【完結】今日も推しに辿り着く前に嫉妬が激しい番に連れ戻されます

カニ蒲鉾

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暇つぶし(1)


 ◆◇◆◇◆
 

 
 ローズ様の一件で、しばらく王城内はピリッとした雰囲気が漂っていた。
 
 
 毎度のごとく、詳しい事は知らされないが、聞くところによるとクオーツは本気で一家を王族の系譜からまるっと消した……らしい。
 当然、それに至った原因もすぐさま噂が出回るわけで―――
『ラズ様関連で陛下の逆鱗に触れた』
『ラズ様を泣かせた』
 などなど、完全に正解という訳では無いが、要は僕が原因であることが知れ渡っていた。

 
 王城に住み始めて10年は経つというのに、必要最低限の人としか交流を持っていなかった僕の王城での細い人脈――正確に言えばどっかのバカクオーツが制限しまくっているせいだ――が、今回の件でより一層、普段あまり関わりのない臣下やメイド達から腫れ物に触れるような扱いを受け、とてもとても肩身が狭い。
 けれど、まぁ、それに関しては全然問題なかった。直接的に嫌なことをされるわけじゃないし、僕には絶対的味方のマリンがいるし……
 問題なのは、次だ。
 クオーツから突然、当分の間は大人しくしてなさいというお達しを受け、毎日の日課であったラルド様観察が禁止されてしまったのだ。
 
 
 なぜそうなる。
 
 勿論、反発した。
 今までにないほど騒ぎ、怒り、泣きわめいた。
 それでも聞く耳を持たないあの男は「よしよし、いい子で大人しくしていなさい」と笑顔で部屋の鍵を締めていくのだった。
 鬼!!!
 
 最後の砦、マリンに泣きついても無駄だった。
 僕の絶対的味方といっても結局はクオーツの命令が絶対のクソ家臣。「我慢して俺と一緒に遊びましょうね~」と子供扱いされた日には完全にへそを曲げ、食事も拒否の勢いで一日ベッドで布団にくるまり籠城してやった。
 すぐクオーツに引っ張りだされたが……。
 
 
 前置きが長くなったが、つまり今僕は生き甲斐を取り上げられ、生きた屍状態なのだ!!!
 
 
 
「うぅ…ラルド様不足で死んじゃうよぅ…」
「そんなことで死なん死なん。それより先に餓死で死にますよ、ほら一口でいいんでご飯食べてくださいはいラズ様お口開けて~、あ~ん」
「あぐ、むぐぐぐ……無理やり生かされる苦痛…」
「何言ってんすか、はいもぐもぐごっくん。飲み込みましたね、もう一度~」
「一口って言ったのに嘘つき野郎!!」
「口が悪いなぁ」
 
 
 時間をかけ無理やり詰め込まれる昼食が終わると、王妃としての予定がない日にラルド様の訓練を覗きに行くことも出来ない、もはや何もやることがなかった。
 
 
「暇だ、つまらん、こんなにも一日って長かったっけ……」
「こらこら、だらけすぎですよ~」
「だって暇なんだもん!せめて窓からラルド様を眺められる部屋に移動させてよ~ね~ぇ~っ」
「はいはい、そんなにラルド様を見たかったら自分で絵にでも描いて眺めてればいいんじゃないですか」
「!!それだっ」
「マジか」
 
 
 冗談で言ったのだろう、まさかそれを本気に取られるとは思ってもいなかった驚き顔が本物だった。
 
 そんなマリンを置き去りにタタタッと走って紙と描くものを集め、早速机に向かって黙々と描き始めてみたものの―――
 
 
 
 
「「……」」
 
 
 完成したのはラルド様とは似ても似つかない何か。
 
 
「下手ですね」
「うるさーーーい!」
 
 
 辛辣な言葉をあびせてくるマリンからガバッと紙を取り上げたものの、改めてちらっと見た絵はこんなにも自分に絵を描く才が無かったのか、と驚愕し言葉が出ないほどの出来。
 恥ずかしくて見せられたものじゃない。

 しゅんとする僕を慰めようと、絶対的味方は表現を変え、言葉を変え、必死にやった末、たまたまポロリと出てきたアドバイスに僕のやる気は再びみなぎっていた。

 
「ラズ様の場合、想像で描くからダメなんじゃないですか?」
「……そうかも。ちょっとマリンモデルしてよ」
「しょうがないなぁ、かっこよく描いてくださいよ?」
「ん」
 
 
 こうして、何度もポーズを変え二人して時間を忘れるくらい絵を描くことに没頭していた。
 

 
 
 
 
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