・・。」


154話/旅立ちの日に
  
校長:「江口沙織。」
江口:「はい。」

時はさかのぼり・・三者面談。
担任:「青藍学園大学志望で間違いないかな?」
江口:「はい。」
担任:「偏差値は決して高くないが武術で有名な大学だ・・まさかとは思うけど、剣道を?」
江口:「ええ、そのまさかです!」
担任:「本気かい?君の学力ならもっと偏差値の高い学校も充分狙えると思うんだけど。」
江口:「確かに就職と進学の大きな分かれ道であるこの時期の決定は将来を大きく左右します。ですが、今の私が出した答えは今は選択できない・・です。だから大学に進学して大好きな剣道により磨きをかけます。自分の道はきちんと考えて決断したいんです。」
担任:「第3の選択肢か・・ま、江口の人生だ。君の進みたい道を進むといいさ。」
江口:「ありがとうございます、先生!」


竜牙:「わ・・わざわざ家まで来なくても・・。」
江口:「ちゃんと・・お礼をしたかったんです。ごめんなさい、休みの日に。」
竜牙:「体はもう大丈夫なのか?」
江口:「まだ・・男の人への恐怖心が抜けきれなくて・・でも、怪我の方はだいぶ良くなりました。剣崎くんたちが助けに来てくれたおかげです。」
竜牙:「もういいって!気にすんな。」
江口:「そういうわけには・・。」
竜牙:「無事で何よりだよ。」
江口:「っ~ホント・・本当にっ・・ありがとうございました・・っ!」
江口は深々と頭を下げる。
竜牙:「顔を上げてくれよ、もうこの話は終わり!それよりさ、事が落ち着いたら聞こうと思っていたんだけど・・。」
江口:「?」
竜牙:「なんで俺の事を避けていたんだ?」
江口:「あ・・ごめんなさい!私・・その剣崎くんの事が嫌いとかそういうつもりで避けていたんじゃなくて・・!」
竜牙:「・・・。」
江口:「嬉しかったの。ずっと目で追うことぐらいしか出来なかった憧れの人に声をかけてもらえて。」
竜牙:「俺に?」
江口:「うん。この学院に入学して間もなく耳に入ってきた噂があって・・。」
竜牙:「あの時、俺を探していたのはお前だったのか。」
江口:「お、覚えてるの?」
竜牙:「ああ、あの後浅田先輩とあちこち探し回って大変だったんだぞ。今でも鮮明に記憶に残ってるよ。」
江口:「ご、ごめんなさい。」
竜牙:「まぁもう過ぎた話なんだけどさ、そーいや吉沢から聞いたぜ?剣道の切り替えしのコツを知りたがってたって。」
江口:「そうなの!お、教えてくれるの?」
竜牙:「お安い御用だよ、そんなに難しい動きはしないから今ここで教えてやるぜ。ま、江口に時間があれば・・の話だけど。」
江口:「全然大丈夫!!教えて!!」
竜牙:「グ、グイグイくるなって!」
江口:「あ・・私ったら・・つい・・。」
竜牙:「ははっ、いや気にすんな。」
江口:「は、恥ずかしい・・。」
竜牙:「恥ずかしがる必要はねぇよ、これも何かの縁だしこの一件を機に友達になろうぜ。」
江口:「フフッ・・木嶋さんが剣崎くんを好きになった理由がなんとなく分かった気がする。」
竜牙:「え?」
江口:「何でもないよ!」
翌日。
竜牙:「ふわぁ~寝不足だ。なんだかんだ遅くまであいつの練習に付き添ってたからなぁ。」
江口:「あ・・おはよう、剣崎くん!」
竜牙:「おはよう、なんか無駄に元気ハツラツとしてるな。」
江口:「えへへ・・唐突で悪いんだけど、今日の放課後剣道部に立ち寄ってもいい?」
竜牙:「ああ、別に構わないぜ。」
江口:「ありがと!」


校長:「木嶋夏海。」
夏海:「はい。」

時はさかのぼり・・一時入学手続き時。
担任:「いやぁ・・本当に久しぶりだね。木嶋さん。」
夏海:「あの、この度は私のわがままを聞いてくださって本当にありがとうございます。」
担任:「いや、君は本当にわが校を代表する生徒だからね。校長も言ってたんだ、様々な分野で輝かしい成績を残してくれた第十七期の3学年の生徒たち、その代表的な顔とも呼べる生徒が卒業式という節目の場にいないのも寂しいものだねって。」
夏海:「私は・・人に胸を張れるような模範的な生徒ではありません。」
担任:「これはまた随分と謙虚だね、NYむこうで何かあったのかい?」
夏海:「私はこの学院で常に学年首位を維持してきました。勿論、偏差値の高いこの学院でトップを維持しつづけるというのは一朝一夕でできるほど簡単なことではなく胸を張って誇れることに違いはありません。それだけの努力を積み重ねてきたからこそ成せたことです。ですが、私が見ていた世界は本当に小さな世界でした。アメリカにいって私の学んできた英語が通じるかと言われたら・・自信を持ってはい!とは言い切ることができないのが現状です。本場の英語は独特のイントネーションや発音の仕方があり、私は自分の実力不足を日々痛感しております。」
担任:「そうか・・広い世界を知ってしまったか。となると今後君はますます飛躍的な成長を見せるだろうなぁ。はっきり言って今の君の学力は学年主席である銀河くんを遥かに上回る。そして光ヶ丘の教職員の中にも君と肩を並べる学力を持っている人はいないと思う。正直君の欠点をあげなさいと言われても運動神経が人よりも劣っていることぐらいじゃないか?そんな君から本場で自分の未熟さを痛感していると言われたらもう我々教職員では手に負えない。親御さんの転勤が理由とはいえ、君はいい意味で自分の実力に見合った環境に腰を据えることができたのかもしれないね。」
担任は右手を差し出す。
担任:「生徒会長として光ヶ丘学院の生徒たちにそして我々教職員に夢を見せてくれてありがとう。今回の特例には3年間ひたむきに頑張ってくれた偉大な生徒に感謝と恩恵を少しでも返したいという理事長の意思が込められています。残り2か月程度だけど、我が校で残りの高校生活をめいいっぱい楽しんで悔いのない卒業式を迎えて下さいね。」
担任:「先生・・!っ・・私、光ヶ丘の生徒として生徒会長としてずっと頑張ってきてよかったです。」


・・青空病院内。
タッタッタ・・!
速水:「あ!木嶋さん・・。」
竜牙:「お前・・夏海を呼んだのかよ。」
速水:「とっさに連絡しないと!と思ってしまって・・。」
夏海:「竜、あなたこれっぽっちも理解できてないじゃない・・。」
竜牙:「こ、これは・・。」
小池:「何か誤解をしているようなら違うぞ木嶋?俺たちは襲われたんだ、あのダイヤとかいう男に。」
夏海:「!」
竜牙:「お前は・・無事だったんだな。」
夏海:「だからっ・・人の事より自分の心配しなさいよ。」
竜牙:「夏海、あいつは俺たちの事を調べ上げているようだ。ここで動かなかったら俺たちと関わっている人たちの身も危ない。」
夏海:「だからと言って、そんな状態で戦う気なの?」
竜牙:「大丈夫、もう一人で無茶するようなことはしない。」
夏海:「なら約束して・・絶対に死なないって。」
竜牙:「!」
夏海:「今、誓える?」
夏海は小指を竜の前に出す。


11年前・・。
夏海:「よいっしょ・・。」
林:「きみ、前回りもできないの?」
竜牙:「・・・。」
夏海:「そ、そんなんじゃないもん!き、今日は調子が悪いだけだもん!」
・・放課後。
ガタッ!
夏海:「痛っ!できない・・・なんで・・?」
竜牙:「じいちゃんが言ってた、怖がってちゃ何もできないんだよ、夏海ちゃん?」
夏海:「うるさいなぁ。じゃあ竜くんはできるの?」
竜牙:「うん、できるよ!」
ガシッ。
竜牙:「まず、鉄棒を掴んで・・。」
ビシッ。
竜牙:「おへその上に鉄棒がくるように体を浮き上がらせて・・。」
クルッ!
竜牙:「勢いをつけて足を上げる。」
夏海:「!」
竜牙:「ね、できたでしょ?」
夏海:「すご~い!・・私はそんな風にできないよ・・。」
竜牙:「じゃあなんで練習しているの?」
夏海:「・・・それは・・。」
竜牙:「本当に諦めてる子はこんなに遅い時間まで練習なんてしないよ~。」
夏海:「だって・・悔しいもん。」
竜牙:「じゃあ夏海ちゃんが練習している時に怪我しないよう、これからは僕が様子を見に来るね!」
夏海:「ほんと?」
竜牙:「ほら!」
竜牙は小指を竜の前に出す。
竜牙:「約束!指切りげんまんしよっ。」
数日後。
神谷:「夏海ちゃん、鉄棒できるようになったんだね!」
林:「・・先生にこそっと教えてもらったんじゃないの?」
夏海:「あ・・それは・・。」
夏海は竜牙の方を見る。
夏海:「竜くんが・・。」
竜牙:「夏海ちゃんは一人で練習していたよ!僕、たまたま見たんだ。」
黄河:「へぇ、やるね夏海ちゃん!」
夏海:「な、なんで・・。」
(竜くんが教えてくれたのに・・。)
竜牙:「し~。」
竜牙は夏海に向かって手招きをする。
夏海:「え・・。」
テクテク・・。
竜牙:「頑張ってたから内緒にしておいてあげるね!」
夏海:「・・!」

竜牙:「夏海・・お前・・。」
夏海:「今誓いなさいよ。これは私たちにしかわからない・・秘密の約束。」
竜牙:「・・ああ、俺はこんなところで死んだりしない!」
ギュッ!
夏海と竜牙は指切りを交わす。
速水:「やっぱり木嶋さんを連れてきて正解でした。」
小池:「フッ・・。」


校長:「剣崎竜牙。」
竜牙:「はい。」

時はさかのぼり・・三者面談。
担任:「さてと・・まずは審議の結果から。」
ゴクッ・・。
竜牙は息を呑む。
担任:「残念ながら推薦の枠は他の生徒に譲ることになってしまった。」
竜牙:「え・・。」
楓:「そんな・・。」
スッ。
担任は封筒を差し出す。
竜牙:「これは?」
担任:「開けてみてくれ。」
竜牙:「・・これ!」
担任:「おめでとう、ラ・ポワールゾ大学”から”の推薦だ。」
竜牙:「え、どういうことですか?!」
担任:「どうやら一月前の秋季大会、あの会場にはラ・ポワール教授が足を運んでいたらしいんだ。教授はあの日見た君の剣道の腕前に惚れ込んだらしく、わざわざ光ヶ丘に足を運んでくれてね。ぜひわが校に来てほしいとのお達しだ。」
楓:「す、スカウト?!」
竜牙:「待てよ、ラ・ポワール教授って・・あ!NYむこうで剣道を広めている有名な教授じゃないですか!・・そんなことって・・。」
楓:「凄いじゃない竜牙!」
担任:「今の君には願ってもない話だろ?どうだ、受けて見ないか?」
竜牙:「ぜ、ぜひ!!」
担任:「分かった。教授には俺の方から伝えておくよ、良かったな。」
楓は涙を拭きながら喜びを噛みしめる。
竜牙:「って母さん!先生の前で・・。」
楓:「だって・・だってぇ~ずっと気が気でなかったんだもの。おめでとう、竜牙!」
竜牙:「う、うん・・ってか泣き止めよぉ・・。」
担任:「長く教員をやってきたが外国の教授からの推薦を受けた生徒なんて見たことも聞いたこともないよ。それだけに大したアドバイスをしてやれないのが悔しいがこれだけは言える。この推薦は君が実力で掴みとった物だ。むこう4年間は慣れない私生活、環境に戸惑いつつも大変な日々が続くとは思うがその日々の中で積み上げてきたものはきっと君の財産になる。頑張れよ!」
竜牙:「ありがとうございますっ!」


市原:「あきらめるなぁぁぁっ!!」

竜牙:「!」
フォルテ:「何っ・・!」
竜牙:「勇太郎?!なんでここに・・。」
市原:「俺の!俺の知ってる剣崎竜牙は・・最後まで・・最後まで諦めねぇぞっ!!」
竜牙:「っ・・!」
市原:「俺さ、オーロラマウンテンで初めて戦ってるお前を見た時、かっけぇって思ったんだよ!」
竜牙:「!」
市原:「化け物を前にして、怯むことなく誰かを助ける為に剣を振り回しているお前は俺の目にはかっこよくしか映らなかったって言ってんだ!!」
竜牙の瞳から涙がこぼれ落ちる・・。
市原:「やるって決めたなら・・最後までやりぬけっ!それができる男だお前は!・・勝てよ、竜牙!!」
竜牙:「うっ・・ううっ・・。」
橘:「剣崎っ!」
竜牙:「橘・・。」
橘:「俺はっ・・例えお前が動けなくてもムチ撃ってでも戦わせるぞ!俺はずっと見てたんだ、木嶋さんが剣崎・・お前の事をずっと見ていたのを。だからっ・・自分の感情を押し殺して、彼女が笑顔になれるようにお前たちの幸せを影ながら応援しようって決めたんだ!!」
竜牙:「っ・・!」
橘:「こんなところでお前を死なせねぇ!絶対に認めねェ!!死にもの狂いで生き抜けぇぇっ!!彼女を幸せにできるのはただ一人!剣崎竜牙!!おめぇしか・・いねぇんだよっ!!!」
同級生たちの言葉が竜牙の心に突き刺さっていく・・。
竜牙:「たち・・ばな・・うっ・・ううっ・・。」
「頑張れ!」
「負けないで、剣崎くん!!」
「立ち上がってくれ!!」
「剣崎っ!!」
クラスメイト達の声援が響き渡る!
竜牙:「どうなってんだよ・・ほんと・・ううっ・・。」
石山:「ここは次元統合が進んでいたエリアだったんだろう、今ネガの世界と光ヶ丘学院が時空間の歪みが原因で混ざり合っているんだ。だから光ヶ丘学院にいる者たちにははっきり見えているはずだ、ネガの世界で命を賭して戦っている君の勇姿が。」
竜牙:「石山さん?!」
ハンター:「僕が連れてきたんだ。それにしても案の定手のひらを返してきたね、フォルテ。」
フォルテ:「ちっ・・雑魚どもがゾロゾロと・・。」
ハンター:「麒麟がデストロイヤの騒動でめちゃくちゃになった歪みを今、戻している最中だ。この状態は恐らく一時的なものだろう。けど、今の君には願ってもない声援だね・・ほら。」
竜牙が視線を向けると・・一人の少女が涙を拭い竜牙を指差していた。
竜牙:「優香・・。」
桜:「竜牙、世界を救った英雄ヒーローがそんな顔をしちゃ駄目だよ・・。」
竜牙:「っ・・ご、ごめ・・!」
桜は指を降ろす。
桜:「前に言ったよね?2年前、私の背中を先輩は押してくれましたよね、今度は私が先輩を後押しする番です!って・・。」
竜牙:「!」
桜:「もう散々背中を押したのにぃ・・これが最後だからね!」
竜牙:「最後って・・な、何を・・。」
桜:「すぅ~。」
桜は大きく息を吸い込み、肺を膨らまかせる。



桜:「いっけぇぇぇっ!!」



竜牙:「・・!!」
フォルテ:「な、なんてデカい声だ・・っ!」
「いけぇぇっ!」
「剣崎ぃぃっ!!」
「剣崎くん!!」
市原:「行け!竜牙ぁぁっ!!」
橘:「ぶちかませっ、剣崎ぃぃぃっ!!」
竜牙:「へへっ・・。」
竜牙は涙を拭い、ドラゴンソードを掴む。
フォルテ:「おま・・まだ戦う気か!」
竜牙:「みんな・・ありがとう。」
フォルテ:「小癪な・・一撃で終わらせてやるよ!!」
フォルテは両拳に黒いオーラを纏わせる!
竜牙:「・・・。」
竜牙はそっとドラゴンソードを鞘に納める。
フォルテ:「究極奥義・アルティメットブレイクLV5!!」
竜牙:「スゥ~。」
竜牙は剣を引き抜く!
シュッ!


        ズババッ!!
フォルテ:「・・・!」
(私が攻撃するよりも早く・・!!)
竜牙:「ドラゴンソード・・零式っ!!」
フォルテ:「ごほっ・・!ばかなっ・・!!剣舞眼を使わずにその状態で私の攻撃速度上回ったとでもいうのか?!」
竜牙:「桜優香は普通の女の子と ちと違げぇからな。」
フォルテ:「!」
ハンター:「そうかグラウンドのLED灯光器!!」
フォルテ:「なに・・?」
竜牙:「フォルテの動きを目で捉えることはできなくても影なら追えるって話だよ。桜は俺に話しかけるときにお前に気づかれないよう少しずつ立ち位置から動いていた。それはフォルテの向かいでLED灯光器のライトの位置を調整している花音の基準になる為だ。桜はLED灯光器の光がフォルテの影を作る的確な位置を花音に伝える為に危険を承知の上でみんなの前に出たんだ、俺への掛け声と共にライトを点灯させる為に。そう、俺の”目”になる為に!!」
フォルテ:「っ・・・!!」
桜:「ふふっ。」
(最高にかっこよかったよ、竜牙。)
フォルテ:「小娘の策に俺がやられたとでもいうのか・・!」
竜牙:「残念だったな、相手が俺一人だったら確実に俺はお前に負けていただろうぜ。けど皮肉なもんだな。お前は俺に屈したんじゃない。今まで兵器として扱っていた人の力に負けたんだからよ。」


校長:「桜優香。」
桜:「はい。」

時はさかのぼり・・三者面談。
担任:「関西商業大学合格おめでとう。よく頑張った。」
桜:「ふふーん、私だってやればできるんですよ。」
担任:「あの桜がねぇ~決め手は何だったの?」
桜:「ファイナンシャルプランナーになるって決めたことです。」

しばらく沈黙が続いた。

桜:「ちょっと!」
担任:「どうしたんだ桜?どこか頭でも打ったんじゃないのか?」
愛依:「困ったわ、勉強勉強って言いすぎたかしら・・。」
桜:「失礼ね!私は至って正常ですよ!!」
愛依:「先生、この子の言うふぁいな・・ってどういう職業なんでしょうか?」
担任:「えー私の聞き間違いでなければ金融機関・証券会社などで個人客の財産の状況、家族構成やライフプランを理解した上で、投資・貯蓄の計画や相続対策など、資産の運用と管理に関する助言をする職業ですね。」
愛依:「優、あなたはむしろ助言をされる立場の人間よ。手遅れになる前にこの足で病院に行きましょう。」
担任:「脳神経に影響を及ぼしているかもしれません、私も医師の診察を受けることを強くお勧めします。」
桜:「ちょっとそれどういう意味よ!」
担任:「一体どうしたって言うんだ、あの桜が・・先生は今にも泣きそうだぞ。」
桜:「それはこっちの台詞だっつうの!二人して何なの、ほんとに。」
愛依:「先生、開いた口が塞がらなくて困ってます。」
担任:「お気持ちを察します。まさか桜がそこまでを見据えて大学受験していたとはなぁ。てっきり就職したくなくて適当に事務職でも就こうとしているのかとばかり・・。」
桜:「待って!今のは聞き捨てならない、それじゃあまるで普段私が何も考えてない人だって言っているようなものじゃない!」
担任:「くっ・・否定できない。」
担任は拳を強く握りしめる。
桜:「否定してよ!ちょっと~ママからも何か言ってよ!」
愛依:「まぁ夜な夜な抱き枕を抱きしめてりゅうがぁ~とか言って「うわぁぁぁぁぁっ!!」」
担任:「・・思春期とは難しい時期ですね。」
桜:「く~っ、二人ともこのままで済むと思うなよぉ~!」
(今に見てなさいよ~のし上がっちゃるけん!)

桜:「私、駄目なの。本っ当に何しても上手くいかない、しょうもない女なんです。もう笑うしかないよねっ、あははっ!」
夏海:「さ、桜さん?それはち・・「なんで笑ってんだ?」」
桜:「え?」
夏海:「竜?」
竜牙:「自分で自分の事を馬鹿にするなよ!頑張って行動を起こした自分をなんで褒めてあげないんだ!」
桜:「っ・・!」
竜牙:「なぁ桜、俺は人生って戦いだと思ってる。どんなに上手くいかなくても明日は必ずやってくる。生まれてきた以上、毎日生きていく為に戦っていかないといけない。戦うことをやめっちまったら人として生きているとは言えないんじゃないかな。」
桜:「・・!」
竜牙は桜の背中に手を当てる。
竜牙:「七転び八起きだ。お前がどんな人生を歩んできたのかは知らねェけど、悔しいって思えるならこの失敗は無駄じゃないさ。俺は・・そう思ってる。」
竜牙はその場を立ち去る。
夏海:「ご、ごめんねなんか・・。」
桜:「う、うわぁぁぁああん!」
夏海:「ちょっ!お、落ち着いて!」
桜:「ぐやしぃっ、くやっしぃぃっ!!」
ギュッ!
桜:「うずくまっとー場合じゃなか・・。」
拳を握りしめ、桜はグシャグシャの顔を上げて髪を上にあげる。
桜:「たしも・・私もっ! ”先輩” みたいに這い上がらんば。」


校長:「以上31名。3年6組・・。」

校長:「黒木優斗。」
黒木:「はい。」
黒木は卒業証書を受け取る。

校長:「小池共士郎。」
小池:「はい。」

時はさかのぼり・・三者面談。
担任:「青銅大宮大学合格おめでとう。」
小池:「ありがとうございます。」
担任:「しかしまぁ時の流れとは早いものですね、君もどこか丸くなったように見受けられます。」
小池:「1年前、俺はある目的のために友人のもとを離れる道を選びました。すべてを断ち切り自分が強くなることで大切なモノを守れるようになるために。」
担任:「・・君の過去については職業柄、概ねの事情は知っていました。ですが、立場上教師は一生徒のみに肩入れするわけにはいかない。ゆえに赤の他人の私は簡単には踏み込むことができませんでした。」
小池:「先生・・。」

小池:「ハンターから聞いた、お前はモンスターから人々を守る為にセイバーズになったんだってな。男子高校生の分際で随分といきがってるんじゃねェか?己の立場をわきまえろよ、お前は弱い。」
竜牙:「!て、てめぇ・・。」
小池:「俺は俺自身のために、お前は守るべきものの為に・・どちらにせよ、俺もお前も強くならなければならないがこの差はでかい。」
竜牙:「じゃあなんでまだそいつナックルグローブをつけてる?それはセイバーズとしての力だ。」
小池:「こいつはもう俺の力だ、外すつもりはない。」
竜牙:「一応言っておくぞ。それは人を守るための力であって人を傷つけるものじゃねェ、それだけは約束しろ。」

小池は自身の手に視線を落とす。
小池:(あいつは自分の弱さを痛感しても尚、折れなかった。モンスターから人々を守る為に手にした剣を最後まで手放さず、己の信念を曲げることなく戦い抜いた。)

竜牙:「小池、最強だけを求めた強さが真の強さなのか?お前は強くなって、弱かったあの時の自分に討ち勝とうとしているだけなんじゃないのか?今のお前に必要なのは表面的な強さじゃなくて、心の強さなんじゃないのか?」


竜牙:「丁度いい機会だし、教えてやる。心の強さ、それは誰かを認める強さのことだ。俺も完璧じゃない、お前だってそうだろ?でも、人より優れている部分だってあるはずだ。他人のそーいう強い部分を心から認めることができる強さの事を俺は心の強さだと思っている。自分から心を開いて、他人を心から受け入れようとしなきゃ自分を受け入れてくれるわけがないだろ?人は自分という存在を他人に認めてもらう為に、己の地位を確立しとようとする傾向がある。だからイジメみたいなことが起きてしまうんだ。」

小池:(俺は・・弱いな。悔やんでも悔やみきれない・・自分の犯した罪は消えない。)
担任:「君を縛っていた鎖を外してくれた友人が誰なのかは存じませんが、その子のおかげで私の教え子が救われたのは違いありません。この学院に在籍していた時間は他の生徒に比べて短かったのかもしれませんが、自分の人生を変えるきっかけをくれた友人と出逢えたことにはきっと意味があると思います。」
小池:「意味・・。先生、あの頃の俺の目は本当に霞んでいたんですね。本当に見えてなかった。いや、見ようとしなかったんだ。自分を誰よりも案じてくれる親友を。」
担任:「小池くん。」
小池:「はい。」
視線を合わせない小池に担任はそっと声をかける。
担任:「とあるドラマの課長さんが言ってました。失敗しても当たり前、成功したら男前と。」
小池:「・・!」
担任:「過去はやり直すためにあるのではなく未来を変えるためにあるものだと私は考えています。いつまでも過去を見ていては前には進めません。」
小池の担任は優しく微笑む。
担任:「失敗を今後の糧にしてぜひ成功を収めて下さい。」
そして小池は涙を拭い、ゆっくりと顔を上げた。
小池:「・・はいっ!」

校長:「以上34名。3学年総員157名。」
教頭:「以上を持ちまして卒業証書授与式を終了致します。全員、起立!!」

教頭:「礼!」


 最終話/また会おうぜ!

白鳥:「せんぱぁぁぁい!」
竜牙:「おおおおおっ!!鼻水っ!おまっ・・拭け拭けぇ!!」
夏海:「ってか離れなさい~よっ!」
引っ付いた白鳥を引き離そうと憤慨するも白鳥は離れない。
速水:「あはは。こういう光景ももう見れなくなると思うと寂しくなりますね。」
白鳥:「そぉうですよぉ~わだしぃ寂しぐて寂しぐてぇ!」
桜:「も~百合花ちゃんが泣きじゃくるせいで私が抱き着くタイミングを見失っちゃったじゃない。」
夏海:「ちょっと!二人とも、私のこと忘れてない?」
白鳥:「忘れるわけないでしょ、私の生涯最大の”宿敵ライバル”なんですから。」
橘:「うぉぉぉ!木嶋さぁぁぁあん!!」
夏海:「あんたは最後までそれか!」
ビシッ!バシッ!ドカァッ!!
橘:「くぅ~やっぱりこれだ!」
市原:「お前ってやつはさぁ、ま、これも一つの思い出か。」
竜牙:「色々あったなぁ、この校舎ともおさらばか。」
母校を見て感傷に浸る竜牙の視界にある男が映る。
竜牙:「ん?」
小池:「ううっ・・うう・・っ。」
竜牙:「おまえ・・。」
小池は無言のままそっぽを向いた。
小池:「め、目にゴミが入っただけだ!」
普段涙を見せない男が流した涙にはつられてしまうものだ。
速水:「こ・・これはずるいです。」
市原:「最後は笑って門を後にしようって決めてたんだけどな・・くそっ。」
桜:「ううっ、私お別れしたくない・・。みんなと一緒にいたいよぉ・・。」
夏海:「せっかくまたこうしてみんなと会えたのにね・・あー駄目だ、涙が止まんない。」
速水:「僕は・・みなさんと一緒に高校生活を送れて楽しかったです。木嶋さんが転校してきたばかりの僕に校舎を案内してくれたから僕はこの学院で迷わずに溶け込むことができました。本当にありがとうございます!部長、僕のことを厄介者扱いせず剣道部に迎え入れてくれてありがとうございます!それから‥それ‥あれ‥まだ!まだです!伝えたいことが沢山あるのに声が‥。」
白鳥の手をそっと振りほどき、竜牙は速水を抱きしめた。
速水:「!」
竜牙:「・・ありがとう。」
速水:「っ・・ううっ!」
たった5文字のありふれた感謝の言葉が今、この瞬間だけ切実な思いを表に出していた。
幸せな時間だったからこそ、その終わりが来るのが怖い。毎日他愛もない会話で笑い合っていた彼らにとって数か月後に訪れる未来、それが今悲しみの要因となっているのだろう。各々は進むべき道に向けて歩み始める、離れ離れになってしまう未来は刻一刻と迫っている。分かっているからこそ、涙は溢れ出てしまう。
その様子を屋上から見上げる者がいた。
スペード:「いいのか?あそこに混ざらなくて。」
花音:「その言葉、そっくりそのままお返しするわよ。」
スペード:「トイレで散々泣いたんだ、もう眼鏡は拭きたくねぇぞ。」
花音:「馬鹿ね、何こんな時までかっこつけてんのよ。」
スペード:「ははっ、どーにも人前で弱い部分を見せるのは苦手みてぇだ。」
花音:「だからって私の前で泣くのはやめてくれる?眼鏡が反射して見えてないとでも思った?」
スペード:「お前は・・”特別”なんだよ。」
花音:「・・なにそれ。」
沈黙が続く・・。
スペード:「さてと、いつまでもここにいるわけにはいかねぇな。あいつらに別れの言葉ぐらいは言わねぇとな。」
花音:「まって。」
スペードは動きを止める。
花音:「これ。」
花音は四つ葉のクローバーを渡す。
スペード:「・・そうか。」
花音:「え・・・あ・・えと・・。」
スペード:「ちゃんと返事は受け取ったよ。」
花音:「ちが・・!」
スペード:「be mine私のものになってだろ?」
花音:「!」
スペード:「四つ葉のクローバーは一般的に幸運good luckの花言葉から幸せを想起する人が多いが、実はもう一つ花言葉がある。お前なぁ~知らないやつからしたら幸せになってねって言ってるのかと勘違いされるぞ。正直、遠回しに振られたのかと思って一瞬ヒヤっとした。」
花音は頬を真っ赤にして安堵する。
花音:「ごめん。でも、あんたなら気づいてくれるって・・思ったから。」
スペード:「っ・・かわいかよ・・くそっ。」
スペードはそっと左手を差し出す。
スペード:「行こうぜ、みんなが待ってる。」
花音:「!・・うん。」
花音はスペードの手を取り、階段を駆け下りていった。

数年後。
アメリカ・NY。
竜牙:「皆さま、本日はご多忙の中僕たちの結婚披露宴にお集まりいただきまして誠にありがとうございました。これまでお世話になった方々の前でようやく挙式を取り行えたことを大変うれしく思います。」

―俺と夏海は結婚式を挙げた。-

夏海:「ふぅ~緊張の糸が一気に取れたぁ。」
竜牙:「しかしまぁ英語に関してはここ数年で驚くべきスピードで上達したなぁ俺・・。まさか英語で挨拶できるようになるなんて。」
夏海:「それだけここに馴染んだってことでしょ。」
白鳥:「せんぱぁぁぁあい!」
竜牙:「うぉっ?!白鳥!!」
夏海:「あんたねぇ~式を挙げた新婦の前でそれをやる気?」
白鳥:「あらぁ、もしかして先輩の気持ちを繋ぎ止めておける自信がないんですかぁ?」
竜牙:「おいおい、白鳥・・ストップ、スト~ップっ!」
慌てる竜牙に対して
・・白鳥は真剣なまなざしで夏海を見つめていた。
それに対して夏海の口元が緩む。
夏海:「もう私はそんなことで動揺したりしないわ。」
竜牙:「・・・あれ?」
白鳥:「ふふっ、自分の気持ちに自信をなくして小さくなっていた頃とは違うんですね・・うん、それでこそ私の”憧れ”の女性です。」
夏海:「私たちはお互いに欠けてはいけない大切な存在らしいからね!」
竜牙:「ちょっ・・!おまっ、恥ずかしいから!ほんとに!」
桜:「夏海ー竜牙ーみんなで記念写真撮るよ~!」
夏海:「はーい。」
竜牙:「夏海。」
夏海:「うん?」
竜牙は小指を夏海の前に出す。
竜牙:「二人で一緒に幸せになろう。」
夏海:「・・も~。」
ギュッ!
夏海と竜牙は指切りを交わす。
夏海:「約束だよっ!」


happyend seeyou!!


原作作成期間
2008年7月~2012年7月    
平成20年7月~平成24年7月 
小説家になろう作成期間
2018年6月~2020年7月
平成30年6月~令和 2年7月
モンスターセイバーズ(完)



~後書き~
当初卒業シーズンである3月に投稿しようと思っていた作品の最終シリーズですが、物語の進行上ウイルス感染に触れる部分があるため「小説家になろう」サイト連載時は更新を延期しておりました。又、結婚式の小エピソードは「小説家になろう」サイトにて新たに付け加えた部分です。このような作品でも最後まで見て下さった方々に感謝の気持ちを込めて描きおろしエピソードを追加させていただきました。いやぁ改めて描き終えてみると感慨深いものがあります。それぞれに固有のエピソードがあり、振り返ってみてもなかなか楽しめる作品になっているんじゃないかと思います。ただ、戦闘描写に関してはやっぱり難しいですね。10年以上経った今でも小説独特の表現の仕方に苦戦しその難しさを痛感しております。この作品にはまだ続きがあり、続編に至る「モンスターセイバーズREVOLUTION」もまた同じ年の2012年に書き始めて2016年に完結しております。同じく10年後の2022年にまた「小説家になろう」並びに「アルファポリス」にて気持ちを新たに連載していければと思っております。それではまた続編にてお会いしましょう!
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