「神造生体兵器 ハーネイト」 二人の英雄王伝説

トッキー

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Code93 エレクトリールの正体 2

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「私は、小さい時から一人でした」

 彼女は幼い時から人が寄り付かず、常に孤独を味わっていた。その理由は、彼女が他の同族よりも尋常ではない霊的能力と放電能力を身に着けていたからである。
 近寄れば死ぬ。誰もがそう思い、彼女はいつも暗い表情をしていた。そんなとき、彼女に近寄ってきたのがDGの幹部員である一人の男であった。
 男は彼女の力を制御するために特殊なスーツを作り上げ、彼女にプレゼントした。そのおかげで少しづつエレクトリールは笑顔を取り戻した。そしてその男と仲良くなり、DGに入ることになったのであった。
 しかしそれも長くは続かず、男はDGの内部抗争に巻き込まれ彼女の目の前で命を落としたのであった。
 彼女は好きだったその男の遺志を継ぎ、研究のすべてとDGが引き起こそうとしている恐るべき計画の情報を知り、受け継いで彼が行おうとしていた計画阻止に向けて動き出すことにした。そして彼女は強くなるために貴族でありながら軍人の道に進み、DGの総督、ゴールドマンを抹殺するために大王様に近づき信頼を得ながら軍総司令官、そしてDGの執行官の地位まで上り詰めた。その中でリリエットやアルティナ、モルテリアという幹部たちと仲を深め、特にリリエットはその計画について賛同し、ともに力を合わせていた。
 しかし今から3年前にゴールドマンら数名の霊界人がDGから離れ、彼女は機会を逃した。その時に、不気味な黒い魔法使いのような人が同行していたのを彼女は見ていた。そして、大王様も実はDGと関わりがあり、また彼女の恩人でもあった。そこで体が弱いが千里眼の力がある大王様に力を貸してもらい、そこでゴールドマンのありかと、エレクトリールが追い求めていた人がそこにいると王は彼女にアドバイスした。
 そして大王様は、自身が旧派、つまり戦争屋の派閥に属しながらも裏切り、彼女の追い求めている男を強化し、霊界を含めたすべての王になってもらおうとするためDG側に引き渡すはずだった霊宝玉を彼女に託し、自らを囮にして彼女を逃がしたのであった。
 大王は彼女が4回も政略結婚の相手を感電死させたこと、それが類まれなる力によるものと理解し、また彼女を支えた男の死についても知っていた。そして自身の体が弱いながらも王の側近として長らく支え、導いてくれた彼女に恩を返すため大王は彼女らと共に裏切者を討伐する部隊と立ち向かった。
 結果として、大王様たちは宇宙警察や宇宙快賊の手により救助されDGの旧派は、白い男ことオーダインにより殲滅されたのであった。
 しかし彼女はもう故郷に足を踏み入れられなかった。軍司令官としての任務を放棄しただけでなく、星を危険にさらしたためである。そのため戻って来いと言われても、彼女は責任を取りそれを断る連絡を入れたのである。
 以上のことをエレクトリールは泣きながらもすべてハーネイトに打ち明けた。

「そうか……。もっと早くに、腰を据えて聞いてあげればよかったな」
「は、はい……」
「しかし、王様を導くか。キング、メーカー。それにDG内の派閥の問題と敵幹部がいつからこの星にいたか理解できた。それと、君の過去について」

 ハーネイトは先ほどの仕打ちのことを忘れ、聞いた話から何時頃から霊界人たちが魔法使いの洗脳を受けていたか推理していた。

「まさか貴族のお嬢さんだったとは。どこかそんな感じは、しなくもなかったけれど。驚いた。そして、さっきのあれは俺が耐えられるかどうかの試験か」
「ハーネイトさん。非礼をお詫びし、何なりと処罰を……」

 エレクトリールは土下座しながら彼に謝った。

「まあ、普通なら厳罰というか、極刑もあるだろうね。軍隊で言うならば、そういうのがあるのも在籍経験あるから分かる。機士国のときもあれだったし」

 その言葉に、エレクトリールは目をつむり黙っていた。相手を殺そうとしたのだから、逆に殺されても仕方がない。それでも、好きになった人ならばとその場から一歩も動かなかった。しかし次の彼の発言を聞き、顔をはっとさせ驚いた表情で彼を見つめていた。
 
「だが俺はそういうのはね。軍隊っていうほど規律があるわけじゃないし。だから誠意を見せてほしい。俺の傍にいろ。そして、王様になってほしいならしっかりと支えてくれ。もう、隠すこともない。そして1人になることもない。先ほどの件は情状酌量ってことで不問にしておくよ。だけど、他の人を殺すような真似をしたら、許さないかんね」

 ハーネイトは立ち上がり、土下座をしていた彼女に立ち上がるように命じた。

「ハーネイトさん、あなたは優しすぎます。そんなことでは、いつか……」
「そうね、それは彼女の言うとおりだわ」

 二人はその声は下方向を見た。するとそこにいたのはリリエットだった。二人が屋上に行ったのが気になり、こっそり陰から一部始終を見ていたのであった。

「朝っぱらから何やっているのよ。というか出発前に一体……。まあ、よかったわねエレクトリール。それとハーネイト、あまり甘やかすのは得策じゃなくてよ」
「別にそのような意図はない。彼女の力は破格だし、彼女も君と同じような力を持つっていうじゃないか。仲間でいてくれるならいいさ。俺も孤独は嫌だ、死ぬことは怖れではなく、一人であることに恐れを抱いた。寂しさという感情を知ったその時から」
「そうです、か。フッ、貴方たち似た者同士ね。まあ、今回のことは言わないでおくわ。だけど、一応私もハーネイトのこと狙っているからね」

 そういい、リリエットは先に屋上を後にした。実はリリエットもハーネイトのうわさを聞き、資産家であることに目をつけていた。そして彼の性格や振る舞いが気に入り秘かに目をつけていたのであった。彼女は見た目こそ10代の少女ながら年は30に入ろうとしていたため、少々焦っていた。という見方もできるが、彼女は純粋に彼のことが気がかりで、過去に会った一連の出来事に心を痛め、償いたいといった気持ちがあるというのが正しかった。

「戻ろうか。キングメーカーさん?」
「はい……。そうですね、たくさん食べて、作戦に備えないとですね」

 エレクトリールはいつも通りの笑顔になり、ハーネイトの腕を抱きしめながら彼と共に屋上を後にした。

「やはり電撃はつらいな。つつ、また、あのようなことが起きてほしく、ないな」

 ハーネイトは腕を抱きしめている、エレクトリールの体表に流れる電気に耐えながら、昔あった事件のことを思い出していた。
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