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第179話 エレクトリールとヴァルター&メッサー
しおりを挟む一方でエレクトリールは、1人で街中を駆け回りDGのメンバーがいないか血眼になって探していた。邪魔となる障害物を手元から発する電気で消し飛ばしながら前に進んでいたが、何か嫌な予感がしそれが表情に出ていた。
「全く、何でこんな薄気味悪いところにみんな……もう」
彼女は珍しくぶつくさ独り言を言いながら慎重に街の中央部に足を進めていたが、物陰からいきなり、けたたましい叫び声が飛んできて彼女ははびくっと体を震わせる。しかしすぐに取り直し、声の主に対し注意をするのであった。それは、知っている存在の声だったからであった。
「ウオオオオオオゥ!エレクトリールぅ!また会ったなあ! 」
「わわっ!ヴァルター!?少しは声量下げてくれない? 」
「すまんな、年寄りの世話もしていた影響が抜けんのだぁあ!ハハハハハ! 」
ヴァルターは高らかに大声で話し続け終始嬉しそうに彼女に接し、それに辟易するエレクトリールであった。彼が何故大声を出すのか、それは耳の遠い人にも声が伝わるようにという彼なりの考えにもある。
一見このヴァルターという男は傲慢でうるさい、言わば近寄りがたい人に見えるが実直かつ気配りの利く男でもある。ただやかましいことに変わりはない上見た目が結構奇抜なため誤解を受けやすい人であると彼女は分析していた。
「他の皆さんは、全員無事ですか? 」
「うむ、特にはない。しかし、今の貴様は晴れた表情をしておるなぁ」
「そう、ですか?私、星を捨ててきたのですよ……」
ヴァルターの言葉に彼女は後ろめたい気持ちから声が低くなり、不安な面持ちで彼の顔を見た。
「悔やんでいても仕方ないだろぅ、新たな生活とやらをもっと楽しめ貴族の娘よ」
「知っていたのですね、そこまで」
「割りと最近だがな。最初会ったときは、正直憎しみしかなかったがよ」
ヴァルターはエレクトリールが貴族出身であることをこの星に来てから知り、人伝に聞いた話から彼女もまた苦悩を抱えていたのだなと思い見方を変えたのであった。
「俺の住む星を、国を壊したあの武器商人どもと手を組むお前らを、いつ殺そうかと思っていたがな……」
ただ彼も未だに昔のことに関してはすべて割りきれてはいないようであった。
そう、DGさえいなければ、孤児院をメッサーと経営し多くの子供たちを世話していた生活は変わらなかった。彼のすべてを、DGは奪ったのであった。
施設も、土地も、自身の両腕、そして愛する子供たちを失った彼はそれでも前に進もうと気丈に振る舞う。それが今の性格を形作ったと言える。
「恨まれても仕方ありません。テコリトル星もまた、DGがあって豊かな生活がまあまあできるようになったのは事実ですから」
エレクトリール自身も、長年蜜月関係にあったDGの悪評は知っていたものの、それでも星を維持するために関係を維持していたため恨まれて当然だと言うがヴァルターの言葉を聞いて彼女は驚いた。
「だがな、真の敵が分かった。貴様も踊らされていたにすぎんということだ」
「それは否定できませんが、彼のことは今でも忘れられません」
エレクトリールは、自身を助けてくれた男の話をし、彼はそのような邪念をもたずに、私に接して力を貸してくれていたといまでも信じていることをヴァルターに話した。
「あの男か、あいつは……」
「一人ぼっちだった私に声をかけてくれたあの人が目指そうとした理想、私は追いかけ続けます」
「というか、ある意味その願いとやらは叶っていないかぁ? 」
「そう、ですかね」
ヴァルターは今のエレクトリールが自身の夢を叶えているのではないかと指摘するもそのとき、部下のメッサーが腕に缶詰などが入った袋を抱えながら戻ってきたのであった。
「やっと話は終わったか」
「メッサーか、盗み聞きとはあれだなぁ!」
「違うぞ。にしてもあのエレクトリールをここまで変えるやつが他にいたとは」
「今度こそは、あんな後悔しないようにする。絶対に……!あの人の傍で私は」
メッサーは少し前見たハーネイトの顔や服装を思い出しながら、あの冷血で恐ろしい顔をしていた彼女をこうまで年相応の少女の顔にまで戻した彼の力を認めていた。
少なくとも自身らはこの前の一件で共闘したため、ハーネイトの仲間に迎え入れてくれそうだと思いながら、良き仲間に巡り会えたことを幸運に思っていたのであった。
「ハーネイトさんもこの前の一件で二人の実力は評価しています。加入に関して特に問題はないと思いますが」
「ハハハ、お主もうまく取り入ったな。まあ俺もだが、話がうまくつくのは助かるぞ。あやつはおもしろいな」
「ヴァルター、そこそこにしとけよ。まあ、これからはあの男のもとで働くわけだ、頼むぞエレクトリール。俺たちを翻弄し続けてきた奴を、倒そう!そうすれば平和を手に入れられる」
こうして3人は、雑談を交えながら指定場所に向かうため荒れ果てた街の中を歩き始めたのであった。
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