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Code98 DG内での派閥と影響を受けた幹部
しおりを挟む「おいおい、押されているではないか」
「力を貸しましょうか?」
あの紫色の空間を意識すれば悪魔たちの声が聞こえる。それに心の声で答えるハーネイト。その悪魔の名はアンドロルシアス、そしてアルストアレストという。
「力を貸してほしい。いけるか?」
「いいぜ、俺らをしっかりイメージしな」
「醜悪な怪物め、私の手で葬って差し上げましょう」
彼らにそういわれハーネイトは、二人の姿をしっかりとイメージする。するとハーネイトの腕が光だし、イジェネートが発動。瞬時に肉体が形成され両腕はアンドロルシアスの物に、足と背中はアルストアレストの足に変化する。さらに表面を霊量子でコーティングし、強度を飛躍的に向上させた。
「魂の魔装共鳴!(デビルアームズ)」
そう、ハーネイトは二つの悪魔の魂を体の部位ごとに割り当て、それぞれの力を効率よく引き出すことに成功した。
そして変身すると素早くハーネイトは上空からボノフを急襲する。アンドロルシアスは二振りの光の剣を持っており、それを互いに内側から切り払いボノフを吹き飛ばす。そしてアルストアレストの背中や足から魔力を放出し猛スピードで追撃し、しなやかに不規則に動く光剣を振り回し、ボノスを滅多切りにする。
「悪いが、容赦しない!」
「今です!魂の解撃(ソウル・フォース)ゼレィルメント・レイブラスト」
アルストアレストがそう叫ぶと、背中にある4枚の翼が展開し蝶のような美しい羽根に変化する。そして両翼から白く凝縮した光線が放たれる。それはボノスの体に直撃した。
「ぐおおおおお!ヌッハ、ウガガア!」
「なんて力だ。いきなり変身したと思えばボノフを一瞬で追い詰めやがった。それに霊量子もここまで扱えるとはな。おもしれえじゃねえか、あの男」
「これが、新しい、ハーネイトの力」
ボガーノードとリリエットは目の前に起きた光景に頭が若干追いついていなかったが、すぐに把握しハーネイトの恐ろしさを目で見た。そして彼はハーネイトと一戦交えたくてうずいていた。彼女から話を聞いて、この戦士こそが同じ力を持つものとして、上に立つべきだ。そう考えていたのであった。
「とどめを刺すか、あとは任せた!」
二人の悪魔の声は聞こえなくなった。その代わりに聞こえてきた声。それは恐ろしく不吉な声であり、この世全ての狂気を体現したかのような恐るべきものであった。
「聞こえるか」
「……聞こえますが」
「我が名は魔人第3位、閻月のヤマトだ。久方ぶりに目を覚ましてみれば面白いことが起きておるのう」
ハーネイトに語り掛けてきたのは、長い間眠りについていた魔人第3位「閻月のヤマト」であった。もとは人間だったが、魔界に転移させられ、そこで魔剣の修行をして帰ってきた歴戦の戦士だという。
「今宵は私の力を見せてやろう。100%の憑依、行くぞ」
「100%だ?今までのは全開じゃないのか?」
「ふん、そんなことも分からぬとはな。青二才が、ならばその身に刻んでやる」
「……!みんな、5秒時間を稼いでくれ。まだ奴は力が残っている」
ハーネイトは変身のためにわずかな時間を稼いでほしいとユミロ、シャックス、リリエット、ボガーノードに伝えた。
「うおおお!任せろ!」
「いいでしょう、後方支援は任せてください」
「分かったわよ。その代わりきっちりとどめさして!」
「なんで俺まで……。だがあの腐れ野郎の顔見なくていいなら、な!」
そう4人は言い、先にユミロとボガーノードが同時にボノフの足元に張り付き、ユミロはしっかりと足を抱きしめ、ボガーノードはボノフの足に槍を突き刺す。
「グヌオオオォォォ!」
ボノフはそれを振り払おうとするも、リリエットは霊量子の波に乗りながらボノフの体に駆け上り「桃色の刃撃(ロザード・スパーディード)」でボノフの両腕の根元を切り裂く。さらにシャックスのレインアローでボノフの頭上に幾つもの矢の雨を降らせ動きを封じた。
そして稼いでくれた時間を用いて、ハーネイトはイジェネートを活性化させて全身を金属で包み、閻月のヤマトの肉体をその身で顕現させた。
「ああ、いい感じだ。一撃で仕留めてやろう。魔を断つ破邪の剣、焔斬・爆炎轟葬!」
「見ているだけで寒気を感じるわね。みんな、射線上から引くのよ!」
リリエットは指示を出して全員がハーネイトの後ろに高速移動した。
そしてヤマトと100%の力で共鳴したハーネイトは、ヤマトの力により全身に黒色の鎧をまとい、先端だけが大きく反り曲がった刀を力いっぱいに叩き振るう。すると地面を破壊する溶岩の柱が幾つもボノフに向かい発生し、そのうちの数本がボノフの体に直撃し灼熱の業火に包みこんだ。
「アアアア!ガ、ハ、アアアァ」
その強烈な一撃を受け、ボノフは醜悪な怪物に変身したままその身を焦がされ、横たわったまま絶命したのであった。
「はあ、はあ、これが。魂の憑依共鳴。以前に使ったのと出力が桁違いだ。がっ、消耗は激しいなこれ」
「まだ、修行が足りんようだな。まあ良い、次までに慣れておけ。しかし、いいものだ、期待しておるぞ、若造」
そういうとハーネイトの変身が解除され、元の体に戻った。それと同時にヤマトの声も聞こえなくなっていた。
「すごい、な。それも力、なのか」
「そうだね、ユミロ」
「ひゅう、フューゲルから情報は聞いていたが、それ以上に強いなあんたは」
「な、あいつのこと、知っているのか」
ユミロはハーネイトの力がここまであるとは思わず、頼もしく感じていた。そしてボガーノードは目の前にいた男が以前フューゲルから話を聞いた以上に、強大な力を持っていたことに驚嘆していた。
「名は、なんという。緑髪の戦士よ」
「ハーネイト。ハーネイト・ルシルクルフ・レーヴァテインだ」
ハーネイトは、先ほどの戦闘の荒ぶりを冷静に収めつつ、静かに言い放った。そしてボガーノードに名前を名乗らせようとする。
「あなたの名前は?」
「俺か、俺の名はボガーノード。ボガーノード・ライナスと言うが、正式にはボガーノード・シュヴェルアイディック・イローデッド、だ。ボガーでいい」
「ボガーノードか。いつどこで、私のことを知った」
その問いかけにボガーノードはクククと少し笑いながらハーネイトの顔を見る。
「それは、あの海が一望できる辺境の街でだ。フューゲルから連絡を受けてな」
「まさか、お前がリンドブルグにあの機械兵を差し向けたのか」
「そういうことになるな」
そうボガーノードが言った瞬間ハーネイトが彼に詰め寄る。
「そのせいで私の休暇つぶれたじゃないかこの馬鹿!!!!!!」
「うおおおおお、いきなりなんだ!」
「ちょ、大きいわよ!」
ハーネイトは休暇を潰された恨みを込めてボガーノードの耳元で、大声でそう叫んだ。その大声は城の外まで聞こえ、伯爵たちもびっくりしていた。しかしその声の内容を聞いた伯爵も魔女たちも、くすくすと笑っていたという。
「がは、あんたに何の事情があるかわからんが、徴収官の命令は絶対でな。ある宇宙人の持つアイテムを回収する命令を受けていたのだ。部下であるフューゲルたちに回収命令を出していたが、ある男が全部兵を倒したと報告が来ていた。そのせいで俺は執行官から降格させられたんでな」
「はあ……。それは私だ」
「だろうな、報告通りだ。しかしこんなところでお目にかかるとは、しかし思ったより美丈夫だな、色男さん」
ボガーノードは頭をくらくらさせながらもハーネイトになぜリンドブルグを襲ったかを説明した。そうでもしないとまた大声で叫ばれそうだと警戒していた。
「べ、別にそんな、ことはない。しかしなぜ、ボガーノード。あの男と対立していた」
ハーネイトの問いかけに対しボガーノードは。がれきが散乱する城の廊下の床にゆっくりと座り、ハーネイトたちに幾つか説明をした。
幹部の中でも徴収官と言う役職の権限は執行官の次に絶対であり、何が何でも技術や兵器になるようなものを集めさせるように部下にひどい仕打ちをするものが多いこと。そしてかつて部下だったボノフも彼が降格すると以前よりも陰湿な嫌がらせをしてきたという。そしてボノフがエレクトリールや大王様が所属していた旧派、つまり古参である戦争屋の集団の中でも特に過激な「黒の男」というグループにいたことを説明した。
つまり、もともと仲が悪かった同士だったが、リンドブルグの一件でさらに悪化した結果がこれであったということであった。
「はあ、貴方たちも結構ややこしいのですね。しかしなぜその宇宙人を確保しろと命令が?」
「それはゴールドマンが言ってきた話だ。本部から霊宝玉を持った裏切者がこの星に来ていると。数年前に隕石に乗じてここに来た俺たちも驚いていた。俺たちの上官でもあり、テコリトル星におけるDGの総隊長でもあった、エレクトリールがな」
「だが、本部はエレクトリールがきた前後、いや。その前にすでに壊滅していたと彼女から聞いたが」
ハーネイトはホテルの屋上の会話の中で、エレクトリールが話したことを覚えていた。実はエレクトリールが負傷したのは裏切者の討伐部隊というよりは白い男による侵略であり、彼女は白い男と対峙したという。そして彼から聞いた話を聞き、戦争屋の派閥の本拠点がある星はすでに壊滅したと言い、投降するようにと言われたという。
そのため、ボガーノードたちの話とエレクトリールの話が妙に食い違うことに気づいたハーネイトは何か裏にあるのではないかと考えていた。
「なんだと?じゃあすでに戦争屋としてのDGは消滅していたのか」
「そこまでは聞いていなかったわ。そうなるとおかしいわねその命令」
「まさか、例の魔法使いが裏で何かしているのかもしれません」
「可能性がゼロじゃないってのが……」
ハーネイトはそういい、悩んだ顔をしていた。魔法使いの詳細が不明な以上、下手に出るとこちらが窮地に立たされる可能性もある。魔法使い同士の戦闘はかなり危険であり、いくら総合的に魔法戦において無類の強さを持つ彼でも用心せざるを得なかった。彼は属性魔法に関しては圧倒的な火力をもって放てるが、絡め手といえる補助魔法がやや苦手であった。その代わり魔眼でそれを代用できるが、消費が激しいためおいそれとは使用できない。アンジェルたちを裏から精神支配で操っていたあたり、用心すべき相手であると彼は考えていた。
だからこそ、やはり情報がまだ足りない。一刻も早く解析と情報収集を急がねば。彼の表情が若干曇る。
「だとしたら、残りの幹部たち、危ないな。シノにモルテリア、ウリュウにアルティナ、ヨハンが不気味なオーラに包まれていたのは俺も見ていた。ヴァンとエヴィラ、ブラッドバーンはまだどうにかなるかもしれんが」
「どうするのだ、ハーネイト」
「せめてその影響が薄い3人をこちらに引き込んで戦線を維持し、その間に他の人たちを俺たち魔法使いの魔法で洗脳解除なりなんなりするしかないぞ」
全く策がないわけではないとハーネイトは全員に説明したのだが、本人は自信のほどはそこまでなかった。そもそも精神系魔法を彼は使うことはほとんどなく、すべて魔眼の力で行ってきたためその点については弱いところがあった。その力で強制的に解除すればいいのかもしれないが、その余りある力を行使し続けた場合の影響を考慮すると、迂闊に使っていいものではないと彼は考えていたのであった。
「魔法使いか。ブラッドバーンが言っていたが、確かにあの黒づくめの不気味な女。あれは近寄りたくねえ」
「しかし魔法はこちらもよく分からない。霊量子でどうにかできるものなのかしら」
「試そうにも被検体がいない。大魔法の反転事象陣か止氷幻鏡なら洗脳を解除できる公算はある。その魔法使いが、果たしてこの星生まれかどうかで変わるけど」
そして大魔法の中にも、そういった状態異常を解消する魔法があることを伝えた。
「一応手立てはあるのね。モルテリアとアルティナが心配よ。彼女たちまだ若いもの、抵抗力がないのだったら、問題だわ」
「シノとゴールドマンも結構年を食っている。あまりそのような負担は体に答えかねない」
「なあ、シャックス。何か気にならないか?」
「ええ。影響を強く受けている人たちの、年齢層ですね」
シャックスとハーネイトは、影響を強く受けている年齢層が若者と中年以降に偏っていることに気づいた。そしてそこからハーネイトは、敵も支配系の魔法についてはそこまで熟練した腕前を持っていないと踏んだ。その根拠としては、一流の術者なら年齢や性別関係なく洗脳できるはずであるというものである。
「そうなるとますます早く魔法使いの居所を掴んで仕留めないと。しかしジュラルミンたちも危ないなそれだと。どう動くか」
「とにかく増援が来る前に撤退しましょう」
「そうだな」
ハーネイトたちはその場から動こうとしていたそのとき、壊れた天井から何かが降ってきた。そしてそれは、こちら側の方を凝視していた。
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