「神造生体兵器 ハーネイト」

トッキー

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第六話 魔物化と富岳王、そして迷霧の森

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ハーネイト遊撃隊6

ハーネイトは夜之一から依頼を受けた。数人が失踪している事件を追い求めるうちに、敵のアジトを見つけて強襲すると其処には…。
 敵幹部ホールズの企みとは、対城カラクリとは、その謎に迫る。

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部屋に突撃した二人は、目の前の光景に驚く。何名もの人が、古くなったり壊れたりしたカラクリを修理している。金属をたたいたり削ったり、火花の飛び散る音が辺り一面に響いていた。しかし、その作業を行っている人の表情はどこか疲れている。彼らの侵入にも全く気付いていない。そして、八頭の葉組の幹部数人が、こちらの存在に気づく。

 「誰だ貴様らは、こいつを見たからには返すわけにはいかねえ。」
 「貴様らは誰だ。ここは立ち入り禁止だが、看板が見えなかったか?」

  部屋の奥から、ぼさっとした茶髪の軍服姿の男がこちらに歩いてくる。右手にはマシンガンを持ち、煙草を口にくわえながら、睨み付けてきている。この男はDGの下級幹部の一人、ホールズ・マクマインという。この星の人間ではなく組織の中でも冷静かつ凶暴な、実力のある人材として名を馳せている。ホールズは、ジュラルミン閣下を陰から操っているDGの大幹部、つまり例の魔法使いから依頼で、日之国の調査と技術の回収を行っていたのだ。独自の技術をできるだけ盗んでデータを回収する任務の中で、日之国の反政府組織と出会い、互いの技術の交換を持ちかけ手下にしていたのだ。

 「特にそうとは外には書かれてなかったぜ。さあ、ここで何を企んでいる?」
 「いいだろう、冥土の土産に教えてやんよ。このカラクリってので城を壊滅させ、俺がこの国を乗っ取るのさ。」

  ホールズが後ろを向き指をさす。その方向にはとてつもなく大きな金属の塊、いや巨大な兵器らしきものが存在している。建物内が暗くはっきりとは見えないが、全長は15m近くにも達する、大型の機械のようである。

 「だからカラクリを整備するために、あんなに技術者を誘拐したな?」
 「その通りだ。お陰であと少しだってのによ。計画の邪魔はさせねえ、ここで貴様ら死ね!」

ホールズの掛け声に、武士の一人が刀を抜きハーネイトに素早く迫る。それをハーネイトは瞬時に、刀で受け止めたあと、刀を力強く払い、勢いよく武士を吹き飛ばす。

 「力が強いっ。なんて馬鹿力だぁ!ごふぇ、うっ。」

 吹き飛ばされ、鉄の壁に激突し沈黙した仲間を見て、更に数人の武士が2人に襲いかかる。

 「数だけは多いな。だがっ!」

ハーネイトは反時計回りに、刀を自身の前で回した後刀を構え、一歩前に踏み込む。

 「孤月流「月天」!」

ハーネイトは勢いよく、刀で逆袈裟斬りから袈裟斬りへを繰り出し、2本の剣軌跡を生み出しながら、素早く数人を斬り武士たちを地に伏せる。

 「この程度とはな、流石に物足りないという感じだ。面倒だからこのまま終わらせる。」

 彼は自身の圧倒的剣術に、軽く笑みを浮かべながら、ホールズに対し剣を向け軽く挑発する。

 「武士たちが一瞬とは、なんて力だ。しかしこれならどうかな?」

ホールズは部屋の奥の扉のスイッチをカチッと押す。すると扉が開き奥から機械兵が数台、ハーネイトの方に向かってくる。激しい機械音をガシン、ガシンとゆっくり立てながら、二人に銃口を向け、威圧するように歩いてくるのであった。

 「こ、これはカラクリ?」
 「いや、機士国の一般機械兵か。モデルから見てもそうだ。」
 「ははは、こいつはただの機械兵ではない。こいつらはあの老人たちの手で改造された性能向上型だ。」

ホールズがそういい、今度はまた別の方向に指を指すと、その向こうには行方不明となっていた鉄蔵らが数人の武士に囲まれていた。

 「おっと、動いたらこのジジイたちを殺すぜ。あれが完成した今、もう用済みだからな。」

ハーネイトと吉田川はその言葉に反応し、動きを止める。それを見ていた技術者たちは、ハーネイトに叫ぶようこう訴えかけた。

 「む、お主はハーネイトじゃな!儂等の事は構うな。こやつを倒せ!」
 「俺らはDGって輩に誘拐されて、脅されて対城カラクリ兵器の復元を行った。起動すれば大変なことになる!何としてでも計画をぶち壊せ!」

 2人の声を聞き、ハーネイトは吉田川に小声で鉄蔵らの保護を頼む。

 「隙を私が作る。その間に助けてくれ。」
 「わ、わかった。隙を見ていくぞ。」
 「何をごちゃごちゃ言うか。さあ機械兵よ、こいつらを撃ち殺せ!」

ホールズが機械兵に命令をだし、機械兵がキャノンアームを構えた瞬間、ハーネイトの目がピカッと光り、収束した光の束がホールズの肩や耳元を撃ち抜く。更に日本刀を突き出し、そこから光線を3発発射する。

 「魔閃(ません)」は魔法使いになるうえで基本となる術式の一つである。魔力を凝縮、収縮しそれを一点に放つものであり、術者の魔法力が高いほど威力が向上する。極めれば山を吹き飛ばせる威力を持つ。そしてハーネイトはこれを日本刀から打ち出すこともできる。こうすることで収束率を上げ攻撃力が通常よりも跳ね上がる。しかし杖で行うよりも上がる半面、その光景が若干不思議なものになる。

 「がああああ!な、なんだ?目が見えない。ぐっ、痛ってえええ!!は、反撃しろ!」

ハーネイトは魔閃を数発放ち、ホールズの視力と行動を一時的に奪う。しかし機械兵がこちらに向かってキャノン砲を連続で撃ってきた。重い弾丸が素早く部屋の中を突き進む。それに対しハーネイトは魔法を詠唱する。

 「7の鎧 14の帷子 28の甲鬼 56の無念!此処に集いて7反の誓いを立てろ!大魔法14の号「甲反七陽(こうはんしちよう」!」

  そして詠唱を素早く終わらせると7枚の盾を召喚し、砲弾を受け止めはじく。「甲反七陽」は防御系の大魔法であり、物理系限定で攻撃を7回まで無効にできる。そうして攻撃を防いだ隙に吉田川は素早く回り込んで鎖十手を巧みに飛ばし、武士らを一網打尽にすると、捕らわれていた計8人を救出した。

 「ハーネイト、助け出したぞ。」
 「分かった。早く建物の外へ!」

 吉田川は8人を連れて扉の外に出る。全員が脱出するのを確認し、ハーネイトは押さえつけていた力を開放する。

 「これで心置きなく。イジェネート、活性化!紅蓮葬送・紅蓮障壁!」

ハーネイトは瞬時に深紅のマントを首から展開し、マントすべてを使い右から左へ凪ぎ払うように機械兵をマントの先端で捕らえ、それらをすべて捕まえると、そのまま飛び上がり、地面に捕らえた機械兵を激しく叩きつけた。凄まじい打撃音が地面を揺らし伝える。その衝撃で、叩きつけられた機械兵はすべて、機能停止した。

 「さあ残りは貴様だけだな。足から頭の先までたっぷり尋問の時間だ。」

ハーネイトは、首から伸びた紅蓮のマントをたなびかせ、余裕のある表情を見せる。このマントは金属の布でできており、防御と柔軟性を両立させた武器である。誰にでも使える代物ではなく、イジェネート能力者にしか扱えない専用武器である。
  イジェネートとは、アクシミデロン星に古代から伝わる、古代バガルタ人が編み出した能力である。体内にある金属を凝縮し、それを体の表面に出現させ、武器や道具をイメージして形成する能力であり、今でも一部の、古代人の血が濃く流れる部族などでは限定的にこの能力を使用できる人がいる。しかし、体内に貯蔵できる金属量に個人差があり、また、金属に毒性のあるものも少なくないため、全身を金属で包んだり、大量の金属を具現化することのできる人材は現時代では存在しないとされる。しかし、ハーネイトは特別であった。明らかに体の容積よりも多い金属を操り、その具現化力も右に出るものがいないのである。これについても理由があるのだが、彼自身はその理由を知らず、長年調査をしているのであった。

 頼みの機械兵を一瞬で失い、魔閃の直撃で手負いのホールズ。しかしまだ戦う意思を見せている。瞳はハーネイトを鋭く睨みつつ、痛みに耐えながらどうにかその場に立ち上がる。

 「他に楽しませるものはないか?」
 「何て、強さだ。使いたくはないが、どうしてもこれを、うっ。」
 「ないなら、捕らえて吐かせるしかないな。」

そう言い、ハーネイトが近づくと、ホールズが何かを取りだし体に張り付けた。

 「貴様、何の真似だ。っ、それはあのカード!」
 「へへ、貴様も知っているようだな。このカードの恐ろしさ、今見せてやる!俺は一時的に魔物になるぞ貴様!うぐっ、がああああああ!」

 自分でカードを体に張ったホールズが突如苦しみだす。すると体が青白く光りながら、姿形をあっという間に変形させ、巨大な8m級の熊に変身した。


 黒紺色の体毛に赤く怪しく光る目、鋼を切り裂く爪。その体から溢れる異様な雰囲気、ハーネイトは驚愕した。人が魔物、しかも上位クラスの魔獣に変身したことに。その魔獣は「アグザゼリス」。稀に森の中で見つかる、どう猛な巨大熊である。他の世界からの流れ魔物であり、生態系に対し多大な影響を与えかねない危険な魔物である。

 「あのカード、まさか人を魔物に変えてしまう奴だったとはな。とんでもないもの作ってくれたなDGは。しかし、この魔獣の倒し方は分かっている。」

ハーネイトは、全速力で襲いかかる魔獣を素早く右回りで後ろに回り、刀の先端にイジェネート能力で金属を足して、斧状に変えて首の後ろを強打する。アグザぜリスは、首の後ろの体毛が他の部位よりも少なく、そこを強打することで気絶させやすいのだ。

 「ああああああ!ぐああああっ!」

ダメージを受けるホールズ。正確に頸部を打撃され、痛みで暴れる。そして施設内を爪で暴れるように壊していく。

 「手がつけられないなこれは、しかしこれで分かった。」

ハーネイトは、変身させるカードの特性を理解した。変身した魔物は元の魔物と同じ弱点、行動をとり、人間らしさが全くなくなることを。

 「アアアアアアアア!」

ホールズは更に興奮し、飛び上がり天井を突き破る。

 「逃げるつもりか。」

ハーネイトもすかさず飛行魔法にイジェネートでブースターを展開しで彼を追いかける。ホールズは既に建物の外に出ていた。

その頃、櫓から施設を見張っていたリシェルらは、魔物の姿を視認した。

 「建物から何か出てきた。なんだあの熊は。魔物か?」
 「うわわ、あれは一体何ですか?見たことない生き物です。」
 「あれは熊じゃな。獰猛で牙や爪が鋭く並みの人間では太刀打ちできない生物だ。しかし異様な雰囲気だ。大きさからしても、魔獣であることには違いはない。お、ハーネイト殿も出てきたぞ。」

ハーネイトはすぐにホールズに追い付いた。彼の存在に気付き、振り向いた。

 「この場で倒す。」

ハーネイトは目を逸らさず魔物を見つめる。魔物は息を上げつつも、こちらをギロっと睨み付けたまま対峙している。

 「しかし、一度魔物になった人間は、倒した後で元に戻るのか?」

ハーネイトは疑問に思った。このままの状態で倒せば、彼は人間に戻れないのかと。それがハーネイトの剣を鈍らせる。

 「がうううう!ぐるぅあああああああ!」

 再度ホールズが距離を詰め、ハーネイトを爪で引き裂こうとする。それに俊敏に対応し、ハーネイトは瞬時に刀で受け止める。その衝撃で体がわずかに後ずさる。それに対し、魔物は鋭い爪によるラッシュ攻撃を行う。その怒濤の連撃にハーネイトは防戦一方だ。刀はその連撃に耐えても、ハーネイトが踏ん張っている地面に亀裂が入り、地盤が持たない状況である。

 「なぜ攻めないハーネイトさん。なにか理由があるのか?」
 「うーん、ハーネイトさんは何か狙っているのかも。」

  2人は、ハーネイトが防戦に徹していることに疑問を抱く。
 「そうか、もしかしてあの魔獣、夜之一さまのおっしゃっていたあのアイテムによるものか?なんて恐ろしいんだ。しかしダメなときは我らが対応せねばな。」
 「ああ。しかしなんだこの揺れは。」

リシェルが衝撃に反応し、すかさずアルティメッターを構え、狙撃体勢に入る。
そして、防戦に徹していたハーネイトは刀を巧みに使い、瞬時に魔法で刀を強化し爪を受け流す。

 「一か八で試すしかないか。」


ハーネイトは一瞬の隙を突き、大きくバク天しながら一旦距離を取る。そしてすかさず左腕をつき出すと、その腕が勢い良く伸びていき、それは真っ直ぐ魔物となったホールズの胸元に飛んでいく。それに合わせ、地面から2カ所、魔物の頭上から2カ所、魔法陣が現れ、それぞれから数本の鎖が発射された。それらはすべて魔物の体に絡みつき動きを封じる。そうして2秒後、胸に張り付いていたカードを捕らえる。

 「捕らえた、ぐぬぬぬぬぬぬぬ、とりゃあ!」

ハーネイトは、自身に備わるイジェネート能力を使い、左腕すべてを金属にしてそれを引き延ばしたのだ。完全にイジェネートを使えるものは、そのような技術も運用できる。そうして左手でしっかりカードを捕らえると、贅力をもって強引に引き剥がす。

 「ぐぬぬぬ、は、はあ!これでどうだ。」

ハーネイトは、カードを捕らえた左腕を収縮し、素早く引き寄せた。銀色に変色した左腕はすぐに元に戻り、その手には体から離されて尚、紫や黒といった異様なオーラを放つ一枚のカードがあった。

カードを剥がされたホールズは、数秒後体に電撃が走り、徐々に人間の姿に戻っていった。そして、全体力を消費した彼は、地面にどさっと倒れこんだ。

 「やはりカードがなくなれば、変身は即解除か。しかし、もしこれが一般市民に使われると考えると寒気がするな。まず肉体が持たないだろうし、何よりも自在に魔獣を呼び出し、町を破壊させることが容易なのだから。」
 「ハーネイト、無事か?」

ハーネイトを見つけた吉田川が声をかけた。

 「ああ。鉄蔵さんたちは?」
 「既に避難済みさ。体調面も特に問題なさそうだ。」
 「そうか、一つ頼みがあるが、この倒れている男を医者まで連れていってくれ。」

  ハーネイトは、地面に倒れているホールズを肩で抱き、持ち上げる。

 「死なれては情報を引き出せない。魔物に変身した影響を見てみたい。」
 「うむ。分かった。任せてくれ。確かに情報は欲しい。では失礼します。事後処理が終わりましたら、城の方にお戻りください。」

 吉田川は近くに待機させていた部下を呼び、気絶しているホールズを連れて町の方へ行った。
 彼が去ってから数分後、リシェルらがハーネイトの元に走って来た。

 「大丈夫ですか?」
 「無事か?」
 「ああ、なんとかね。しかし厄介なアイテムだ。」
 「どういうことですか?」

ハーネイトは、エレクトリールにホールズが使用したカードを見せた。

 「これはあのカードか、しかし絵柄や色が異なる。これについてわかったことがあるのか、ハーネイト殿。
 「ああ、こいつは、やはり人間を魔物に一時的に変えるアイテムのようだ。」

  それを聞き、リシェルは顔色を変える。

 「なんだと。今まで戦ってきた魔獣みたいにか?」
 「大体はそうだな。特に並みの兵士では討伐が困難な上位魔獣も、人体を媒介に召喚できると見た。」

  もし彼の推測が正しいとすれば、それはこの世界において重大な危機に直面しかねない事態である。

 「確かに先ほどのあれは、この辺りでは見ない魔獣でしたな。」

ハーネイトは、変身した魔物も、オリジナルと同じで、カードさえ引き剥がせば人に戻ることと、弱点箇所や相性もオリジナルと同じであるということを3人に教えた。

 「そうなんですね。しかし怖いですよね。もしかして敵の新兵器?」
 「奴らは魔獣を操る技術を運用しようとしてたし、魔獣絡みのこの技術ももしかするとそうかもしれない。」

  2人は魔獣絡みの事件がこれからも増えそうだと考え、曇った表情をする。

 「そうなると更に対策を立てなければならないな。これが普及でもすればただ事ではない。
 「確かに。とりあえず城に一旦戻りましょう。」

 八紋堀が言ってすぐに突然、地響きと轟音が鳴り響き、4人は姿勢が崩れる。

 「なっ、この揺れは。施設の地下からか?」
 「音と感覚からそのようです!」
 「この施設にはいったい何があるんだ!」
 「不味い代物でもいるんじゃないすかね?」

 全員が姿勢を戻し、武器を構えると、施設がいきなり激しい音をたてて崩れ、瓦礫の中から巨大な機械の腕が現れた。その腕は地面を掌で踏ん張ることで、上半身を露にした。

 「なんてでかさだ。威圧感がありすぎる。機士国でも、こんな巨大な機械はそうそうないぞ。」

 4人は、突然起動した兵器に唖然としていた。有に上半身だけで10mはあろうかと見える巨体、肩や腕には大砲や巨大な剣が取り付けられている。そして頭部にある4つの機械の目がハーネイトらを捕らえ、不気味な赤い眼光をギュインと光らせた。

 「気づいたか、こやつは起動してから、始めて見たものを追いかけるプログラムがある。破壊するまでな。約100年前に作られたとされる対城兵器「富岳王」、それがこれだ。」

  八紋堀がそういった富岳王とは、まだ日之国が戦乱続きだった際に開発された、巨大なからくり兵器である。限界まで武装を積み込み、その圧倒的破壊力は敵軍の士気を大きく削いだとされる。

 「とんでもないテクノロジーですよねこれ!しかし電気で動くなら。どうでもないですね。」

エレクトリールは、みんなの前に一歩出て、右手にイマージュトリガーを持つと、雷を激しく帯びた黄色い長槍を呼び出し、右手で槍を持つ。そして投げる構えで引いてから突き出し高圧電流を浴びせる。

 「はあっ!ライジングスピア!って何で効かないんです?」

  エレクトリールの放った雷も、富岳王の前には効き目が薄いようだ。その結果に驚く彼。

  それについて八紋掘の説明が入る。何でもあれは、原始的な動力で動いている機械であること。約8割の機関が歯車や蒸気を使用したものということ。頭部の装置はかなり強固で、装甲も帯電しているため、電撃が通りづらいこと。そのため、やるなら一度にすべてを壊す力でバラバラにするか、関節部を狙うしかないとアドバイスする。

 「しかしあれは俺を最初に見ている。記憶して追撃するなら、ここに居ては街に甚大な被害が出かねない。」
 「ああ、せめて頭部の部品だけでも無事に回収できれば、記憶メモリから奴らの情報や昔の記録を手に入れられる可能性が、ぐぬぬ。」
 「八紋堀、いい考えがある。」

ハーネイトは八紋堀に念話で話しかける。

 「俺が囮になって、あのデカブツを町の外に出して、頭部だけ回収してあとは倒す。切り札が範囲広すぎて町を巻き込むのでな。」
 「うむ、確かにそれがよいのだろうが、どこに誘き寄せるのだ?」
 「あの森です。あそこなら大丈夫です。」

ハーネイトは目線を南門の向こうにある森林に向けた。

 「ハーネイト殿、あそこは迷霧の森、入ったら容易には出られん。」
 「仲間に位置を知らせるアイテムはある。安心してくれ、できるだけ早く戻る。」

そういうとハーネイトは走りだし、カラクリ兵器の目の前に立つ。するとカラクリは巨大な腕を高く上げ、ハーネイトを潰そうと振り下ろした。それを鮮やかにかわして、町の外まで走る。

 「ちょ、ハーネイトさん!どこへいくのですか?」
 「ハーネイトは囮になってカラクリを町の外に誘き寄せているんだ。あのカラクリの特徴を逆手にとるやり方だ。ハーネイトの方を最初に見ていたというなら、ずっと彼を追い続けるな。」
 「見たものについていく機能ですね?しかしどこに誘導するつもりですか。ハーネイトさんの進む進路上には、白い靄がかかった森みたいな場所がありますが。」
 「そこまで誘導して、一気にかたをつけるつもりだ。しかしあの森は危険だ。」
 「確かに視界がかなり悪そうな場所だがな。」

  リシェルが指摘している森は、通称迷霧の森と言われる。深く、濃い霧が森中を包み込み、非常に視界を悪くしている。

 「問題はあの霧が魔力を帯びて、しかも有害な霧の出る場所がいくつも森のなかに存在していることだ。」

  八紋堀いわくその霧には有害な成分が含まれていることもあり、通常の人間が長時間いることは死にもつながりかねない。

 「大丈夫、でしょうか。ハーネイトさん。」
 「分からぬ、な。ハーネイトでさえもあの霧のなかはかなり動きが制限されるだろう。ハーネイトが10年以上旅を続けていても、南大陸に行けない理由でもあるからな。だがあれから成長もしているだろう。どうなるかは予測がつかん。」

 「このままじゃ見殺しになるぞ八紋堀さんよ?」
 「ハーネイトは戻る方法はあるといったが、どうだかな。前に一度入って戻ってきたからな。」
 「そうですか、しかし何か今できることは。」
 「戻ってこれるよう祈るしかないのか、いや。できることはある。」

リシェルはアルティメッターを変形させ、簡易砲台セントリーバスターモードにし、カラクリに照準を定める。

 「どうするつもりだ?」
 「ハーネイトさんが戦いやすいように、あのカラクリの腕を落とす。エレクトリール、この砲台に電気を流し込めるか?レールガンにしたいんだ。兄貴の作った設計なら、エレクトリールの電撃にも耐えうるはず。頼む!」
 「分かりました。やってみます。」

エレクトリールは掌から電気を出し、銃身に手を触れて、アルティメッターに帯電させる。

 「帯電完了、リシェルさんいつでもいけます。」
 「分かった。目標捕捉。」

リシェルが銃口をカラクリに向ける。絶対に外せない、その意思がリシェルの手の震えを抑えている。

その頃、ハーネイトはカラクリを町の外におびき寄せることには成功していた。

 「どうにか誘き寄せたが、まだ距離を稼がねばならないな。しかし遅い。図体がでかい分仕方ないが、早くけりをつけたいところだ。」

 更にハーネイトは森の方へ進み、存在を分からせるように距離を保ちつつ、街から引き離していく。

ハーネイトが迷霧の森に入ろうとしていた時、リシェルらは有効射程圏内ギリギリまで待っていた。

 「そろそろ十分か。はーっ、!」

 深呼吸してから一つ間を開け、リシェルは銃の引き金を引く。それと同時に電撃を帯びた大型のライフル弾が超高速で銃口から放たれた。 弾丸は空気を切り裂きながら目標へ飛翔し、見事カラクリの肩関節に命中、爆音と煙が上がり、爆発し巨大な腕が地面を揺るがしながら脱落した。

 「これは、リシェルの支援砲撃か。腕が外れて軽くなった分、富岳王の進行スピードが若干上がった。後少しだ。」

ハーネイトは更に進み、刀を体の正面に構える。片腕を失いながらなおハーネイトに迫るカラクリ兵器「富岳王」。ハーネイトを再度捕らえ、残った片方の腕でハーネイトを掴み握りつぶそうと凪ぎ払う構えを見せた。そのとき、街の方からまた閃光が走り、霧を切り裂いてカラクリの残っている腕を撃ち抜き爆発させ、一撃で使用不可にした。

 「イジェネート鎖術 ケルキウスの鎖よ!「天鎖縛門」」

 詠唱を終えたハーネイトは、その場で高く飛び、上空からカラクリの目の前に刀を地面に深く刺しながら激しく着地する。すると指した刀から白く光る魔方陣が幾重にも展開される。そして魔方陣から無数の鎖が召喚され、カラクリの動きすべてを封じる。天鎖縛門は以前盗賊に襲われていた村や、先ほどの魔物に変身したホールズとの戦いで使用したのも同じ技で、ハーネイトはあらゆる空間から、無数の鎖を召喚し操作することができる。

 「今だ!」

ハーネイトは再度飛翔し、カラクリの頭部に向かって掌から、イジェネートにより金属の針を複数発射し装甲を破壊し、内部をむき出しにした。すると魔法で中にあるブラックボックスを取りだし回収する。

 「回収完了っと、後は仕上げだ。」

 回収後、テレポートで魔方陣の外に出ると白い魔方陣が黒く怪しく光り、カラクリを鎖ごと地中に引きずり込み、10秒ほどで巨体のすべてを飲み込み消滅した。この技により消滅した物体も、ハーネイトの意志で出現させることができるのだがそのメカニズムは現状不明である。普通に手で触れても、どんなものも消滅させ別の場所に保管できるが、サイズがあまりにも大きい場合は別の技で簡単に転送することもできる。実は以前、盗賊団を葬った際にも実際は埋葬しておらず、別世界に飛ばしていたという。しかも彼らは死んでおらず、広大な領域を彷徨っているようだ。

 「終わったか。しかしリシェルたちはいい腕してるな。頼もしい仲間を持って、私は嬉しい。」

 戦闘が終わり、一段落したハーネイトは、仲間の力を心の中で評価していた。

 「しかし、データの回収には成功したが、どう帰るか。まずったな。」

ハーネイトは苦笑いしながら頭をかいた。彼は一見冷静かつ、理知的判断をする人間に見えるが、たまに無謀な突撃や作戦を行うこともある。自身の能力を信じているが故の行動であるが、周りの人間から見れば、ひやひやさせられるものがある。

 予定より森の奥まで来てしまったため、日之国の門をを見失ってしまったハーネイトは辺りを見回す。そしてとある人物に手紙を出していたことを思い出し、この森にとどまる選択をする。

その頃八紋堀らは、破壊された施設の調査や野次馬たちの管理をしていた。

 「しかしハーネイトさん遅いですね。あれから数時間たっても戻らないとは。」
 「彼が止めを指したのは確認しましたが、その後霧が更に濃くなり見失ってしまいました。」
 「これでは彼の居所がわからんな。」
 「それならば俺に任せてくれ。」

 八紋堀らの背後から声がし、全員振り返る。するとそこにはダグニスが立っていた。

 「ダグニスさん!お久しぶりです。」
 「元気にしていたか、エレクトリール。はっはっは!元気そうだね!」
 「はい、おかげさまで。アリスさんも元気ですか?」
 「お、おう。」

  ダグニスは、エレクトリールの耳元でこういう。

 「アリスってあまり呼ばないでくれ、恥ずかしいだろ?」
 「わ、わかりました。」
 「だ、誰だ?」
 「何者だ、貴様は。」
 「俺はハーネイト様のファンクラブ会長のダグニス・ルーウェン・アリス。エレクトリールは俺のことわかるよな?」

  ダグニスはにこやかな表情でエレクトリールに確認をする。

 「はい、リンドブルグではお世話になりました。ダグニスさんはハーネイトさんの支援者です。私もお世話になりました。」
 「ファンクラブだと?なにそれ入りたいな!」
 「しかも本人が認めた公式の会長とはな。しかし此所は子供の来る場所じゃないぞ。」

  事情をよく知らず、ファンクラブの存在も把握していなかったリシェルと八紋堀はやや混乱している。

 「俺はハーネイトの兄貴に新しい情報を伝えに来たんだが、ハーネイトの兄貴は?」
 「それがあの森林のなかにはいったまま戻らないんです。」

  エレクトリールは、迷霧の森の方角を指さす。 

 「あの森に?兄貴何やってんだよ。迷霧の森に自ら入るとかどうしたんだよ。あ、たまにハーネイトの兄貴妙なことするんだよな。はあ、もう!」
 「暴走したカラクリを止めるために自ら囮になったのだ。」

  八紋堀がダグニスにそう説明をした。

 「じゃあまだ遠くにはいないのか。これでわかるかな。」

ダグニスは鞄からレーダーのようなアイテムを取り出し画面を確認する。

  その少し前、日之国の外れにある森林の中に一人の男がいた。異様に目立つ銀色のコート、黄金の装飾品を身に着けた、銀色の長髪の青年が、大樹の枝の上から、町を見下ろしていた。

  「ふん、ホールズもここまでか。しかし、データは収集できた。やはりデモライズカードの威力は目を見張るものがある。そして、あの男。どこかで見たような覚えがある。」

  彼の名はハイディーン・スヴァトベイレン・ローランギルスという。彼は、DGの上級幹部である。しかし宇宙人ではなく、天神界という所から派遣されている。機士国を混乱と恐怖に陥れたクーデターに一応かかわっているようだが、実際にはDGを監視し弱体化するスパイの一つであり、間接的にハーネイトの味方ともいえる。

  「あそこまでイジェネートを利用できる、そんなやつがいたとはな。古代人の力をあれまで利用できるとは、戦い甲斐がありそうだ。しかしあの髪色、あの雰囲気。もしかすると。」

ハイディーンは、ホールズからの報告を聞き、忙しい身でありながらここまで来たのだが、作戦の失敗を目で確かめることとなった。そしてハーネイトを見て何かを思い出そうとしていた。

 「とにかく、カードの量産体制を急がせばならんな。急いで戻るか。なに、どうせこの国もすぐ堕ちるだろう。なんてな、演技はめんどくさいな。やれやれ、DGは本当に害虫でしかない、はっきりわかるなこれ。」

  ハイディーンはそう考えると、鬱蒼と茂る森の中に行方をくらませて行った。

  そして、ハーネイトが森の中に入る前。リンドブルグでは休暇から帰ったメイドたちが、事務所の中に入ろうとしていた。しかし、その事務所から耳慣れない声がする。

 「本当にここは快適だな。」
 「そうね。流石ハーネイト。掃除も行きわたっているわ。」

  リノスから飛ばされてリンドブルクに来た機士国王たちは、ダグニスの案内でハーネイトの事務所の中でひっそり生活をしていた。時々ハルディナが尋ねに来て、様子を確認する。

 「メイドさんたちがいないときは、彼自身で掃除をしていましたし、私もよく来るのですが、あまり手伝うことがありませんでした。」
 「そうなのか。しかしメイドに執事か。彼も意外な一面があるのだな。」

  国王がそういうのは、ハーネイト自身にあまり趣味や嗜好と言うのが存在しないかと思っていたことである。ハーネイトがメイド、執事を持ちたかった理由は、機士国にいた時に、50名以上の召使やメイドが存在し、国王らが身の回りの世話や掃除などをしてもらっていたのを目で見て、体験してみたいと考えたがための話である。少しだけ欲が出てきたなと言うことに国王も安心する。

 「しかし、メイドたちは帰ってこねえな。」
 「え、ええ。でも、あの人にだけは出くわしたくはないわ。」

  ハルディナはそういうと珍しくため息をつく。ハルディナは、ハーネイトに命を助けてもらった経緯があり、しかも父まで救ってもらったことからハーネイトを一人の男性として、好意的に意識をしている。事務所によく来るのも、彼の顔を見たいが為である。しかしそんな彼女にも一人苦手な人がいる。

 「怖いメイドさんでも、いるのか?」

  国王はソファーに座り、優雅に紅茶をたしなみつつ質問する。

 「は、はい。仕事は完壁だし、非の打ち所がないような人ですが、とにかく恐ろしく怖いのです。」

  彼女は少し身を震わせる。しかしハルディナの方が数段本当は恐ろしい、なんてことを言ってはいけない。

 「おいおい、それは気になるな。」
 「大丈夫?」

 2人が質問したその時、突然階段へ続くドアが激しく吹っ飛ぶ。いきなりのことで全員が硬直すると、3人の男女がリビングに上がってきた。

 「この不審者め!今すぐ立ち退きなさい!」
 「おい、待つのだミレイシア。この人たちは、アレクサンドレアル6世機士国王だ。」
 「生きていたのですか、よかったな。」

  3人は国王やハルディナの姿を見てそう言った。この3人こそ、ハーネイトが現在雇っているメイドと執事である。
  
 黒く美しい髪を後ろにまとめ、きっちりとしたメイド服を着ている女性はミレイシア・フェニス・ヴェネトナシアといい、今はほとんどいない古代人である。完璧に仕事をこなし、動きに一切の無駄がないのだが性格に難がある。とにかく毒舌であり冷酷、まるで鬼のような雰囲気を漂わせ、目つきも鋭い。しかしそんな彼女もツンデレなところがあり、それが分かると面白い古代人であることも分かるだろう。
  
 そして白銀の美しい白髪と、厳つくも優しい風貌をした、黒と銀の執事服をピシッと来ている初老の男はミロク・ソウイチロウという。彼もまた古代人であり、ハーネイトのことを孫として見ている初老のおっさんである。剣豪ミロクの愛称があり、ハーネイトに弧月流を教えたのも彼。3人の中で一番の常識人であるが、たまに天然なところがある。
  
 そして一番の問題である、明らかに2メートルは軽く超える、筋肉がムキムキで、異常に体つきががっしりした世紀末覇者のような、そして黒いゴスロリメイド服を着た恐ろしい風貌の男。名前はシャムロック・ガッツェ・アーテライトという。こいつも古代人であり、しかも今は無き最強の軍国「マッスルニア帝国」の王子であったという。その国の男子は12歳で徴肉制という鍛錬の義務があり、国内の男子全員が筋骨隆々とした屈強な兵隊を持っていたとされる。まず見た目からして突っ込みどころ満載であるのだが、さらに恐ろしいのは素のハーネイトが彼と戦うと優勢をとれないほどに彼が強いということである。

 「あんじゃこりゃあ!!!!」
 「ひぇえええええええ!何よこの人たち!」
 「な、なんだ?新手の罰ゲームかこれは?」

  近衛兵2人の絶叫をよそに、国王は余裕のある発言をする。

 「きちゃったわね。まあそんな私も古代人なんだけどねエヘヘ。」

  ハルディナのさりげないカミングアウトにさらに驚く3人。そしてミレイシアが、国王の前にやってきた。

 「あなたが、国王様ですか。ん、これは置手紙。」

  ミレイシアは、机の上にある置手紙を確認し、手に取り読む。するとその表情はすぐに険しく、今にも噴火しそうな勢いであった。

 「ハ―――ネイト様!また私たちに報告もなくどこかに行くとは、いい加減お仕置きが必要ですね。」 
 「いえ、ワニム・フニムの手紙を見たでしょう、3人で。」

 ミレイシアの言葉にミロクがそう言葉を返した。確かにワニム・フニムは3人に手紙を渡してはいるがハーネイトの書いた手紙の内容が文章不足であり、それにミレイシアは怒っていたのである。


 「な、お仕置き?いや、メイドさんが主に対してそんなことをしては。」
 「黙りなさい、そこの不潔髭男。」
 「あ、は、はい…。」

  ルズイークは、反論むなしくミレイシアにやり込められ沈黙する。

 「あなたはいっつもハーネイト様にそんな態度で、いつ契約がなくなってもいいの?バイザーカーニアから派遣されてるのは知っているわよ。」

ハルディナはミレイシアに怒ったようにそういう。温和で格好も典型的な文学系な彼女だが、実は気性の荒さはシャムロックよりも上で、かなりの武闘派である。その力はハーネイトを拳でノックアウトするほどのパワーを持つほどである。彼を気絶させたのはおそらく彼女だけ。そして何よりも、彼女もマッスルニア帝国の出身であるということだ。そして彼女は、ミレイシアのハーネイトに対する態度にいつもイライラしていた。

 「泥棒猫さんが、何を言いますか。彼には、古代人としての風格や態度を学んでもらわなければなりません。あなたが甘やかしては、彼はあのままですよ?それといい加減彼のことをあきらめてください。あれは私のものです。」

  ミレイシアは、ハルディナにそう冷たく言い放つ。この2人は犬猿の仲と言うべきか、とにかく相性が悪く、ハーネイトも頭を悩ませていた。ミレイシアをどうにかしようとしたが、彼女の勤務態度は完璧ではあり、彼女にしかできないこともあるため対応に苦慮していた。もっとも、脅されているという話もあるようだが。

 「ハルディナお嬢様、ミレイシア、その辺にしなさい。」

 「わ、わかりました。ミロク様」
 「ええ。」

  2人は言い争いをやめた。そしてミロクとシャムロックは国王の前に立ち、片膝をついて深々と頭を下げる。

 「御無事で何よりです。」
 「行方不明の報を受けた時、本当に心配しました。」

  2人は、国王が行方不明になったことに触れ、改めて無事を喜んでいた。

 「あ、ああ。皆さんには心配をかけたな。ハーネイトとエレクトリール、そしてダグニス。この3人が私たちの命を救ってくれた。」
 「そうなのですか、流石ハーネイト様だ。しかし、エレクトリールとは?」

  シャムロックの質問に、アンジェルとルズイークが話をした。今起きていること、この星の外でも大事件が起きていること、エレクトリールのことを詳細に説明した。

 「というわけで、ハーネイトは今情報収集、仲間探し、事件解決の3つの仕事をお願いしている。」
 「彼らの働き次第で、この星の運命は大きく変わるだろう。」
 「これは、忌々しき事態ですな。DG、懲りない奴らだ。」
 「そんな奴ら、私がこの世から塵一つ残らず消しましょうか。4千人の人形兵が火を噴きますよ。」

  ミレイシアがまた不気味な一言を言い、周りの人間を凍てつかせる。彼女は人形師であり、魔力で数千体の魔動人形を操作できる屈指の実力者である。

 「なんて人だ。空気を当てられただけで胃が痛くなりそう。」

 ルズイークはみぞおちを手でさすり始めた。

 「胃薬でも用意するか。しかし、こちらも何か動かねばならないな。」

  シャムロックは、ルズイークに胃薬を渡し、全員にこう提案した。

 「実は、私が用意した移動拠点が事務所近くの倉庫にあります。それで移動し、ハーネイト様が動きやすいように支援しようかと。」

  シャムロックは長年生きており、その中で得意なことに機械いじりや、車の運転、車の製作がある。しかも一人で設計から製作までをこなす人物であった。密かに用意した巨大な拠点車両「ベイリックス」を用いて、主の支援を行おうと考えていたのだ。

 「それは素敵ですね。ハーネイト様もお疲れかもしれません。私も行きたいです。」
 「確かにハルディナお嬢様がいれば、魔獣の群れなど拳1つで消し炭にできますが、あなたにはこの事務所を守っていただきたいのです。すべてが終わって主殿がまた戻ってこれるように。」

  シャムロックは、ハルディナの恐ろしい力に触れながらも、事務所の護衛を依頼する。

 「そうですか…。分かりました。それは任せてくださいな!」
 「助かる。では、残りの人たちはベイリックスでハーネイト様のところに向かいますぞ。問題は国王だな。」

 「しかし、国王様の身に何かあれば一大事ですぞ。連れていくのは。」
 「国王様は残りなさい。そこのメガネゴリラさんがお世話してくれますよ。」
 「あ、あなたねえ、いっちいち気に障ること言って!ひねりつぶすわよ。」
 「はあ?やってみなさいよ。私に傷をつけることなど叶いませんが。」

  またも一触即発の事態に、ミロクとシャムロックはため息をつく。

 「私も出る。ハーネイトに伝えないといけないことが山ほどあるのでな。それと、彼の不調について調べなければ。」
 「確かに、以前と比べ何かがおかしい。」
 「ガムランの丘の伝説の時よりも勢いがね。」

アレクサンドレアル6世はハーネイトと再会したとき、その疲れている表情に気付いていた。そして一匹狼で居るのが好きな彼が、あえて仲間集めに積極的に力を貸してくれていることに疑問を抱いていた。

 「しかたないですな、ではいきますよ!」
 「ハーネイトが本気を出せば、あっという間に片が付くのだがな。」
 「とにかく護衛だ護衛。アンジェル、気合入れるぞ!」
 「はい!」

  こうしてメイドたちと国王、ルズイーク、アンジェルはシャムロックの用意した移動拠点に乗り込むのであった。



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