【完結】今日も推しに辿り着く前に嫉妬が激しい番に連れ戻されます

カニ蒲鉾

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とある騎士の話


 ◆◇◆◇◆
 
 

「立てーー!へばるなへばるなっ」
「いけるぞー!団長から一本取れるまで休憩無しだーー!」
 
 
 国内一厳しいと言っても過言では無い王国騎士団。
 その中でもトップ級に厳しい騎士団長ラルド様が率いる第一騎士団は本日も王城内の訓練所で日々の鍛錬を積んでいた。
 
 
「今日も来てますね、ラズ様」
「毎日よく飽きないよな」
 
 
 団長の目が光る訓練所内、常に集中し気を抜く事が許されないそんな場で、騎士達の気を散らす異様な存在がいた。
 
 
「~~~っ」

 
 少し離れた場所に植わる木々の中の一本。必ず決まった大木の陰からこちらを覗き見て、内容までは聞こえて来ないが何かしら一人で狂ったように叫び胸を押え蹲る、見ていて心配になる行動をする人物。
 通常だったら不審者邪魔者は即排除対象だが、その人物だけは例外だった。
 
 なぜならそれがこの国の王妃―――性別上は男でも国王陛下の運命の番として妃に迎えられた、ラズ様なのだから。
 
 
 
 
「あの、先輩方……俺の認識が間違ってなければあの木の陰からこっちを覗いてる怪しい人は王妃様かと思われるのですが……」
「あぁ…そうかお前新入りか」
「はいっ昨日より配属致しました!」
 
 
 初々しさ全開にビシッと敬礼する新人を若いなぁと思ってしまうくらいには自分も歳をとった…としみじみすると同時に、この騎士団に所属したからには知っておくべきことを伝承する。
 
 
「王国騎士団に入団した時の誓いは覚えているか?」
「はっ、ここで見聞きしたことを外部に漏らさない、です!」
「そうだ、その誓いを絶対に忘れず、今から言うことをよーく聞け」
「は!」
 
「あの方は正真正銘この国の王妃、ラズ様であり……我らが団長、ラルド様の追っかけだ」
「……は?」
 
 
 何を言っているんだ、という新入り団員のリアクションをこれまで何度も見てきた。しかし、数日もすれば皆理解しいつもの光景と化するのだった。
 
 
「今は理解できずとも、じきに分かる。それを踏まえて我々はラズ様の邪魔をせず、訓練にだけ集中すればいい。そっちに気を取られていると団長にしごかれるぞ」
「……はぁ」


 頭にはてなを複数浮かべながらもとにかく返事をする新入りの言葉を遮るようにして、一段と大きな声が飛んできた。

 
「ぎぃやぁぁぁぁぁっラルド様ぁぁぁっっがっごいぃぃぃぃぃっ」
 
「「……」」
「あ、陛下が回収しに来た」
 
「離せっクソクオーツっ離せぇぇぇっ」
「ラズの視線がうるさいって苦情が入ってるよ」
「っ!?そんな、ラルド様のご迷惑に……」
「そうだね、迷惑になるからラルドじゃなくて私を見ていなさい」
「うぅ…ラルド様ごめんなさいぃぃ…」
 
 
 民の前に立つ表向きのお二人しか見た事のない者が初めて見たら唖然としてしまう光景。
 国王陛下をクソと言う王妃。王妃に全く相手にされない国王陛下。
 
 王国騎士団が守る対象は多岐にわたる。情報も然り、だ。

 それにしても今日のは一段と激しかった。
 
 
「……い、いいか、新入り。ここで見聞きしたことは門外不出だ。絶対に漏らすなよ」
「……漏らしません」
 
 
 これで、入城時に印を押した誓約書の真の意味を理解したことだろう。国民が抱く、国の象徴のイメージを決して損ねてはいけない。
 
 陛下に担がれ小さくなっていく王妃の姿を口を固く閉ざし見送った。
 
 
「そこ、何をしている集中しろ」
「「はっ!」」
 
 
 訓練中、常に隅々まで目を走らせる団長にまんまと談笑が見つかり、鋭い注意が飛んできては慌てて姿勢を正す。
 その視線が別へ移ったことを確認するやいなやそそくさと自分の持ち場に戻っていく新入りの背中を見送りながらまだ伝えていなかった事柄があったと思い出す。
 しかしこれは騎士団内で過ごしていくうちに自ずと気付くことだろう。
 


 あそこまで熱心に見つめられるラズ様の視線と声援に一切動じない、団長の精神力の凄さとスルースキルの高さ。

 そして、自然に動く団長の視線の先は遠ざかっていく担がれた背中へと向かうが、長年共に過ごしてきた自分までも気付かせない団長のスキル。



 とにかく、うちの団長は凄い人なのだ。

 
 

 
 とある騎士の話-END-

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