君と僕と先輩と後輩と部長とあの子と宇宙人とメイドとその他大勢の日常

ペケペケ

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先輩と牧師

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「汝敬虔なる信徒よ、罪を告白しなさい」

「おぉ牧師さま聞いて下さい、実は後輩のオヤツを勝手に食べてしまったのです、俺は謝ったのに後輩は許してくれません、というかいつも勝手に食う癖になんで俺は許されないのでしょうか?」

「少年、真面目な話なのだが世の中には理不尽と不条理が満ちている、私も先日似たような事があったのだが特に不満を漏らす事はない、それが何故だか分かるか?」

「いや、分からないです」

「それはそういうものだと許容しているからだ、最初からなかったと思えばないという事になるし、欲しいと思わなければ人の物を盗ろうとは思わぬものだ」

「牧師さん、それは悟り過ぎでしょ、生きてて楽しいですか? それ」

「最近は良く、生きていて良かったと神に感謝しているが?」

「……最近ですか、重くて胸焼けしそうなんで話題を変えましょうか」

「そうだな、それが良い」

「じゃあ聞きますけど、まだ宇宙人と一緒に住んでるんですか?」

「またその話か、実際に君は宇宙人を見ただろうに」

「あの子は牧師さんの隠し子でしょ? 本人がそう言ってましたし」

「……ハァ、あの子はまたよく分からない物に興味を惹かれたのか。前はスパイ、その前は探偵、そっち系統の物が好きなのかと思えば幼馴染とか王女などの設定を持ち出してくるのだから理解がしにくい」

「牧師さんの血縁だったらどれも鵜呑みにしちゃいそうですけどね」

「君は私の事を何だと思っているのかね?」

「牧師……いや、闇の深い牧師さんですね」

「その括りが良く分からないが私の事を牧師と認識しているならば良い」

「でも実際あのちびっ子が宇宙人って言われても信じられませんよ、どっからどう見ても只のちびっ子ですからね」

「……そうか、君はまだ側の方しか見れないのか」

「側?」

「少年も訓練すればあの子の中身を感じ取れると思うが、やってみるかね?」

「牧師さんの目付きがキラキラしてて異様に怖いので遠慮しておきます」

「残念だ、だがその選択で正解だろう、見えないのなら見えないままの方が良いことも多い」

「牧師さんって霊能者なんですか?」

「いや違うが……私がどういう者かを説明するには、そもそも霊とは何なのか? という話をしなくていけないのでやめておこう」

「その話題すごい気になるんですけど」

「という事は訓練を受けたいという事かな?」

「という事の意味が分からない! そんなに目をキラキラさせても怖いので訓練なんて受けませんよ!」

「そうか、残念だ」

「無表情の癖に牧師さんは表情豊かですね」

「古い知人にも同じ事を言われたな」

「……その、古い知人ってどんな人ですか?」

「ふむ、十八番という名の男なのだが可笑しな特技をいくつか持っている、変人だ」

「牧師さんが変人と言い切るって事は相当な変人なんですね、絶対に関わらないようにしよ」

「…………残念だ」

「何でそんな憐れむような目をするんですか!?」

「その十八番という男の特技の一つで、くしゃみで噂を特定するものがあるのだ、キミのさっきの言葉で間違いなく十八番はくしゃみをした筈だ」

「なんですか、その迷惑極まりない特技は、完全にSFですね。ネタにしよう」

「逞しいな少年、十八番に遭遇したら■■■■■■と言うと良い、きっと悪いようにはならないだろう」

「えっ、その発音しにくい擬音を覚えないといけないんですか?」

「出来れば」

「分かりました、覚えておきます」

「ああ、そうしてくれ。と、そろそろ時間だな」

「何か用事でも?」

「そろそろあの子が起きる時間だ。どうも深夜テレビにハマっているようでこの時間は昼寝をしているのだ」

「……本当に隠し子じゃないんですよね? 今の牧師さん父親みたいですよ?」


 牧師さんは薄い青色の眼を細めて、小さくため息を吐く。


「少年、事実は小説より奇なり、だ。私との関わりを自分の小説のネタにしたいのなら程よく頭を柔らかくしなさい」


 では、と言って牧師さんは奥の扉へと去っていく。


 相変わらず牧師さんは不思議な人だった。



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