「神造生体兵器 ハーネイト」 二人の英雄王伝説

トッキー

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第30話 迷霧の森での戦い

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「どうするつもりだ?」

「ハーネイトさんが戦いやすいように、あのカラクリの腕を落とす。エレクトリール、この砲台に電気を流し込めるか? レールガンにしたいんだ。兄貴の作った設計なら、エレクトリールの電撃にも耐えうるはず。頼む!」

「分かりました。やってみます」

 エレクトリールは掌から電気を出し、電圧を調整しつつ銃身に触れることでアルティメッターに帯電させる。

「帯電完了、リシェルさんいつでもいけます」

「分かった。目標捕捉」

 リシェルが銃口をカラクリに向ける。絶対に外せない、その意思がリシェルの手の震えを抑えている。

 その頃、ハーネイトはカラクリを町の外におびき寄せることには成功していた。しかし予想よりも富岳王の動きが遅く、少し焦っていた。

「どうにか誘き寄せたが、まだ距離を稼がねばならない。しかし遅い。図体がでかい分仕方ないが、早くけりをつけたいところだ」

 更にハーネイトは視界が極端に悪くなるほど濃い霧が満ちる森の方へ進み、存在を分からせるように距離を保ちつつ、街から引き離していく。

 そして彼が迷霧の森に入ろうとしていた時、リシェルらは有効射程圏内ギリギリまで待っていた。

「そろそろ十分か――!」

 深呼吸してから一つ間を開け、リシェルは銃の引き金を引く。それと同時に電撃を帯びた大型のライフル弾が超高速で銃口から放たれた。

 その弾丸は空気を激しく切り裂きながら目標へ飛翔し、見事カラクリの肩関節に命中、爆音と煙が上がり、爆発し巨大な腕が地面を揺るがしながら轟音を立てつつ脱落した。

「これはリシェルの支援砲撃か。腕が外れて軽くなった分、富岳王の進行スピードが若干上がった。後少しだ」

 ハーネイトは更に進み、刀を体の正面に構える。片腕を失いながらも進行を止めないカラクリ兵器「富岳王」はハーネイトを再度捕らえ、残った片方の腕でハーネイトを掴み握りつぶそうと凪ぎ払う構えを見せた。

 そのとき、街の方からまた閃光が走り、霧を切り裂いてカラクリの残っている腕を撃ち抜き爆発させ、一撃で使用不可にした。

「本当に、リシェルは末恐ろしい弟子だ。さあ、こちらも行こう。天の光 変わるその面影 汝を縛るためその形容は自在に変わる 無数の光よ貫きとめたまえ!大魔法88の号・光縛魂柱(こうばくこんちゅう)」

 今こそが発動する時だと、彼は高く飛び上がり詠唱を終え術を発動させる。すると富岳王の胴体や足から光の柱が無数に生え、その巨体の動きを拘束する。

「んで、これはおまけだ。創金の理よ……! 天鎖縛(てんさばく)」

 さらに拘束を確実にするため、ハーネイトは地面から無数の鎖を創金術で生み出し富岳王の体に巻き付けた。

「今だ!」

 ハーネイトは再度飛翔し、カラクリの頭部に向かって掌から、創金術を用いて手から白銀の細剣を生成し、乱れ突きから乱れ切りを連続で繰り出すことで頭部の装甲を破壊し、内部構造をむき出しにした。

 さらに細剣を消して藍染叢雲に素早く持ち替えて、弧月流の上弦・下弦斬りでさらに富岳王を切りつけ怯ませた。その隙を突き鮮やかな手口で魔法で中にあるブラックボックスを取りだし回収する。

「回収完了、後は仕上げだ」

 回収後、ハーネイトは富岳王に直接触れ、目を閉じ思念する。するとふっと富岳王の姿がそこから消滅した。巨大なものを彼自身の能力で格納する際にはどうしても隙が生まれる。それを無くすために彼は拘束系の技を多用して問題を解決したのであった。

「終わったか。しかしリシェルたちはいい腕してるな。頼もしい仲間を持って、私は嬉しい」

 戦闘が終わり、一段落したハーネイトは、仲間の力を心の中で評価していた。この環境下でよく一撃をあの兵器に当てたなと感心し、またそれが彼一人の力でないことも見抜いていた。彼らのような能力は自身では再現しようにも限りがある。だからこそ、自身にまだない力を持つ存在はとてもありがたかったのであった。

「しかし、データの回収には成功したが、どう帰るか……一応、あの2人の待ち合わせ場所もこのあたりにしていたが、ふう」

 ハーネイトは苦笑いしながら頭をかいた。彼は一見冷静かつ、理知的判断をする人間に見えるが、たまに無謀な突撃や作戦を行うこともある。若さと自身の能力を信じているが故の行動であるが、周りの人間から見れば、ひやひやさせられるものがある。
 
 ハーネイトはこの後どうするか迷っていた。その時、彼の背後から突然光の矢が数本飛んできたのであった。それに気づくのが少し遅れたハーネイトはかわすも、そのうちの一本が腕をかすめ傷を負った。

「な、どこから飛んできた。くっ、……ただの矢じゃない。魔力、いやそれ以外の何かか」

「この私の弓をよけるとはやりますね、そこのお方」

「……誰だ! 出て来い!」

 ハーネイトの呼びかけに、濃い霧の中から人影が徐々に浮かび上がってきた。

「フフフ、私はシャックス。シャックス・ファイオイネン・ヴァリエットです。気持ちよく寝ていましたのに、叩き起こされて少し気分がよくないですね」

「一体どこで寝ていたというのだ、ここで戦ったのがいけなかったのか?」

「いいえ、あのでかい機械の中で寝ていたのですよ。しかしボールズさんは失敗したようですね。今頃あの国を攻め落とすはずでしたが」

「そういうことは、貴様もDGと関係があるようだが、どうなのだ?」

 その問いかけに対し、細い人影は明確に姿を現しながら質問を返した。

「そう、ですよ。私はDGが執行官の一人、シャックスと申します。以後お見知りおきを……! ま、まさかっ」

 ハーネイトの目の前に来た男は、顔の右半分を長い髪で隠し、端正で中性的な、細めの顔をしていた。目もうっすらと開いているがまるで寝ているように見える。手には巨大な深紅の、三日月のようなブーメランを手にしていた。服装も美しく、白を基調にしつつ所々模様が入ったズボンとコートを纏い、耳や首には落ち着いた雰囲気の装飾品を身に着けていた。

 しかし、彼はハーネイトの体を見た瞬間ひどく狼狽し後ずさる。

「敵の、執行官。ということはいきなり大物が現れたか」

「ほう、私たちのことについて何か知っているようですね。しかし、ええ……」

「だとしたら、どうする?それと私に何か?」

 2人は暗くなっていく霧の中でしばらく間合いを取りながらにらみ合っていた。ユミロよりも上の位の敵との遭遇。そして未知の力。ハーネイトは今まで以上に神経を研ぎ澄ませていた。

 その頃八紋堀らは、破壊された施設の調査や騒ぎを聞いて駆け付けた野次馬たちの管理をしていた。

「しかしハーネイトさん遅いですね。あれから数時間経っても戻らないとは」

「彼が止めを指したのは確認しましたが、その後霧が更に濃くなり見失ってしまいました」

「これでは彼の居所がわからんな」

「それならば俺に任せてくれ」

 八紋堀らの背後から声がし、全員振り返る。するとそこにはダグニスが立っていた。彼女の気配のなさに彼らは驚き、思わず一瞬身構えたのであった。

「ダグニスさん!お久しぶりです」

「元気にしていたか、エレクトリール。はっはっは!元気そうだね!」

「はい、おかげさまで。アリスさんも元気ですか?」

「お、おう」

 ダグニスは、エレクトリールの耳元でこういう。

「アリスってあまり呼ばないでくれ、恥ずかしいだろ?」

「わ、わかりました」

「だ、誰だ?」

「何者だ、貴様は」

 エレクトリールはともかく、リシェルと八紋堀は目の前の少女が一体何者なのか分からず、誰なのかと尋ねた。

「俺はハーネイト様のファンクラブ会長のダグニス・ルーウェン・アリスだ。エレクトリールは俺のことわかるよな?」

 ダグニスはにこやかな表情でエレクトリールに確認をする。それに対して彼女も笑顔でそう答えた。

「はい、リンドブルグではお世話になりました。ダグニスさんはハーネイトさんの支援者です。私もお世話になりました」

「ファンクラブだと? なにそれ入りたいな!」

「しかも本人が認めた公式の会長とはな。って、その腕章はバイザーカーニアの物ではないか。しかし此所は子供の来る場所じゃないぞ」

 事情をよく知らず、ファンクラブの存在も把握していなかったリシェルと八紋堀はやや混乱している。しかし八紋掘は彼女の身に付けていた装飾品から魔法使いの組織の一員であることをすぐに見抜いた。

 それは彼も限定的ながら魔法を行使できるからであり、ハーネイトから教わった際にその組織についての話を聞いていたからである。

「俺はハーネイトの兄貴に新しい情報を伝えに来たんだが、ハーネイトの兄貴は?」

「それがあの森林の中に入ったまま戻らないんです」

 エレクトリールは、迷霧の森の方角を指さす。 

「あの森に? 兄貴何やってんだよ。迷霧の森に自ら入るとかどうしたんだよ。あ、たまにハーネイトの兄貴って妙なことするんだよな。はあ、もう!」

「ハーネイトは、暴走したカラクリを止めるために自ら囮になったのだ」

 八紋堀がダグニスにそう説明をした。それを聞いて不安がるも彼女はすぐに冷静になった。

「そ、そうなのね。もう、置いていかないでよハーネイトの兄貴。でもじゃあ遠くにはいないんだね。これでわかるかな」

 ダグニスは鞄からレーダーのようなアイテムを取り出し画面を確認する。実はハーネイトがボルナレロから試作品のGISシステムを受け取った後、ダグニスに預けていた。いざという時はそれを使えと言われ、今がその時だと彼女は感じハーネイトの居場所を探すことにした。

 その少し前、日之国の外れにある森林の中に一人の男がいた。異様に目立つ銀色のコートと黄金の装飾品を身に着けた、銀色の長髪の青年が、大樹の枝の上から、町を見下ろしていた。

 「ふん、ホールズもここまでか。しかしデータは収集できた。やはりデモライズカードの威力は目を見張るものがある。そして、あの男。あいつは……!それとシャックス様はいずこへ。あの人放浪癖があるから見張っとけと言われたが。ぐぬぬ」

 彼の名はハイディーン・スヴァトベイレン・ローランギルスという。彼はDGの上級幹部であるが宇宙人ではなく、機士国人である。

 彼は機士国を混乱と恐怖に陥れたクーデターに一応関わっているとされる。しかし裏でジュラルミンを操っている謎の魔法使いとは相性が悪く独自に別の研究を行っていた。

「ハーネイト、また貴様は俺の前に立ちはだかるのか。いいだろう、我が技術を認めてもらうまで俺は引かん」

 ハイディーンはホールズからの報告を聞き、忙しい身でありながらここまで来たのだが、作戦の失敗を目で確かめることとなった。そしてハーネイトを見て憎悪をこみあげていた。彼とハーネイトには何らかの因縁があるようだ。

 それから彼は実験の結果を見てある程度納得していた。そして自身の科学力について満足していた。

「とにかく、カードの量産体制を急がせばならんな。急いで戻るか。なに、どうせこの国もすぐ堕ちるだろう。なんてな、演技はめんどくさいな。やれやれ、DGは本当に害虫でしかない。上層部はもはや人間じゃないし、まあ利用するだけ利用して、あとはぶっ潰すかね。ボルナレロの奴はハーネイトに取り入ったというらしいが、なぜ俺には声を……」

 ハイディーンはハーネイトに以前声をかけられなかったことを根に思いつつ新緑の木々が茂る森の中に行方をくらませて行った。彼がハーネイトに抱く心境はとても複雑であり、DGの内部事情と本来の目的を知った彼はこの先どう動くか迷っていた。

 そんな彼を更に監視する者もいた。それはあのフューゲルであった。

「明らかに、あの紅いマントのような翼から龍の力を感じる。なのに、気づかないと言うことは」

 ハーネイトたちの戦いも見ていたが、まだ全力の1万分の1も出せていない彼を見て、いら立ちを隠せずにいた。そして、悪魔は空高く羽ばたくと迷霧の森に入っていったのであった。
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