言の葉の家へようこそ ~異世界の言葉がわかる転生令嬢、各国を巡る~

菖蒲月(あやめづき)

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第一章 幼少期編 ー芽吹くことば ー

16.控えめに言ってすごく可愛い♪

 さて、これでフラン従姉様がツンデレさんだと言うことは分かって貰えたと思うけど、以前のトラブルについてもお互いにスッキリしておかないとね!


「フランねえさまは、とってもやさしいから、ごじぶんがもっているちしきやけいけんから、ほかのひとにアドバイスやちゅういを、してあげているんだとおもいます。それが、キツイいいかたになってしまうので、あいてのかたにちゃんと、つたわっていないのではないでしょうか。これまでのトラブルについて、フランねえさまにりゆうや、げんいんをききましたか?」

 そういうと、伯父様と伯母様、エル従兄様はハッとした表情をして、フラン従姉様の顔を見た。


「そういえば、フランが失礼な発言をしてしまった事を謝罪せねばという気持ちが先走って、フランに理由や原因を聞くことは無かったな。その後もフランを叱って終わらせてしまっていた。・・・フラン、すまなかった。」

「ええ、私もよ・・・。勉強も作法も、人一倍頑張っていたフランが、他家の令嬢や令息に失礼な言動をするなんて信じられなくて、すぐに止めさせなくては!と叱るばかりで、ちゃんと理由を聞いてあげていなかったわ・・・。フラン、ごめんなさい。ダメなお母様だわ。」

「僕もそうです・・・。さっきだって、理由を聞かずにフランを叱ってしまった。僕は兄として、忙しい父上や母上よりも、フランと接する機会が多かったのに信じてあげられなかった・・・。フラン、ごめんよ。」

 伯父様、伯母様、エル従兄様の言葉を聞いたフラン従姉様の目がどんどん潤んできて、それを見られたくないかのように目を閉じた拍子に、堪えきれなかった涙が両方の目尻から静かに流れ落ちた。

 いつもアイヒベルク侯爵家の令嬢として凛とした態度を崩さず、泣いている姿を見るのは家族でも小さい頃以来となるためか、アイヒベルク侯爵家全員が動揺して、どうしたら良いのか分からなくなっているようだ。


 うん、見事に全員オロオロしてるね。


 きっと、真面目なフラン従姉様だから、何とかしようと頑張ったのだろうけど、淑女教育の中で培われた教養と、侯爵令嬢としてのプライドがそれを阻んだのだと思う。

 侯爵令嬢として完璧を目指すほど、周りから敬遠される存在となってしまうこの矛盾に、一番苦しんだのはフラン従姉様だろうからね。

 さて、じゃあフラン従姉様をちゃんと理解して貰うために、もう少しお互いにスッキリして貰いましょうか♪


「フランねえさま、ドレスのことで、トラブルになってしまったときは、どのようなじょうきょうだったのですか?」

 静かに目を開けたフラン従姉様は、頬を伝った涙をハンカチでサッと拭うと、ツンと澄ました表情に戻った。

 目元や耳の上の方が赤いので、恥ずかしがってるのは丸わかりですけどねー♪


「ある伯爵家で開かれた、10~14歳までの学園入学前の子息令嬢を対象にしたお茶会だったのだけど、14歳の侯爵令嬢がドレスコードに合わないドレスを着ていたのよ。その時のお茶会には公爵令嬢もいらっしゃったのだけど、11歳の大人しい性格の令嬢でしたから、会場内では一番年上で気の強い令嬢に、物申すのは難しいご様子だったの。他の方々は、身分的に侯爵令嬢よりも下だったり、年下の方ばかりだったから、なおさら何も言えなくて、お茶会の空気が沈んだものになっていたわ。」

 なるほど、確かに参加者の中でも最年長で、なおかつ気の強い令嬢に注意するのは、大人しい性格の令嬢や、身分的に下の令息令嬢なら難しいかもね。

 伯母様とお祖母様も、微妙な表情で染み染みと頷いているので、どの世代にもそう言った人は居るのかもしれない。


「そこで、その次に爵位が高かったのが私だったので、『そのドレスは成人した方が夜会用として着る物ですわね。あなたにも現在の状況にも合っていないし、貴族としての教養を疑われますわよ。家の迷惑にならないようにお気を付けになって。』と伝えたのだけど、怒って喚き散らして帰ってしまったのよ。主催家の伯爵令嬢や、公爵令嬢からはお礼を言われたけれど、私がお茶会を終えて帰ったときには、我が家に怒って帰った令嬢の家から抗議の手紙が届いていて、お父様やお母様に叱られてしまったの。」

 恐らく、怒って途中で帰った令嬢は、帰ってすぐにお茶会で侮辱されたと、アイヒベルク侯爵家に抗議の連絡を入れるように、ご両親に伝えたんだろうね。

 4歳も年下の令嬢に、正論で注意されて恥をかかされたと思っただろうしね。

 それを鵜呑みにして、同じ侯爵家とはいえ年下の令嬢に抗議する両親もどうかしていると思うけど・・・。

 自分の娘の格好について何も思わなかったのなら、この親にしてこの子ありって感じの家なんだろうね。


「そうだったの。確かにその状況では、言い方はともかく、あなたの行動はアイヒベルク侯爵家の娘として正しいものだわ。あなたはその令嬢の今後を心配して注意してあげたのでしょう?」

 お!伯母様もフラン従姉様の言いたいことが分かるようになって来たね♪


 フラン従姉様が言いたかったのは、『それは大人の女性が夜会で着るドレスですよね。自分の年齢や状況に合ったドレスコードを守ることは、貴族としての教養を試される部分でもあるから、ちゃんと教育されていないと外で示すことは家の恥になりますよ。今後、成人のお茶会や夜会に参加されるようになるのだから気をつけた方が良いですよ。』って事だと、伯母様がフラン従姉様に確認しながら、みんなに説明すると、みんながなるほど!という表情をしたので、やはりこういう事は女性の方が理解が早いね。

 フラン従姉様も理解して貰えて嬉しそうにしながらも、表情や態度に出さないようにしようと頑張っている感じが、また何とも可愛らしい♪

 皆様、これが「デレ」というものですわ!!可愛らしいでしょう♪と目線で伝えると、みなさん、高速でうんうんと頷いて理解を示してくれました。

 ちなみに、令息の話す内容が不愉快だと発言して場が白けてしまったというトラブルについては、ドレスの件とはまた別のお茶会での話らしい。


 そのお茶会に参加していた子爵令嬢の叔父様が1年前に亡くなっており、喪は明けているものの、暗めの色のドレスを纏っていて、まだお気持ちの整理が出来ていない様子が見られたのですって。

 亡くなった叔父様という方は、お医者様として辺境の村を回って無償に近い状態で治療していたが、ある村で流行病に罹ってしまい、辺境のため薬も手に入らずに故人となってしまったのだそう。

 とある伯爵令息がその事を話題にして、『折角貴族に生まれて、勉強して医者にまでなったのに、わざわざ辺境まで行って病気になって死ぬなんてバカだろ』と発言したのだそう。

 うん、そいつが大バカだね。


 フラン従姉様もそう思って、『素晴らしい人間性と志に感嘆し、その行いについて賞賛やお悔やみを述べるならまだしも、バカだと罵るなど人間性の低さが分かりますわね。ましてや、ご家族が悲しんでおられるのに、配慮も出来ない方は貴族として以前に、人として最低ですわ。大変不愉快なので、あなたとは話したくありません。』と痛烈に批判したら、格上の侯爵令嬢とはいえ、年下の令嬢に己の考えを否定されたされた事で、如何にも不機嫌ですと言わんばかりの態度を取ったらしい。

 その後も周囲に当たり散らしていたけど、周囲の令息令嬢からも冷めた目で見られていることに気付いたのか、途中でそそくさと帰って行ったのだとか。

 後は、ドレスの時と似たような流れで、途中で帰った伯爵令息の家から被害妄想全開の抗議の手紙が届き、伯父様と伯母様から叱られたという経緯だったみたい。


 アイヒベルク侯爵家の皆様は、聞いていた話と全く違う事実に唖然としている様子。

 伯父様達も一応、お茶会に参加していた他の令息や令嬢の親御さんに、お話を聞いて「不愉快だから話したくない」という内容の発言をした事は確認していたみたいだけど、なぜその言葉が発せられたのかという根本的な内容には届いていなかったんだね。

 申し訳なさそうな顔でフラン従姉様に謝っているのを横目で見ながら、身近に理解者が出来たし、今後は似たような事が起きても、大丈夫だろうとホッと息を吐いた。

 そこにお兄様達が寄ってきて、


「マリーナ。よくツンデレなんて知っていたね。確かに、フランはいつの頃からかツンツンとした態度や言動をする割には、後で落ち込んでいるような雰囲気を感じることがあったなぁって、今なら分かるけど、マリーナに説明して貰うまでは全然分からなかったよ。」

「俺も俺も!ツンツンして、嫌なことばかり言ってくるから、フランの事は苦手だったけど、素直じゃないだけだったんだな!」

 あ!やばい、ツンデレって言葉はきっとこの世界には無いよね。

 うーん、とりあえず誰かに聞いたけど、誰だったか覚えてないって事にしよう。


「ツンデレはねぇ、おねえさんにおしえてもらったのよ。いろんなひとにたくさんしつもんを、していたころだったから、どのひとだったかは、わすれちゃったけど・・・。ツンデレさんは、ふだんはツンツンしてるけど、たまにデレるのがかわいいのよってきいたから、フランねえさまのことだ!っておもったの♪」

 ふふん♪と、腰に手を当てて、どや顔で言うと、


「ちょッ!!!デレてなんか無いわよ!!!それに、ヴォルフ!素直じゃないだけって何よ!あなたが危なっかしいから、色々と注意してあげていただけよ!ツンデレなんかじゃないわ!」

 家族と話しながらも、こちらの話が聞こえていたのか、顔だけじゃなく耳まで真っ赤にして否定しているフラン従姉様は、控えめに言ってすごく可愛いです♪

 他のみんなも「はいはい」って感じで生暖かい目で見ているのが、より一層フラン従姉様の羞恥心を煽っているみたい(笑)


 恥ずかしそうにしつつも、どこか幸せそうなフラン従姉様を見ていると、少しずつツンデレへの理解が深まって、世の中の理解されずに悩んでいるツンデレさんが、救われるといいな~と思う今日この頃でした。

 さて、仲良くなったところでみんなで美味しい晩餐といきましょう♪
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